ハウルはルームメイトで友人のドラコとその取り巻きのグラップにゴイル。スリザリンの双華と名高いレイナにダフネ、そしてドラコを愛するパンジーと共に魔法薬学が行われる教室へ向かっていた。
自身の寮監の初めての授業なのにスリザリンと相性最悪のグリフィンドールとの合同授業に不満を覚えているのも多かった。
なぜなら談話室でお互いの先輩が後輩達に悪口を叩き込んだのだ。
グリフィンドールの生徒はスリザリンはセコい癖にプライドが高いと罵り
スリザリンの生徒はグリフィンドールは間抜けで傲慢で自分達を嫉妬していると蔑む
何も知らぬ新入生達だが上級生同士のいがみ合いを目の当たりにすると、それを信じ互いを毛嫌いし始めた。
ハウル達のホグワーツ始めての授業は変身術だった。担当は新入生を組分けの儀式の為にホールへ誘導したミネルバ・マグゴナガルであった。
***
先日
「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法学の中で最も複雑で危険なものの一つです。いいかげんな態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、二度とクラスには入れません。初めから警告しておきます。」
厳格で聡明な副校長マグゴナガルは全員が着席し、出席を取り終わるとすぐに警告を始めた。彼女の有無を言わせぬ口調に生徒達は黙りこくる
その様子を見たマグゴナガルは手始めに机へ向けて素早く杖を振ると一瞬で机は豚に変わった。生徒達が眼を見張るのを確認したマグゴナガルは再び振り元に戻す。
そして彼女の説明をノートを取り終わった後、一人一人にマッチ棒が配られた。
「今から残り時間の四十分までにこのマッチ棒を小指程の長さの針に変えて貰います。より先端を鋭く、またより明るい光沢をつけた者には成績を加点します。」
期待に胸を膨らませる生徒が一斉に杖を振るうがレイナ以外は何も変わらなかった。
周りの様子を見ていたハウルは落胆した。自分と同じように独自で魔法を学んだ生徒がレイナ以外にいれば少しは自分のモチベーションがあがるかと考えていたのだ。
ため息をついて軽く振り一度で針に変えた。丁度自身の小指とほぼ同じ長さで鋭く光沢もついていて本物にしか見えなかった。
本物同様にキラキラとしていたが、念の為に光沢の呪文をかけて光輝かせた。
完璧に課題を終わらせて頬づえをつきながら時が経つのを待つハウルを隣の席に座っているドラコは彼に声をかけた。
「なぁハウル。コツを教えてくれないか?」
五分程経過するが未だにハウルとレイナ以外はマッチ棒のままだったためドラコがコツを尋ねた。その声を耳にしたのかマグゴナガルは声をあげた。
「おや、ミスター・グレンスト。これは光沢の呪文をかけていますね?」
冗談の通じなさそうな真顔でハウルに尋ねた。スリザリンの生徒はハウルが叱られるのでは無いかと思ったが、マグゴナガルは単純に興味を持っただけだった。
「えぇ、マッチ棒を針に変えた後に“光沢の呪文”を使いました。光沢をつけるのに呪文を使用してはならないと仰らなかったので大丈夫だと判断しました。不正と判断されるなら“終了呪文”でもかけましょうか?」
ハウルの隣に座っているドラコが悪びれる様子も無いハウルを見て減点か説教を食らうと思い青ざめた顔をしている。
ハウルはさりげなく自分が“終了呪文”も扱える事をマグゴナガルに伝え、己が優秀である事を彼女に誇示しようとした。
初対面の人間に顔を覚えてもらうには以下にインパクトを与えるかである。特に学校においては教師に生徒の名前を覚えてもらう事は優秀な生徒にとってかなりのアドバンテージになる。時として通信簿には過大に評価をしてくれる場合や優先的に指名してくれるからである。
「“終了呪文”も使えるのですか?やってみてください。」
マグゴナガルは厳格ながらもほんの少しだけワクワクした様な表情を見せていた。父親が優秀な闇祓いであり、魔法を教えているという事を知っていた彼女にとってハウルがどれ程の力を有しているのかを知りたかったのだ
「“
ハウルは思惑通りに事が運んだことに一瞬だけニヤッと笑うも、すぐさま呪文を放った。
“終了呪文”とは何かにかけられた呪文の無効化である。ただこの場合には注意点が一つある。
今回においてはマッチ棒を針に帰る魔法も使用している。消したいのは“光沢呪文”のみであるため、変身術を残したままにせなければならないのだ。
マグゴナガルがハウルに許可を出したのはそのためである。ただ呪文を使うのは特化した練習量と才能さえあれば叶えられる。だが他方だけ魔法の効果の範囲内にし、もう他方を範囲外にするのはかなりの難易度である。
この場合においては偶然“終了呪文”が卓越している可能性は低い。だがハウルがこの魔法を成功させれば彼の才覚を知る事ができる
無論、彼女の思考回路をもハウルは読んでいる。実は彼は既にこの様な場面を想定した訓練などとうに受け終わり、習得している。
ハウルは針をマッチ棒に戻すようなヘマをせずに針から光沢呪文のみ終わらせ、ある程度の輝きを残す針へ戻った。
「お見事です。取り敢えずミスターグレンストの針に十点。そして光沢呪文にも十点。それに終了呪文に二十点を与えます。光沢呪文は二年生で習い、特に終了呪文は六年生で習う難度の高い魔法です。さらに変身術まで解かなかった事は称賛に値するでしょう。」
マグゴナガルがこの授業を始まって始めての笑みを見せ、ハウルを褒めちぎった。
マグゴナガルの厳格な授業を忘れ、スリザリンの生徒は盛大な歓声と拍手をした。
この瞬間に“天才”ハウル・グレンストという認識がホグワーツを巡った。
またマグゴナガルがハウルの優秀さを同僚らに伝えた事により彼の名前は教師陣に知れ渡った。
次に行われた薬草学では基礎テストが行われハウルのみ満点、逆に知らない事を探そうとスプラウト先生から質問攻めにされるが教科書を軽く暗記している彼に穴は無く三十点獲得。
ピンズ先生もスプラウト先生同様に基礎テストをし、五名の高点の生徒がいたため一人ずつ五点獲得。
呪文学も軽くこなし十点、新学期始まって三日も経たった頃には元々優秀なスリザリンに拍車をかけるように最下位のハッフルパフから百点差をつける快挙を達成。
スリザリン以外の三寮の男子生徒からガリムの息子だから贔屓をしていると、根も葉もない噂が立つが、真偽を確かめようとスリザリンとの共同授業の話を新入生から耳にすると、その噂は一週間も経たずに鎮静化した。