東方変守録   作:ほのりん

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前書き~

お久しぶりです。毎回同じこと言ってる気がしますほのりんです。
いえ、別に活動が疎かになっていたわけじゃないですよ?地味にもう一つの小説で月一投稿はできていますから......
え?毎週投稿しろと?無理無理、あれができるのは時間があるのとモチベ上がってるのと文章を書くのが得意な人だけです。私はマイペースに行きましょう。
さて、前回のあらすじ...はないです。前話見てください。

それでは今回もゆっくりしていってね!!



第36話『あいつの正体はなんだ?』

 中央広場での一件の後、あの変なフードを被ったやつがあの場から離れたあと、私たちも慧音と少し話してから別れ、表とは反対の裏道に来ていた。何故こんな場所に来ているのか、それは今私の後ろを付いてきている吸血鬼――フランが言い出したのがきっかけだ

 なんでも、あの変なやつと二人でコソコソと話したとき何か言われたらしく、そいつの指示で裏道にある“ばあちゃんちのうどん屋”に向かっているところだ

 

魔「なあフラン。いい加減教えてくれないか?どうしてそいつはあのうどん屋に来いって言ったんだ?」

 

フ「そ、それは多分着いたら分かるから。とにかく行こ?」

 

魔「...はぁ......」

 

 さっきからフランに何度もあの場所に向かう理由を訊いてるが、何度訊いても「着いたらわかる」としか言わない。答える時の様子からするに恐らく理由を知ってるんだろうけど頑なにそれを言わない

 そんなフランも変だが、私の中にはもっと引っかかるものがあった

 さっきの変なやつがフランを助けたとき、そいつのフードが少しの間取れたんだ。そしてそのフードの下に隠されていたあの金髪、そしてあの二つ結びにそれを止めるリボン。何処かで見たことある気がするんだが、何処なのか思い出せない......

 つい最近見かけて、更にはよく見る髪だった気がするんだが......

 

フ「...ねぇ魔理沙。この美味しそうな匂いは何?」

 

魔「...ん?匂いか?......あぁ出汁か」

 

 フランにそう訊かれて一旦考えをやめ周囲の匂いに意識を向けると、確かに美味しそうな匂いがする。昔はよく嗅いだこの匂い、嗅ぐと思わずうどんが食べたくなるんだよなぁ......

 

フ「ダシ?」

 

魔「この匂いはうどんに使われてる出汁の匂いだぜ。出汁の匂いがしてきたってことはつまりうどん屋に近づいてきたってことだな」

 

フ「そっか、これがうどんに使われてるスープの匂いなんだね......」

 

魔「なんだフラン。うどん食べたことないのか?」

 

フ「うん。榛奈から少しだけ聞いてたことあるけど、食べたことは無いよ。咲夜も料理自体は知ってるんだろうけどレシピは知らないだろうし。お姉様は知ってるかどうか知らないし」

 

魔「レミリアはともかく、あの何でもできそうな咲夜がレシピをしらないのか?...あぁいや、うどんとかなら有り得るか」

 

 そもそもコイツらは幻想郷よりもっと遠くの“西洋”ってとこから来たらしいからな。そこは外の世界ってのもあるが、幻想郷と文化や使われてる言語が全くと言っていいほど違うらしい。よく紅魔館で飯を食わせてもらってるが幻想郷じゃあまり、もしくは全くお目にかかれなさそうな料理がたくさん出てきた。もしかしたら向こうじゃうどんという料理は無いのかもしれないな

 

フ「うん。訊いたことはないけどね」

 

魔「ならこれが初めてのうどんになるんだな」

 

フ「うん!実は榛奈に話を聞いてからずっと食べてみたかったんだ♪話を聞いたころはまだ私館を出れなかったし、榛奈も作り方は知らなかったから食べれなかったけどようやく食べれるよ♪」

 

魔「そうかそうか。それなら言っとくが、ばあちゃんの作るうどんはそんじょそこらじゃ食べれないような美味しさだぜ。それを食べると他のうどんが食べれなくなるほどにな」

 

フ「えっ!?そんなに美味しいの!?」

 

魔「おう。だから覚悟しとけよ?本当に物凄く美味しいんだからな」

 

フ「うん!楽しみだなぁ♪」

 

 ま、何にしてもばあちゃんのうどんを久しぶりに食べれるならいいか

 

 

 

魔「さ、着いたぜフラン。ここがばあちゃんちのうどん屋だ」

 

フ「え?でもお店みたいには見えないよ?“ノレン”っていうのも扉の前に掛かってないし、看板も無いし......」

 

魔「あぁ、ばあちゃん曰く「隠れ屋的でかっこいいでしょう?それに金儲けのためにやってるわけではないからねぇ」だそうだ。おかげでたまに来る客は大体常連だとかな」

 

フ「ふぅん。確かにこの中からスープの匂いがするけど......やっぱり普通の民家にしか見えないね」

 

魔「ならやめるか?」

 

フ「え!?いや止めないよ!だって待たせちゃってるんだもん!」

 

魔「“待たせる”?...あぁ、そういや待ち合わせがどうこう言ってたな」

 

フ「う、うん。だから入ろっ?ね?」

 

魔「あ、あぁ分かったが......」

 

 やっぱり訳がわかんないな。ま、入ればわかるらしいし、入るだけ入るか

 

 ガララララ......

 

魔「こんちわー、きてやったぜー」

 

フ「こんにちはー......」

 

 シ-ン......

 

 挨拶をしながら扉を潜れば見慣れた机や椅子。奥へ繋がる通路、シンプルで簡素な見慣れた店内が広がっていた。しかしその店の主からの返事は返ってこない。奥にでも引っ込んでるのか?ばあちゃんもいい歳だから耳が遠くなってるのかもな

 

フ「えーと、あっ!魔理沙、いたよ」

 

魔「ん?」

 

 そう言われてフランの見ていた方向を見ると、そこには机に伏せた黒い物体がいた。というか黒いフードを被った人物がいた。どうやら寝てるのか背中が規則正しく上下している。他に客もいないし、もしかしなくてもこいつ、さっきのフードの変なやつだな

 しかし待ち合わせで寝てるとは。よほど疲れてるのか、或いは寝るのが好きなのか......

 後者だな。多分

 それはともかく、こいつを起こさないことには始まらないな。って思ってたらフランがそいつの元に駆け寄って、肩を揺さぶっていた

 

フ「ねえ、起きて。ほら、起きてってば」

 

?「ぅ...ぅぅん?...あぁフラン様、おそよう......」

 

フ「うん、おはよ――っておそよう!?おはようじゃないの!?」

 

?「だってお昼だから...そういうには遅い......すぅ......」

 

フ「あぁ確かに...って言ってるそばから寝ないでよ!ほら起きて!魔理沙も連れてきたんだから!」

 

?「ん...うん......起きる......」

 

フ「ふぅ、よかった」

 

 なんともまあ傍から見たら漫才をしてるようにしか見えない光景だが、それより驚いたのが奴が面を着けたまま寝てたことだな。外せばいいのによ

 ともかく起きたってことで何でここに呼び出したのか聞くとしようか

 

魔「よお、さっきぶりだぜ」

 

?「あー...うん。さっきぶり...だったっけ......ついさっき神社で会った気がする......」

 

魔「...お前まだ寝ぼけてるのか?」

 

?「うん...かも......少し変な夢見た......」

 

フ「どんな?」

 

?「......なんだっけ。わすれた」

 

魔「なんだそれ......」

 

フ「あ、あはは......」

 

?「いいにおい......ここどこ?」

 

魔「ここは裏道にあるうどん屋...ってお前が呼び出したんだろ?」

 

?「あー、そうだったっけ」

 

 と言いつつ眠そうな雰囲気を出している変な奴。私とフランが机を挟んでやつの向かいの席に座ろうとしている間に、机に置いてあった湯呑の茶を面をずらして飲み干すと、ようやく起きたみたいだ

 

?「あーうん。思い出した。そうそう、私が二人を呼んだんだった。とりあえずばあちゃんを呼ぶ?」

 

魔「そうだな。じゃなきゃ注文もできん」

 

?「分かった。ばあちゃーん!!」

 

 そう奴は大きな声でばあちゃんを呼んだ。そうじゃないと来ないからだ

 まずこの店はよく店の者が店内にいない。というか店員が店主であるばあちゃんだけだ。で、そのばあちゃんはお客がいようといまいと奥によくいる。例外は客と話している時くらいだ。だから用がある時だけいなかったら大きな声で呼ぶ。それがこの店なんだ

 それだと商売する気あるのかと聞きたくなるが、本人はそんな気さらさらないらしい。店がある場所や外見的にもその様子がひしひしと伝わってくる。普通に暮らしていたらこの店の存在自体知らないだろう。なのになんで私や榛奈がこの店を知ってるかというと、母様がばあちゃんの知り合いで、母様が生きていたころはよく来ていたからだ

 と考えていると、奥からこの店の店主であるばあちゃんがようやく出てきた

 

ばあちゃん「はいはい。おや舞理沙。それに可愛らしい妖怪さんも。こんにちは」

 

魔「おう、久しぶりだぜ」

 

フ「こ、こんにちは......」

 

 フランはそう言いながら私の陰に隠れた。これが今日分かったことなんだが、フランはどうやら人見知りをするらしい。里の中を歩いてるといろんな人に声をかけられたが、大体は私の後ろに隠れていた。どうも長い間紅魔館の住人と、時々来る“食材”としか話したことがなかったらしい。まあ食材ってのはアレなんだがな......

 それで初対面の人と接するのが少し緊張するらしい。私が初めて会ったときはそんな様子全く見なかったけどな。目の前の変な奴に対しても......ってそういやフランとこいつは知り合いみたいだから初対面じゃないか

 

ばあちゃん「あら大丈夫?もしかして人見知りだったりするの?」

 

魔「あ~、そうみたいだな。里で話しかけられたりしたが私のそばに隠れてな......」

 

ばあちゃん「あらあら、それって昔の榛奈みたいね」

 

フ「え?榛奈も人見知りしてたの?」

 

魔「ん?まあ、ある意味人見知りしてたな。特定条件下だったが」

 

 榛奈のあれは人見知りというか男性恐怖症だったからな。ちょっと違うが、まあ似たようなものだと思ってもいいだろう

 

ばあちゃん「今はどうなのかしらね?」

 

 そうばあちゃんは首を傾げた。ってん?今一瞬ばあちゃんの目が変な奴に向いたような......気のせいか

 

魔「さあな。この間榛奈の部屋に勝手に入ってたやつとは普通に話してたみたいだが......」

 

ばあちゃん「勝手って......榛奈は一体今どんな生活してるのよ......この間配られてた天狗の新聞にも載ってたし」

 

?「......!?」

 

魔「あー、この間の異変だろ?あんなのいつの間に撮ってたんだろうな」

 

フ「え?新聞に載ってたの?私見たことないから見てみたい」

 

魔「そう言われても私は香霖に見せてもらっただけだからな......」

 

ばあちゃん「それなら私が持ってるわよ。今飲み物と一緒に持ってくるわね」

 

フ「う、うん。お願いします......」

 

 そう言ってばあちゃんは奥へ行ってしまった。その間食べるものでも決めとくか?

 

?「フラン様。その間に注文を決めますか?」

 

フ「うん。そうしようかな」

 

?「ではこちら、この店の品書きです」

 

 フランはそれを礼を言いながら受け取ると表を見始めた。私は私で頼むものは決まってるから別に見る必要はないんだが、それは目の前のこいつも同じようだ。これは既に決めてあるのか、あるいは食べないのか。訊いてみるか

 

魔「なあ、お前は品書き見なくていいのか?」

 

?「うん。もう決めてあるから。そういう貴女は?」

 

魔「私も決めてあるからな」

 

?「ふーん」

 

 自分から訊いておいて素っ気ない返事だな。表情もお面で隠れてて見えないから何考えてるか分からないし。というかそれで思い出したが、どうやってお面付けたまま食べるんだろうな。さっきお茶を飲むときはずらしてたけど

 

フ「...ねえ、この“きつねうどん”とか“月見うどん”ってなあに?」

 

?「きつねはうどんの上に油揚げが。月見は卵が乗ってるものですよ」

 

フ「じゃあこの釜揚げは?」

 

?「茹でた麺を茹でた時のお湯と一緒に器に入れて持ってくる料理ですよ。食べ方はざると同じですね」

 

フ「へえ、色んな種類があるんだね」

 

?「一言でうどんと言っても他の料理と同じで様々な食べ方がありますからね。麺の名前も形も様々なものがありますし。カレーをかけて食べたり、麺が細く長くなかったり、地域によって出汁の取り方が違ったり......」

 

フ「深いね......」

 

?「どんなものでも大抵深いものですよ」

 

フ「だね......」

 

魔「いや注文決めるだけでそんな深い話してるなよ」

 

 どうして「何を食べるか」の話から「うどんの食べ方や麺の種類」とかになってるんだぜ......

 

フ「じゃあ魔理沙。オススメを教えてよ。私それ頼むからさ」

 

魔「オススメか......フランはうどん自体食べるの初めてだし、最初は冒険せずにシンプルな『かけ』か『ざる』じゃないか?」

 

?「単に温かいか冷たいかの違いだよね。それでもつゆで味が違うんだけど」

 

フ「えぇ、どうしよう......」

 

 まあ悩むよな。初めて食べるものだと余計に。どうするかな

 

ばあちゃん「ならそれぞれ半分ずつ頼む?それなら両方味わえるわよ」

 

フ「え?」

 

 そう言って現れたのは奥に行っていたばあちゃん。手にはコップが二つと折りたたまれた紙が乗っている盆を持っていた

 

ばあちゃん「ごめんなさいね。ちょっと新聞を探してたら遅くなっちゃったわ」

 

魔「別に待ってないから大丈夫だぜ」

 

ばあちゃん「あらそう?じゃ舞理沙にはお茶要らないわね。舞理沙の分はお面の子にあげようかしら」

 

魔「冗談だぜ。だから私にもください」

 

ばあちゃん「はいはい。どうぞ。お嬢ちゃんもね」

 

フ「ありがとうございます......って“お嬢ちゃん”?」

 

ばあちゃん「ええ。はい、あなたにもおかわりね」

 

?「ありがとうございます」

 

ばあちゃん「どういたしまして。それでさっきの続きだけど、そんなに悩むなら二つ味わってみればいいわ」

 

フ「え?でもいいんですか......?」

 

ばあちゃん「こっちから言ってるのだからいいの。どうせ一玉分を湯がいた後、半分に分けてそれぞれ用意するだけなんだから。それにさっきから話を聞いてればあなた、うどんを初めて食べるのでしょう?なら料理を作る身としては色んな味を楽しんでもらいたいのよ」

 

フ「そうですか......ありがとうございます!じゃあかけとざるを半分ずつおねがいします」

 

ばあちゃん「畏まりました。舞理沙やあなたはいつものかしら?」

 

魔「ああ。いつもので頼むぜ」

 

?「...はい、それで」

 

ばあちゃん「分かったわ。それじゃ作ってる間、新聞でも読みながら待っててね」

 

 そう言ってばあちゃんは再び奥へ引っ込んだ。しばらくすれば調理の音や出汁の匂いが強まるだろう。それまでさっきばあちゃんが持ってきた新聞やこの目の前の奴について調べとくか

 

フ「えっと、『幻想郷を覆う謎の紅い霧』って書いてあるね」

 

?「へえ、いつの間に撮ったのかって思うような写真も載ってますね」

 

魔「まあその記事書いてるのって鴉天狗だからな。その程度の盗撮なんて簡単なんだろ」

 

 私もいつの間に撮ったんだって思うような写真を載せられることがある。まだ本人には会ったことがないが、いつか見つけ出して殴ってやりたいぜ

 

?(この写真...私の写真を無断で載せるとか許可取れってんだ。くそっ、あの天狗今度会ったら一発殴ってやる)

 

魔「ん?お前何か言ったか?」

 

?「いや、何でもない。ただちょっとこの新聞に対して少しね......」

 

魔「そうか......」

 

フ「あっ、この写真榛奈が霧を晴らした時だ。えっと、『紅霧異変、解決したのは巫女ではなく白い魔法使い!?』って」

 

?「はぁ!?」

 

魔「なっ、どうしたんだよ。いきなり......」

 

 

 

?「いやだって!異変解決したのは霊夢と魔理沙姉でしょ!?この白い魔法使いって写真的にも見た目的にも私だろうし!私はレミリア様側の人間だっての!なのにこの見出しって......二人に失礼にもほどがあるよ!!」

 

 

 

魔「ぇ......」

 

?「......あっ」

 

フ「......あはは......」

 

 え、こいつ今“魔理沙姉”って......それに白い魔法使いにレミリア側の人間って......

 驚いて前にいる奴をじっと見れば「まずった」と固まって、横を向けばフランが苦笑いをしていた。ってことはそういうことで?

 私だって別に察しが悪いわけじゃない。そりゃこの店に来てから何となく似てるとは思っていた。フランとのやり取りとかを見てると余計にだ。声だって聞き覚えがあるんだから。でも目の前にいる奴はさっき広場にいたやつと同じ人なわけで、この目の前にいる奴があいつだとすればさっき広場にいたやつもあいつなわけで......

 ただただ目の前に突き付けられた衝撃の事実に驚きながらも私が出せた言葉ってのは何とも情けない言葉だった

 

魔「......もしかしてお前...榛奈なのか......?」

 

榛「あ、あはは......」

 

 榛奈はまるで久しぶりに会ったあの日みたいに、でもあの時と違ってお面の下で苦笑いをしていた




後書き~

もしかしたら最後のやつはあと一回ぐらい使うかもしれない......
ともかく次回はどれぐらいで出来るかな。

次回、魔理沙と榛奈、ときどきばあちゃん?
次回もゆっくりしていってね!!

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