東方変守録   作:ほのりん

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前書き~

皆さんお久しぶりです!ほのりんです!
いや~、前の投稿からまた日が空いてしまいましたね......
それでも毎日少しずつ書いてはいたんですよ!
でも、考えつかなかったり、受験だったり......
うん。言い訳ですね。すみません

そういえばですが、前期受験、不合格しました
そして後期受験を受け、先日合格発表日だったのですが......
見事!合格してました!
いやぁ、遅い合格でした!
これで晴れて4月から高校生!
青春ですよ!青春!
本当に青春出来るかは不明ですが

そんなこんなで今回は1万文字超!
シリアスあり!意味不明あり!オリ?キャラあり!
それでもいい方はゆっくりしていってね!


第25話『結局お前は誰なんだよ』

榛奈side

 

[紅魔館 エントランス]

 

 

榛「ところで茶葉は何にするッ!?本日のオススメはアイスティーで飲むのがオススメのアールグレイだよッ!」

 

霊「じゃあそれでいいわ。特に希望は無いもの」

 

 私達はそう言いながら互いに弾幕を撃ち合う

 ちなみに場所はそのままエントランス

 外は雨で大荒れだし、館の中で広い場所といえば大広間と図書館と地下室

 そのうち図書館と地下室は今回の計画で使ってるから駄目で、大広間は遠いから嫌って霊夢が

 ということでそれなりに広くて移動の必要が無いエントランスでやることにした

 え、壁に傷とか大丈夫かって?

 大丈夫です!私が自分の能力を魔法と組み合わせて周りをコーティングしてあるのでちょっとやそっとじゃ壊れないようになってます!

 しかも効力は術が壊されるまで!

 つまり、鬼並みの力で無理矢理壊されるか、術を解除出来る人が解除するまで効力が続くということ!

 そして時間も無限!魔力の補給もいらない!

 例えこの館が廃墟になろうが術がある限り劣化もしません!

 ...ホントこれ、紅霧異変の時使えればよかったな......

 まぁこの魔法を見つけた、というより作ったのはつい最近で、あの頃は無かったからかけようもないんだけどね

 ただ、代償もそれなりにありまして......

 一昨日のお昼頃、その魔法を館全体にかけたんだけど......

 その後疲れからか強烈な睡魔に襲われ、まわりにはそれを誤魔化しながら部屋で勉強するって言って、昼寝感覚で部屋で寝たら、そのまま朝まで爆睡コースでした

 途中、夕食時に咲夜さんが呼びに来たそうですが、寝てて起きなかったから、そのままにしたって言われた時は、それほど体力やら精神力やらを消耗する魔法なんだなぁと驚きましたよ

 ちなみにこの魔法のこと、そして館全体にかけたことは師匠にしか教えてません

 なので他の皆さんから見たら、一昨日の私は何故か疲れて寝てたんでしょうね

 昨日1日何もしなかったら完全回復しましたけど

 ホント、私は魔力が少ない割に回復力は多いんだなぁ

 今度は魔力を増やそう

 個人の保有魔力は生まれ付き限界が決まってるって昔師匠に教えてもらったけど、私の保有魔力はまだ増やせるはず!

 更には私の保有魔力は既に限界値だって言われてしまったけど希望は捨てないぜ!

 

 っと頭の中で話が大幅にズレた

 とにかく、この弾幕ごっこでは館が傷つくことはない

 そしてうちのお嬢様達が本気の喧嘩とかしたり、大妖怪が少し力出して攻撃して来たりしない限り大丈夫なはずだ

 

 っと危ない危ない。思考に浸りすぎた

 後ちょっとで弾幕に当たるところだったよ

 

霊「随分と余裕そうね。さっきまで何か考え事してたみたいだけど?」

 

榛「ちょっとねッ!魔理沙姉がフラン様との戦いで館を壊すことはないだろうなって思っただけだよッ!後余裕はないんだけどねッ!さっきからギリギリでしか躱せないんだけどッ!少しは攻撃を緩めてくれないかな!?私にこの難易度はキツイよッ!」

 

 といいつつ避けることの出来る私は意外と出来るやつなのかもしれない

 いや通常弾でこれなんだからスペカ使われたらおしまいだな

 

霊「フランって確かあのレ...レ......レプリカの妹だったわよね?」

 

榛「レミリアお嬢様!“レ”と“リ”しかあってないよ!フラン様がレミリア様の妹って意味ならあってるけどッ!後攻撃は緩めてくれないんだねッ!」

 

 あの、怖い怖い

 弾幕ごっこって楽しいものだって聞いてたけど、難易度が自分に合わないと恐怖しか感じないな

 というかこの霊夢を美鈴と咲夜さんとレミリア様は相手にしたんだよな......

 あれ?実は本当に魔理沙姉に手加減されてた?

 おぅまぃがぁぁ......

 

霊「確か吸血鬼って雨の中を歩けないんだったわよね?もしかして今日のこの雨ってそのフランってやつを閉じ込めるためのもの?」

 

 おぅ......

 霊夢は鋭いなぁ

 ま、普通?はこう考えるだろうね

 原作でもそのために雨降らせてたし

 ただ、今回のは特に関係ないんだよね

 ただアイディアとして使ってただけで

 

霊「あぁ違うわね。どっちかっていうと閉じ込めてるように見せるためにやってる感があるわ」

 

榛「おいちょっとまて!貴女人間だよな!?どっかのサトリ妖怪みたく心を読んでないよな!?何!?勘なの!?お得意の勘なの!?後私の意見無視しないで!」

 

 勿論サトリ妖怪とは小五ロリで知られるあの方

 というか本当に霊夢は凄い

 勘っていうのは五感では感じ取れないものを感じ取る第六感とも言うけど、ここまでくると能力とも言えてくる

 いや、私も結構勘が鋭くなる時があるけど......

 

霊「は?何言ってんの?私が人間かなんてそんなの決まってるじゃない。心も読んでないわよ。ま、貴女の言う通り勘よ。後その意見は聞き入れられないわ」

 

榛「そーなのかーってうわッ!」

 

 やっぱ巫山戯てると駄目だな。集中出来ん

 でも集中したらしたで私は必要最低限のこと以外話さなくなるし......

 弾幕ごっこってその最中で交わす会話も楽しむ要素だと思うんだよね

 

 結論、私に集中した弾幕ごっこは無理だ

 

霊「で、魔理沙はフランのとこに行ったってわけね。貴女はその案内人」

 

榛「まぁその辺は勘に頼らなくても洞察力の高い人なら分かるね。あ、茶菓子は何がいい?まぁクッキーしかないけど、他のを希望なら作るよ」

 

霊「...ねぇ、ホントはこの弾幕余裕なんでしょ?」

 

榛「え?いや余裕じゃないよ?さっきから必死に避けてるから」

 

 だから別に狙ってないのにグレイズ(かすり)しまくってるよ

 

霊「ふぅん......」

 

 霊夢はそう言うと弾幕の密度を更に上げてくる

 通常弾幕なのにその光景は綺麗なんだけど、とてもその光景を綺麗だなぁって見てる余裕は私にはないんだけど......

 あぁもうダレカタスケテー!

 

榛「このままじゃ負けるな。仕方ない、【魔符】『ラクトガール ~ 少女密室』!」

 

 『ヴワル魔法図書館』の火水木金土に月属性に日属性を加えた七属性だ!

 これぐらい巫女なら避けれるだろ!

 いや当たって欲しいんだけどさ!

 

 そして難なく避けつつ弾幕を当ててくる霊夢を見てショックを受けたよ、うん......

 いや避けれるって思ってたけどさ......

 でもさ......

 

榛「やっぱりそうやって避けてるのを見てるとショックを受けるんだよ!うにゃあ!」

 

霊「はぁッ!?」

 

 私はスペルの弾幕密度を上げる

 それはもう私が避ける立場にいれば卒倒しそうな程に

 勿論だがきちんと避けれるようにしているし、それなりに美しい

 それがスペルカードルールだからね

 

霊「アンタ無茶するわねッ!また倒れても知らないわよッ!」

 

榛「あの日は魔理沙姉と弾幕ごっこで魔力を多く使った後に一気に膨大な魔力を使ったせいだから今日は大丈夫だよ!それより自分の心配したらどう!?」

 

 ここで被弾一回...... いやボム一つでもいいから潰したい

 霊夢なら避けれるなら避けて、避けれないならスペカを使うと思うから、使わせるように弾幕を配置して、なんとか......!

 

 そう思っている間にも時間は過ぎていく

 スペルカードブレイクまであと少ししかない

 これでスペカか被弾、どちらも削れなかったら私の勝率は大いに下がる

 霊夢相手で最初から勝率が低いっていうのに、これ以上下げられたら私はどうやって貴女に勝てというのかね

 そんなことを思ってる間にも霊夢は避けつつ、カードを取り......出したッ!

 

霊「チッ!【霊符】『夢想封印』!」

 

榛「その言葉を待ってましたぁ!」

 

 思わず口に出すほど待ってましたよ夢想封印さん!

 私がどれだけ君のことを待っていたか分かるかい!?

 それはもう心がぴょんぴょんするくらいだよ!

 いや癒されてはないけど!

 

 そう思ってる間に夢想封印で出てきた七色の弾が近づいてくる

 確かこれって追尾系だったよな

 ってことはここで避けても当たるってことか

 レミリア様やフラン様みたいに霧化出来れば当たり判定は出ないんだけど......

 そういう能力でもない限り人間にそんなこと出来るわけないので、ここは素直に当たって残り少ない体力ゲージを削り切ります

 

ポンッ

 

 あ、やっぱり少し痛いね

 

霊「まさか最初から使わされるなんてね......」

 

榛「そりゃあの異変以来、修行をしてきたからな。どっかの修行しない巫女さんも修行すればいいのに」

 

霊「その巫女は努力するのがめんどくさいのよ」

 

 

 

榛「それじゃあ君はいつか妖怪に喰われて惨めにこの世から死ぬんだね」

 

 

 

 一瞬、その言葉が自分の口から出ていることに気づくのに時間を要した

 それ気づいた時にはもう霊夢の顔は険しくなっていた

 

霊「...喧嘩売ってんの?」

 

榛「巫女に喧嘩を売るなんて命知らずにも程があるよ。まぁ、修行してない巫女なんかに負けるとは思わないけど」

 

 なんなんだ?口が勝手に喋る

 まるで私じゃない別の誰かが操ってるかのようだ

 

霊「そう。よく分かったわ。アンタが私に喧嘩を売ってるってことが」

 

 霊夢はそう言いながら御幣を突きつけてくる

 その顔には怒りが表れていて、その顔が怖く感じ、私のヘタレ神経が身体に土下座するよう指示を出しているのに身体が言う事を聞かない

 それどころか勝手に身体が動き、ある1枚のスペカを構える

 

榛「このスペカ、受けてみる?これを避けきれたなら君に修行は必要ないだろうね」

 

霊「ふんっ、いいわ。やってやるわよ。私の力を思い知らせてやるわ」

 

榛「...ふふっ、避けて見せてね。今代の巫女さん。【人妖】『悪魔に取り憑かれし者とそれを殺す者』」

 

 ダメだ!そのスペカは威力に問題が!

 そう思って止めようとするが、身体は、力は勝手に暴れ出す

 私の中の魔力が、霊力が、私の意識とは無関係に毒々しい紫、血のような赤、禍々しい黒の弾を作り、霊夢に襲いかかる

 どれだけ止めようとしても身体は全く動かず、まるで意識だけが取り残されたような。そんな気分にさえなる

 どうしたら止められる?どうしたら霊夢を傷つけずに済む?

 そう思ってる間にも弾幕は霊夢へ襲いかかる

 霊夢はそれを避けていくが、先ほどのラクトガールとは圧倒的密度の差があり、苦戦しているようだ

 一見すれば...... いや、よく見なければ隙間すら見えないほど弾幕同士の間隔が狭く、多く、速い

 そんな弾幕を見て私はこんな弾幕を作れたのかと驚くが、霊夢の短い悲鳴で意識が戻る

 

霊「ッ!?」

 

 霊夢の顔が苦痛の色に染まり、左の肩から赤い液体が垂れ、袖を赤く染める

 その様子から弾が霊夢の腕を掠ったのだろう

 一瞬こちらを睨みつけてきたが、余裕が無いのかすぐに回避行動に戻った

 

 この弾幕の弾は威力が強い

 試したことはないが、普通の人間に当たれば意識が飛び、掠れば皮膚を裂き、打ちどころが悪ければ骨が折れ、死に至るだろう

 本来ならば弾幕ごっこ用に威力を調節しなければならないが、どうしてもこのスペカは今発動してる威力より弱くならない

 だから使えないと思い、今までポケットの奥に閉まい、肌身離さず持っていた

 それはどこかに置いておくと誰かが使いそうで怖かったのもあるが、一番の理由は誰にも見られたくなかったから

 そもそもとして、どうして私はあのカードを作ってしまったのだろう

 ただ初めてスペカを作る時、白紙のカードを持ってボーっとしてたら出来ていたのだが、不思議と嬉しくはなかった

 むしろその弾幕、名前、そして雰囲気

 その3つとも私には好きになれないし、なりたくもない

 ならば一層の事、捨ててしまえば良かったなんて、霊夢の顔を見てるとそう思えてきた

 でも、きっと私はこれを捨てることは出来ないんだろうなって無意識に思えてしまう

 だってこれは私のスペカなんだ。きっと何か私に関連していて、なのに私にはそれが何なのか分からない

 だからそれが何なのか分かった時、その時初めてこのスペカの意味を理解するんだろうし、それまでは捨てれないだろうな

 

霊「アンタ、弾幕の威力を間違えてるでしょ!」

 

榛「そうでもないよ。これでも威力は最低にしてあるからね」

 

 少しだけ話せる余裕が出来たのか霊夢が怒鳴る

 確かに私の口から出た通り威力は最低だが、あくまでこのスペカ基準だ

 スペルカードルールの基準では強すぎる

 

霊「アンタ、ルール分かってる?!」

 

榛「抜け道が必要で、美しく、だっけ。抜け道もあるし、美しくないこともないと思うよ」

 

霊「それと威力を人間に当たっても軽傷程度にすることよ!」

 

榛「んー。これでも本当に最低の威力なんだよ?それに当たらなければ怪我はしないでしょ?それにメイド長のナイフだって当たれば怪我をするじゃない。紅い悪魔(スカーレットデビル)のグングニルもさ」

 

霊「それとこれとは話が......ッ!【夢符】『封魔陣』!」

 

 その宣言と共に赤い御札が八方向に飛び、一定距離飛ぶとそこから更に5つに分かれる

 更には霊夢を中心に霊弾が円を書くように放たれる

 と思っていたら御札がゆっくりと回転し始めた

 例えるなら回転式スプリンクラーのようだ

 まだ私がスペル宣言してからそこまで時間が経っていない

 それなのに再びスペカを使ってくれた霊夢を見て私は喜ぶどころか罪悪感が襲ってくる

 そりゃそうだ。今この身体は何故かは知らないが私の制御下にないから私が戦ってるわけではないが、明らかに威力の強すぎるスペカを使い、ルールに違反し、霊夢を傷つけてしまったのだから

 

――別に君が気に病む必要はないよ。君は私に身を委ねてくれればいい――

 

 罪悪感に襲われていると、どこからか声が聞こえてきた

 視界に入っていた霊夢を見れば変化はない

 ということは霊夢には聞こえてない?

 

 

 

 ...誰だ!お前は誰なんだ!

 

――ここは私は君、君は私って言った方がいいけど、正確に言うなら私は君じゃないけど、君は私だよ――

 

 訳分からんこと言うな!直球で話せ!

 

――無理。直球(ストレート)に言っても君は理解してくれないから――

 

 なんでそんなことが分かる!もしかしたら理解してくれるかもとかあるだろ!なんで最初から諦める!?諦めんなよ!

 

――い、いきなり熱血になったね...... 今の状況分かってる?――

 

 とりあえずお前はわけわかんない奴で、私の身体を乗っ取って動かしてるってことは分かった。あ、後お前の声は私にしか聞こえないってことも

 

――わけわかんないはともかく、他はあってるんだけれども...... それで最初に戻るけど、君が罪悪感を感じる必要は無いから。私が勝手に君の身体を使ってやってるだけだからね――

 

 いや無理。感じるなって方が無理。後私の身体返せ。霊夢傷つけんな。そのスペカ使うんじゃねぇ

 

――文句のオンパレードだね...... とりあえず罪悪感は感じてても私には関係ないし、君の身体は後で返す。今代の巫女の怪我は彼女が躱せなかったのが悪い。私に責任はないよ――

 

 確かに霊夢が躱せなかったのが悪かったが、お前がそのスペカを使ったのがそもそもの原因だ。とにかく身体は今すぐ返せ。これ以上霊夢を傷つけられてたまるか

 

――このスペカが終わるまで待ってね――

 

 嫌だ。それまで霊夢が傷つく姿を黙って見てろってことだろ?そんなの大人しく見ていられるか!

 

――そうは言っても君の身体は私の制御下にある。君がどうこう言っても私が身体を返すまで君には何も出来ない。強いて言うなら文句を言うくらいだけど、それも私が聞こうとしなければ無意味だ。無駄に精神力を消耗するより大人しくしてた方が得だよ――

 

 ...確かに私が身体を動かせない限りお前に抵抗することは出来ない。その状況でお前を怒らせてしまえば私は身体に戻れなくなるだろうな。ということで非常に不本意だがお前の言う事聞いてやるよ

 

――君が賢い娘で良かったよ。でも勘違いしないで欲しいな。私は絶対に君に身体を返さないことはないから。借りたなら必ず返す。それは神に誓ってもいい――

 

 神は約束を破れるから駄目だ。誓うなら悪魔に誓え。悪魔との契約は絶対に破れないからな

 

――...そうだね......――

 

 で?お前は何故私の身体を乗っ取った?

 

――君の身体を使ってる理由は今代の巫女の修行したくない発言だよ。彼女はどうにも博麗の巫女ってものを甘く見ている節がある。それを叩き直したいんだよ。だから一度勝負で完膚無きまで倒す。そこで君の身体を借りたんだ――

 

 何故私の身体を乗っ取る必要があった?自分の身体は無いのか?

 

――言ったよね?君は私だって。つまり君の身体は私の身体でもあるんだ――

 

 ...多重人格ってやつか?

 

――それとはまた違うけど、感覚としては同じかな――

 

 ふぅん。つまりお前は私の身体でしか動けないってわけか

 

――そういうこと――

 

 で、いつになったら身体を返してくれるんだ?

 

 こうやって話し?てる間にも時間は過ぎていく

 丁度霊夢の封魔陣が終わったところだ

 これで霊夢はスペカ2枚、被弾0回

 対する私は被弾0回にスペカ2枚目宣言中。それも時間体力まだまだある

 このままだと霊夢は負けるかもしれないな

 いや、霊夢は幻想郷最強と謳われる巫女だ

 そう簡単に負けるはずは......

 

 ――本当にそう思う?――

 

 ...え?なんで......

 

――「なんで考えてることが分かるんだ?」って?それもさっき言ったよ――

 

 あぁ、そういうことか

 同じ身体にいるからか、はたまた魂が同じだからか私の考えが読めるってことか

 ...ん?待てよ......

 あいつが私の思考を読めるってことは私もあいつの思考を読めるはずだよな......?

 

――残念ながら君に私の思考を読むことは出来ない。一方通行なんだよ――

 

 んだよそれ。で?本当にそう思うかってどういうことだ?

 

――今代の博麗の巫女は歴代の中で一番天才と言われている。確かに修行なんてしなくても強いからそう言われるのも頷けるよ。でもね、天才ってだけじゃこの幻想郷は生きていけない。今はスペルカードルールがあるけど、それは闘いを甘くしてるだけだ。もし手強い妖怪がルールを無視して巫女を襲ったら...... 彼女は生きていられるかな?――

 

 つまりなんだ?お前は霊夢を心配してこんなことしてるってことか?

 

――まぁそうだね。彼女のような天才を見殺しなんてしたら勿体無いからね。博麗の巫女自体は替えがきくけど――

 

 なら直接修行しろって言えばいいじゃないか。いやまぁ、お前は私の身体でしか言えないから私が言ってるみたいに受け取られるんだろうけど

 

――それで本当に聞いてくれると思う?――

 

 ま、まぁ、それで聞いてくれたら山の仙人は苦労しなかっただろうな......

 

――ってことで一度完膚無きまで倒し、悔しさを覚えさせて、それを糧に自分から修行するようになってもらおうかなって――

 

 なるほどなぁ。つまりお前は自ら悪役を演じるわけだ。私の身体を使って私を巻き添えにして

 

――それに関してはごめんね。魂の器さえあれば一時的に移れるんだけど、今はそれが無いから......――

 

 魂の器か...... そんなもの用意出来るわけないだろ。強いて言うなら人形、それも1から作る時に何らかの力を一緒に縫い合わせた物とか、死体を用意してゾンビとか...... 死体ならこの館でも調達出来るな。吸血鬼は血を吸っても肉は喰わなくても生きていけるし。今度用意する?

 

――ゾンビは腐ってるから!いやその時は新鮮でも腐るから!せめて人形して!というか人形だって君の知識があれば用意できるよね?――

 

 は?私の知識?私の知識でどうやって人形を......人形?...あ......そうか、そういうことか

 まだ出会ったことはないけど、あの魔法使いに依頼すれば力の篭った人形くらい作れそうだ

 

――ようやく分かったようで何より。まぁ人形だけ用意しても本当に一時的にしか無理だから他にも用意するものがあるけどね――

 

 他には何を用意すればいいんだ?

 

――今は用意出来ない物だよ。でもそれを入手する機会が必ず来る。その時はまた身体を貸してね――

 

 ...ま、お前は悪いやつではなさそうだし。このままじゃお前は私の中に居るままだからな。お前を追い出せるなら協力してやるよ

 

――...ありがとう。これから宜しくね――

 

 どういたしまして。宜しくされてやるよ

 

 

 

 さて、こいつと話すことも無くなったし、協力するって言ってしまった手前、身体を返されるのを待ちながら霊夢を見てるしかないか

 ってあれ?今気づいたがこのスペカの体力ゲージ、全くと言っていいほど削られていないじゃないか

 

――巫女の弾幕は全て私に到着する前に他の弾幕によって打ち消されてるからね。もし辿り着いても君の能力で守ってるから――

 

 いや待て!私の能力を使っただと!?

 そんなの反則じゃないか!

 

――そう?でもルールでは個人の能力を使ってはならないとは書いてないよ?それにメイドの時間能力、吸血鬼の霧化、運命操作、巫女の空を飛ぶ能力。それぞれ反則だと思わない?それなら君も能力で弾幕が自分に当たる前に守ってしまえばいいよ。君に勝つ方法はその盾を突き破ることにあるのだから――

 

 確かにそういう捉え方もあるが......

 でも、私は遊びでそうやって勝つのは嫌いかな

 死闘なら手は抜かないけど

 

――だから君は甘く、弱いんだ。まるで押し潰せば形が崩れてしまう甘いショートケーキみたいに――

 

 ケーキは潰れても美味しくいただけるぜ。苺はグチャっとするがな

 

――皮肉な返し?――

 

 さぁな。思ったことを言ったまでだぜ

 ってかお前、この状態を保つんだな

 

――ま、暇だからね。私が君に身体を返した後もこうやって会話をさせてもらうね。どうにも今まではもやもやした意識だったのが今ではハッキリとしてるからさ。暇という感情をハッキリと受け取れるようになっちゃったんだ――

 

 つまり、暇だから首を突っ込みに来るってことか

 ま、四字熟語にするなら二心一体ってことか

 

――そうなるね。ところで話は変わるけど、君は霊夢が勝てると思う?――

 

 そうだな......

 霊夢は後一枚しかないが被弾は1回も減ってない

 なら被弾で時間を稼いで時間切れを狙うってのもアリだろうし......

 

――1回でも当たれば意識が飛びそうな弾幕なのに?――

 

 ぐっ......

 で、でもそれ以外なら本当に避けきるしかないし

 当たっても気合いで意識を保てばなんとか......なるよな?

 

――ま、それは彼女次第だね。さ、時間がようやく半分を切ったよ――

 

 え、まだ半分なのか......

 この時間の長さについて後で霊夢に怒られそうだなぁ......

 仕方ない...... 私がおやつに食べようとしてたシュークリームで手を打ってもらおう

 

――あ、私もシュークリーム食べたい――

 

 意識だけの存在がどうやって食べるんだよ

 自分の身体が持てるまで我慢な

 

――えぇ......――

 

 ところでお前に名前とかあるのか?

 ずっと“お前”って呼んでてもお前のことだって伝わるが、どうせなら名前を知ってた方がいいだろ

 

――うーん...... まぁ君は私だから“榛奈”でいいんだけど...... なら――でどうかな?――

 

 ま、それでいいか

 

霊「――グッ!」

 

 また悲鳴で意識が戻される

 今度は霊夢の身体に弾幕が当たっていて、霊夢が少しだけふらつく

 だがすぐに体制を立て直し、回避行動をとる

 凄いな霊夢。この弾幕を受けても意識を保ってられるなんて......

 もしかして思ったより威力は弱いのか?

 

――いや君の思ってる通りの威力だよ。ただ彼女が耐えきれただけで――

 

 ってことは時間切れを狙うことも出来るのか

 いや、そこまで霊夢自身の体力が持つかどうかだよな

 霊夢!頑張れ!勝てばお賽銭あげるから!

 

――賄賂は良くないと思うんだけどなぁ――

 

 賄賂じゃないぜ。報酬だ

 

――はいはい――

 

榛「粘るね。ささっとくたばるかなぁって思ってたんだけど」

 

霊「私がこの程度でくたばると思ってるの?」

 

榛「そうだね。思ってるよ」

 

霊「アンタ、相当私の怒りを買いたいようねッ!」

 お前、相当霊夢の怒りを買いたいようだなッ!

 

榛「いや2人して同じようなこと言わないでよ!」

 

霊「は?2人?」

 

榛「いや、何でもないんだよ何でも......」

 

――そういえば反射的に隠したけど、私がいることは内緒にした方がいいよね?――

 

 そりゃあな。教えたら教えたでややこしいし、バレるまで隠すか

 

――つまり私は君みたいにしなければならないのか...... そうなると手遅れ?――

 

 だ、大丈夫だ。霊夢とは接点は少ないから、他を気をつければなんとか......

 

――大丈夫だといいね......――

 

 ホントだよ......

 

榛「ふぅ...... あ、危ない」

 

 え?

 

霊「―ッ!」

 

 あ、本当に危なかった。霊夢が

 

榛「この短い時間に2回も当たってるのに耐えるねぇ......」

 

霊「これぐらい......っどうってことはないわよ!」

 

榛「ま、どっちにしても君は残り1回しか残ってない。対する私は被弾はまるまる3回残ってる。勝負は目に見えてるね」

 

霊「っこうなったら......」

 

 突然、霊夢の周りの雰囲気が変わった

 ...いやこれは、力の方向が変わったのか?

 

――あ~、こりゃ来るね。奥義が――

 

 奥義?霊夢の奥義といえば夢想...天...生......!?

 

霊「『夢想天生』」

 

 そう宣言すると同時に霊夢の身体は半透明に、所謂不透明な透明人間状態になった

 そして、目は閉じられているのに、弾幕が自動でばらまかれる

 更にはこちらの弾幕が霊夢のとこに辿り着いてもすり抜けてしまう

 うん。霊夢の夢想天生さんだね。怖い怖い

 ...ねぇ、これクリア出来る?

 

――弾幕は相殺出来るとして、問題は時間だね。多分この夢想天生は遊びとして時間制限が設けられてるだろうけど、夢想天生の時間切れまでに、こっちのスペルの時間切れがくるよ――

 

 だ、だよねー......

 ってことはこっちも終わったら回避に徹するか、思い切ってスペカを使うかしかないわけか

 

――ま、その辺は君が頑張ってね――

 

 おう!......ってえ!?なんで!?

 お前がやるんじゃないのか!?

 

――残念ながら私が表に出られる時間も限ってるんだよ。だから頑張ってね。ファイトだよ!――

 

 ファイトだよじゃねーよ!

 自分で火種付けといて......

 ちゃんと消してけよ!火事起こすだろ!

 

――山火事は嫌だなぁ...... 小さい火種が大規模な火災になるから......――

 

 それなら消してけよ!霊夢に水ぶっかける勢いで!

 

――夢想天生宣言中の霊夢に攻撃が当たると思ってる?――

 

 いや、当たらないだろうけど......

 

――とにかく今代の巫女の夢想天生は耐久スペル、体力ゲージなんてものは存在しない......というか存在してもまず攻撃が当たらないから意味がない。だから必然的に時間切れを狙うしかない。そして原作では1度でも被弾(ミス)すればその時点でまた最初から。流石に此処にそのシステムが入ってるとは思えないけど、念のため被弾は避けてね――

 

 そんな事言われたってなぁ!

 私にあの大量の御札を避けれると思ってるのか!

 出来るわけないだろ!

 

――最初から諦めたら駄目って君も言ったじゃないか。頑張ってみようよ――

 

 でも......

 

――分かった。なら私がサポートする。大丈夫、負けても何もならない。これは遊びだから――

 

 ...分かったよ......

 遊びだもんな、これ

 それに逃げてばかりじゃ強くはなれない

 

――そういうことだよ。さて、時間切れ前の最初のアドバイス。今代の巫女の夢想天生は円のように中心から外側へ御札を直線に並べ、それが自機に向かって飛んでくる8way弾だよ。では問題、これはどういう避け方をしたらいいと思う?――

 

 問題って......

 向かってくる御札をちょん避けか?

 

――うん。まぁ余裕がある時にね。簡単なのは巫女を中心に円を書くように避けることかな。その時の注意は避けてる途中で新たな御札が飛ばされること。向かってくる御札に気を取られすぎて飛ばされてくる御札に当たってしまうってこともあるからそれも気を付けてね――

 

 お、おう...... やってみる

 

――うん。頑張れ!――

 

 その言葉と同時にこちらの弾幕が一斉に無くなった

 よぉし!避けてやる!

 

 

 

 ~少女回避中~

 

 

 

 避けてやると意気込んでから時間が経ち、周りにあった御札が一斉に無くなる

 ちなみに私は1回も被弾していない

 これって......つまり......?

 

――やれば出来たね!おめでとう!――

 

霊「...まさか避け切られるとはね......」

 

榛「ぅえぇ?避け...きれ...た......?」

 

 なんだか実感が湧かない......

 でも、夢想天生を途中からでも避けきれたんだ......!

 

榛「~~!!」

 

 出来た......

 やれた......!

 勝った!

 

榛「勝ったんだ......!」

 

 なんだろう......

 段々と実感が湧いてきた......!

 それに純粋に嬉しい!

 

霊「カードを3枚使い切ったから私の負けね」

 

 そう霊夢は何でもなさそうに...... いや、よく見たら少し悔しそうにしながら言った

 

 あ、この後どう言う?

 お前が好き勝手に会話してた内容と噛み合わせないと......

 

――なら私がここで言うから君はそれを口に出して――

 

 心配だけど、分かった。やってみる

 

榛「うん、君の負け。私の勝ち。これで少しは懲りた?」

 

霊「懲りたって何がよ」

 

榛「修行しないことに。君は天才みたいだけど、それだけじゃ幻想郷は生きていけないんだよ?特に君は...... 博麗の巫女は幻想郷の要。特に命の危険に晒される機会が多くなる役職だ。そして、その機会が訪れてしまった時、力不足だと簡単に殺されてしまうよ。殺され方は分からないけどね。人間による殺人なのか、妖怪に喰われるのか、はたまた精神崩壊か...... でも、そのうちのどれもが力不足でなってるわけで、力は修行次第でどうにでもなる。それなのに君はそれをしない。それはつまり、君は自分は修行しなくても大丈夫だと過信してしまっている証拠なんだ。知ってる?それは、傲慢、身の程知らずって言うんだよ?」

 

霊「.........さい......」

 

榛「え?」

 

霊「っうるさいって言ったのよ!!アンタなんかに何が分かるのよ!たった1回、弾幕ごっこで私に勝ったくらいで調子に乗らないで!」

 

 霊夢が顔を真っ赤に染めて怒鳴る

 そんな霊夢を見て私は、なんだか小さい子を理不尽に叱ってる気分になってくる

 ...なぁ、これは言い過ぎなんじゃ......

 

――全然、むしろ言わなさ過ぎなくらいだよ。もしかしてこれ以上は言いづらくなってきた?それなら交代する?――

 

 ...お前が直接言った方が早いからな......

 でも、あんまり霊夢を虐めるなよ?

 

――分かってる。でも、少しだけ嘘をつくね――

 

 え......?

 

榛「確かに私には博麗の巫女がどういうものなのかは分からないよ?でも、その弾幕ごっこは君の得意分野だよね?更には君が使った『夢想天生』。これは博麗の巫女の奥の手だよね?得意分野で奥の手まで使ってるのに私に負けたってことは君が私より弱いってことになるんだよ」

 

霊「っ!今日は偶々、偶然、まぐれよ!」

 

榛「なら、もう一回勝負する?正々堂々と、スペルカードルールに基づいた戦いか、ルールを無視した戦いか」

 

霊「なっ!?」

 

榛「私はどっちでもいいよ。弾幕ごっこでも、殺し合いでも。大丈夫、君がルールを無視しても私は誰にも言わないし、誰にも言う気は無い。何せ私から誘ったんだからね。咎められるのは私だ。それに殺し合いといっても命の取引はしない。骨が折れたり、血が大量に出たりするけどね。そっちは殺す気で来てもいいけど......」

 

 おい!――!?

 霊夢を傷つけるなって言っただろ!?

 

――殺しはしないよ。それに、怪我をするのも一つの経験。この幻想郷、傷つかずに天寿を全うするなんて出来ないよ。妖怪がいる限りね――

 

 だからって自分から傷つけに行くのは嫌だ

 それに私は人間だ。霊夢を傷つける理由が無い

 

――君はそうでも、私は違う。それに私は君みたいに甘くはない。その気になれば、誰だって殺せる。例えそれが君の家族でもね――

 

 貴様......ッ!

 

――あくまで例え話だから怒らないで。それに今は必要ではないからね。彼女達の死は――

 

 ...さっさと魂の器を用意して貴様を追い出したいところだ......

 

――そのためにも頑張ってね――

 

 私達が心の中で会話してる間、霊夢は俯き、怒りで身体を震わせている

 それは私達が会話を終えた後もずっとだ

 どちらを選ぶのか、答えが決まらないのだろう

 当たり前だ。自分のプライドを傷つけられ、今すぐにでも私の中にいるコイツが操る私の身体に殴りかかりたいのに、それではルールを無視した戦いを選んだことになってしまう

 そうしたら自分からそのプライドを捨てたと同じことになるのだろうから

 

榛「...そんなに悩んでるなら今日は止めておこうか。もしどちらで戦うか決まった時、相手になるよ。私には仕事があるから忙しくない時だけどね」

 

 そう言い、私の身体は図書館の方向へ進む

 

霊「っちょっと!どこ行くの!?」

 

 その声に私の身体は歩くのを止め、後ろを振り返らずに言った

 

榛「そろそろ2人の戦いが終わる頃だろうからね。迎えに行ってくるよ。君は先に客室にでも行ってて。迎えに行った後、お茶を汲んでくるから」

 

 そう言うと私の身体は再び歩き始めた

 今度は霊夢に止められることもなく、私達はその場を去った




後書き~

榛奈の中に現れ、榛奈の身体の制御を自分の元に置けるあの人?は誰なんでしょうね?
そして何やら霊夢に思うところがあるようで......
次回!いつの投稿になるんでしょうね!?
それでは次回もゆっくりしていってね!

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