劣等生も異世界から来るそうですよ?   作:夜桜見物人

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前回の続きです。



黒ウサギのコミュニティの秘密 其の二

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コホン、と咳払いをして、黒ウサギは自らのコミュニティの惨状を語り始めた。

 

「まず私達のコミュニティには名乗るべき“名”がありません。よって呼ばれる時は名前の無いその他大勢、“ノーネーム”という蔑称で称されます」

 

「へえ・・・・その他大勢扱いかよ。それで?」

 

「次に私達にはコミュニティのほこりである旗印もありません。この旗印というのはコミュニティのテリトリーを示す大事な役割も担っています」

 

「ふうん?それで?」

 

「“名”と“旗印”に続いてトドメに、中核を成す仲間達は一人も残っていません。もっとぶっちゃけてしまえば、ゲームに参加できるだけのギフトを持っているのは122人中、黒ウサギとジン坊ちゃんだけで、後は十歳以下の子供ばかりなのですヨ!」

 

「もう崖っぷちだな!」

 

「ホントですねー♪」

 

十六夜の冷静な言葉にウフフと笑う黒ウサギは、ガクリと膝をついて項垂れる。達也はそれを見て、

 

「ウサギは感情の起伏が激しいんだな」

 

と、感心しながら的はずれなことを言っていた。

 

「で、どうしてそうなったんだ?黒ウサギのコミュニティは託児所でもやってんのか?」

 

黒ウサギは沈鬱そうに首を振る。

 

「いえ、彼らの親も全て奪われたのです。箱庭を襲う最大の天災・・・“魔王”によって」

 

“魔王”・・・それを聞いた途端、適当に相槌を打っていた十六夜が初めて声を上げる。

 

「ま・・・・マオウ!?」

 

十六夜の目がキラキラと輝いたように見えた。

 

「魔王!なんだよそれ、魔王って超カッコイイじゃねえか!箱庭には魔王なんて素敵ネーミングで呼ばれる奴がいるのか!?」

 

「え、ええまあ。けど十六夜さんが思い描いている魔王とは差異があると・・・」

 

「そうなのか?けど魔王なんて名乗るんだから凶悪で、全力で叩き潰しても誰からも咎められることのないような素敵にゲスい奴なんだろ?」

 

「ま、まあ・・・・倒したら多方面から感謝される可能性はございます。倒せば条件次第で隷属させることも可能ですし」

 

「へえ?」

 

「ほう?」

 

「魔王は“主催者権限(ホストマスター)”という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたが最後、誰も断ることはできません。私達は“主催者権限(ホストマスター)を持つ魔王のゲームに強制参加されられ、コミュニティは・・・・コミュニティとして活動していく為に必要な全てを奪われてしまいました」

 

黒ウサギの言葉に同情する様子もなく十六夜は、

 

「けど名前も旗印も無いというのは不便な話だな。何より縄張りを主張できないのは手痛いだろ。新しく作ったら駄目なのか?」

 

「そ、それは・・・」

 

黒ウサギが言い淀んで両手に胸を当てる。

今までの会話に最小限しか関わっていなかった達也が軽く目を見開いて、

 

「まさか仲間の居場所を護るためとか、新しく作ったら仲間が悲しむみたいな理由ではないよな?」

 

「・・・」

 

黒ウサギの様子を見て頭を抱えながら、

 

「図星か」

 

「はい・・・・茨の道なのは分かっています。でも私達は仲間の帰る場所を守りつつ、コミュニティを再建し・・・・何時の日か、コミュニティの名と旗印を取り戻して掲げたいのです。そのためには十六夜さんや達也さんのような強大な力を持つプレイヤーを頼るほかありません!どうかその強大な力、我々のコミュニティに貸していただけないでしょうか・・・・!?」

 

「・・・ふぅん。魔王から誇りと仲間をねえ」

 

深く頭を下げて懇願する。しかし必死の告白に十六夜は気の無い声で達也に至っては声すら返ってこなかった。

 

(ここで断られたら・・・・私達のコミュニティはもう・・・・!)

 

「いいな、それ」

 

「・・・・は?」

 

「HA?じゃねえよ。協力するって言ったんだ。もっと喜べ黒ウサギ」

 

不機嫌そうに言う十六夜。呆然として立ち尽くす黒ウサギは二度三度と聞き直す。

 

「え・・・・あ、あれれ?今の流れってそんな流れでございました?」

 

「そんな流れだったぜ。それとも俺がいらねえのか?失礼なこと言うと本気で余所行くぞ」

 

「だ、駄目です駄目です、絶対に駄目です!十六夜さんは私達に必要です!」

 

「素直でよろしい。達也は・・・どうすんだ?」

 

今まで浮かべていた笑みを消し、十六夜は達也に問いかける。

 

「・・・・はあ、正直に言おう。俺は元の世界に帰りたいだけだ。この世界にいたい十六夜たちとは少し違うんだよ。」

 

「えっ」

 

「なんで元の世界にそんなに拘るんだ?」

 

達也はここで自分のことを話すかどうか迷っていた。

 

(話しても諦めて貰えないだろうし、話さないのも諦めて貰えなさそうだが、どうする)

 

「おまえが言いたく無いなら別にいいが、せめておまえの入るコミュニティが決まるまでは勧誘しててもいいか?」

 

達也は十六夜に乗ることにした。

 

「ああ、そういうことでいい。・・・・それじゃあコミュニティが決まるまではノーネームに居させてもらうということでいいか?」

 

「は、はい分かりました。」

 

と、慌てながらも黒ウサギは返事をした。

 

「さあ、話もついたところだし早く“世界の果て”とついでにこの川の終端にある滝を見に行くぞ」

 

「は、はい!」

 

「ちゃっかり行く所増やしたな」

 

そう呟いた達也の声を最後に三人は移動を始めた。

 

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深雪を出したい。
達也だけだとどうしてもオリジナル展開にもって行きにくくって大変になりそうです。
深雪がいるとお兄様を引っ張り出しやすいのに・・・


ということで深雪を出したいのですがいいでしょうか?

(出すとしたら火龍誕生祭かなぁと思っています。)
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