「それにしても蛇ってホグワーツに持ち込んでいいの?」
ハーマイオニーはハウルにそう尋ねた。事実ホグワーツには一部の動物を持ち込んでいい。だがそれはフクロウ、猫、ヒキガエルに限り蛇は含まれない。
ハウルはクスッと笑いローブの中からバックの中からホグワーツ入学証に同封されていた必要なもののリストを取り出し、二人に見える様に持った。
***
〜その他必要品〜
・杖
・大鍋
・ガラス製またはクリスタル製の薬瓶
・望遠鏡
・真鍮製ものさし
・フクロウ、または猫、またはヒキガエルを持ってきてもよい。
***
「ここにフクロウ、または猫、またはヒキガエルを持ってきてもよい。って書いているだろ? 他の動物は持ってきては
ハウルの返事にハーマイオニーとネビルは唖然とした。確かに間違ってはいないし、違反もしてはいない。少なくともペットに関する記述はそれのみであり、彼の言う禁止には当てはまらない。つまり校則にでも書かれていない限りは問題ないはずである。少なくとも現段階では明記されていないため、彼には何の処分も下されないであろう。
「まぁ、既に校長に許可はとってある。俺は軽い疾患があってな。症状を抑えるために採れたての蛇の鱗がいる。その日の体調で調整しないといけないし、調合も難しく専門的だから自分で行うことで特別に許された。」
ハウルの疾患とは脳のオーバーロードである。彼には圧倒的な記憶能力が備わっているが、それを保存する力は並の人間とはさほど変わらない。つまり保存機能がショートし、激しい頭痛に苛まれるはめになる。
その為、オーバーロードした大脳皮質(記憶保存の部位)の痛みを和らげる薬が必要なのだ。
薬とはいえ所詮は毒であり、デリケートな脳に強大な負荷は追わせられない。そのために毒がごく僅かに含まれる蛇の鱗が必要なのである。そして彼はその専門家に教えを請い、完全に習得しており、自宅では常に自分が処方していた。
「そうだったんだ。そういえば君ってパーセルマウスだよね?さっき蛇を抑えてた。」
「あぁ、グレンスト家では稀にパーセルマウスを産まれ持った子がいるらしい。それより俺って何かおかしいのか?なんか人から凄く見られてる気がする。俺は父上の仕事柄、人と触れ合う機会がほとんどなかったんだ。どこか浮世離れしているところはないか?」
ハウルはダイアゴン横丁から常に疑問に思っていた事を尋ねた。この二人からは悪意や違和感などは感じなくなり、普通に会話をできている。彼女らになら自分のおかしな点を指摘してくれると考えたのだ。
ハーマイオニーとネビルはふとコンパートメントの外を見ると、多くの女子生徒がこっちのコンパートメントを見ていた。
その二人と目が合った瞬間に周りのコンパートメントにいる女子生徒が一斉に引っ込んだ。だが中にはハーマイオニーを睨んでいる生徒もいる。
「とっ特におかしい所はないわよ。」
(あれよね?人と触れ合う事がないから自分がハンサムな事わかってないのかしら?)
「そうだよ。普通だよ。」
(いつか分かるよね。説明するのもなんだし...。)
ハーマイオニーとネビルは無言の会話をし、あやふやな回答をした。
事実、ハウルは浮いているために孤立しているのではなく、整い過ぎた容姿に恐れ多く感じ誰も相席を申し出れなかっただけなのだ。
「そうか...2人はどこの寮に入りたいんだ?」
ハウルは引きつっている二人の顔を見て、話題を変えた。なぜならパーセルマウスの持ち主は闇の魔法使いによく見られるという迷信があるからである。
「私はグリフィンドールに入りたいわ。ダンブルドアもそこの出身だって聞いたの。でもレイブンクローもいいみたいね。」
ハウルはハーマイオニーにはレイブンクローが適している気がした。
レイブンクローには聡明な生徒が多いが、自己主張の強さから他人と馴れ合わない人が比較的多いという話を耳にしたことがあるからだ。
「ネビルはどうなんだ?」
ハウルはハーマイオニーの話を聞いた後にネビルに話を振った。だが彼は少し浮かない顔をしていた。
「ぼっ...僕はグリフィンドールがいいな。だけど僕は多分ハッフルパフだ。もしスリザリンなんかに入ったりしたら婆ちゃんに殺されちゃうよ。」
ネビルは両親が聖マンゴ病院に入院しており、祖母が彼の面倒を見ている。その影響を受けたか受けないか彼は鈍臭い部分が目立つ。
またハッフルパフは劣等生が多いとされているが、心優しい者が多いとされている。
それに対してスリザリンの評判はすこぶる悪い。姑息で目的の為には手段を選ばぬとされており、闇の魔法使いの大半はスリザリン出身であるからだ。
「だがハッフルパフもスリザリンも悪いわけじゃない。自分がどうあるかではないか?」
ハーマイオニーとネビルはハウルの答えに何も言い返せなくなる。確かにハッフルパフが劣等生が多く、スリザリンは悪に染まる者も多いかもしれない。
だがそれはあくまでも
「ハウルはどの寮に入りたいの?」
「何も考えてないかな...組み分け帽子が選んだ所に素直に入る。俺の母上は
「そうね、貴方にスリザリンは似合わないわ。」
「そうだよ。君の凄く優しいし、スリザリンだけはないよ。」
ハウルは自分の入る寮などどうでもよかった。己の過ごす環境にどんな特色があろうと自分さえブレなければさほど変わらない。
ハウルの母親の一族はレイブンクローの寮生が多い。魔法界は魔力、才と共に血筋の影響を多きく受けるため、一家全員が同じ寮出身という事も珍しくはなかった。
事実、ハウル・グレンストもレイブンクローの血筋を引いており、母親の一族は聡明な人物が多い。彼もその血筋を十分に受けている
そのままホグワーツでの生活、魔法界での話で3人は盛り上がっていると、まもなくホグワーツに到着するとアナウンスが鳴った。
「そろそろ各々のコンパートメントに戻った方がいいだろう。二人は荷物とかも置きっ放しのはずだ。それに俺も着替えたいしな。」
「そうね、ホグワーツで会いましょう。じゃあねハウル。」
「バイバイ...ハウル。」
「またな。ハーマイオニー、ネビル。」
ハウルは二人をそれぞれのコンパートメントに戻るように言い、一人になり汽車の車輪の音のみが聞こえる空間で彼はホグワーツの窓から見える景色を見て呟いた。
「俺は君達の為にどうするべきなのかな...。アイリス、ティンクス。
君たちが笑って過ごせる世界を作るには...。」
世界を混沌の渦に巻き込む事となるハウル・グレンスト...
だが当時の彼はまだ何も将来のビジョンなどはっきりしておらず、ただホグワーツでの生活を謳歌する事となる。
たが確実に時の歯車はゆっくりとそして静かに動き始めていた。