ハリーポッターと導く者 〜改訂版〜   作:ニルドアーニ四世

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飛行訓練 2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をボヤボヤしてるんですか、みんな箒のそばに立って。さぁ早く」

 

フーチは支給用の箒を一人ずつ渡し、生徒達を横に立たせる。ドラコは支給品でなく自分の家から持ってきたかったと以前から話していたが、余裕の表情を見せている。

 

「右手を箒の上に突き出して。そして上がれ!と言います。」

 

「「「「「「「上がれ!」」」」」」」

 

フーチが指示を出し終わると同時に生徒達は手を箒の上に突き出して叫んだ。

 

ハウルの箒は素早く飛び上がって彼自身の手にすっぽり収まる。周りを見ると箒を手にしているのはハリーとドラコであまり動じていない。だがその3人以外の生徒達は慌てたり、自信なさげに命じるからかうまくいかない。

 

間も無く全員が箒を手に取ると、フーチが跨るまでのやり方をやってみせ、一人一人箒の握り方を直していった。

 

フーチがドラコが握り方の直すと、小馬鹿にする様に笑ったグリフィンドール生の声に顔を赤くした。その様子にパンジーは微笑ましく彼を見ると呟いた。

 

「おっちょこちょいドラコも素敵よ。」

 

パンジーのデレに吐き気を催したゴイルは耐えきれずトイレに向かう。

 

「さぁ、私が笛をふいたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、二メートルぐらい浮上して、それから少し前屈みになってすぐに降りてきてください。笛を吹いてからですよ。一、二の...」

 

フーチがカウントをとって飛行実習へ移ろうとすると、一人の生徒が慌てたのか笛を吹くまえに飛びあがってしまう。

 

その生徒はハウルの数少ない友人であり、グリフィンドールに入ったネビルだった。

 

「こら!戻ってきなさい。」

 

先生の言葉は青ざめた表情をしているネビルに届くことはなく、ぐんぐん高度をあげていく。

 

ハウルは操縦のやり方も教わったばかりなのに誰もができるわけがないだろうと、フーチの指示のミスを不満に思った。

 

事実、“停止呪文”で箒の動きを止め、“浮遊呪文”を調整しながらネビルを地上へ下ろせばいいだけの話である。

 

またホグワーツの飛行訓練を任せられる教師が、飛行訓練(これ)における危険防止の魔法を習得していないわけがない。

 

この女は教師でありながらこの程度のトラブルで取り乱し、冷静かつ正常な思考を保てないという事を知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“コマとして必ずしも使う必要がない”

 

 

 

ハウルは心の中でそう評した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハウルが思考を終えてもなお、フーチ(無能な女)は生徒同様に慌てて喚き続けるだけだった。

 

やがてネビルは箒から手を離してしまい、振り落とされどんどん降下していく。

 

焦りの表情を浮かべて杖を手に取らぬフーチを見下す様に一瞥し、ハウルは素早く杖を抜いて呪文を唱えた。

 

「 “イモビラス(動くな)” 。」

 

ネビルが植えてあった大木へ激突する二メートル程前でハウルは物体の動きを止める作用のある魔法を使用した。

 

そしてそのまま浮遊呪文を調整しながらゆっくりと地面へ下ろした。そしてネビルの安否を確認しようと、フーチとグリフィンドールの生徒達が駆け寄った。

 

「気絶しているだけです。目立った外傷はありません。ハウル君。冷静な対応と魔法の実力を称えスリザリンに五十点与えます。大変立派な事をしてくれました。」

 

フーチはネビルの脈を取りながら無事である事に安堵すると、ハウルへ顔を向けて賛辞の言葉を並べて敬意を評した。

 

「ありがとうございます。」

 

ハウルは無表情で単調に返事をしたが、心の中ではフーチに対して怒りを覚えていた。

 

 

(立派な事してくれた、だと?それは教師たる貴様の義務。己の不始末を生徒に担わせて尚、上からものを言うのか?プライドの高く己の非を認める事のできぬタイプ、ホグワーツとはいえこの程度の教師もいるのか...。)

 

 

「私がこの子を医務室に連れていきますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置くように。さもないと、クィディッチのクを言う前にホグワーツから出ていってもらいますよ。」

 

フーチは生徒達に釘を差し、気絶したネビルを魔法で浮かせて医務室へ向かった。そして彼女がいなくなると沈黙を破るようにドラコが笑いながら声を発した。

 

「あいつの顔見たか?あの大まぬけの。」

 

ドラコの声にスリザリン生が笑いはじめ、グリフィンドールの生徒達は怪訝な顔をしてドラコを睨みつける。中には掴みかかろうという生徒もいた。

 

「ドラコ、言い過...何だあれ?」

 

ドラコを抑え込もうとしたハウルは草むらの中から透明な玉を見つけ拾う。彼がそれを手にするとその玉が赤く染まった。

 

「グレンスト!こっちにそれを渡してもらおう。それはネビルの“思い出し玉”だ。」

 

ロンがずっと先程の仕返しをしようと企んでいたのか、ハウルに詰め寄る。

 

ハウルはこの授業後に知ったがこれは“思い出し玉”と呼ばれ、触れた者が忘れている事があると赤く変わる魔法アイテムである。

 

「安心しろ、後でネビルに返しておく。あいつは俺の友人だからな。」

 

「スリザリンなんかを信用できるか、僕が渡しておく。」

 

授業後ハウルは素直にネビルのいるはずであろう医務室へ置いておくつもりだったが、ロンは彼を毛嫌いしていたため認めなかった。

 

ハウルはため息を軽くつくとロンへ向けて問いかけをした。

 

「じゃあネビルを助けたのはどう説明するんだ?俺がネビルを友人だと思ってないのなら見過ごすはずだろ。俺が本当にスリザリンに相応しい生徒なら、の話だが。」

 

「どうせ自分の点数稼ぎだろ!お前としちゃどっちでもよかったんだ。小汚いスリザリンらしいよ。」

 

ロンの言葉にハウルの神経という神経を逆撫でさせる事になる。もし彼がネビルに何もしなければ確実に重症を負っていたのが明白である事を理解しておきながら軽口を叩けるロンの神経に怒りを覚えたのだ。

 

確かに彼自身も己の冷酷さを重々理解しているが、それはあくまでも己の夢の為にやむを得ない犠牲と捉えていた。

 

だが同時にハウルは友人に飢えており、人の温もりを感じる事に喜びを感じていたのも事実である。だからこそハウルがネビルを救ったのも本心であり、点数稼ぎや見捨てるなどという選択肢は初めからなかった。

 

 

ロンの軽口を耳にしたハウルは一瞬で目を鋭め、こめかみに筋を入れて睨みつけた。彼は蛇に睨まれたカエルの様に身体を硬直させ、全身から冷や汗をかいた。

 

その空気に二つの寮の生徒達の顔が一瞬で強張りながら、二人の様子を見守る。

だがドラコだけはニヤニヤしながらロンの様子を楽しんでいた。

 

ハウルがビクビクして焦っているロンの胸ぐらを掴み、激しく引き寄せると己の額に彼の額を激しくぶつけた。

 

ロンは痛みにより軽い悲鳴と苦痛の表情を浮かべたが、ハウルは硬い部分で受け止めたためほぼノーダメージだった。

 

 

 

 

 

 

そして周囲に聞こえぬ様に彼の耳元で囁く

 

「軽口しか叩けぬゴミが戯言ぬかすなよ。」

 

押し殺しつつも垣間見える怒気と通常より遥かに低い彼の言葉を耳にしたロンはその場に膝から崩れ落ち、へたりこんで動けなくなる

 

今の言葉は優等生たるハウル・グレンストとは思えぬ言葉であり、ロンは恥と恐れからこの出来事を心の奥底に秘める事になる

 

ハウルがそのままロンの元から離れようとするが、すぐに振り向き彼の顔をまるでゴミでも見るかの様に蔑んだ視線をぶつけた。

 

「いくらハリーの友人とはいえ、お前程度の男は信用できない。これはハリーかハーマイオニーに預ける。」

 

ハウルは近くにいたハリーに“思い出し玉”を預けようとするが、横からドラコがそれを彼からひったくりニヤニヤした表情を浮かべながら声をあげた。

 

「このバカ玉をロングボトムが後で取りにこられる所においておくよ。木の上なんてどうだい?」

 

「マルフォイ。それをこっちに渡すんだ!」

 

ハリーが強い口調でドラコに詰め寄った。だがドラコはニヤニヤしながら手に持っていた箒に素早く跨り空を舞う。

 

「ここまで取りにこいよポッター。」

 

“思い出し玉”を手にしたドラコは得意げな表情でハリーを挑発すると、ハリーは一度も乗ったことがないはずの箒に跨りドラコと向かいあった。

 

ため息をついたハウルとは裏腹にハーマイオニーは二人を制止しようと叫んだ。

 

「ダメ!フーチ先生がおっしゃったでしょう、動いちゃいけないって。私達みんなが迷惑するのよ。」

 

彼女の声を二人は無視し向かい合うと、地上のボルテージが上がり盛り上がり始めた。やがて制止の声は面白いモノ見たさの歓声で揉み消された。

 

「ちょっと!ハウルも言ってやってよ。」

 

自分の言う事を聞かない皆を抑えようとハウルにも協力を求めた。スゥと息をすった彼は少し大きな声で二人へ声をかけた。

 

「ドラコ、ハリー、タイムリミットは三分ってところだ。」

 

いつもは自身を止めるはずのはうるの許可を得たドラコはニヤリと笑い、ぎこちなくも自然と乗りこなすハリーと向かい合う

 

「ちょっ‼︎ どうして止めないのよ。」

 

あり得ないという様な表情をしたハーマイオニーが声をあげてハウルを見る。優等生の彼ならば自分の味方をすると思っていたからである。

 

ハウルは万が一の時に備えて杖を手にしながら空中にいる二人の様子を見守りながら、返事をした。

 

「あそこまで発展したのなら止めても二人の溝は深まるばかり、それにドラコが隠しても俺が汽車の時みたいにするから大丈夫だ。」

 

ハウルは“喧嘩は止めなければならない”という常識に納得していない。勿論喧嘩などするに越した事はないが、時にぶつかり合い事実関係をはっきりさせるべきだと考えていた。

 

この場合は寮という分けられた環境においてぶつかり合うのは自然の摂理である。

 

二人を止めても納得の行くような結論が出るとは思えず、互いのことを許し合い友人となるには程遠いと見抜いていたからである。

 

危険だという指摘は先程のネビル相手に見せた方法で回避出来ることは示しているため、問題ない。

 

更にドラコが“思い出し玉”を隠した場合にも問題はない。なぜならネビルのトレバーを探すのに使った引き寄せ呪文を使えばいいからである。

 

そしてハーマイオニーその事を知っていた為に反論できなかった。だが唯一気がかりなことがある。

 

「そうだけど、もしバレたら退学になるかもしれないわ。」

 

「それだけで退学だったら、ウィーズリーの双子なんてとうの昔に退学になってるはずだろ?脅しに決まってる。」

 

ロンの事はさっきの件で完全に嫌悪の対象となぅたが、彼の兄である双子は面白いのでハウルはかなり気に入っていた。

 

ウィーズリーの双子は日夜悪戯に勤しみ、時に教師ですら手を焼くほどのクオリティである。そんな彼らでさえ退学にならないのだ。

 

つまり教師の指示に逆らった程度で二人が退学となるとは思えず、ただの脅しであるとハウルは結論付けた。

 

 

「そうだけど...。」

 

「それより、ハーマイオニー久しぶり。俺の事は避けてたろ?」

 

ハーマイオニーはギクッとした顔をしてハウルを見る。元々スリザリンとグリフィンドールは相性最悪であり、彼女は身内に目をつけられぬ様にハウルを避けていたのだ。

 

当初は会話を交わしていたが、ハウルの側にいるドラコとパンジーが怪訝な顔をして時に悪態を吐くので控える様にして今に至る。

 

「寮の確執がある以上やむを得ないか、俺に気を使ってくれたのもわかるが、個人的に仲良くしたい。」

 

ハーマイオニーはハウルの言葉に申し訳なさそうにすると、素早く解決策を考え始める。

 

その様子を見てハウルは内心でニヤリと笑った。彼女が優秀なのは彼は理解している。

 

だがそれはあくまでも学業における成績のみの判断である。彼の持論では勉強など時間さえかければ誰にでもできる。

 

だが基礎的に頭のいい人間は本質を見抜くのに長けている。

 

例をあげれば“効率を考えて最小限の時間で習得する者”、“一瞬の思考で解決策を見抜く者”

 

この場合では後者である。ハウルは彼女が自分のコマ及び仲間に迎え入れるに値する人間かを確かめたかったのだ。少なくとも現段階では優等生であるから利用価値はありそうだと踏んでいた。

 

「ごめんなさい、これからは避けたりなんかしないわ。流石にひと気の多い所だと目立っちゃうから図書館で会いましょう。あなたもよく行くわよね。」

 

ハーマイオニーはハウルの本心を見抜けず、謝罪と反省の言葉を述べる。そして彼女なりの解決策を一瞬で出した。

 

彼女の答えはハウルの考えていた事と同じ答えであった。

彼は己の見聞を広めるためによく図書館を一人で利用する事を“彼女が知っている”ということを知っていたから答えは十分導ける。

 

更にドラコは図書館にいるより寮でお菓子を食べる方が好きなのでハウルに付き添わない。パンジーもまた意欲などなくドラコLOVEだから図書館など来るはずもない。

 

「あぁ、一緒に宿題でもやるか。」

 

ハウルはハーマイオニーが優秀である事を目の当たりにし、満足しているとドラコが“思い出し玉”を思い切り遠くへ放り投げる。すると前屈みになったハリーが玉を追いかけて校舎に当たる寸前でキャッチする。

 

歓声をあげるグリフィンドール生の元へハリーが意気揚々と戻る。だが突如スリザリンの生徒達がニヤニヤし始めた。そして次第に悟り青ざめたグリフィンドール生につられる様にハリーが振り返るとマクゴナガルがこっちへ小走りでやってきていた。

 

マクゴナガルはハリーをどこかへ連れていく。グリフィンドール生はハリーが退学になると思ったのか顔に生気がなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜授業後〜

 

 

 

 

 

「君には悪いけど、ポッターはこれで退学だ。」

 

帰り道にドラコが誇らし気に語り始める。だがハウルが素早く返事をした。

 

「いや、多分違うぞ。」

 

「そうね。」

 

ハウルとレイナが否定したことにドラコはわけがわからないという顔をしていた。

 

「どういう意味?」

 

唖然としていたドラコを他所にハウルの横にいたダフネが尋ねた。

 

「フーチ教諭が帰ってくる前にマグゴナガル教諭はハリーを連れていった。つまりフーチ教諭は見てないと考えられる。罰則又は説教ならマクゴナガル教諭は報告すべきだろ?」

 

ドラコ達がハッとした様に気付く。確かにこの授業の責任はフーチにあり、マクゴナガルとはいえ干渉できないはず。更に退学となる生徒がいるのならフーチが何事もなかった様に授業を再開などしないのが自然である。

 

「そうね。補足でいえば言いつけ一つ破ったくらいで退学する学校なら警告はもっとキツく言うはずだし、学校でそんな噂を耳にするはずでしょう。脅しと考えるのが自然よ。」

 

レイナは可愛らしい顔をしているが、ハウル以外に関しては冷静で堅実な判断ができる。二人のもっともらしい意見にスリザリンの生徒たちのボルテージが下がり始める。

 

「まぁあくまでも可能性の話だがな。仮にハリーが退学になるとお前も危ないぞ。ハリーがお前を庇うと思うか?」

 

その一言でスリザリンの生徒達は静寂に包まれた。退学ともなれば説教だけでなく、事情も聞かれるのが普通である。だがその時にドラコの名前が出てこないはずがない。なぜなら彼の手にはネビルの“思い出し玉”が握られていたからだ。

 

 

その日のドラコはまるで廃人のようだった。そして夕食時にダンブルドアの説明で校則が変更され、禁止されていた一年生の寮対抗クィディッチの参加が認められた。

 

まもなくハリーがグリフィンドールのシーカーになったという噂が伝わり、ドラコは何とも言えない様な表情であった。

 






すみません、文量の調整をしくじりました。
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