ハリーポッターと導く者 〜改訂版〜   作:ニルドアーニ四世

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少年に巣食う闇

 

 

 

 

 

 

 

 

〜とある教室〜

 

 

 

 

 

 

 

ハウルはダンブルドアと彼の寮監であるスネイプと共に連れられて、昔使われていた古い教室のような印象を受ける部屋に入る。

 

教室にはほとんど物はなく、ただ教室の奥の中心にカーテンのようなもので覆われた巨大な何かがある。

 

「ところで君はハリー達の記憶をどこまで忘れさせたかの?」

 

先ほどの顔とは異なり、いつものニコニコとした表情に戻ったダンブルドアは優しく語りかける様に質問をする。

 

「俺が悪霊の炎を使ってトロールを殺した所、正確には腕を斬り飛ばした所からだ。四人が目覚めたらあんたが魔法で助けたことにしておいてくれ。」

 

ハウルは正直に答えるとダンブルドアはジッと彼の瞳を見る。自分になにをしようとしたのかをハウルは理解し目を細めて不快そうな顔をするとダンブルドアはおどけた表情で誤魔化す。

 

ダンブルドアはハウルの本心を探ろうと開心術をかけようとしたのだ。しかし天才ハウル・グレンストには通じない。それの対抗策である閉心術を習得してあったからである。

 

「それは構わんよ。今度は儂の頼みを聞いてもらおうかの...。」

 

ダンブルドアは杖を軽く振り巨大な何かを包んでいた大きな黒い布を剥がした。するとそこには天井まで届くような巨大な鏡があり、見事な金の装飾が施されている。

 

ハウルはその鏡を見た瞬間に身体を強張らせ目を見開く。なぜならそこに自分の望む世界があったからだ。

 

「この鏡に何が写っておるかの?」

 

ダンブルドアは真顔でハウルの顔を見つめる。しかしハウルは返事などできる余裕はなく何も言わない。静寂が教室を包み込み時間だけが過ぎて行く。

 

「教えてはくれんのか?」

 

「すまないがこれだけは...。」

 

ハウルはガリッと歯軋りをして下を俯く、この鏡に映った理想に己の隠しておきたい秘密が関係していたのだ。

 

ハウルが無言で黙っている様子に痺れを切らしたのかスネイプが静かに杖を取り出して彼へ向けて呪文を唱えた。

 

「“レジリメンス(開心せよ)”。」

 

ハウルは背後からの急襲に対応することができず閉心術が遅れスネイプに隠しておきたい記憶(秘密)を土足で踏みにじられる。

 

 

 

 

 

 

 

無力な自分を庇い切り裂かれたしもべ妖精

目の前で四肢の自由を奪われ

人形と化した生まれて始めての友達

抗うことのできぬ現実という世界

鳴き叫べども己を呪えども

現実は何も変わらない

絶望を目の当たりするには

余りにも若過ぎた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クハッ...ハァハァ、スネイプッッッ!!!!」

 

ハウルは鼓膜が破れるばかりの大声をあげてスネイプを睨みつける。一介の教師如きが踏み込んでいい過去ではないのだ。

 

憎しみという憎しみの表情を浮かべ少年は冷静沈着の名に相応しいスネイプを圧倒させるほどの剣幕と記憶を持っていた。

 

「何が見えたセブルス?」

 

二人のただならぬ様子を見たダンブルドアが冷静に事情を訪ねた。するとスネイプは表情一つ変えることなかったが、瞳から水滴が流れ落ちる。

 

「校長、これだけは...。」

 

少年の悲しみを知ったスネイプは心の底から同情した。十にも満たぬ齢の少年が受けた拭い難い絶望と懺悔の記憶、自分と同じ悲しみを背負っている事に気がついたのだ。

 

ダンブルドアは少し驚いた表情でスネイプを見る。まさか彼をそうさせる程の過去をハウル・グレンストが抱えていたのかと、己が如何に浅はかであったかを後悔した。

 

 

するとゴツンという大きな音が教室に響き渡り二人は音源を見る。するとハウルは四つん這いに倒れており頭を床に叩きつけていた。

 

「俺は一体どうしたらよかったんだ。」

 

頭を何度も何度も床に打ち付ける鈍い音がダンブルドアとスネイプの鼓膜を叩く。

 

「俺が悪いんだ、弱いから、力が無いから、何もできなかったから。」

 

ハウルは葉を激しく噛み締めながら絞り出すように呟く。その様子を見たダンブルドアとスネイプは慰めの声すらかけることができなかった

 

「やめてよ。ティンクスを傷つけないで、傷つけるたいのなら僕にしてくれ。ティンクスも僕を庇わないでよ。」

 

ハウルは両手で頭を力強く抑えて過去と葛藤するかの様に、懺悔するかの様につぶやく

 

「アイリスもどうして僕なんかを...。君が傷つくぐらいなら僕は命なんて全然惜しくなかったよ。」

 

ハウルがそう言い終わると彼の周囲に黒い煙の様なものが纏わりつき始め、それのほんの一部が耳と鼻が鋭く尖った小さな人型の(亡霊)となり、それが彼へ語りかける。

 

 

(ハウルお坊っちゃま、貴方さえこの世にいなければ私は死ぬ事が無かった。貴方が強ければ、貴方様が弱いせいでティンクスめが!!!!)

 

 

瞳のすべてが真っ黒に染まったしもべ妖精の負の亡霊がハウルを責める。

 

「ごめんなさいティンクス!!!僕が...僕が強ければあんなことに!!!!」

 

ハウルは涙を浮かべながら謝り、自分を何度も責め続ける。

 

それも虚しく彼の闇は再び人型の亡霊を創り出す。ワンピースを身につけている少女で、彼女もまたティンクスという亡霊と同様にハウルを攻め立てる。

 

 

(ティンクスのいう通りよ。貴方なんか友達じゃないし、庇う価値なんかなかったわ。貴方さえいなければ私は幸せだったのに...。私は自分の未来を貴方に潰されたわ。)

 

 

ハウルは顔を歪ませながら彼女にも謝罪を繰り返して行う。

 

「お願いだ。僕を許してくれ...弱い僕を...償うから。いつか君たちが笑って過ごせるような世界を作るから...僕を許してくれ...。」

 

ハウルは自分()の創り出した亡霊に精神を破壊しつくされ、正常な判断などできる状態でなかった。

 

 

そんな彼に追い撃ちをかける様にもう一人の亡霊を生み出してしまう。

 

 

(今更許してもらおうなんて随分とおめでたい野郎だな。俺の闇から逃れるなんて真似は許さねぇよ。気に食わねぇ奴は殺せばいい。簡単じゃねぇか...。)

 

 

その亡霊とは今より幼い頃の自分自身であった

 

 

「うわァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

ハウルは部屋の埃を撒き散らすほどの竜巻の様な渦巻く黒いオーラを噴き出す。その風圧はスネイプを後ずさりさせるには十分な圧力(プレッシャー)であった。

 

 

ダンブルドアはそれに物怖じすることなく跪くハウルを力強く抱き締める。

 

「過去は振り返ってはならん!!!乗り越えるのだ!!!その闇をも背負って生きるのじゃ!!!!!」

 

ダンブルドアがハウルの闇を抑え込もうと言葉を彼へ送る。

 

「僕は...僕は許されちゃいけない。この世界にいちゃいけない人間なんだ!!!!」

 

ハウルは顔をくしゃくしゃにして泣き叫び己を責め続ける。

 

「過去に己を囚われてはならん!!!過ぎた事はもはや抗えぬ!!!どれほどの魔法を得ようともそれだけは無理なんじゃ!!!!」

 

ダンブルドアはかつて自分が死なせた様なものである妹の事が脳裏によぎり、この目の前の小さな魔法使いに自分と同じ轍を踏ませてはならないと助言を与える。

 

「...僕は生きててもいいの?」

 

「勿論じゃ。」

 

ダンブルドアの答えにハウルから流れ出る闇の勢いが止まった。

 

「でもアイリス...。君はどうして笑ってくれないんだ。」

 

ハウルがそう呟くと、彼の体からゆっくりと闇が蒸発する様に消えていく。

 

「すまんかったの...。ここでの事を聞いておいて忘れてくれなんて無責任かもしれんが、君はまだ若い。その闇と向き合うにはあまりにも若過ぎる...“オブリビエイト(忘れよ)”」

 

この教室での記憶を消されたハウルはダンブルドアにもたれかかり、深い深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これがハウル・グレンストの秘めた闇が公の場へ漏れた瞬間である。その闇はトロールを殺した程度では晴れるわけもなく、これから彼へ纏わりつく様に共生していく

 

 

彼の闇は実に矛盾している。闇へ落ちるは常に護りたい誰かの為であり、私利私欲の為に猛威を振るう事は未来を含めて一度もない。

 

護られる者からしてみれば彼の闇は悪でなく光であり善である

 

 

 

 

 

だが時としてそのバランスは崩れてしまう

 

 

闇により葬られたトロール

それに対し

光により護られたハリー達

しかし彼らがハウルから感じ取るのは闇であり光ではない

 

 

 

 

 

故に矛盾しながらも共生し合う闇と光

 

それらは満ち溢れ

時に慈愛の神の如く()

時に暗黒の神の如く()

 

その内なる強さは拮抗し合いハウル・グレンストという人格は形成されている

 

 

 

 

 

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