はい、皆さんこんにちは。さて、さっそく注意書きです。
*今回の話は榛奈の寺子屋時代に起きたある事件を扱っております。章タイトルと全くと言っていいほど噛み合いませんが、番外編ということでここに投稿させていただきます。
*実は本編に使う予定だったのが没になったけど、ここまで書いたのならって中途半端に編集して完成させました。そのため本編と噛み合わない場面が多々あるかと思いますが、スルーしてください。
*ここで出たことが本編で出る可能性はあります。ですが胸糞悪いものとなっていたり、二万文字もあるので長かったりします。暇な方と読みたい方のみお進みください。
*テーマは虐め。これだけはハッキリ言っておきます。苦手な方は絶対にこれ以上進まないでください。
*「こんなの書くな」的な批評の感想は私が読んだあとひっそりと消させていただきます。そんな感想さえも貰えない気もしますが、感想はどれだけ語彙力がなくても投稿してくれていいんだよ......?
改めて以上の注意書きをよく読んで、さらに本編を読んでも後悔しない人だけ、
ゆっくりしていってね!!
思えば最初のころ、幻想入りしたばかりのころは親となったお父さんのことが苦手だった
いやこの表現は変だな......
正確には男の人が苦手だったのだ
何故男の人が苦手になってしまったのか今となっては忘れてしまったが、同世代、年上、高齢者......。流石に赤ん坊や自分より小さい子は平気だったが、とにかく男が苦手で、これが俗にいう男性恐怖症というものだと後で知った。別にどこかの漫画みたいに男性を前にすると思わず手が出てしまうわけではない。ただ逃げ出したくなるだけ
でも日常ではそれは支障となっていた。そりゃそうだ、義理とはいえ父親でさえ苦手とし、外もまともに出歩けなかったのだから
だから治そうとお母さんと舞理沙姉に協力してもらってあれこれ試したが、そう簡単に治るようなものではなかった。そのうちに私は治すことを諦めそうになってしまったが、2人は諦めず私を説得してくれた
そして私たちは試行錯誤を繰り返し、寺子屋に入る数週間前にはお父さんと正面から話ができる程度にはなり、2人のうちどちらかがそばにいるという条件下であれば人里の中を歩けるようにまではなった。かといって男性恐怖症が治ったわけではないので寺子屋に入った頃はそれが原因の問題ばかり起きていた
自分で言うのも何だが、私と舞理沙姉、霧雨姉妹は寺子屋じゃ可愛い分類に入っていたわけで、当時5、6歳とはいえそれなりにモテたわけだ。そしてモテるということは何人かは告白してくるわけだ。告白と言えば他に誰もいない状況で言われるわけだが、それはつまり一対一。当時の私にとってそれは拷問でしかなく、そういったものや男子を含めた遊びのお誘いは全て断っていて、しつこいのは舞理沙姉が間に入って断っていた。慧音先生もそのことを知っていたため授業の内容に配慮を入れてくれていたので最初のころはそれらだけが問題であり、後のことを思うとまだ優しい方だったのだ
そのうちにそれらを断る時の態度が...いや例え寺子屋の中で一番カッコいいと言われている男子を皆の目の前であろうと断ったのがその男子どころか、彼を慕う女子の気にも障ったらしく、悪質な悪戯や態度、所謂虐めが始まった。幸いなのかは未だに分からないが、虐めが始まったばかりのころは相手も私が『霧雨』の娘であることをそれなりに理解していたのかそこまで過度なものではなく、舞理沙姉に見つかると厄介だと思っていたのか舞理沙姉のいない一人でいるときに肩をど突かれる程度だった。今の私なら怒る程度で精神的ダメージは無いが、何故だか当時の私にとってただただ恐怖でしかなかった
しかし家族に心配をかけまいと人前では普段通りに、彼らからしてみればへらへらと過ごしていたのが更に気に障ったらしく、今度は物を隠されることが頻繁に起きたり、虫を投げつけられたり、物が隠された上に壊されていたり......。どんなに虐められてもめげなかったのが彼らの癪に障ったのか、彼らの行動は段々と酷さが増していったのだ。律儀なことに毎日筆を持ってくる度に折られた日なんてあって、その時は先生に筆を貸してもらったのだが、毎回理由がただ忘れたと言っていたため本当かどうか怪しまれたが、その場はなんとか誤魔化すことができた
そのうちに舞理沙姉が何も言わない私に対して心配で怒ってきて、それでも私は何も言わなくて...喧嘩になって......。舞理沙姉に嫌われたって思ったら涙が出るくらい悲しくて......
そしてそれが私たち姉妹の初めての喧嘩っていうのもあって、お母さんや慧音先生にすごく心配されて......。周りは心配してくれてるのに何も言えなくて......悲しくて......あいつらに何も言えない私が悔しくて......憎くて......。負の感情が私の心を這いまわって、少しずつ楽しいとか嬉しいといった正の感情を失っていって......。自分の気持ちすらわかんなくなっていって、今自分がうまく笑えているか、周りにこのことが気付かれてないかとかそういったのを気にするようになっていって......
思えばその時、私の心は壊れかけてたんだと思う。でも“自分が変になってきてる”なんて自覚なんてなかった。ただただ周りを悲しませちゃ駄目だ、なんて思うだけで......。その行為自体が悲しませてたっていうのにね
まぁそんなわけで虐められていることを意地でも隠していた私だが、何事にも終始点というのがあるわけで。ある日の授業が終わった夕方、帰路に就く者、校庭で遊ぶ者、居残りする者などそれぞれがそれぞれの行動をするとき私は舞理沙姉に先に帰るよう言い、独り人気の無い路地裏に来ていた。何故なら手紙で呼び出されたからだ。そのころになるとそうやって手紙で呼び出され集団で暴力を振るわれることも多くなっていた
抵抗は出来なかった
なにせ相手方には上級生がいたわけで、当時弱かった私はなすがままに殴られる。相手の顔はもう覚えていたから慧音先生とかお母さんに言う事もできた
でもそれもできなかった
いざとなれば相手を蹴散らす幻想の力もあった。魔法...前世を思い出せず、何の知識もなかった頃、たまたま偶然扱えるようになった攻撃魔法。それをうまく使えば子供相手なら立てなくなる程度の怪我で済む威力から相手を殺す程の威力まで、幅広く威力が調節できる魔法。それを使えば私一人で集団を懲らしめることができるが、これも出来なかった
何故できなかったか
それはつまるところ家族が大切だったからだ。今の私もそうだが、どうやら私という人物は身内と認定した人を大切だと思う傾向にあるらしい。そのことを知ってか知らずかあいつらは私が抵抗しようとすると舞理沙姉をダシに脅してきた
「もし誰かに言ってみろ。お前の姉がどうなっても知らないからな」なんて定番の台詞まで吐いて
だからって本当になすがままだったわけではない。手が出せないなら口を、つまるところ説得という手に出ていたわけだ。しかし効果は薄く、一人二人は説得出来そうだったが、他のメンバーに脅され無意味となった
それでも他に手は考え付かなかった
いっそのこと相手を殺してしまおうかなんて考えてしまったが、即却下した。当たり前だ、人を殺すなんて大切だと思っている家族を裏切るようなものだったんだから
そしてその日もまた暴力を振るわれ、傷だらけの体を隠して、誰かに指摘されれば嘘をついて、そして笑うんだって思ってて......
でもそんな日も唐突に終わった
魔理沙side
フラン「そういえばだけど魔理沙。魔理沙はどうして魔法使いになったの?」
紅魔館に遊びに来て、たまたまフランと二人でお茶をしていた時、フランが唐突に質問してきた
魔理沙「ん?魔法使いになった理由か?」
フラン「うん。榛奈も魔法使いになりたくて
何か、か......
あると言えばある。それも私の人生に大きな影響を受けた出来事が
今の私が人間の魔法使いになったのもその影響の一つだ
別にそれに関しては話してもいいが、そうなると必然的にあの話をすることになる
私としてはもう過ぎたことだし別に話してもいいが、榛奈は嫌がりそうだ
それにあいつはフランのことを特に気に入っているみたいだからな
できれば話さないのがいいんだが......
魔理沙「まあ何もないと言えば嘘にはなるが、別にそんな大したことじゃないぞ?」
フラン「それでもいいから教えてよ。暇つぶし程度にさ」
魔理沙「...まあ、少しだけだぜ?」
フラン「やった!」
魔理沙「さて、どこから話したものか......」
そうだな、私が人里にいた頃、榛奈の異変に気付いた時の話からしようか
今でも思い出せる、あの出来事
最初の変化は寺子屋に入って半年が経ったころだな。突然榛奈の様子がおかしくなった頃があったんだ。ただ表面上はいつも通り、それは本当に些細な違いだったんだ。それこそ私たちのことなんて何の気にもかけてないあのクソジジイや仕事が忙しい母さんじゃ分からないような違い。常に一緒にいた私だからこそ気づけた違いがな
だからといって榛奈の様子が少し違うと思っただけでその時の私は何かするってことはなかった。今でも思い出すとあの頃の私をぶっ飛ばしたい気分になる。「どうして異変に気付いたのに何もしなかったんだ」ってさ
そしてそのまま一か月くらい経ったころだったか。今度は榛奈が物を無くすようになったんだ。最初は机の下とか教室の隅とか
でもそのうち教室にも見つからなくなって
私も探すとかって出たんだが、榛奈は自分で探すと言い張ったんだ。それとこのことを母さんには言わないでくれってさ。あんなにも必死にお願いされたことなんか榛奈の男性恐怖症を治してた時ですら見たことなかったからその通りにしてたんだが、その選択も間違っていたんだろう
そのころ少し離れていただけで榛奈のもとに戻ってきたら榛奈がなぜだか汚れているときがあるようになった
またしばらくした頃、次は物をよく忘れるようになった......いや壊されるようになったんだ。毎日続けて筆を家に忘れてきたってときの榛奈の言い訳は苦しかったな。何せ朝家でちゃんとあるか確認したのに授業が始まるころには無くなってたんだぜ?
さすがにおかしいと思った私は榛奈を問い詰めたんだ。だが榛奈は決して口を割らなかったんだ
後で教えてくれたんだが、それは私たち家族に心配をかけさせないため、そして脅されていたからなんだが、当時の私は知らなかったし、分からなくてな。どれだけ言っても口を割らない榛奈に私は苛立って思わず言ってしまったんだ。「榛奈のことなんて大嫌い!何があったのか言わない限り口もきかないからね!」ってさ。その言葉が効いたんだろうな。口は割らなかったが涙目になりながら「...何も知らないくせに...何も分からないくせに...!私だって舞理沙姉のことなんて......っ!」って最後までは言わずに部屋に戻って行ったんだ。きっとそれ以上言ったらダメなんだと知っていたから抑えたんだろうな。そういった意味じゃ榛奈の方が大人だったってことだ
そこから私たちの仲は険悪に、事が終わるまで互いに口をきかず、お互いに距離を取るようになった。いわゆる喧嘩ってやつだ。しかも私たち姉妹が出会ってから初めてのな。母さんや慧音は心配して私に声をかけてきたが私は「何も言わない榛奈が悪い」って意地張って......
そのうちに榛奈の様子がおかしくなってることに気が付いたんだ。負の感情を全く見せなくなって......まるで仮面で心を隠してしまったような、そんな感じ。誰に対しても、だれを前にしても笑って......笑って......わらって......
もしかしたら榛奈の心は壊れかけてたのかもな。それも私との喧嘩が榛奈の心にヒビを入れた。でも当時の私は心が壊れかけてるなんて思いつきもしない。我ながら馬鹿にもほどがあると思う。で、榛奈の様子が変だってのはさすがに母さんも気づいて、そのことを私に聞いてきたんだ。その時私は「榛奈には言うなって言われてて、律儀にそれを守ってたが、それじゃ何も変わらない。それどころか現状が悪化していくだけだ」と思った。この現状を打開するにはこのままじゃ駄目なんだって。だから私は仕方なくありのままに話したら母さんは少し考えてから私に言ったんだ
「もしかしたら榛奈は虐められているのかもしれない」って
母さんはすぐに「あくまで私がそう思っただけだけどね」って付け足したが私の頭の中じゃ母さんの言葉が反響して、少しの間理解できなかったんだが、理解できた途端怒りが溢れてきた。榛奈を虐めてる奴らやそれを隠していた榛奈。そして何よりそのことに気づけず、むしろ榛奈を傷付けていた自分に対してな。すぐ榛奈の所に行って謝って、虐めについて問いただしたかったんだが母さんが「まだそうとは分からないよ。それにそうだとしても榛奈の今の様子を見るに、絶対に口を割らない。まずは榛奈や相手方が口を開かざるを得ないような証拠を集めなくちゃ」って私を止めてな
私たちはそうと決まったらすぐさま行動を起こした。母さんは里で話を聞き、私は寺子屋でわざと榛奈と離れて陰から何かアクションが起こるか見たり、榛奈が私から離れてどこかに行こうとしていた時はつけていったりな。まあついて行ったときは気づかれたり見失ったりと失敗もあったが、それらの行動により虐められている可能性は確実なものになり、誰がやってるのか大体わかる程度にはなった
そしてそいつらを懲らしめてやろうと準備していたある日、榛奈が手紙を貰っていたのに気づいたんだ。その時は恋手紙でも貰ったのかと思ってたし、榛奈もそう言ってたから関係ないと思ってたんだが、それがほぼ毎日続いてな
流石におかしいだろ?同じ相手でも違う相手でもほぼ毎日だなんてさ
それで榛奈の様子を見ていたっけ手紙を貰った時の榛奈の顔の微妙な変化に気づいたんだ。手紙を貰った時、榛奈の顔がわずかながらに歪んだんだ。そして手紙を貰った日は必ず寺子屋が終わった後、私に先に帰るよう言ってそそくさと何処かに向かってたんだ
んでわずかな変化に気づいた日もまた何処かに向かった。それで私もつけていったんだ。その日は運よく最後までつけていけてな。榛奈が人気のない路地裏の奥で誰かに会ってるのを隠れて見ていたんだ
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~回想~
日が暮れはじめ、太陽が真っ赤になりはじめた時間。薄暗い行き止まりの路地裏がさらに暗くなるころ、まだ幼き面影を残す6名の男女がいた。その中心には彼らの中で一番年上とみられる、彼らの通っている寺子屋の中で一番(容姿だけ)カッコいいと言われている男『
そう、彼らはある人物を待っているのだ
高冨は寺子屋の中で一番(容姿だけ)カッコいいと言われていて、家も代々人里を支えてきた名家の一つ『一条家』の息子であるため多くの女子から告白されてきた。そんな彼は自身の容姿が良いこと分かっていたため、それを手に気に入った女子、自分のものにしたいと思った女子に片っ端から声をかけてきた
そして反応は主に二択。彼の声に応えるものと彼の誘いを嫌がるもの
応えるものは彼についていく。例えば此処にいる『
逆に嫌がるものだが、彼女たちは最初断った。しかし彼は自分の家の名をダシに脅し、無理やり彼女たちを自分のものにしてきた
それだけ『一条』の名は人里では強力だったのだ。そして名家の恩恵を受けようと彼についていくものも出てくる
『
しかし『
そうやって手下を増やしていった高冨は、今年寺子屋に入ってきた子供の中に可愛い姉妹がいるのを見つけ、目につけた。様子を見ていると入学早々様々な男に告白されていたものの、誰の手にも入らなかった。そこで俺なら彼女を手に入れられると姉の方をいつものように誰もいないところに呼び出し「俺のものになれ」と言うときっぱりと断られた。どれだけ脅迫しても彼女は断り、その場を去ったことで彼は怒りに震えた
しかしその怒りを鎮め、ならば妹の方を、と同じ手口で呼び出そうとしたが、自分が近づくだけで嫌がり、仕方なく周りがいる前で言った。彼は知らなかった。彼女が男性恐怖症だということを。そして彼は過信してしまっていた。自分の家は人里の人間ならば誰もが知っているだろう、だから公衆の面前ならば断われないだろうと。それは姉が彼の名を知っていたのも後押ししている
しかし彼女は知らなかった。彼の名も、彼の家も、彼の存在も。だからこそ彼女は断った。彼女からしてみれはいつも通り断っただけ。しかし彼からしてみれば公衆の面前で自分の顔に泥を塗ったのと同じ
そしてそのことはあっという間に寺子屋中に広まった
しかし彼や彼の手下が口止めしたため寺子屋の外に広がることはなかった。そして彼や彼を慕っている手下は彼のものにならなかった姉妹に激怒した。だから彼らは妹の方を虐めることにした
何故姉をやらなかったか、それは彼らにとって姉より妹の方が虐めやすく、泥を塗ったのは彼女だったからだ
そして彼らは行動を開始した
まず彼は自分の手下に教師や姉に見つからぬように彼女を虐めるよう指示した。一応彼の手下は彼女が名家の娘であることを理解していたため、過度なものはやらなかった。しかし彼女はヘラヘラと過ごしていたため彼は段々と過度な命令をしていった。そうして遂には人気のない場所に彼女を呼び出し、自分の目の前で手下に虐めさせた
そして今日も呼び出していたのだ
高冨が溜息を吐いてから少ししたとき、ようやく彼女が現れた。丁寧に手入れされた夕日に輝く綺麗な短い金色の髪、名家であることを知らしめているのかの質の良く動きやすい和服
『霧雨家』次女、霧雨 榛奈が彼らの前に現れた
その顔はどんな感情も映していない無表情。目に光なんて存在しない。そのことに高冨は苛ついた。榛奈の、負の感情すら映していない顔に対して
高冨「...ようやく来たか。てっきり逃げたのかと思ったよ」
榛奈「.........」
高冨「チッ...おい義孝、廣道、奴を俺の前に這いつくばせろ」
二人「「へい!」」
榛奈「.........」
義孝「なんか言えよ餓鬼ッ!!」
榛奈「ガハッ...!!」
義孝は榛奈を掴み、膝で榛奈の腹を蹴り、榛奈はそのまま倒れてしまう。そして痛みと衝撃で榛奈の口から息が一気に吐き出されるが、言葉が出てくることはない
高冨「チッ、まだ何も言わんのか。お前が「私は高冨様の雌奴隷になります」って言いさえすれば痛みの代わりに快楽を与えてやるのによ」
榛奈「......ッ!!」
その言葉に、ついに榛奈の顔は憎しみに歪んだが、言葉は発さない。それは先ほどの高冨の言葉を否定しているのも同じことだった
高冨「おいおいそんな顔をするんだったらこっちもそれ相応に対応しなければな......。隆、出番だ」
隆「へい、いつも通りボコればいいんですよね」
高冨「いや、今日はいつもより惨めな姿にしてしまえ。服も破っていい。なんなら性欲のはけ口にしたっていいさ」
隆「おいおいマジですかい?これは貴方様のもんになるんじゃなかったんでは?」
高冨「最初はその予定だったがあんまりにもこいつがうざいんでな。予定変更だ。こいつを犯したい奴なんてそれなりにはいるだろ?ならただ捨てるより有効的に使ったほうがいいからな。あぁ、霧雨の奴らに気づかれない程度にな。俺の家より弱いだろうが、気づかれたら気づかれたで面倒だ」
隆「へへっ、分かってますよ。あくまで気づかれないよう、ですね。いやはやお坊ちゃんはよく分かってらっしゃる。こんないい女なかなかいないですからねえ。まだまだ幼いのがあれですが、きっといいんでしょうねえ」
高冨「そうだ湊、お前もやれよ?」
湊「へ...い、いや僕は遠慮しておくよ......」
高冨「遠慮?おいちゃんと話を聞いたのか?これは命令だ。お前もこいつを犯せ」
湊「ぇ......」
そう言われ湊は榛奈の顔を見る。榛奈は黙って倒れているが、その目は湊に向けられてる。まるで反応を見るかのに
湊「い、嫌です...僕には出来ない......」
湊はその瞳に自分を見た。自分たちがこれからやろうとしていることがどんなことなのか。それがどれだけ悪いことなのかを
そして冷静に考えた。この一線を踏み越えれば、確実に戻れない。そのことを恐れた湊の口は無意識に開いていた
しかし高冨はそれを許すことはない
高冨「俺に歯向かうってのか?誰のおかげで今生きていられるか分かってるのか!」
湊「うぅ......」
彼湊の家は前にとある一件で一条に貸しを作っている。あくまで親同士での貸し借りだが、高冨はそれを利用し湊を仲間に引き入れ、彼を自分の駒として使っているのだ
そのため湊は高冨が逆らえない
高冨「もう一度言おう。こいつを犯せ」
湊「...わ、わかり...ました......」
榛奈「...っ!」
彼の言葉に榛奈の瞳が揺れた。明らかに恐怖に対してだ。高冨はそれに気づきニタニタと笑った
高冨「ふっ、何を期待していたのかわからんが、ここにお前の味方なんていると思うか?残念だったな。いないんだよ!」
榛奈「っ!...いやだ......」
ついに榛奈は弱音を吐いたが、それは彼を喜ばせる材料にしかならない。恐怖と痛みで地べたに倒れた榛奈はなすがままでしかない
綾子「ねえ高冨?貴方もこいつをやるの?」
高冨「いいや俺はやらないよ。こいつをやるなら愛しいお前との時間を過ごしたほうがよりいいだろう?」
綾子「高冨...///」
高冨「ってことでお前ら。俺はここからいなくなるが、容赦なくこいつをヤれよ?」
三人「「「へい!」」」
湊「.........」
高冨「おい湊、返事はどうした?」
湊「は、はい...分かりました......」
高冨「よし、それでいい。いいか?よく聞けよ?もしこいつに味方しようなんて考えたら、お前とお前の家族を人里にいられなくするからな?」
無論名家の息子だからと言って、まだ子供である彼にそんな権力は存在しない。しかし湊はそれを理解していないため、素直にうなずくしかないのだ
湊「わ、わかってます......」
高冨「わかってるならいい。それじゃあ行こうか。綾子」
綾子「ええ、行きましょう」
そのまま二人は路地裏から立ち去って行った
それを見届けた湊を除いた三人は気味の悪い笑みを浮かべながら彼女に詰め寄る。恐怖で足が竦み動けない、立ち上がれたとしてもすぐに捕まってしまうと思った彼女はこれから自身に身に起こることを想像し、身体を震わせた
腕力もない、魔法は使えない
そんな彼女ができる最後の事、無意識に彼女の口から発せられた言葉、それは――
榛奈「助けて...お姉ちゃん......」
______________________
その日は運よく最後まで後をつけられた。今までは榛奈に気づかれたり、見失ったりしてたから最後まで後をつけれることが少なかったんだ
それでも最後までつけていけて、虐められてる現場を見たことがあるのに未だ何ともできてないのは主犯が出てきてないからだ。主犯自体に心当たりはあるし、ほぼ確定してたけど、実際に虐めてたり、そうするよう命令してるところを見たことはない。そのことが未だ何もできていない理由だった
しかし今日、ついていった場所に、あいつはいた。そして虐めが始まった。これでもう確定。あとは家に帰ってお母さんに言って、先生にも言って、それで終わり。なのに私はどうしても動けなかった。いつもなら榛奈が虐めるところを見たくなくてさっさと帰るのに、その場から後ろに行こうとは思わなかった。それは多分これ以上榛奈が傷ついてるところが見たくなかったからだと思う。榛奈は家に帰ってくるたびに傷ついた体を隠し、張り付けたような笑みを浮かべて「何でもない」と言う。そんな姿を見るのはもう、私の心が耐えれなかったんだ
でもあの場に飛び出して何とかできるなんて思ってもない。なにせ相手は全員上級生。私が敵うはずもない
でもこのまま離れるのは嫌だ。でも......
そうやって心の中で葛藤していると、気づいたら事が進んでて、主犯とその彼女らしき人がこちらに向かって歩いてきた。一瞬私がいることがバレたかと思ったけど、ただその場を手下に任せてその場から去るだけだった。私は何とか物陰に潜むことでバレずにすんで、二人がいなくなったのを確認してから再び状況を確認した
そしたら榛奈が倒れてて、3人の男が気持ち悪い顔をしながら榛奈に詰め寄ってて、榛奈は震えてて......
何とかしなきゃって思っても足が出なくて......弱い自分に泣けてきて......
だけど、妹の声だけはハッキリと聞こえて——
榛奈「助けて...お姉ちゃん......」
気づいたら私はその中に足を踏み入れていた
______________________
?「——ぅわああああ!!!」
義孝「ぐへっ!?」
廣道「な、なんだなんだ!?」
湊「えっ......!?」
隆「......!?」
突如大きな叫び声と共に仲間の一人が何かに押され倒れ、いきなりのことに動揺する彼ら。その”何か”は彼らと倒れていた榛奈の間に立ちふさがった
義孝「いってぇな......てめぇなにしやが......ってお前霧雨の!!」
舞理沙「...榛奈を......榛奈をこれ以上虐めるな!!」
彼らの前に立ちふさがったのは舞理沙だった。怖いのか足が震えている。しかし彼女は榛奈を守らんとばかりに両手を目一杯広げ、彼らを睨みつけていた
榛奈「舞理沙姉......」
廣道「お前一体いつから......!」
舞理沙「さ、最初からだ!おお、お前らのリーダーがお前らに命令して榛奈を虐めてることはもう発覚した!このことはお母様や慧音先生に報告させてもらう!お前らはもう終わりだ!これ以上榛奈を虐めるな!」
恐怖で震え、出だしは噛んでいたものの、怒りの方が勝ったのか途中から強気に出る舞理沙。しかし彼らはそのことを嘲笑うかのように笑みを浮かべる
舞理沙「な、何がおかしい!」
義孝「いや何。テメェは何もわかってないなと思ってな」
廣道「ああ。全く、焦って損した」
舞理沙「何が言いたい......!」
義孝「テメェ、一人でここに来ただろ」
確かに寺子屋から直接榛奈を追いかけてきたのだから自分は独りだ。だがそれがどうした
そう思う舞理沙に廣道が答えた
廣道「つまりだ。ここでお前をボコって黙らせれば、別に問題はないんだよ!」
義孝「そういうことだ。隆先輩、やってもらっていいっすか?」
隆「ああ。一人も二人も変わらん。任せろ」
舞理沙「っ......!」
隆はそう言い、手をポキポキと鳴らしながら舞理沙に詰め寄る。舞理沙は恐怖で一瞬身体を大きく震わせ、縮こまりそうになったが、なんとか抑え彼を睨みつける。その目には未だ恐怖の色が浮かんでいたが、それでも彼女は引こうとしない。それは彼女自身のプライドもあるだろうが、それ以上に榛奈を守りたい。榛奈を助けたい。そんな気持ちが彼女を奮い立たせていたのだ
隆はそれが気に食わなかった。いつもならこうやって脅すことでどんな相手もひれ伏してきた。何せ彼は寺子屋の上級生の中でも特にガタイが大きく、喧嘩強い。さらには高冨が金で雇っているため後ろには一条家。暴力と権力。彼はどちらも兼ね備えていたのだ。だからこそ彼に逆らうものなど、彼に逆らえるものなど高冨以外にいなかった
だというのに目の前にいる彼女は妹を守りたい、ただその一心で彼の前に立ちふさがった。その行動が彼の癪に障ったのだ。
いや隆だけではない。後ろの二人もそんな舞理沙の行動が面白くないようだ。彼らには暴力という名の力こそなかったが二条家、三条家、それぞれが一条家に次ぐ権力の家柄だったため、彼らにもまた逆らうものは少なかった。そのため舞理沙の行動を理解できず、また思い通りにいかない彼女に怒りを覚えた
義孝「先輩!徹底的にやっちゃってください!そいつも高冨様のお顔に泥を塗った奴ですから遠慮はいらねぇっすから!」
廣道「そうです!バレなきゃ問題ないんですから!」
隆「分かってる。それに俺自身、こいつのこの目は気に食わねえ。この俺に逆らうやつがどんな目に合うかその身に叩き込んでやる!!」
隆はそう言い終えるか否か、舞理沙のその小さな顔にその凶悪な拳を叩き込み、足で彼女の華奢な体を蹴り飛ばした
舞理沙「ぅぐ...!ぐあぁ!!」
榛奈「舞理沙姉......!」
彼の拳の威力は元から強く、さらには舞理沙の身体はまだ幼く小さい。たった二回、それだけで動かなくなってしまうほどだった
その時ようやく舞理沙の瞳を恐怖が支配した。怖い痛い恐い......そればかりが彼女の心を駆け巡り、彼女を立ち上がらせてはくれなかった。どれだけ立ち上がろうとしても恐怖と痛みで力が入らず、空振りに終わるだけ
そんな彼女の様子に隆や後ろ二人は気分を良くした。そうだ、こうでなくっちゃ面白くない、と
隆「はっ、俺に逆らうからこんな痛い思いをするんだ。自業自得だな」
いや......そこで何もできないでいるお前の妹のせいか......
と、彼は言葉を続けた。その言葉に榛奈は身体を震わせた。それは恐怖でなのか......はたまた別の感情でなのか......
それは定かではないが、榛奈は身を震わせ、縮こまるだけで何もしてこない。彼らは怯えて何もしてこないのだろうと思った。彼らにとって今まで散々虐めてきた榛奈など取るに足らない存在だと思っていたからだ
義孝「さて、それじゃ姉妹がどっちも動けなくなったところで予定通りヤるとするか」
廣道「いや、予定変更で姉妹どんぶりといこうぜ」
隆「俺はどっちでもいい。いやどっちもといこうか」
そう言って彼らは気持ち悪い笑みを浮かべつつこれから行うことにある場所を膨らませていった
舞理沙の心は既にズタボロ。この場に出てきたこと自体を後悔しそうになっていた
そんな時だった——
榛奈「.........んな......やら..................だろう.........」
義孝「ああん?なんつった?」
榛奈「そ......こと......せる............だろ............」
義孝「聞こえねえよ。言いたいことがあるならもっとはっきり言いやがれ!!」
榛奈「っだから!そんなことさせるわけねえって言ってんだろうがああああ!!」
そう榛奈が叫んだ瞬間、彼女の周りをとてつもない暴風が吹き荒れる。そして暴風は彼らに襲い掛かった
義孝「ぐへぇっ!」
隆「なぁっ!?!?」
廣道「ぐああああっ!」
湊「っ......!この力はっ!」
風は瞬く間に彼らを吹き飛ばし舞理沙から遠ざけた。吹き飛ばされた彼らはそれぞれ壁にぶつかり動けなくなる者、何とか受け身をとることができる者、ただ吹き飛ばされる者。それぞれだ
そしてもはや空気となっていた湊は彼女達から最初から離れていたためか強い風に吹き飛ばされそうになっただけで吹き飛ばされてはいなかった。しかしその暴風を身に感じた瞬間、驚きを顔に出していた。それは暴風に対してではなく、暴風を“起こした力”に対して驚いていたのだ
廣道「な、何が起こって......ひぃっ!」
隆「なな、なっ......!」
吹き飛ばされただけの者、義孝は何が起こったのか把握しようと榛奈を見た瞬間、驚きで悲鳴をあげた。何とか受け身をとることができた者、隆も同じように榛奈を見て絶句していた
榛奈は立ち上がり、舞理沙の前に立ち自分たちを今までにない形相で睨みつけていたのだ。その表情は語るまでもないほど怒りに満ちている
しかしそれだけならば彼らもここまで驚きはしなかっただろう。彼らが驚いた理由、それは榛奈の周りを風が渦巻いていたからだ。それは不自然で、おかしい。その得体のしれない現象と、その現象を引き起こしたであろう人物に彼らは圧倒されていた
そしてそれは榛奈のすぐ後ろにいた彼女も例外ではなかった
舞理沙「...はる......な......?」
榛奈「............」
舞理沙からは榛奈の表情は見えない。しかしその雰囲気から彼女が今まで見たどの感情よりも強く、怒りを露わにしていることは感じていた
そもそもとして当時の榛奈は悪感情を表に出すことが少なく、ある程度付き合いが長くなると分かる程度だった。だというのに今、榛奈は怒りを隠そうとすらしていない。それだけで彼女が相当激怒していることが窺えるだろう
そして舞理沙は気づいた。先ほどから風が吹いているというのに自分にはそよ風程度にしか感じないことに。彼らが吹き飛ばされた時も、風をまとった榛奈が近くにいる今も、舞理沙にはそよ風のように感じていた。それはまるで彼女の周りだけ風が弱くなっているかのようだった。いや、実際に彼女の周りでは風が弱くなっていたのだ
そのうちに両者無言の静寂が訪れる。その場には榛奈の周りを渦巻く風の音と外の音しか聞こえない
そんな静寂を榛奈の周りの風が止み、先ほど壁に当たって動けなくなった廣道が起き上がったことで打ち破られた
義孝「このぉ......!」
隆「な、なんなんだ今の......」
廣道「あ、明らかに自然じゃなかったよな......」
義孝「テメェ何なんだよそれは!」
彼らがそう思うのも無理はない。ただの暴風が吹くのならまだしも、こんな行き止まりの路地裏に、人を飛ばすほどの威力のある風が吹き荒れ、彼女を中心に渦巻く。そんなの超常現象、普通なら起こりえない現象だ
しかし、彼らの住んでいる場所が何処だか忘れてはいけない。彼ら人里の人間ならば普通じゃないことも、一歩外に出るだけでそれが“常識”なのだから
湊「......魔法だよ」
義孝「魔法......だと......?」
意外にも彼の質問に答えたのは後ろにいた湊だった。彼は義孝の疑問に答えるかのように言葉を続ける
湊「うん......いまの、あきらかに魔力を感じられたんだ。今のだけじゃない。前々からその子から魔力を感じることがあったんだ......」
隆「魔力に魔法......ってことは妖怪っ!?」
廣道「よ、妖怪って......ひぃっ......」
義孝「う、うわああああ!!」
彼らはそう認識すると一斉に榛奈から距離をとった。人間にとって妖怪とは恐ろしいもの。それは彼らのような者も分かっており、彼らもまた妖怪という得体のしれないものに恐怖を抱く者たちでもあったのだ
さて、もしこの場にいるのが榛奈と彼らだけならば榛奈がこれ以上何かをすることはなかっただろう。しかし彼らは先ほど、榛奈だけではなく彼女の姉に暴力を振った。それは彼女にとって耐え難き屈辱であり、決して許すことのない罪である。そもそもとして彼らが舞理沙に暴力を振るわなければ彼女がこれほど怒ることも、魔法を使うこともなかったのだ。これは彼らが榛奈を下に見ていたことで起きてしまった出来事であり、これから起こることは彼らの自業自得だ
榛奈「...貴様ら......覚悟はできてるんだろうな......?」
廣道「ひ、ひぃぃ......」
義孝「や、やめろ!来るなっ!」
既に二人は怯え切っていて、先ほどに威勢が微塵も感じられなくなっている。しかし彼は憶することはなかった。今まで散々虐めていた相手に憶するなどプライドが許さなかったのだ
隆「へへっ、どうせ妖精とかと同じくらいだろ......そんなこけおどし、俺には通用しない!」
榛奈「そうか......じゃあ」
——死ね
榛奈がそう言い終えるか否か、風は衝撃波となり彼を襲う。先ほどと違って明確に相手を傷つけるために放たれた風は、先ほどとは比べ物にならないほどの威力を持ち、彼を簡単に吹き飛ばし、壁に強く打ち付けた
隆「ぐあっ!」
義孝「せ、先輩っ......!」
彼の様子を見ると壁に強く打ち付かれた衝撃で気を失っており、衝撃波の影響で体には先ほどまでなかった擦り傷や切り傷があちこちにできていた
義孝「そ、そんな......隆先輩が倒れるなんて......」
廣道「ば、化け物だぁ......こいつ化け物だぁ......」
榛奈「......次は、貴様らだ......」
もはや榛奈を妖怪ではなく“化け物”と称す彼ら。怯える彼らに榛奈は容赦なく鉄槌を下そうとした。しかし......
舞理沙「榛奈っ!待って!」
榛奈「っ!?......舞理沙...姉......?」
彼女の行動を止めたのは舞理沙だった。
なぜ......どうして......?なんでとめるの......こいつらは悪い奴なのに......舞理沙姉を傷つけたやつなのに!
榛奈はそう言いたかった。舞理沙を......自分の大切な姉を傷つけた彼らに怒りをぶつけたかった。もはや彼女には自分が虐められていたことより、舞理沙を傷つけたことしか頭になかったのだ
だからこそ後ろから伝わってきた温もりが何なのか、一瞬分からなかった。何が起こったのか理解できなかった
でもその温もりは温かさとは反対に榛奈の頭を冷やすのには十分だった
そして冷えた頭でようやく理解できた。舞理沙が自分に抱き着いてるのだということに。温もりは舞理沙が抱き着いている部分から伝わっていたのだ
舞理沙「榛奈、言いたいことは分かるよ。今まで散々虐めてきた相手だもん。やり返したいのは分かる。でもここは一旦退こう?大丈夫、お母様や慧音先生に言えばこいつらなんていっぱいいっぱい叱られるから。だからね......?」
榛奈「...分かった」
榛奈がそういうと、榛奈の周りに吹いていた風は止み、何事もなかったかのように静寂が訪れた
そして榛奈は怯えている彼らを一睨みすると、舞理沙の手を引いてその場を去っていった。睨まれた彼らはしばらくの間恐怖で動けなかったが、何とか動けるようになると隆を担ぎ、高冨の家へ歩いて行った
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魔理沙side
フラン「それからどうなったの?」
家に帰った私たちはまっすぐ母さんの元に向かってな。そしたらちょうど慧音が来てたんだぜ。慧音も榛奈の様子が変なのに気づいてたから心配になって母さんに様子を聞きに行ったんだと。で、聞きに来たはいいけどとっくにうちに帰ったはずの本人に私まで帰ってなくて自警団に相談するところだったんだ。そんなとこに帰ってきたんだからそりゃもう怒られたさ。でも母さんは事情を知っていたから、すぐ慧音をなだめて、私は母さんに報告した。「榛奈を虐めてた主犯が誰か分かった」って。その一言を聞いて慧音はひどく驚いてたな。で、私の後ろに隠れてた榛奈に色々質問をかけようとしてたけど、母さんが止めて、自分たちが聞いておくから先生には明日報告するってことで帰らせたんだ。母さんは身内だけの方が話しやすいと思ったんだろうな。その行動は正解だった。一つの部屋に私と母さん、それに距離をとってクソジジイが集まって、少しずつ話を訊くと、榛奈はいろんなことを話してくれた。主犯に告白されたこと。それを断った結果虐めが始まったこと。最初は軽度のものだったのに段々エスカレートしていったこと。私たちに話そうにも心配をかけたくなかったし、話そうものなら私がどうなるかわからないぞと脅されていたこと。暴力も振られていたことも話してくれた。それで母さんが榛奈に服を脱いで見せてほしいって言ったら榛奈は嫌そうにしながらも見せてくれた
——ひどい数の傷跡だった。それはもう普段の生活なら絶対にならないほどの傷の数。服を着ていなければ誤魔化しようのないほどの。痛々しくて見ていられなくて、思わず目をそらした時に気づいた。どうしてこんなにも傷ついているのに気づかなかったのかって。そう思って色々思い出してみれば、その理由が分かった。うちでは幼いころは母さんか榛奈と一緒に風呂に入ってたんだ。でもここ最近は...榛奈が虐められ始めて少ししたときから榛奈は一人で風呂に入るようになったなって。私が誘っても頑なに入ろうとしなかったし、着替えるところとかも見なかった。それは榛奈が自分の肌を隠してたからって気づいたら、どうしても自分が情けなく思えてさ。もっと前から気づけたはずなのに気づけなかった。喧嘩する前に気づけたはずなのに
自分が情けなくて、でもその感情は怒りに変わって「あいつらに榛奈と同じ思いをさせてやる」って思わず体が動きそうになったけど、それを察した母さんが止めてくれた。そしたらあのクソジジイは榛奈に色々訊いた。誰がやったのか、どんな暴力を振られたのか、どんな風にされたのか事細かく。そんなこと聞いて思い出させたらどうすんだって怒鳴ろうとしたけどまた母さんが止めて、反抗しようとしたけど、私を止めていた母さんの手が震えていて、榛奈の話を聞いていくほどに震えが強くなっていって、「あぁ、母さんも本当は私と同じように怒ってるんだ」って。そう思ったら不思議と心は落ち着いていったんだ
で、それらを榛奈が話し終えると、今度は私も加わってその日に起こったことを話した。榛奈は呼び出されたところから、私はあの路地裏に着いてからのことを全部。でもあの榛奈の周りに吹いた風のことは教えず、何とかして逃げたってことにしておいた
それも話し終えると母さんは榛奈を抱きしめて「気づいてあげられなくてごめんね。こんなになるまで助けてあげられなくてごめんね。でももう大丈夫だから。私たちが守ってあげるから」って。そしたら榛奈は泣いたんだ。今まで涙目にはなっても涙なんて見せなかった榛奈が、大粒の涙を流しながら大声で泣きじゃくった。私もそれにつられて榛奈と母さんに抱き着いて泣いた。母さんは私たち二人を抱きしめた。とても力強く。でも優しく。それがとても嬉しくて。榛奈は一人で頑張ってきて、寂しかったんだろうな。その寂しさがようやく無くなって、辛かったのが無くなって。私も知らず知らずのうちに寂しくて辛かったんだ。そりゃ榛奈ほどじゃない。でも泣いた。榛奈に負けないくらいな
その後のことはよく知らない。泣き疲れた私はそのまま寝ちゃったし、朝起きれば今日は寺子屋は臨時休校だって言われて、榛奈は慧音とジジイに連れられてどっかに行って。帰ってきたときの榛奈の顔はなんだかすっきりしてたからな。母さんも知らない方がいいって言ってたし、そのまた次の日に寺子屋に行けばあいつら全員が勢ぞろいして他にも人がいる中で全員土下座で謝ってきたからな。その中には特に榛奈を虐めていた主犯とか取り巻きとか女とか。そいつらもいた。でも主犯と三人は前には見なかった傷がそこら中についてた。全部殴られた跡だ。それはもうひどい有様で、でもあいつらのやってきたことを考えると自業自得だなって。でもまさかあのプライドの高いあいつらがこうやって謝ってくるとは思ってなかったな。何せそのプライドのせいで今回の事件は起こったんだからな
で、謝ってきても私は怒りがわいてきたから怒鳴ろうとしたんだが、榛奈が止めて、あいつらに土下座をやめさせた。もう榛奈の考えることが分かんなかったぜ。本当なら私より榛奈の方が怒ってるはずなのに、怒りを見せず、あいつらを許したんだから。訊けば前日に既に主犯に家に行って散々やってきたんだとか。それで奴がああなるところも見せられたからもう怒りはなくなったんだって。私にはそれでも許すことは出来ないだろうな。今でも怒りを感じるんだ。でも皮肉なことにその出来事のおかげで榛奈の男性恐怖症は軽減されたし、どことなく前より吹っ切れた感じがした。だからってのもあるが、本人がいいならいいのかなってな
それからそこまで経たないうちに主犯は寺子屋で、いや人里でも姿を見なくなって、取り巻きに聞いても「しらない」か「教えられない」のどっちか。榛奈はどうも何があったのか知っていた...というより勘づいていたみたいだが、どうでもよかったし、それ以上何かが起こることもなかった。噂じゃ人里を追い出されたとか言われてたな
で、このことがあって私は強くなろうと決めた。この事件は周りの力に頼って解決した物だからな。それじゃ駄目なんだって、それじゃいざというときに守りたいものが守れない。それが嫌なんだ。だから私は強くなるための手段を探して、そのうちに家に居候してた香霖に私には魔力があるって聞いて、我儘言って魔導書を貸してもらって親に隠れて練習して。それだけじゃって思って見た目はどうにもならなかったから態度を変えた。強く見えるように、強くなれるように男みたいな口調にな。丁度そのころから霊夢とも会ってたし、魔法の練習相手には事欠かなかったからな。その態度が定着するころぐらいに私はジジイから勘当されて、そうやって今の私が出来たんだ。いやはや全く、こうやって誰かに語ってみるとホントにあの頃の自分が情けないぜ......
フラン「そんなことないと思うよ。魔理沙は榛奈のために頑張ったんでしょ?魔理沙は妹思いで優しくて勇気があったからそうやって榛奈を助けることができたんだし、普通なら逃げだしそうな時も逃げなかった。本当に凄いね」
魔理沙「そ、そうか?そう言われると照れるな......」
フラン「それに魔理沙と榛奈、本当に似てるんだね」
魔理沙「ん?どういうことだ?」
フラン「榛奈もね。守りたいものを守れるようにって魔法をパチェに習ってるんだって。強くなろうとしてるんだって。だからそこが似てるなあって」
魔理沙「そうか......なら私ももっと頑張らなくちゃな。よし、じゃあフラン。早速強くなるために弾幕ごっこしようぜ!」
フラン「ふふっ、今日は負けないんだから!」
魔理沙「今日も負けてなんてやらないんだぜ!!」
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榛奈side
家族に全部話した次の日。私は朝からお父さんに連れられて寺子屋に行って、お父さんは慧音先生を呼び出すと部屋に案内されて、昨日お母さんたちに話したのと同じことを言った。そしたら先生は怒りで身体中を震わせて、まず私を叱った。どうして言わなかったんだって。私は何も言えなかった。だって結局後になって考えてみれば私のやっていたことはただ意地を張っていただけなんだから。それで自分を傷つけてちゃ意味がない。本当なら誰でもいい。誰か大人に相談すればよかった話なんだから。でも過ぎてしまったものはしょうがない。私は黙って先生の説教を聞いた。反論しようとは思わなかった。それは先生の話が正論だったのもあるが、何より慧音先生も心配していたんだ。私は一人じゃない。そう思えば奥から何かがこみ上げてきたけど、昨日散々まき散らしたんだ。眼から溢れることはなかった
それから三人で私を虐めていた主犯である高冨の家、つまり一条家へ行った。穏やかに言うなら責任を取ってもらいに来た。ストレートに言うなら殴り込み
家に行って、一条家当主、つまり高冨のお父さんにお宅の息子さんはこんな悪行を働いていたんですよって説明。向こうも最初は疑ってたけど、霧雨家の当主、さらには人里の代表者でもある慧音先生が揃って来たんだ。さらには私に刻まれた傷、その一部を見せた。そうすればほら、後は分かるかな。一条家当主は従者に高冨と取り巻きの三人、そしてその親を呼び出すよう命令。全員揃えば慧音先生が代表して事情を説明。わざわざ本家の当主が呼び出したんだから何事かと思ってた各家の当主は驚き。最初は私たちを疑ってそんなことないっていう親もいたけど、心当たりのある親は自分の息子を怒鳴りつけていた。それで一人がボロを出せばもう隠し通せない。その部屋が怒鳴り声の嵐で満たされる前に、説明するとき以外ほとんど言葉を発していなかったお父さんが怒鳴って、その声にビクッて固まってるとお父さんは高冨に近づいて殴った。パーとかじゃない。思いっきり拳で、思いっきり力を入れて。普段道具屋なんてやってると力が衰えてくるみたいなことを思う人もいると思うけど、実際は力仕事ばかりだ。だって商品の入った重たい木箱を毎日何十個も運んで、立ち仕事ばかり。出張販売なんてのもやったりしてるから足腰鍛えまくり。そんな男の拳だ。別に相手も小柄なわけじゃないのに吹っ飛んだ。凄い音がした。それに驚いてると先生が「何してるんだ」って言いそうになって、それを意外にも殴られた本人の父親が止めた。そして一条家当主はお父さんに「息子がこんなことをしてしまったのはキチンと教育していなかった私たち親も悪い。なので思う存分息子共々殴ってくれて構いません」って言って、他の親も同じように言った。『蛙の子は蛙』とか『この子供にこの親あり』とかそんな言葉があるけど、今回の場合は当てはまらないなと思った。やはり一家の当主だからなのだろうか。息子が似たのは顔だけだったわけだ。で、お父さんは親子どっちも殴るのかと思ったら、そんなことはなかった。「さっきのは感情に流されて殴っただけだ。まだきちんとお前たちの息子に話を聞いていない。追加で殴るのはそれからだ」って言った。そこで彼らがなぜ私を虐めたのか。言ってしまえばまだ私からの視点でしか話していない。それでも十分かもしれないが、やはりお互いの言い分を言った方がいいからね
で、聞いた話がこうだ。私たち姉妹を自分のものにしようとした高冨。でも姉には断られ、妹...まあ私なんだけど、私には近づくだけでも無理。周りもいる状況で告ったっけ断られた挙句人のいる前で顔に泥を塗られた。だから私相手に虐めを始めた。それで脅せば自分のものになるかと思ったら虐められている本人の様子は変わらない。それが気に食わなくてどんどんエスカレートしていってしまい、歯止めが利かなくなった。そして名家である霧雨家の娘を虐めて、後が怖くなかったのか、みたいなことを聞けば、「名家であろうと俺の家には敵わないと思ったから、脅せば何とでもなると思ってた」って言われたね。そう言った瞬間、今度は彼の父親が彼を殴って、無理やり土下座させて、自分もして必死に謝ってきた。「自分の息子が世間知らずで申し訳ありません。愚かな息子で申し訳ありません」って。なんでそんなに......って思ったら、彼も同じことを思ったというか、下の家なんだから謝る必要はないだろ的な事思ったんだろうね。でも彼の父親がわざわざ説明してくれた。人里での一条家は確かに高い位置にいる。でもその上にも名家はあるんだって。一番はやはり稗田家。そして驚くのが、霧雨家は五番以内に入る名家だったのだ。そして肝心の一条家は10番近く。つまり大きな差があって、霧雨家は家系的に事を起こすような家柄ではなかったから道具屋として目立っていただけで、実は彼の家よりも遥か上の立場だったわけだ。それなのに彼は「自分の家、つまり自分が最強なんだ」って感じに家を過信しすぎていたんだ。で、そのことがその霧雨家の当主であるお父さんに聞かれた。それはもう顔真っ青な出来事だ。自分の息子をあまりにも甘く育てすぎてしまったね
ともかく両方からの意見を聞いても、結局は彼らが悪いってのは変わらず、親たちは自分の息子を私に差し出して、思う存分殴ってくれて構わないって言った。当たり前のように彼らは反抗したけど、親が怒鳴りつければ静かになった。あの隆までもがだ。私としては別に殴らなくても良かったんだけど、それじゃ親たちが納得しないからってことで一人一発ずつ殴って終わった。それでも本気で殴ったため自分の手が痛い。相手も痛がってた。でもそれだけじゃ足りないって親たちが言って、「私はもういいです。納得ができないのであれば自分達で自分の息子を殴ってください」って言った。ある意味他人に殴られるよりも精神的に辛いだろうに、私はそこまで考えずに言ったんだから子供の残虐なところが出たのかもね。親たちも自分で殴るのは......ってなってたけど、高冨のお父さんは違った。自分の息子を何度も殴った。たとえ高冨が泣こうと喚こうと殴って、ようやく終わったころには彼の顔や体は痣だらけ。口の中を切ったのか口に血がついてた。いやはやよくも自分の息子相手にここまで殴れるものだよ。ってお父さんも結構舞理沙姉を殴ってるな......って他人事のように思うくらいには。いや他人事だから間違いではない。それを見た周りの親たちも高冨のお父さん並みではないが、殴って、痣付けて
それから私たちは殴られて泣いたりしてる彼らを放ってこれからの話をした。彼らは自分たちの息子がやらかしたことだが、教育ができていなかった親である自分たちにも責任があるって言って私とお父さんに判断を委ねた。お父さんも私に判断を任せるって言って、私は悩んだ。正直なところさっき殴ったときに怒りは沈んでたし、さらに彼らが殴られてるのを見てスッキリしてる面もある。だから私としてはもうよかったし、むしろもう彼らと関わりたくなかった。でも人里にいる間は彼らと家柄関係で話をすることもあるだろうから、それは無理だろう。だから少し考えて言った。「私から彼らにやることはもうないです。ですが今後このようなことが再発しないように教え込んでおいてください。そして私達に酷いことをしないでください。私達の平穏を壊さないでください。もう自分勝手に相手を傷つけるような真似をしないようにしてください。以上のことを守っていただけるのであれば私はもう個人であなた方に関わることはないでしょう。それで納得できないのであれば自分たちで彼らの処遇を考えてください」って。我ながらなかなか大人な発言した気がする。そしてそれに初めに納得したのは高冨のお父さん。彼は納得したようにうなずくと、高冨にこう言い放った。「今の話をよく聞いたな?私はこれだけでは納得していない。だからお前とは後でじっくりと今後の話をしよう」って。言葉は普通なはずなのに威圧感は凄くて、拒否権なんて傍から見てる私でもないって分かった。元々泣いてた高冨がさらに涙流して震えてたね。ご愁傷様
で、取り巻き三人の処遇は簡単に言うなら私の忠実なる僕?まあ使い勝手のいい駒になった。何か頼んだら悪いことでない限り絶対にやってくれる家来?まあ関わること自体嫌だったのでその後頼むことなんてなかったけど
それからそういうことが決まったら私はもう彼らを見てることさえも嫌になってきたからさっさとお父さんと一条家を出て、家に帰った。慧音先生も家まできてくれて、お父さんと一緒にお母さんに話してきたことを説明。私は舞理沙姉に「もう大丈夫だよ」って言って、それで話はおしまい。かと思うじゃない?
その次の日は寺子屋がいつも通りあったから舞理沙姉と行ったらあいつら他の取り巻きや綾子を連れて全員が土下座してきた。正直こんな人数で土下座って邪魔くさいなって思ったし、自分的にも昨日のでもう終わりだと思ってたから土下座を辞めさせて許した。それからまた数日経ったころ、高冨が突然寺子屋に来なくなって、周りが里でも見かけなくなったとか聞いたときは「あ、勘当されたんだな」って予想した。実際その通りなのかは当の本人とそれに関わった人だけにしか知らないだろうけど、それもどうだってよかった。ただこれで私の平穏は取り戻せたんだなって
そして事が終わってから気が付いた、というかそれまで気づく余裕がなかっただけなんだけど、この事のおかげか何かで私の男性恐怖症は和らいだ。今気づけば話し合いをしたときなんて慧音先生以外男性だし。その中で平気だったんだから彼らのおかげで相当和らいだみたいだ。ある意味感謝だが、もっと丁寧な改善がよかったよ。もっとも記憶が戻った今はその名残しか残ってないけどね
ともかくこれで私は男性恐怖症が完全にではないけど治った。彼らとはあれから寺子屋でも関わることはほとんどなく、私が里を出たことで余計に関わらなくなった。だから今まで思い出すことはなかったんだけど、先日霖さんにあったからかな。思い出しちゃった
ま、とりあえずこの番外編はこれで終わりだよ。...え?メタいって?まあ気にするな。今の私『霧雨 榛奈』は元気に幸せに暮らしてますってことで、また次回会おうね
後書き~
何でこんなの書いたかって?
...本当は30話で使う予定だったんです。でも「あれ?話戻らなくね?」的な感じになって。でも消すのはもったいない。「そうだ、番外編に使おう」
こうしてこの話はできました。作製期間分かんない。シリアス?物によっては美味しいよね
ちなみにすでに投稿している話にこの香りを嗅がせています。意味わかんない?大丈夫、私も深夜テンションで書いてるから意味わかんない。
ともかくこの事件がきっかけで榛奈さんの男性恐怖症は薄くなりましたが、記憶が戻った今は関係ないってね。...多分......
さて、また次回もゆっくりしていってね!!