姉なるもの 二次創作 千夜ちゃんと夕君の夜の日課。

1 / 1
姉なるもの -仔人-

「それで、必死に逃げたんですけど…。もう本当に怖くて…!」

「それ、何処の犬かしら…?明日にでも私が隠密に…。」

「だめです!言うと思いました。」

そう言うと夕君は笑った。

思わず私も笑ってしまう。

考えはお見通しらしい。

私と夕君のやりとり。

時刻は日付が変わる少し前位。

私と夕君は寝室の布団の中にいた。

寝る前の姉と弟の会話。

私が夕君と出会ってから毎日の日課だ。

最初はヒトの世界の事や教養の会話。

私が質問する事には夕君なりの解釈で答えてくれた。

私はこの時間が堪らなく好きだ。

少しずつ人間らしい振舞いに慣れるにつれて、お互に今日の出来事を 報告する時間に変わっていった。

お互いに目の届かない処で起きた出来事を報告する。

ちなみに今日は夕君が野良犬に追いかけられたらしい。

夕君は犬が嫌いだ。

本当に可愛い…。

食べてしまいたいくらいに。

とは言え、夕君に手を出したんだから、その犬は殺さない程度に懲らしめておきましょう。

私は明日の予定を胸の中に留めた。

そしてその代わりのある感情が込み上げて来た。

「それじゃあ夕君…。そんな怖い思いをしたのだから、今日は姉ちゃんのお布団で一緒に寝ましょう?」

「え…!そんな!大丈夫ですよ!」

夕君が分かりやすく慌てる。

本当に可愛い…。

今日は夕君と同じ布団で寝ようと決めた。

理由は簡単。

夕君が可愛いから!

この布団と布団の僅かな隙間さえ煩わしく感じるから。

大丈夫…。交渉事は得意なんだから…。

「今日起こった嫌なことはその日のうちに癒すのが一番よ。ホラ…?」

私は自分の身体を少し奥に寄せ、夕君のスペースを作るり、そこをポンポンと手で叩き夕君を誘導する。

「いや…。でも、本当に…。大丈夫ですから。」

なかなかガードが固い。ならば…。

「酷いわ夕君…。お姉ちゃんの事嫌いになったのね…?」

押してだめなら引いてみる。泣き落とし。

「ち、違います!本当に!!!」

夕君がまたも分かりやすく慌てた。

ふふ…。計画通りね。もう一声!!

「なら…。お姉ちゃんと一緒に寝ましょ?お姉ちゃんにたまには甘えていいのよ?」

私は慈悲深い女神の様な笑みで夕君を見つめた。

悪魔だけど…。

私はこの言葉で夕君は観念すると思った。

照れながら私の元へ来る。

そして二人で仲良く眠る。

計画通り進むはずだった。

でも夕君の顔に雲がかかった。

予想外の反応に私の胸がズキンと疼くと。

呆気にとられてる私に気付かず夕君が呟いた。

 

「僕…。その…。ごめんなさい。甘え方が分からなくて…。」

そう言うと、夕君は笑みを浮かべた。

物凄く哀しい笑顔。

必死にネガティヴを押し込め感情を圧し殺している。

そんな表情。

私は自分の軽口に後悔した…。

もっと違う誘い方があったのでは無いか?

自分の欲求を優先して夕君を誘惑した。

慈悲深い神などを演じて…。

私は居ても立っても居られなくなり…。

両手を伸ばし、華奢で小柄の身体を優しく抱きしめた。

こんな小さな身体にどれだけの孤独を抱えていたのだろう?

夕君の両親は夕君が幼い頃に亡くなった。

それからは親戚の家を転々とし、ようやくたどり着いたこの場所の主 人は入院。

心を許せる肉親にが居ない日々。

彼は長い間孤独だったのだ。

彼のたった一つの言葉が、私にはずっしりと重く感じた。

私は夕君の本当の姉ではない。

私は悪魔だ。

けど、彼が望むなら私は彼の理想の姉で居続けよう。

そして、彼の幸福を阻むものを一つ残らず排除しよう。

神などに誓うでも無く。

自分自身に誓った。

私は……。悪魔だから。

 

どの位の時間が経っていたのだろう…。

夕君はいつの間にか寝息を立てていた。

表情はとても穏やかだった。

先程の哀しい顔では無い。

それをみると安心したのか私にも睡魔が来た。

今日はこのまま眠りに就く事にした。

私の胸に抱かれ眠る…。

彼の吐息を聴きながら…。

 

 




姉なるもの公式アカウントさんから許可を得て書いております!
小説家になろうで消されてしまった作品を入れれば3つ目です!
タイトルの理由は仔犬の様に千夜ちゃんに甘える夕君を書きたかったので、仔犬の仔に人で仔人です。
しかしながらまだ出会って間もない設定の夕君が完璧に心を許せるのだろうか?そんな疑問もあり、落ち着いた感じで終わりにしました。
少し物足りない気もしましたが。

あとは過去2作品は夕君目線だったので、千夜ちゃん目線で書きたかったのでした!
夕君の事しか考えていない千夜ちゃん。
堪りません。
これからもいっぱい書こうと思います!
姉なるもの のコミックは12月に発売という事で待ち遠しいです。

なるべく原作の世界観や設定を崩さないように書いておりますが、ご指摘等ございましたら是非よろしくお願いします。

椎菜 恋

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。