東方変守録   作:ほのりん

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前書き~

今日はひな祭りですね。いわゆる女の子が主役の日です。私はもう子供ではないので関係はないのですが、ひなあられうまうま。
最近ようやく中古で買ったボロバイクがまともに乗れるようになったので走り回してます。原付の頃から片道60kmとかいう距離を毎月のように走ってたので、そのうち中型でも長距離を走りまくると思います。事故には気を付けたいですね。この小説やもう一つのも完結まで頑張りたいですし、まだまだ書きたい物語はありますから。

さて長くなったので前回のあらすじは簡潔に。
地底から榛奈が帰ってきました。以上!
それでは今回もゆっくりしていってね!!



第45話『魔法の森で、人形遣いに会いました』

 空へ駆けだした私は、当てもなく飛び回ってた。アイツ曰く冥界への入り口は本当に何となくしか分からないらしく、その近くまで行けば少し分かるかもしれないという程度で、その“近く”とやらもどこなのかも分からない状態だったからだ。

 できれば偶然でも起きて、この異変に関係する人...例えば魔理沙姉辺りにでも会えれば只々その辺を飛び回ってるよりかは冥界へ...異変の犯人の下に近づくと思うのだけれど......

 あっ、そうだ。もしかしたら魔理沙姉は家にいるかもしれないし、魔法の森に行ってみようかな。魔法の森ならあの人もいるわけだし。

 進路変更して魔法の森へ行くか。

 

――そうそう、もしあの魔法使いに会うなら、好感度を上げて、私の体を......――

 

 あぁ、そんなことも言ってたな。まあ努力はしてみるさ。会えるかは分からないけどな。

 

 

 

 

 

 魔法の森の方向へ向かって空を飛んでいると、すぐに見えてきた。

 そりゃそこそこな速さで飛んでたし、元々魔法の森に少し近い場所を飛んでいたから当たり前なんだけど、ここに来るまでに誰にも会わなかった。

 正確には知ってる人には会わなかった。異変に乗じて騒いでる妖精とかはそこら中にいっぱいいたし、何匹か落としたけど。

 まぁ雪も降ってるし、そこそこな強さだから誰も外出したくないからだとは思うけど......

 っと、魔理沙姉の家は何処だー?

 

 

 

 ...見つからない。空から森を見ていけば見つかるかなーって思ったけど、全く見つからない。視力は魔法で上げてるから通常よりいいはずなんだけど、何分木々の枝が入り組んでいるし、吹雪で地面が見えにくい。これじゃ空から見つけるのは難しいかな。

 と、どうやって見つけようか悩んでいると、建物が見えてきた。この幻想郷じゃなかなか見ない洋風の家。紅魔館のように大きくはないけど、一軒家としては十分な家だ。

 もしやあれが魔理沙姉の家...?それともあの人の?それともそれ以外の魔法使いの家なのかな。

 とにかく訪ねてみれば分かるよね。大丈夫大丈夫。何かあっても自分を守ればいいし、地底である程度扱えるようになった新しい能力でも使えばいいしね!

 そう思い立った私は早速家の前に降りて、扉をノックして呼びかけた。

 

「こんにちはー。どなたかいらっしゃいませんかー?」

 

 しかし声はただそこに響くだけ。誰も応えてくれない。

 こんな長続きする冬に雪まで降っているのにこの家の主は何処かへお出かけだろうか。

 或いは居留守?アポ...は取れるわけないんだけど、アポなし訪問だから警戒して出てこないのかな。

 家の中を覗きたいけど、勝手に人の家の窓から中を覗くなんてプライバシーの侵害だし、だからって魔理沙姉みたいに勝手に扉を開けて人の家に入るわけにはいかないし......

 でもこの辺りの家って此処しか見つからなかったから魔理沙姉の家を訊きたいし、あの人の家だったら余計会わないといけないと思うし...というか本音は会いたいし......

 うだあああぁぁ!もう一回だ!

 

「すぅ...こんにちはー!!誰かいたら返事だけでもしてくださいなーー!!」

 

 ふぅ、これだけ大声を出せば聞こえてなかったなんてことないだろう。

 ...あっ、でも相手が耳に障害を持ってたらどうしよう......

 ...って、そんなのピンポイントでいるわけないだろ。

 と、独りボケとツッコミをやっていたら、中で物音が聞こえた。

 やっぱり誰かいるようだ。どうやら警戒して出てこなかったようだけど、私が大声出したからか、ようやく出てくれるようだ。

 足音は扉の前まで来ると、ピタリと止まった。扉が開くのかと思ってたけど、その気配はない。まぁ得体のしれない人がいきなり来たんだし、すぐ扉を開けるわけないか。

 すると中の人物は扉越しに話しかけてきた。

 

「...何の御用?」

「えっと...ちょっと家をお尋ねしたいのですが......」

「家?」

 

 そう言うと、中の人物、声から察するに女性は少しの間黙った後、ガチャっと鍵が開く音がして扉を開けた。

 やっと人に会えた、と思ったら、扉の前に立っていた...いや浮いていたのは金髪の洋服を着た人形だった。

 

「...え?に、人形?」

 

 人形は驚く私を見ながら微笑み、片手を上げた。まるで挨拶をしている動作だ。

 

「えっと...こんにちは。あなたがさっきの声の人?」

「違うわ。私はこっち」

 

 と、扉の近くにやってきたのは人形と同じように金髪のショートへアにヘアバンドのように着けた赤いリボン。青い洋服に白いケープのようなものを羽織った女の人。

 ...おぅ。人形といい女性といい。なんか見たことある人だぜ......

 

「あぁごめんなさい。えっと、それで家をお尋ねしたいのですが、よろしいですか?」

「ええ。とは言っても私、あまり誰かと交流とかないから分からないかもしれないのだけれど、それでいいのなら」

「構いません。それで私が探しているのは人間の魔法使いである私の姉の霧雨魔理沙の住む家なんですが......」

「...魔理沙の?」

「ご存知ですか?」

「ええ、彼女のことは知っているけど...魔理沙が姉ってことはあなたが魔理沙の妹さん?」

「はい。霧雨榛奈と申します」

「話だけは聞いていたけれど...本当に見た目以外は全然似てないわね」

「あはは......」

 

 まぁその似ているっていう金髪も、魔理沙姉と比べると少し色の濃度が違うけどね。

 しかし彼女は魔理沙姉を知っていて、それでいて魔理沙からか、誰からかは分からないが妹がいることも聞いていたようだ。

 ってことはもしかしてあの人なのか?

 

「そうね。あなただけに名乗らせてるのも悪いし、私の名前は『アリス・マーガトロイド』よ。魔理沙とは...まぁそれなりの関係だと名乗らせてもらうわね」

「...それなり?」

「まぁ、色々とあるのよ」

 

 はて、その色々とは......

 ...まさか魔理沙姉。原作の魔理沙と同じことをしているわけ...ないよな?な?

 しかしまさか本当に目の前の女性があの人...魔法使いで人形遣いのアリスだったとは。

 確かにアリスの服を着ているし、人形が自動で動いて...いや一応命令してはいるのか、動いている。

 いくら魔法の森の上を飛んでいたからって最初に尋ねた家でアリスの家を引き当てるとは思わなかった。もしかしたらこの幻想郷じゃアリスや魔理沙姉、ついでの霖さん以外魔法の森に住んでる人っていなかったりするのかな。それだったらもっと探し回って見つけた家が魔理沙姉の家の可能性が出てくるよね。

 と考えても、そんな手間は暇なときにしかかけたくないから、今は普通にアリスさんに聞くけどね。

 

「それでマーガトロイドさん」

「アリスでいいわ。長いでしょう」

「え、えぇと。ならお言葉に甘えて。アリスさん、魔理沙姉の家をご存じないですか?」

「知っているけれど...今行ってもいないんじゃないかしら」

「え?どうして......?」

「少し前に私の家の上空を飛んで行ったのを、この子...上海(シャンハイ)が見てたのよ」

 

 そう言ってアリスさんは傍らにいた先ほどの人形、上海の頭を撫でる。上海は本当に命令で動いているのか分からないほど嬉しそうな感情を顔に浮かべた。

 そういえばアリスの上海と今は姿が見えないが蓬莱は確か、半自動化まで進んでいたという話を転生前の人生で聞いたことがある。アリスの目標である完全自立型人形とはいかないが、ほんの少しの命令を貰えれば後はその命令をどうやってやればいいのかとか考えながら動くことが出来るんだとか...そんな感じだったはず。その辺りの記憶は時の流れで風化し、曖昧になってきてしまっている。私とて記憶力は転生の影響で通常より良い方ではあるが、完全記憶能力者ではないのだ。あっきゅんみたいなのはないのだ。

 と、頭の中で話が脱線してしまった。まぁここまでの思考はものの数秒で終わってる辺り、私もそろそろ人間を辞め始めてるのか、魔法使いに近づいているのか分からないな。

 

「ということは今行っても無駄足ですか......」

「そういうことね」

 

 どうせいないのなら魔理沙姉の家に行くのはただ単に場所を確認するぐらいしかなくなってしまうし、それなら魔理沙姉が紅魔館に来た時にでも訊くか、案内してもらえばいい。

 それに魔理沙姉が飛び立っていき、尚且つこの異常な季節の中で行く場所といえば、原作を知ってる影響と魔理沙姉を自分なりに見てきたので少しは予想がつく。そうじゃなくても神社に行けば何かしら分かるはずだ。

 となれば次に向かうのは博麗神社かな。霊夢がいるかいないかで結構その後の行動が変わってくるし。

 

「なら私、別の場所に行ってみます。教えてくださり、ありがとうございました。では――」

「ちょっと待って」

「はい?」

 

 早速箒に跨ろうとしていると、アリスさんは私を引き止め、何か考えながら私に話しかけてきた。

 

「これは完全に私個人の興味なのだけれど、何故あなたはそこまでして魔理沙...姉に会いたがるの?」

「何故...ですか」

 

 そう言われても偶然会えたらなーとか思ってて会えなかったから、ならこっちから会いに行ってみるかという考えだけれど、はたしてそれをそのまま伝えていいものか......

 ...うん。こう答えるか。

 

「理由としてはもう五月だというのにこの季節なのは異変だと思ったので、せっかくなら姉と一緒に解決したいな、と思ったからですよ。後、実は数か月間会える状況ではなかったので、久々に会いたいなって」

「そう、あなた異変を解決したいと思って動いているのね」

 

 アリスさんの言葉に「はい」と答えると「ならちょっと待ってて」とアリスさんは家の中に入っていってしまった。はて、何かあるのだろうか。

 それからほんの少ししてアリスさんは家の中から出てきた。その手には小さな小瓶が握られている。アリスさんは私に近づくとその小瓶を差し出してきた。

 

「これをあげるわ」

「...これは?」

「春の欠片よ。研究のために集めたのだけれど、研究成果はもう十分取れたし、異変を解決するのに使えるかと思うの」

「春の...欠片?」

「簡単に言えば今現在来ない春が欠片となって目視できる状態になった物よ。沢山集めれば春が訪れるんじゃないかと私は思っているわ」

「春が...欠片に......」

 

 そんな馬鹿な、と普通は思うだろう。

 しかし此処は幻想郷。その普通が通用しないのだから、春が欠片になることもあるだろう。実際原作でも春がどうとか度がどうとか言ってた。それにアリスさんから受け取り、透明なガラス越しに見た春の欠片は桜の花びらの形をしていて、ガラス越しにでも暖かい気配がする。これは本当に春の欠片なのだろう。

 

「ありがとうございます。こんな貴重なものを......」

「いえ、その辺に落ちてたりするわよ。それも拾ったものだし」

「あっ、そっすか」

 

 貴重でもなんでもなかった。

 まぁ原作でも妖精とか毛玉とか倒せばいっぱいゲットしてたしね。

 ここでも妖精とか倒していけばいっぱい春の欠片はゲットできるのかな?

 でもさっき倒していったときはそんなもの見えなかったけど......

 

「まぁ頑張って早く冬を終らせてちょうだい。あまり寒いのが続くと、里での影響も大きいでしょうし」

「分かりました。色々と親切にありがとうございます。今回の異変が終わったら後日、お礼をさせてもらいますね」

「それはありがたいわね」

「それでは」

 

 と、今度こそ箒に跨って空を飛ぶ。

 飛びつつ振り返ればアリスさんはこちらを見ていたので、手を振ると、アリスさんも小さく手を振ってくれた。それに少し嬉しくなりながら正面を向いて、一気に加速する。

 修行を終えた今の私なら魔理沙姉にも負けないぐらいの速度が出せるんじゃないかと思いながら、向かうは幻想郷の端の方。博麗神社だ。

 霊夢はいるかな~♪

 

 

 

 

 

____________________

[???]

 

 

「紫様。例の人間を見つけました」

「そう、ようやく見つかったのね。どこにいたのかしら?」

「どうやら地底にいたようです」

「地底に?...どうやって地底の存在に気付いたのかしら。人間達にはもうすでに忘れ去られている場所でしょうに」

「申し訳ありません。そこまでは調べられておらず......」

「いいわ。とにかく彼女を見つけたのなら監視して。彼女の言動全てに注意しなさい」

「御意」

 

「...幻想郷は全てを受け入れる。それはとても残酷なこと。...けれど彼女だけは別。彼女は幻想郷には毒だもの。なら早いうちに消毒しておかないと、大変なことになるものね」




後書き~

正直八雲家ポジションをどうしようか今更悩んでます。なんか意味深な会話させてますけどね。
それでは次回予告。多分合流するんじゃないかな。
次回もゆっくりしていってね!

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