ゆったりと自転車を漕ぐ。別に急がなくても良い上に眠い。だから早くは漕がない。
「あー…なんで学校って存在するんだろうなぁ…」
いつも通り登校中に愚痴を言う。別に朝一緒に行く人など必要無いと思っているのでこんな事言っても誰にも聞かれない。
学校に着くと、玄関では多数の生徒が駄弁りながら靴を内履きに履き替えている。いつも通りの喧騒。
「あーだっりぃ…」
別に小声で言えば誰に聞かれる訳も無い。愚痴ばかり言いながら自分の教室へ向かう。
教室の戸を開ければまたそこにも喧騒。皆朝っぱらから大声で話している。
俺はと言えば、一人悲しく窓際の席に鞄を置き、机に突っ伏すだけ。そうしている内にHRが始まる。
「今日、トイレの壁が破損しているのを見つけてくれた生徒が…」
どうでもいい話ばかり。後半からは全く聞かずに寝てしまった。
そんなこんなであっという間に放課後。もう3年の冬、部活なんて引退している。
帰ろうとしていた所に、俺に非日常が訪れる。
「おい古瀬。ちょっといいか」
「はい?」
何故か呼びだされる。何かしただろうか。トイレの破損だったら俺ではない。しかし、担任の教師が切り出したのはそんな生温い話ではない。
「お前の父親が亡くなったらしい」
「はぁ…え?」
父親と言えば、去年母親と喧嘩して離婚した筈だ。それなら別に死んでもこちらに連絡など…
「なんでもその親戚がお前にぜひ来て欲しいって事らしい。行ってやれ」
「いや…でも3日後卒業式じゃ…」
「大丈夫だ、2日後に葬式があるらしいから明日練習すれば間に合う」
余りにも急過ぎる話な上に、2日後なら別に家に帰ってから親に教えて貰えばいいのに。そんな事を思いながら迎えに来ていた母親の車に乗り込む。
「なんでわざわざ迎えに来たん?」
「だって、早めに教えた方が良かったでしょ?」
別にそんな事無くね?そう言おうと思ったが話がややこしくなりそうなので取り敢えず相槌だけ打つ事にした。
「お、おう…そうだな…」
そうして1日が終わる。結局余り変わらない日常。そしてまた次の日がやってくる。
いつも通りに登校する。しかし一つ違ったのは教室の戸を開けた時の皆の反応だった。
「大丈夫?」「無理しなくていいんだよ」
今日だけ何故かけられる言葉。正直話しかけて来て欲しくない。どうせこういう時話し掛けて「私優しい人!ほら褒めて!」とかアピールしてんだろうな…と思いつつ適当に相槌を打つ。
「あぁ、大丈夫だよ、うん」
「ほんとにー?」「なんか顔色悪くない?」「大丈夫?」
ほっとけ、いつもの顔だわ。いつも俺の顔見てないから顔の色忘れちゃったんじゃないの?取り敢えず適当に場を凌ごう。
「ほんとに大丈夫だって、気にしなくていいよ」
いつもと違ったのはその瞬間だけ、その後はいつも通りの日常が続く。こんな日常が変わる日が、来るのだろうか…
〜二話に続く〜