マジ恋〜直江大和は夢を見る〜   作:葛城 大河

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今回は短いです。
俺の中学二年の時も修学旅行が大阪だったなぁ。いやぁ、あの頃に戻りたい。
それと、そろそろ止まっている他の作品を書くつもりなので、遅くなるかもしれません。


第七拳 中学生〜修学旅行in大阪〜其之一

 

桜の花弁が舞い落ちる。春。それは出会いの季節であり、別れの季節でもある。ある者は、学年を上がり。ある者は、新たな学校に入学する。またある者は、学校を卒業する。そんな季節が、春だ。

 

 

そんな二度目の春を経験して中学二年に上がった直江大和は、現在、孤立していた。もう、誰もが認める孤立っぷりである。休み時間には常に一人で本を読み、昼になれば教室から出て屋上にて一人で弁当を食べる。誰がなんと言おうと孤立していた。いや、もう簡単に言えばボッチである。さて、何故、大和がここまでボッチ道を歩んでいるかというと、その原因は小学校を卒業して、中学の入学式の教室で行われた自己紹介の所為だと断言出来るだろう。

 

 

名前順で生徒が自己紹介していき、ついに大和の番になった時、その問題が起こった。椅子から勢い良く立ち上がり、右手を頭に持っていく。そして少し、頭を俯かせてから、教室内のクラスメートや先生に向けて、その男は言い放ってしまったのだ。

 

 

『ククククッ、俺の真名を聞きたいだと? やめておけ。只人(ただびと)の貴様らが俺の真名を聞いた所で、理解は出来ないだろう‼︎ だが、安心しろ。ちゃんと名は教えてやる。ふっ、仮の名だがな。よく聞くが良い‼︎ 仮の名とは言え、俺の名が聞けるのだからなっ。我が名は、直江大和。前世から引き継がれる(きおく)を見る者であり、闇の住人たる奴らと戦うもn、いや、ここまでにしておこう。巻き込む訳にはいかないからな』

 

 

そうして彼は言い切ったという風に着席した。呆然である。クラスメートも先生も、大和の言葉に呆然とした。世間的に言われる痛い病気。いや、もうここは正直に言おう。厨二病は中学に上がって、余計に悪化していた。その理由にも原因がある。あの中国から日本に帰ってきた時。まぁ、中国で色々大変な事をしてしまい、自分が暴走した結果で起きた出来事に、本当に今更だが精神的に未熟だと悟り、必ず中国の彼女たちに償おうと誓ったのは飛行機に居た時だ。

 

 

別にこの件が厨二病悪化の原因ではない。日本に帰って来てからの話だ。飛行機で誓った事を実践するように、精神を鍛える鍛錬を行っていた時だった。大和は何者かが自分を探している事に気付いたのは。ソレを調べる過程で、その者たちが九鬼財閥だと知り、何故、自分を探しているのか疑問に思ったが、今は隠す事に専念した。九鬼財閥に見付かれば、十中八九、面倒くさい事が起きると本能が告げていたからだ。

 

 

故に、少年は本気を出した。彼の見る夢にはパソコン関係や機械関係が得意な者が居る。誰とは言わないが。その技術を利用して、少年はなんと大胆にも九鬼財閥をハッキングして嘘の情報を流す事にしたのだ。その際に、九鬼財閥が行っている『武士道プラン』なるものなどを見付けたりしたが、そっと胸の奥に仕舞い込んだ。少し眼を通したら、過去の英雄のクローンを誕生させると書いてあったので、流石の大和も『あっ、これダメな奴だ』と素の声を漏らしたりした。

 

 

そんな事が起きて大和の厨二病は悪化した。誰かが探している。しかもそれが天下の九鬼財閥。その情報網から逃げる自分。これが彼の厨二魂に火を付けた。そして出来上がったのが今の彼である。何度か、勇気を出して大和に話しかける生徒も居たのだが、その度に『おっと、俺に話しかけるなら隅で話しかけるがいい。何処から組織の奴が見てるか分からないしな』と言い放つ為に、今では大和に話しかけようとする勇敢な者は居なくなっていた。

 

 

しかも、これの凄い所は、あながち嘘ではない所だろう。引き継がれては居ないが、確かに大和は不思議な夢を見てるし、九鬼財閥が彼を探しているのだから。とはいえ、これの原因の所為で大和はボッチ街道まっしぐらだった。そして、ボッチにとって嫌な季節がやってくる。いや、別に季節が嫌な訳ではない。その季節に行われる行事が嫌なのだ。それは秋。食欲の秋とも呼ばれるこの季節に、大和が在学している中学はとある行事をやる。

 

 

ボッチにとって苦い記憶を刻み込む、そう────修学旅行である。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「さて皆さん。もうすぐ修学旅行です。修学旅行で行動する班を作りましょう」

 

 

四時間の授業を急遽、二週間後に行われる修学旅行の時間となり、担任の教師が大和にとって残酷な事を告げたのだった。因みに担任は、童顔な女教師であり生徒たちからは人気者である。さて、そこで女性教師に言われて、教室内の生徒たちが、席から立ち上がり、各々が一緒の班になりたい者の所に行く。直江大和はと言うと────

 

 

「…………………」

 

 

席から立つ事はせずに、顔を俯かせていた。理由は明白である。彼に一緒の班になってくれる友人が居ないのだから。周囲で楽しそうな話し声を聞きながら、全身を震わせる。

 

 

(な、なんでこうなったっ⁉︎)

 

 

現在の状況に対しての大和の言い分はコレである。

 

 

(俺はなにも悪い事はしていない筈だろ。なのに、なんで)

 

 

厨二病が悪化した彼は、自分の発言の所為で友達が出来ない事に気付かない。彼的にはカッコいい言葉使いだと思っており、すぐに友達が出来ると思っていたのだから。まぁ、その事を初めて会った普通のクラスメートたちが分かる筈もないのだが。もしも、これで大和の思いに気付いた者が居るなら、それは最早エスパーだろう。そして少年の悪夢は終わらない。女性教師が、席から立たずに俯く少年に気付いてしまった。首を傾げながら、大和に向けて歩く。カツカツカツと歩を進めて、大和の所に辿り着いた彼女は、心配そうに口を開いた。

 

 

「如何したの直江君? 具合でも悪いの?」

 

「…………え? ふん、俺が具合悪くなるなどあり得るものか」

 

 

女性教師に話し掛けられた事に、俯かせていた顔を上げて、視線を向ける大和であったが、すぐに口調を変えてそう答えた。その言葉に彼女は、良かったと笑みを浮かべて、アレ? と首を傾げてから大和に向けて言った。

 

 

「直江君の班は…………?」

 

「…………ッ⁉︎」

 

 

彼女の言葉にビクリと全身を震わす。大和が口に出さずとも、なんで震えたのか察しが良い人なら分かる事だろう。そして、運が悪い事に目の前の女性は、察しの良い人間だった。答えてくれない彼に、最初は分からなかった彼女だったが、周りを見て分かったという風に手を叩いて言った。

 

 

「もしかして直江君。まだ、班が決まってないの?」

 

「……………うっ」

 

「それは大変‼︎ みんな、直江君がまだ班を作ってないので、もしも空いてる所があったら入れてくれる」

 

 

確信を込めた彼女の言葉に、呻いた少年。それにやっぱりと思い、彼女は善意(・・)で教室内の生徒たちに向けて言葉を発した。大和にとっては恥ずかしい言葉を。彼女の声が教室内に響き、話し合っていた生徒たちが大和にへと視線を向ける。ヒソヒソと生徒たちは『如何する?』『だけど、入れてもなぁ』などと相談し合っていた。

 

 

(アレ? おかしいぞ。精神面を鍛えた筈なのに、なんでこんなにダメージ負ってんだ?)

 

 

そのヒソヒソ話が聞こえて、精神的ダメージを負う大和はまだまだ子供と言えるだろう。しかし、何時まで経っても大和を班に入れてやろうとする者は名乗り出ようとしなかったが、その時、一人の少年が恐る恐ると手を上げた。

 

 

「…………あ、あの先生。もし良かったら、俺の班は一人空いてるので」

 

「本当ですか安藤君」

 

「………はい」

 

 

彼女の言葉に少年はしっかりと頷いて見せた。少年の後ろに居る班の仲間が、慌てたように『お、おい。マジかよ』などと言っている。如何やら、彼らは納得してはいないようだ。すると、女性教師は大和に向き直り口を開いた。

 

 

「直江君、安藤君が入れてくれるって」

 

「え? あ、あぁ、そのようだな。物好きな奴も居た者だ」

 

 

背中を押されて、大和は席から立ち上がり、安藤と呼ばれた少年の元に行く。そして安藤少年は、少し大和に対してぎこちない笑みを浮かべながら告げた。

 

 

「えっと、よろしくな直江」

 

「ククッ、あぁこちらこそな」

 

 

こうして、大和は一つの少年たちの班にと入った。まさか、その班の安藤を含めた三人とは、長い付き合いになる事などこの時の大和は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、班も決まったし。まず大阪に着いたら、何処から回るかを決めるか」

 

 

机をくっ付けて座りながら、班長に決められた安藤武(あんどうたける)が口を開いた。

 

 

「やっぱり大阪と言ったら、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンだろ‼︎ 最初に行くとしたらこれだな」

 

「いや、最初にそこに言ったら最後の楽しみがなくなるから。僕は海遊館に最初に行く事を勧めるよ」

 

「はっ、海遊館ってのは水族館だろ。そんなの大阪じゃなくても良いじゃねぇかよ。それに、泳ぐ魚を見てなにが楽しいんだ?」

 

「それは柏田(かしわだ)の心が荒んでるからじゃないのか」

 

「なんだとぉ」

 

「なんだよ」

 

 

そして二人の口喧嘩が始まった。安藤はそれを止めずに苦笑いしてるのを見ると、何時もの事らしい。喧嘩している二人は、勿論、大和の班の残りのメンバーである。少し中学生にしてはガタイが良くスポーツ刈りをしてる少年の名は、柏田肇(かしわだはじめ)であり、部活は野球をやってるスポーツ少年だ。

 

 

対して言い合いをしている眼鏡を掛けた、柏田と正反対で細身の少年は神城智樹(かみしろともき)と言った。班に入った時に大和は改めて自己紹介されたのだ。

 

 

「えっと、直江君はなんか案はある?」

 

「……………俺の案か?」

 

 

口喧嘩をしている神城と柏田を気にせずに、安藤は大和にそう尋ねる。それに彼は表情を変えずに、折角の機会だという風に考えた。ここで、ちゃんと答えれば友達が出来るかも知れないと。しかし、今まで鍛錬に費やした所為か、大和は大阪の観光スポットがなんなのか知らなかった。だから、例え考えても思いつく訳がない。とはいえ、折角聞いてくれた事に悪いと思い彼は分からないと口を開いた。

 

 

「俺が知る筈もない。常に隠れて生きてきたのだからな」

 

 

もう、彼はダメかも知れない。つい、大和は何時もの口調でそう答えてしまった。それに安藤はハハハっと顔を引き攣らせる。すると、さっきまで口喧嘩をしていた二人が安藤を引き寄せて、円陣を組んだ。

 

 

「(おい、安藤。やっぱりアイツおかしいぞ)」

 

「(彼の個性は凄いね。はははは)」

 

「(いやいや、アレは個性というよりも完全に痛い人だよ。俗に言う厨二病だって絶対に)」

 

 

三人が思っていた事を小声で口に出して、そう言ってからチラリと大和に視線を向けた。

 

 

「(やっぱりマズかったんじゃねぇか。アイツを班に入れて)」

 

「(いやでも、一人だけは可哀想でしょ)」

 

「(はぁ、安藤は相変わらずだね)」

 

 

柏田と神城は、安藤の性格を知っているから苦笑を浮かべる。もう、班に入れてしまったのだから仕方がないと二人はため息を吐いた。なんだかんだ言って、この二人もお人好しの部類に入ってる事に二人は気付いていないが。気を取り直して、改めて彼らは最初は何処を観光するかを話し合う事にする。そして班長である安藤の最初に大阪城から見て回るという提案が採用された所で、授業終了の鐘が鳴り響き、終わった。

 

 

昼時間。昼食の時間である。それぞれが、鞄から弁当を取り出して机に広げ、友人たちと面白く喋り出した。大和はというと、弁当を片手に持ち教室から出て、何時もの屋上に向かおうとした。その時だった。背後から安藤が大和に声を掛けた。

 

 

「待てよ直江」

 

「……………なんだ?」

 

「昼一人なら如何だ? 親睦を深めると思って俺たちと一緒に食べないか?」

 

「……………ッ⁉︎」

 

 

大和に衝撃が奔る。中学生になって、始めての誘いだったからだ。これは是非、一緒にと大和は冷静に言葉を選んで言った。

 

 

「お前が俺とそんなに食いたいのなら、仕方がないな。付き合ってやろう」

 

「お、おう」

 

 

なんでだよッ⁉︎ 自分自身に叱責するように、胸中で叫ぶ。なんでこんな時に、正直に答えない俺ッと大和は内心で頭を抱えた。まるで、ツンデレではないかと思う。だが、それでも安藤が頷いた事に、大和は眼を輝かせた。貴方が神かと。

 

 

 

 

 

安藤に誘われて着いていった大和は、教室に戻る訳ではなく、廊下を歩いていた。如何やら安藤たち三人は何時も教室ではなく、別の所で昼食を取っているらしい。安藤と大和は、静かに廊下を歩く。無言で歩き続けていると、安藤が尋ねるように言葉を紡ぐ。

 

 

「…………なぁ、直江」

 

「ッ、な、なんだ?」

 

 

突然に掛けられた言葉に、大和は焦りながらもそう返す。それに安藤は言葉を続けた。

 

 

「お前ってなんか格闘技やってんのか?」

 

「…………なんでそう思うんだ」

 

 

まるで確信してるかの物言いに、焦っていた彼は途端に冷静になり聞いた。それは純粋に何故そう思ったのかを知りたかったからだ。すると、安藤は確証はないんだけどな、と頬を指で掻きながら言った。

 

 

「いや、なんていうか。直江の姿勢が綺麗だったし、それに歩き方もな」

 

 

そこまで聞いて大和は、ほぉと感嘆した。隠していたつもりだったが、まさか分かる者が居るとは思わなかったのだ。まだまだ、隠す技術が足りないなと内心でため息を溢しながら、そんな自分の姿勢に気付いた安藤に聞く。

 

 

「お前もなにかやっているのか?」

 

「お前もって事は、やっぱり直江は格闘技をやってるんだな。俺のやってるのは柔道だよ。といっても殆ど護身術みたいなもんだけどな。それで、直江はなにをやってるんだ」

 

「俺の持つ力を、簡単に教える訳がないだろう。何処から組織の奴らが見てるか分からないのだしな」

 

「あ、あぁ………そうか」

 

 

折角良い感じで話が繋がったのに、終わってしまったと安藤は笑ってしまった。大和も折角話しかけられたのに、なんでここで切ったと自分で愕然とした。そうしてると、二人は目的地に着いた。

 

 

「おっ、ここだ直江」

 

「ん? 第二理科室?」

 

 

 

そこは、使われていない第二理科室だった。安藤は躊躇う事などせずに第二理科室のドアを開けると、中にはもう柏田と神城が席に着いていて待っていたという風に安藤に声を上げる。その際に、一緒に入ってきた大和に眼を開いていたが。こうして、大和の中学生活は少しの変化が起きた。これが現在の彼の日常であり、生活である。思えば、この中学時代が一番、平和な時期だった。厨二病を除けば。しかし、そんな事が今の大和に分かる事はなく、そのまま時間が過ぎて行き、遂に修学旅行の日が訪れた。

 

 

 

 

 

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