東方変守録   作:ほのりん

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前書き~

今回の話は榛奈sideです
魔理沙の榛奈への疑問
榛奈が強くなろうとした理由
そんなお話になります

では、ゆっくりしていってね


第18話『2人の溝が埋まった日』

[紅魔館 門前]

 

 

 朝の紅魔館の門前

 そこにはいつも通り、仕事中のはずなのに寝ている門番がいた

 そこへ、1人の金髪少女が箒に乗ってやってきた

 

魔「っと、よっ!美鈴」

 

美「...Zzz......」

 

魔「って朝っぱらからまた寝てるのかよ。まぁいいか。それじゃ、お邪魔するぜ~」

 

 本来なら門番が開けるはずの門をまるで勝手知ったる自分の家のように開け、中にズカズカと入っていく魔理沙

 

美「...Zzz......」

 

 そして、門を勝手に開けられ、そのうえ入っていかれても起きない美鈴

 

 昨日から繰り広げられている紅魔館の光景であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

榛奈side

 

[紅魔館 廊下→エントランス]

 

 

榛「なーかーなーいーやーくそくしーた(泣かない約束した)限りなく続く未来に♪みーぎーてーにー(右手に)握りしーめーた破壊された「(モノ)」を~♪めーいーろーにー(迷路に)迷いこーんーで彷徨い続けるフロンティア♪しーんーくーいーろぉーにそーまーる(蒼黒色に染まる)己の翼よ~♪」

 

 皆さんおはようございます!

 現在運動や魔法を禁止されて図書館に着くまで暇なのでとりあえず歌っています榛奈です!

 ちなみに周りには誰もいません

 妖精メイドですらいませんよ?

 いたら歌ってません。恥ずかしいですし

 そういえば私が2日間寝込んでいる間に紅魔館の修理が完了していたみたいです

 廊下がいつも通り綺麗です

 それと、今日もまた魔理沙姉が来るそうです

 何時来るんでしょうかね

 とりあえず私は図書館に行く~♪

 

榛「くるくる~時計の針~♪ぐるぐる~頭回る~♪だってーつぶら目玉 二つしかないのに三本の針なんてちんぷんかん♪」

 

ガチャ

 

榛「次々~問題出る~♪まだまだ~授業続く~♪凍る~部屋の中ひんやりした温度も時間も気にせずゆっくりしていってね!」

 

?「ぷっくく――」

 

榛「誰!?」

 

 ふいに笑い声が聞こえ、聞こえた方向――玄関の扉へ顔を向ける

 

魔「あ、いやー、その...... 悪かったぜ☆」

 

 そこには悪かったと言う割に悪びれもなさそうに笑う魔理沙姉の姿があった

 

榛「ま、まま、ま......!」

 

魔「っておい榛奈?大丈夫か?」

 

 え?見られてた......?聞かれてた......?

 見知らぬ誰かじゃない、その逆の魔理沙姉に......?

 あは......

 あはは......

 はは......

 は......

 ......

 

榛「~~っ/// 魔理沙姉のバカー!!///」

 

【星符】『スターダストシャワー』

 

魔「え!?うわっ!ちょ!」

 

 私は思わず弾幕を、それもスペカを発動していた

 そして、いきなりの事で驚きながらも箒に乗りつつ避ける魔理沙姉

 

榛「避けるな!バカ姉!」

 

魔「いやいやいや、当たったら嫌だから避けるぜ!それとバカじゃないぜ!」

 

榛「とにかく大人しく当たってさっきの記憶をこの世から消せぇぇぇ!!」

 

魔「お断りするぜぇぇぇ!!」

 

 そんな会話をしながらも弾幕を撃ち続ける私と避け続ける魔理沙姉

 次第にエントランスが壊れていくが気にせずどんどん撃つ

 

?「ちょっと。榛奈、魔理沙」

 

榛「当たれ!!」

 

魔「嫌だぜ!!」

 

?「ちょっと?」

 

榛「当たらんかこのバカ姉が!!」

 

魔「当たらんしバカじゃないぜ!」

 

?「ねぇ!」

 

 さっきから誰かが私を呼んでる気もするがそんなのに構っている暇はない

 とにかく魔理沙姉の記憶が定着する前にさっさと当てて記憶を消さなければ......!

 

榛「こうなったらSLB(スタ-ライトバスタ-)で......」

 

?「...貴女達!いい加減にしなさい!!」

 

榛「いだっ!?」

 

魔「いづっ!?」

 

 急に私と魔理沙姉の頭を打撃的な痛覚が襲い、思わずお互いに動きを止めてしまった

 

?「やっと止まったわね」

 

榛「あ、咲夜さん......」

 

 声のした方向を見ると、そこには咲夜さんがいた

 

魔「いつつ...... なんで殴るんだぜ!」

 

咲「周りをよく見てみなさい」

 

 そう言われ周りを見ると一昨日の図書館の悲劇並の酷さがありました

 

榛「あ、あはは......」

 

魔「おぉ、こりゃ派手にやらかしたなぁ」

 

咲「...これ、誰が修理すると思ってるの?」

 

 咲夜さんの言葉に怒気が見え隠れしている

 

 やばい、こいつぁやばい

 咲夜さんを怒らせちまった

 さて、どうしよう......

 

魔「とりあえず私は逃げるぜ!」

 

 魔理沙姉はそう言いながら逃げようとした

 

榛「あっこら魔理沙姉!私を置いてくな!」

 

 私も続けて箒に乗り逃げようとした

 

咲「させないわよ」

 

 咲夜さんがそう言った瞬間、私達から箒が無くなった

 

榛「...あれ?」

 

 ......ご丁寧に私は地面に下ろされて

 

魔「いっつぅ......!!」

 

 だが魔理沙姉は空中にいた為、いきなり箒が無くなったことに対応しきれず落ちてしまった

 

咲「まったく...... で、榛奈?」

 

榛「は、はい!」

 

 急いで咲夜さんの方へ身体を向ける

 

咲「朝言ったこと、もう忘れたのかしら?」

 

榛「ひっ......!」

 

 咲夜さんが笑みを浮べ、しかし目は笑っていない顔で訊いてくる

 それが咲夜さんの笑顔を余計に怖くさせていて

 

榛「いいえわわ忘れてないですすすみません!!」

 

 私は反射的に土下座をした

 

 何これ......

 昨日のレミリア様より怖いよ......

 1度だけ見たことがある狂気に満ちたフラン様より怖い気がするよ......

 

咲「はぁ...... 仕方ないわね。さっきのは見逃してあげるわ」

 

榛「...え?」

 

 予想外の言葉が出てきて思わず顔を上げ咲夜さんの方を見た

 

咲「見逃す、と言ったのよ。何?嫌なの?」

 

榛「いいえいえいえありがとうございます!!」

 

 再び私は土下座した

 

咲「で、それで2人とも。この惨状はどうする気?」

 

榛「あ......」

 

魔「どうするって言われてもなぁ」

 

 私達は再び酷い状態になったエントランスを見渡す

 紅い塗装が剥がれところどころ白い岩が見えていたり、欠けていたりする床と壁と天井

 絨毯は禿げ、階段の手すりは折れ、大きなシャンデリアは落ちかけ、周りの照明も使えない状態

 誰がどう見ても酷い惨状である

 逆にこんなにやってしまった私って凄くない?

 なんて場違いなことを思いつつ、私がやるしかないんだろうなぁと思う

 

咲「2人で修理しなさい」

 

魔「はぁ!?」

 

咲「貴女達が暴れたからこうなったのよ?責任くらい取りなさい」

 

魔「っく、分かったぜ。やればいいんだろ?簡単だぜ」

 

咲「本当に簡単だといいわね。榛奈、魔理沙に修理の仕方教えてあげなさい。材料はいつもの場所よ」

 

榛「はい。わかりました」

 

 魔理沙姉?簡単だという言葉、覚えとけよ?

 

 

 

 

 

~少女準備中~

 

 

 

 

 

魔「それで、まずはどうすればいいんだ?」

 

榛「まずは壁かな。塗装の乾きが一番時間がかかるから。いつもは咲夜さんが時間を速めるから大丈夫なんだけどね」

 

魔「それじゃ、さっさとこの趣味の悪いペンキを塗っちまおうぜ」

 

 そう言いながら魔理沙姉はペンキの入った缶とペンキを塗るためのハケを持った

 

榛「それはまだだよ」

 

魔「え?なんでだぜ?」

 

榛「ほらこれ」

 

 私はそう言いながら壁の一部を指した

 

魔「ん?」

 

榛「壁に欠けてるところあるでしょ?そういうのがあちこちにあるから、まずそれを埋めないと。ということでこっちね?」

 

 私は魔理沙姉にある物の入った袋と道具を渡した

 

魔「...これらは?」

 

榛「それは壁用の粘土。そっちは広げるためのコテと置くためのコテ台。それらで欠けたとこを埋めて、段差が一切無いように仕上げる。それがとりあえず最初の修理だよ。魔理沙姉はそれで壁の欠けたとこ埋めて。私は柱とかの部分を修理するから」

 

魔「分かったぜ」

 

 そして、私達はそれぞれ作業に取り掛かった

 

 のだが......

 

榛「あ、魔理沙姉。ここ隙間あるよ。それにほんの僅かに段差も」

 

魔「え?......細かっ!?」

 

榛「簡単だって言ってたんだから、これくらい出来なきゃ」

 

魔「ならそういうお前の方はどうなんだぜ......ってすげぇ。凸凹してるとこまで出来てるぜ......」

 

榛「何度もやってきてることだからね。これくらい出来なきゃ」

 

魔「くそっ、こっちだってやってやるぜ!」

 

榛「ファイトだよ!」

 

 流石に建築初心者な魔理沙姉は完璧には出来ず、ところどころ私が教えていた

 そして、魔理沙姉が苦戦してる間に私は階段、手すり、シャンデリア、照明を直した

 といってもシャンデリアや照明は魔法で直してたけど

 ちなみに途中で妖精メイドの1人が来て

 

妖精メイド「あの、私もお手伝いしましょうか?」

 

榛「ううん。貴女は自分のことをやってて。これは私と魔理沙姉がやっちゃったことなんだから。その気持ちだけ受け取っておくね」

 

妖精メイド「はい!お二人とも、頑張ってください!」

 

榛「うん。ありがとう。頑張る!」

 

魔「頑張るぜ!」

 

 なんてやり取りもあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから魔理沙姉は壁と格闘しているとコツを掴んだのか一気にうまくなっていき、私も安心して他の修理をした

 その間、しばらく沈黙が続いた頃

 

魔「...なぁ榛奈」

 

榛「なぁに?」

 

魔「訊きたかったことがあるんだが」

 

榛「うん」

 

魔「榛奈はどうして此処に住んでるんだ?」

 

榛「...人里を出た後、食料が取れなくてね。倒れてたところを運良く美鈴に見つかって、レミリア様が行き場が無いならってことで住まわせてくれたんだよ」

 

魔「なら、なんで人里を出たんだ?家出するなら他にもあっただろ?慧音の家とかばあちゃんの家とか」

 

榛「それ、魔理沙姉にも言えるよね」

 

 というか慧音の家だと強制的に家出終わるよ

 

魔「私は魔法使いになるという夢があったからな。人里じゃ駄目だぜ。って話を逸らすな」

 

榛「別に逸らしたわけじゃないよ」

 

魔「で、どうしてだ?」

 

 どうして、か......

 答えはいつも思ってる事だけどね

 

榛「...強くなりたかった」

 

魔「なんで強くなりたかったんだ?」

 

榛「幻想郷を見て回りたかったから」

 

 紅魔館はもちろん。幽霊の沢山いる屋敷、永遠を過ごすものが住んでいる屋敷、幻想となった物が流れ着く場所、様々な妖や神の住む山、天人の住む世界、危険な妖怪が住む世界、他にもいろいろと

 東方とか関係なしに、見たかったから

 

魔「それなら私が連れていってやったのに......」

 

榛「それは思いついたんだけどね」

 

魔「思いついてたのか」

 

榛「うん。魔理沙姉がそのうち人里に帰ってくるって分かってたから」

 

魔「え?分かってたって......」

 

 実のところを言うと、原作知識無くても分かってしまった

 

榛「今だから言うけど、魔理沙姉が私に魔法使いになりたいって相談してきた日があったでしょ?私、その時点で魔理沙姉が将来的にお父さんから勘当を言い渡されて、人里を出ていくって分かってたんだ。まぁ魔理沙姉がお父さんにそのことを話したら、だけどね」

 

魔「あの頃って家出する1年以上前だぞ?何でそんなことが分かったんだぜ?」

 

榛「勘だよ」

 

 正確には、2人の性格や行動を見た結果のだけどね

 

魔「勘ってお前な......」

 

榛「私の勘がよく当たるの知ってるでしょ?」

 

魔「まぁな。それで、なんで私が大丈夫だと分かってたのに強くなりたくて人里を出たんだ?私に頼んで幻想郷を見て回るってこと思いついていたのに」

 

榛「...どうしてだっけ?」

 

魔「おいおい......」

 

 どうしてなんだっけ

 頼めば魔理沙姉は快く幻想郷の各地に連れていってくれただろう

 一部はそれぞれの異変が始まり、終わるまで行けないだろうけど

 でも、それじゃダメだったんだ

 ダメって気持ちがあったはずなんだ

 でも、なんでダメだったんだ?

 異変解決に参加出来ないから?

 その後の宴会に参加出来ないから?

 魔理沙姉の隣に立てないから?

 

 ...あっ......

 

榛「...ふふっ」

 

魔「いきなり笑い出してどうしたんだよ」

 

榛「なんでもないよ♪ただ、疑問が解消されただけ」

 

 そうか......

 そうだったんだ......

 私が強くなりたかった理由

 さっきの疑問全てだったんだ

 魔理沙姉と一緒に異変を解決したかった

 魔理沙姉と一緒に宴会に参加したかった

 魔理沙姉に連れていってもらうんじゃない

 魔理沙姉と一緒に見て回りたかった

 魔理沙姉の隣に居たかった

 対等な立場に居たかったんだ

 

 なんだ、簡単なことじゃないか

 それに私、すっかり魔理沙姉のこと、“姉”として認識してたんだ

 前世があって、実際には魔理沙姉より生きてたのにね

 ...私も、“妹”になったんだな

 

榛「ねぇ、魔理沙姉」

 

魔「なんだ?」

 

榛「これからもよろしくね」

 

魔「な、なんだよ改まって......///」

 

榛「ふふっ、なんでもない♪」

 

魔「...こっちこそ、よろしくな」

 

榛「~~!うん!!よろしく!魔理沙姉!」

 

魔「えっ!?ちょ、抱き着くなだぜ~!///」

 

 

 

 

 こうして私は、魔理沙姉との妙な溝を埋め、一つの疑問を解消しながらエントランスを修理した




後書き~

別に最初の方で語るなんて言ってないんだからね!

...はい。謎のツンデレです
序盤、榛奈歌ってましたね
2曲歌ってましたが、知ってる方も多いと思われる曲を選びました
特に2曲目は東方ファンで知らない人は少ないと思います
一応曲名ですが、1曲目はU.N.オーエンは彼女なのか?のアレンジ曲『孤独月』、2曲目はおてんば恋娘のアレンジ曲『チルノのパーフェクトさんすう教室』です
もし知らなかったら、是非聴いてみてくださいね

それでは次回もゆっくりしていってね!

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