騒ぎ始めパニックになる生徒達はダンブルドアの一声で落ち着きを取り戻す。そして監督生に連れられてハウル達は談話室に戻ろうとしていると人を掻き分けるようにこちらへやってくる少年がいた。
「ハウル、ちょっと来てよ!」
ハウルがコンパーメントで知り合い友人となったネビルに話しかける。その様子をパンジーが小馬鹿にする様に見て口を開く。
「ロングボトムよドラコ...ドラコ?」
パンジーはドラコのいた方向を見るがそこにドラコは居なかった。ドラコはクラッブとゴイルに道をこじ開けさせながらトロールが来る!と大声をあげながら一目散に逃げていた
「怖がってるドラコも素敵よ❤️私が護衛するわ!」
謎の意欲を示したパンジーは前の生徒達を押し退けながらドラコを追いかける。その様子を見たハウルは軽くため息をつき生徒達の列から一人で抜けた。
「どうしたネビル?」
「ハーマイオニーがいないんだ!多分トロールの事も知らないよ。」
ネビルがあたふたしながら事情を話す。ロンがハーマイオニーの悪口を言いふらし、それが彼女の耳に入った。そしてハーマイオニーが泣きながらどこかへ行き、そして今まで見かけなかったということらしい。
「ハーマイオニーはどこにいるんだ?」
ハウルはロンへ軽い苛つきを覚えるがその話が本当ならいち早く伝えなければ彼女の身が危ない。
ハウルの質問にネビルは焦っている表情から間の抜けた顔になる。やむを得ないかとハウルは口を開く。
「“ハウス”!」
ハウルがそう呟くと移動キーとしての性能を併せ持つ黒い紙が一瞬で現れる。そして杖を取り出して素早く振るうと地図が現れた。
「なにこれ?」
目を見開きネビルは尋ねる。
「あとで説明する。これは他言無用で頼む。」
ハウルは地図にハーマイオニーの名前を目を光らせる様に探した。生徒達は一斉に避難していたので、彼女の名前はすぐに見つかる。
どうやら女子トイレの個室にいる様だ。世間体からほんの少し戸惑うがその様な事は言っている場合でなかった。
そこへトロールが入って行ったからだ。
***
数分後
〜女子トイレ前〜
ハウルとネビルが全速力で女子トイレに向かうと2人の人影が見えた。ハリーとロンであり、二人はトロールを閉じ込めようと女子トイレのカギをかけたのが見えた。
「そこを今すぐ開けろ!!!!」
ハウルは切迫した表情で鍵を開ける様に言い放った。二人に気がついたロンとハリーは正反対の反応をする。
「げっ!グレンスト。」
「ハウル、トロールは閉じ込めたよ!」
ロンは驚きつつも不快そうな顔をするが、ハリーは意気揚々とした声で言う。
「キャャャャーーーーーーーーッッッ!!!!」
女子生徒の金切り声の様な悲鳴が女子トイレを響き渡る。ハリーとロンはハッとした顔をしてトイレのドアを見つめる。
「中にハーマイオニーがいるんだ!」
ネビルの声で二人は真っ青になる。ハウルは二人を突き飛ばし、ドアの鍵を開けて中へ入る。
中に巨大な棍棒を持ち四メートル程の大きさで灰色の醜い化け物トロールがいた。
ハーマイオニーは壁の奥に逃げて張りついており腰が抜けて動けない様だった。トロールは鈍い唸り声をあげ、トイレのドアを棍棒で薙ぎ倒しながらハーマイオニーへ近づく。
「“
ハウルはトロールが薙ぎ倒した瓦礫へ杖を向けて呪文を放つ。すると瓦礫はまるで生き物の様にトロールへ襲いかかる。
トロールへ命中するが特にダメージはなく、マッサージ程度の衝撃だった様だ。そしてハウルがやった事を辛うじて理解すると怒りの声をあげる。
「今の内にハーマイオニーを!」
ハウルの指示でハリーとロンはトロールの死角をすり抜ける様に走ってハーマイオニーの元へ行くことに成功した。
獲物をロックオンしたトロール程度の知能なら勇気さえあれば可能であると判断したハウルはわざと自分を囮にしたのだ。
そしてゆっくりと後退しトロールを三人から引き離そうとする。だがトロールはハウルへ向けて棍棒を投げた。
トロールの腕力により素早く回転しながら飛んで来る棍棒は命中さえすれば致命傷である事は容易に理解できた。
「“
素早く飛んでくる棍棒にハウルは“破壊呪文”で破壊に成功するが、その破片が目に入り怯む。そして悲鳴により背後に三人がいることに気づいたトロールは振り返り吠えた
そして腰の抜けて動けない三人へ向けてトロールは岩のような拳を握り振りかぶった
その刹那ハウルにはある記憶が脳裏をよぎる
自分に倒れる幼き
手足をもがれ地面へ伏したしもべ妖精。
燃え盛る業火に焼かれる二人の
当時の俺は力を持っていた
だがそれを引き出す術がなく
己の無力さ故に犠牲となった者達
皮肉にもそれが引き金となり
その術とは激情に身をまかせること
「“
ハウルが自分の顔に水を放ち目に入ったゴミを取り除くと鋭くまるで全てを射殺す様な視線をトロールに当てると同時に女子トイレに鮮血が舞った。
鈍いトロールでも確かに感じた。圧倒的強者に蹂躙される様な
『〜ッッ⁉︎』
声にならぬ呻き声をトロールがあげ先ほどの殺気を背後に感じ取り、冷や汗をかき怯えながらもゆっくりと振り返る。
そこには少年がただ一人
まるで地獄絵図を彷彿とさせる威圧感
そして殺気を杖の先端へ集める
一言一句が命のやり取りだと理解した
だが許しを乞う術が見つからない
故に自分は殺される
「調子にのるなよ害獣...。もはや貴様に許しを乞う機会など与えぬ。」
天へ向けた杖の先端から業火が天井へと渦巻く様に舞い登る。その炎が生き物を形作り、生きているかの如く動き始める。
トロールの背丈の倍以上の大きなで頭が7本もある伝説の悪霊にして古の怪物“ヒュドラ”
その怪物はハウルの僕の如く従いトロールへ咆哮し、空間は喉が焼ける様な熱気に包まれる。
「“防水呪文”だ。」
ハウルがそう口にすると天へ向けた杖をトロールへ向けて振り下ろした。すると7つの大蛇は牙を剥き出しにして襲いかかる
「イッ...“
ハーマイオニーが素早く唱えると三人を覆う水の盾ができて巻き添える様に飛んできた炎を遮った。水の盾の中でハリーは小さく呟く
「ハウル...だよね。」
彼の目に映るヒュドラを従えし魔法使いは
自分の知る少年ではない
自分の知る友人ではない
自分の知る人格者ではない
自分の知る模範生ではない
自分の知るハウル・グレンストではない
「貴様の辞世の句には興味がない。勝手に懺悔の歌でも囁いていろ。」
トロールは苦痛に身を悶えさせ悲鳴をあげながら地面に伏す様子をハウルは冷たく冷たく見下す様に見据えていた。
「やめなさいッ!グレンスト!!!!」
ネビルに連れられたマクゴナガルは唖然とした表情でありながらもこの場をどうにかして収めようとするが、その程度でハウル・グレンストの激情は止まらない。
そしてトロールはただの焦げた肉片と化すまでヒュドラの業火に喰われ続けた