そして、鶴見留美は   作:さすらいガードマン

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 長くなりそうなので分けました。

 今週、できればもう一回投稿の予定です。だが、今、我が手には

『ゲーム、俺ガイル続』がああぁぁ……  予定は未定です(DETH?)


 まだ始まったとも言えないような一話の時点で読んで下さっている方、お気に入りを付けてくださっている方、感想をくださった方、本当に有難うございます。ペースは早くないかもしれませんが、頑張って書いていくのでよろしくお願いします。




そして、鶴見留美は彼と出逢う 中編① オリエンテーリング

 

「では、オリエンテーリング、スタート!」

 

 先生の掛け声と同時に、私達は五~六人で組んだ班、三クラス合わせて17班が一斉にスタートを切る。 と言っても、数組の男子の班が凄い勢いで走り出して行ったのを除けば、みんなそれほど急いではいない。

 

 説明によれば、今日のオリエンテーリングは、東京ドーム2つ分位の広さ(広いのか狭いのかよくわからないけど)の林の中に網目のように遊歩道が通っており、その中にチェックポイントはAからFの6箇所。地図に描かれた大きな岩、小川、橋などを目印にポイントを探して、そこに書いてある問題を解いて、チェックシートの回答欄に書き込む、というもの。

 制限時間90分。最低でも4箇所以上のチェックポイントを見つけるように、と言われている。逆に言えば、4箇所だけでも良いということだ。そう考えればそれほど焦ることも無いだろう。もちろん、全チェックポイントを回って早いタイムでゴールすれば順位は上がる。一応、5位までの班には豪華?賞品があるという事だし、さっき走って行った男子達はそれが目当てだろう。

 

 各班、それぞれに、大体の探すポイントの順番を決めて、後は雑談をしながらのんびりと歩いている。私達の班も周りと同じように、賑やかに談笑しながら最初のポイントに向かっていく。 先頭に仁美と森ちゃん。前とくっつくように二列目に由香と友ちゃん。そして、最後に私が、少し遅れてついて行く。

 

「……でさー、その時桜井センセがー……」

「……うそぉー。マジで? 馬っ鹿じゃん」

「それで……」

「…………」

 

 学校のこと、男の子のこと、さっきの高校生達のこと。話題はコロコロと変わり、誰かが面白いことを言えば、その度に歓声が上がる。

 私は、4人の会話に入れない。たとえ無視されても、自然に、普通に話しかけてみよう。そう思って口を開いて見ても、声が出ない――私を拒否する視線に怯えて、声がうまく出せない……。

 仕方なく、周りの風景を眺めつつ、みんなの話を聞くともなしに聞きながら歩いていた。

 

 周りが少し明るくなった。道のすぐ横をきれいな小川が流れていて、林が少し切れて、その向こうに山が見える。風景画みたいな場所。

 

 ……写真、一緒に撮ってもらえないかな……。

 

 本当は、この子達と写真って雰囲気じゃないのはわかってるけど、でも、友達との写真が1枚も無かったら、きっとお母さん、心配する。

 

 

 

 

 **********

 

 

 

 

「お母さん、私そろそろ行くよ」

 

「そ、忘れ物無い? ……あ、カメラ忘れてるわよ?」

 

「……いいよ別に、私、写真そんなに好きじゃないし」

 

「そんな事言わないの。友達との写真、たくさん撮っておいで。今は要らないって思ってても、後から良い思い出になるんだから。ほらっ」

 

 そう言ってお母さんは、私の手に小型のデジカメを押し付ける。それ以上何も言えず、それを受け取ってショルダーバッグのポケットに押し込む。

 

「じゃ、行くね」

 

「はい、行ってらっしゃい。楽しんでおいで。仁美ちゃん達とも仲良くね」

 

「……うん。 行ってきます」

 

 

 

 

 **********

 

 

 

 

「あ、ポイントA、あれじゃない?」

 

 森ちゃんが、小さな橋の袂にある立て看板のようなものを見つけて駆け寄る。

 

 白いペンキで塗られた立て看板は、風雨にさらされてか、あちこち塗装が禿げており、大分茶色っぽくなっている。そこに真新しい白い紙が、四隅をピンで留めて貼られていた。

 

「やっぱりそうだ。 えーと……」

 

『 Aの問題  現在の千葉県の、市・町・村は、合わせていくつでしょう 』

『 正解なら10点、十の位が合っていれば5点 』

 

「だってさ、仁美、わかる?」

 

「わっかるわけ無いじゃん」

 

「あたしも~。友ちゃんは、」

 

「その、私もわかんない、かな……」

 

 仁美達は、私をチラッと見るものの何も言わない。……ふと、友ちゃんと目が合ってしまった。

 

「あ、……留、……鶴見、は?」

 

 そう友ちゃんが言った途端、一瞬だけ空気が凍る。

 

「あ、ごめん……」

 

 友ちゃんは、失敗した、みたいな顔でシュンとしてしまう。

 

「いいよ、別に。……鶴見、わかる?」

 

 森ちゃんが、どうでもいいけど、という感じで聞いてくる。

 

「……五十いくつかって聞いたことあるけど……」

 

 私がそれだけ答えると、

 

「ふぅん……じゃぁさ、真ん中で55個にしとこっか。当たればラッキー」

 

 由香がそう言って、チェックシートのAの欄に、55と書き込む。

 

「じゃ、次行こ、次」

 

「次、Cだっけ」

 

「うん。C行ってからB」

 

 それからまた、さっきと同じように四人の少し後について、次のチェックポイントを目指して歩き出す。

 

……なんだか、今のでますます、写真、頼みにくくなっちゃったな……。

 

 首からストラップで下げている小さなデジカメが今日は重く感じる。ちょうどお腹のあたりでなんだか寂しそうぶら下がっているカメラを右手でそっと撫で、小さくため息をついた。

 

 

 

 

 そうして、次のポイントを探しているとまた、木が少なくて少し開けたところに出た。するとそこで、さっきの高校生たちがみんなに声を掛けていた。

 

「頑張れ!」

 

「ゴールで待ってるから!」

 

「まだたっぷり時間あるよーん」

 

 彼らに気づくと、仁美達はきゃあきゃあ言いながら話しかける。

 

「こんにちはー。お兄さん達もオリエンテーリングやってるんですかぁ」

 

「いや、僕たちはこのまま登って、料理の準備とかかな。後は、君たちの応援」

 

 森ちゃんが話しかけたのをきっかけに、私達と高校生達は混ざって一緒に歩きだす。

 

「へー、いま、そーゆーのが流行ってるんだー」

 

「そのワンピ、すっごいカッコイイです~」

 

「んーこれ?、ららぽのバーゲンよ。 あーし、違うもん買いに行った時にたまたま見つけてさー」

 

「それにしても、小学生なのにみんなおしゃれだよね~。お洋服とか、自分で選ぶの?」

 

「それはだいたいママが……、コーデは自分で……」

 

「とべさんは、ずっとサッカーやってるんですか~」

 

「んんー、おれさー、小学校の頃はバスケやってたんよー。で、中学入ってから……」

 

「ええっ! 男の子? ……あ、ごめんなさい。その、びっくりしちゃって……」

 

「あはは、よく言われちゃうんだけどね……」

 

 みんな、かっこいい高校生達と話せるのが嬉しくて仕方ないらしく、大騒ぎだ。その後ろを私がついて歩き、一番後ろから、「寝不足男」と「黒髪超美人」が並んで静かについてくる。

 

 ……高校生たちが居る今なら、「写真撮ろう」って言っても変じゃないかな? なんて考えて、カメラを持ったけど、やっぱり話に割り込めない。

 

「あ、チェック・ポイント、この辺だよ」

 

 お団子あたまさんと先頭を歩いていた由香がチェックシート片手に立ち止まる。

 

「せっかくだから、みなさんも一緒に探しましょうよ~」

 

 仁美が、葉山さんにお願いすると、彼は一瞬だけ迷って、

 

「じゃあ、ここのだけ手伝うよ。でも、他のみんなには内緒な?」

 

「「はーい」」

 

 四人が元気よく返事をして、このあたりにあるはずのチェックポイントをみんなで探すことになった。

 

 

 

 何となくみんなと少し離れて看板を探していると、いつの間にかすぐ横に葉山さんが来ていて、私に声をかけてきた。

 

「チェックポイント、見つかった?」

 

「……いいえ」

 

 急になんだろうと困惑していると、彼はにこりと笑って言った。

 

「そっか。じゃあみんなで探そう。 名前は?」

 

「鶴見、留美」

 

「俺は葉山隼人、よろしくね。あっちの方とか隠れてそうじゃない?」

 

 そう言ってみんなのいる方を指差す。私は彼に背中を押され、四人の真ん中に連れて行かれた。するとそれまで和やかだった4人に、ピリッとした空気が走る。

 森ちゃんと由香が目を見合わせて何か言いたそうにして、でも何も言わない。仁美は、「何でこっちに来るの?」みたいな視線を私に向けてくる。友ちゃんは、周りをキョロキョロみて、なんだかオロオロしている。

 

「さ、ここには無いみたいだから、もう少し向こうかな?」

 

 また皆でポイントを探し始める。仁美や森ちゃんのすぐ隣で歩いていると、ひどく居心地が悪い空気だ。「一緒に写真撮って」なんてとても言い出せないまま、いつの間にかみんなの輪からはみ出てしまう。

 

……結局言えなかったな……。どうしよう、お母さんに、写真……。カメラをきゅっと掴む。

 

「隼人くーん。チェックポイントって、これじゃね?」

 

「きっとそーだよ。とべっち、やったねー」

 

 道から少し離れた所を探してくれていた、とべさん?と、眼鏡ボブカットの女の子がポイントを見つけてくれたようだ。

 

 

 

「「ありがとうございました!」」

 

「いーよいーよ。それじゃ、ゴールで待ってるから、みんな、頑張って!」

 

 お団子頭さんに励まされ、私達は次のポイントを探しに行く。高校生たちはゆっくりと上へと向かう広い道を登っていった。

 

 

 

 どうにか全てのチェックポイントをみつけて、私達の班がゴールしたのは終了10分前だった。

 まだゴールしてない班もあるようだが、早めについた班は、木陰の芝生に寝転がったり、古タイヤと丸太で作られた遊具で遊んでいたりしていたようだ。

 程なく全部の班がゴールする。

 

「全員揃いましたねー。では、こちらのテーブルに、班ごとに席について下さい。今から順番にお弁当を配ります」

 

 係の先生や、高校生達が、紙の箱入りのお弁当とペットボトルのお茶をテキパキとそれぞれのテーブルに配っていく。それから、各テーブルに一つずつ、きれいに剥いて切り分けられた瑞々しい梨の載ったお皿も。かすかに甘い香りが鼻をくすぐる。

 

「この梨は、みんなのために、ボランティアのお兄さん、お姉さんたちがむいてくれました」

 

「「ありがとうございまーす」」

 

 よく見ると、梨なのに、「りんごのうさぎ」みたいに耳の形に皮がついてるものや、少し歪な形をしているものもあった。

 

 うさぎの形の梨を食べてみる。皮の付いているそれは、少しだけ苦くて、でもじんわりと甘くて……ちょっとだけ心が落ち着いた。

 

 





「おい、テメェ、いつまで俺のルミルミに悲しい思いさせとくんじゃいゴルァ、」

と、いうみなさんすいませんすいません。もうしばらく留美は切ない思いをしてしまいます。

 だが、我々には、比企谷八幡がいる! 八幡さんはやってくれる(おとこ)やでぇ~(何弁?)

 ということで、次回、カレー編(仮)です。
 

 ちなみに、問題Aの答えは、54市町村(2016現在)です。

10月29日 誤字修正しました。


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