東方変守録   作:ほのりん

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前書き~

ついに動き出す博麗の巫女。しかし彼女の前に強大な敵が現れ......
三人の妖怪姉妹。黒きヴァイオリニスト。赤きピアニスト。白きトランぺッター。
はたして彼女たちに博麗の巫女は勝てるのか......!
今、史上最大の決戦が始まる......。(嘘)

たまにはふざけたいと思いつつ、こんな感じの話で始まります。
後半は博麗神社からお送りいたします。
では今回もゆっくりしていってね!


第46話『雲の上に来てまで妖怪退治とか面倒ね』

 時は進み幻想郷上空。

 紅白の巫女は当てもなく...しかし確かに異変の犯人のもとへ飛んでいた。

 

「はぁ...寒いったらありゃしない。しかも雲の上まで桜が舞ってるのは何故?」

 

 地上では僅かにしか見られなかった桜の花びらが、雲の上ではチラチラと雪に交じり舞っていた。

 何故なのか考えても霊夢の中には答えなど出ない。そもそも考える気も答えを出す気もない。

 ただそんな彼女の独り言に答える者は、近くにはいなかった。

 

「...いつもだったらここで、誰かが答えてくれるんですけど」

「ああ、分かったよ」

 

 出てきたのは黒い服や帽子。金髪でヴァイオリンを持った、人の形をした少女だった。

 しかし霊夢は瞬時に目の前の少女が人間ではないことを見抜いていた。

 

「ほら、それはアレだ。この辺はこの季節になると気圧が...下がる」

「なんかテンションも下がりそうね」

 

 物静か、とは違う。テンションが低い人外はそう言ったが、それは先ほどの霊夢の言葉に対する言葉なのだろう。霊夢としては彼女のテンションの低さに面倒くさいなと思っただけだが。というよりさっさと異変を解決して神社でお茶を飲みながら蜜柑を食べたいのに行く手を邪魔する奴の相手が面倒くさいのが本音だ。

 そんな雰囲気を出していたからなのか、彼女は黙ってしまった。

 霊夢はそれを自分はこのまま此処から去ると思っていると思った。

 

「悪いけど私、このまま引き下がらないわよ。せっかくなんだからアンタに色々聞くんだから」

「誰もそんなこと言おうとしていない。上昇気流と言いたかっただけだ」

「ともかく今起きてる異変について何か知ってたりしない?」

 

 と、その時人外の後ろから明るい薄水色の髪の薄いピンクの服装をしたトランペットを持った少女と、薄い茶髪の赤い服装をした楽器のキーボードを持った少女が現れた。

 

「姉さんってば早いって。って、それ誰?」

「上昇気流」

「私達の天敵ねー」

 

 トランペットの少女は霊夢の姿に気付き姉と呼ぶヴァイオリンの少女に問うと、簡潔に答える。キーボードの少女はどこかのんびりとしていた。

 霊夢は妖怪が増えたことにまた面倒なやつが増えたと思いつつ、質問に答えてもらうことにした。

 

「敵かどうかはあんた達の態度次第ね。で、あんたら何者?そこの暗いのにはさっきの質問に答えてもらってないんだけど」

「私達は騒霊演奏隊~。お呼ばれで来たの」

「これからお屋敷でお花見よ。私達は音楽で盛り上げるの」

「異変のことは知らないわ。気にもしてないもの」

 

 と、順にキーボードの少女、トランペットの少女、ヴァイオリンの少女が答えた。

 その言葉に霊夢は反応した。

 

「私もお花見したいわ」

 

 神社で魔理沙が言った花見という言葉に反応したように、霊夢は花見が好きだ。というより幻想郷の住人の大概が楽しく騒いだり酒を飲みながら桜を眺める花見が好きだ。霊夢はその一人というだけである。

 でもそのための春が訪れず、冬が続いている。

 決めた。絶対解決して宴会を開く。片付けとか考えると億劫だけど、その辺りはレミリアのとこのメイドに任せればいいわよね。

 そんな考えで霊夢は札を手に取る。今やることはただ一つ。目の前の妖怪を倒して、色々聞きだす。さっきの会話の内容だと何かしら知っているようだとも思ったからだ。

 

「あなたはお呼びでない」

「幽霊にお呼ばれ、ねぇ。あんまりされたくないなぁ」

「あらら?そんなので私達を退治する気?」

「雑音は、始末するまで」

「姉さん頑張ってー」

「手助け歓迎よ」

「さ、花見をするためにも仕事しましょうかね」

 

 ヴァイオリンの少女は霊夢同様構え、他二人は後ろで見守る。どうやら助ける気はないらしい。

 その方が霊夢にとっても楽に事を運べる、と珍しくやる気だ。いやこのやる気は花見をしたいからだろう。

 ともかく互いにスペルカードを構えたら、それが始まりの合図だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________

 

 場所は変わり、博麗神社。

 主のいないその場所に、一人の少女が降り立った。

 

「ふぅ...いくら速く飛べるようになったからってここまで超特急で飛んでくる必要はなかったよね。うぅ...さむいさむい」

 

 その少女――榛奈はお賽銭箱の前まで行くと、懐から一枚の小銭を出し、投げ入れた。

 その後二度お辞儀をし、手をパンパンッと二回叩く。そして両手を胸の前で合わせて、いるのかいないのか分からない博麗神社の神様にお願いをする。

 ――どうか無事に異変を終らせられますように――

 祈らなくても自分で何とかしようとは考える榛奈だが、それでもひょっとしたら聞いているかもしれない神様に、少しでも事を良く運べるように運を分けてもらおうと思ったのだ。

 というより、せっかく神社に来たんだから祈らないとね、というのが本音かもしれない。

 

「...さて、霊夢はいるかな~」

 

 のんびりと縁側に行ったり、神社の周りを歩いてみたけど、人の気配は何一つしない。それどころか戸締りもしっかりしてあった。

 どうやら霊夢はいないらしい。ということは――

 

「...よし、もうすでに始まってるってことだよね!」

 

 そう誰もいない中、榛奈は独り言を言った。

 となれば早速冥界への入り口を探しに行かなければ、異変解決までに間に合わないかもしれない。冥界に辿り着いた時にはすでに終わった後でした~は彼女としては回避したいのだ。

 ということでさっさと空へ飛び出したいのはやまやまなのだが、それはできなかった。

 

 

 少し前から感じる視線。姿の見えない何か。

 神社には人の気配は全くしない。だから視線何て感じるわけないだろと思うかもしれないが、人の気配“は”しないだけだ。人でない者の気配は、ずっと感じられる。

 神社に着いた途端に、感じられたのだ。まるで自分を監視するかのような視線。なのに周りには誰もいないように見える。

 ああ、何となくわかる。こういうことが出来る人外にいくらか心当たりがある。仕えてる主だって、その姉だって似たようなことは出来るが、彼女たちとはまた別の気配。じゃああの何かを萃めたり、散らしたりするのが得意な鬼かといえば、分からない。私はまだ彼女に会ったことがないからだ。だが彼女が活動し始めるのはこの異変が終わってからのはず。ならばこの異変に関係のある者。と、なればすぐに二人ほど、該当する妖怪が出てくる。

 ああ、そうだ。あいつらだ。

 

「...なあ、そこで何してるんだ?どうせなら出てきたらどうだ。“八雲”」

「...ほう、私がいるとよくわかったな」

 

 その声と共に、私の背後から、とてつもない妖気が放たれる。普通の人間なら、即気絶物かもしれない。

 だが私は普通じゃない。そうだ、私はもう普通の人間じゃないんだ。

 だから正気を保ったまま、彼女たちと対峙できる。

 振り向けばそこにいるのは人の形をした美しい金色の毛並みを持つ九尾の狐。

 

「別にお前がいるとは分からなかった。だがお前か、お前の主のどちらかがいるとは思ったぜ」

「.........」

 

 目の前の九尾は黙って目を細め私を睨む。私を見定めているのか、あるいは警戒しているのか。

 私だって警戒をしている。だから自然と彼女を睨むような眼になってしまうのは仕方ないと思ってくれ。

 とりあえずこうしていては話が進まない。どうして私を監視するかのように見ていたのか、話を聞かなくては。

 ...素直に教えてくれるとは思わないけど。

 

「んで、どうして私を見てた?それも監視しているような視線で」

「お前には分からなくていいものだ」

「そりゃないぜ。せっかくお前に気づいて声をかけたってのによ」

「ふん......」

 

 九尾は笑うように鼻を鳴らした。

 正直その仕草は癪に触る。どうしてこうも強い妖怪は本当のことを隠したがるのか。それも素直に教えて欲しいのに、教えてくれないどころか自分を笑うのだ。まるで私はお前を遥かに凌駕する力を持っているのだぞと見下すように。

 正直それは本当のことだ。人間は、どれだけ頑張ろうと、その命は短い。途方もない時を生きる彼女の足元にも及ばないだろう。それだけ力の差があるのは認めよう。だが、だからといって初対面ですぐに下に見るのは気に入らない。私にだってフラン様にも譲れない、人間としての意地ってのがあるのだ。

 ようは、プライドが傷ついたってことだ。

 

「ははっ、なるほど。天下の九尾の妖狐様は、人間風情には自分たちのことを知る必要はない、と言いたいわけか」

「...私は忙しいのだ。何が言いたいのか、はっきりしろ」

「...おいおい、そりゃこっちの台詞だぜ?」

 

 威嚇の意味を込めて、一気に魔力を開放する。周りを警戒させないために今まで抑えつけていた分、余計に威圧感があるだろう。

 その魔力を浴び、九尾は眉を一瞬ひそめた。たったそれだけ。恐らく九尾は「普通の人間にしてはやる方ではあるか」程度にしか思ってないのかもしれないけど、それだけでいい。

 それだけでも、私には価値がある。原作知識を思い出し始めた頃は到底敵わない相手だと思っていた相手が、私の価値を見直したからだ。それだけでも、私は彼女に歯向かおうと思える。それだけでも私は自分の力に自信が持てる。

 

「それとな、私はさっきのお前の態度が気に入らない。私を人間だと小馬鹿にするその態度が気に入らない。私のことを何も知らない癖に、初対面でそんな態度をとるお前が気に入らない。だから、ちょいと私の実力をお前に見せてやる」

「ほう、人間如きが私に勝てるとでもいいたいのか?」

「普通なら勝てないだろうな。私だってルール無用のガチバトルなら負けるだろ。生きてきた年月も実力も違うんだからな。だが今はお前の主が考え付いた決闘法があるだろう」

「スペルカードルールのことか」

「そうそう、それなら私だってお前に敵うかもしれないだろ?」

「...いいだろう、受けて立つ」

「そうこなくっちゃ。...ああそうそう。どうせなら私が勝ったら冥界の場所を教えてくれよ。そこへの行き方と、結界の破り方...はどうせ霊夢あたりが壊してくれるか。出入口への行き方でいいぜ。もしくはお前の主の能力で冥界まで直接送ってくれるのもよし。隙間って気色悪いらしいけど、一度通ってみたかったんだよな~」

「...物好きだな」

「そりゃ吸血鬼に仕えてるくらいですから」

 

 なんて会話をしつつも私は相手の出方を見る。今回は負けても死なないが、負けたくない。負ければ何も失わない...ああいや、しばらく肩書きを気にせずにいたから忘れかけてたけど、私はフラン様の従者だ。私が負ければ、フラン様の名に傷がつくか。なら余計負けられない。

 だとしても、やるべきはただ一つ。簡単なことだ。

 

「...さぁ、勝ちに行こうかっ!」

 

 私が勝てばいいだけの話だ!!




後書き~

地底での修行で色々鍛えられた榛奈さんですが、それでもガチバトルで藍に勝てるとは到底思っていません。さてさて、それは自己評価が低いだけなのか、自分の力を自覚してそう思っているのかは分かりませんが、多分しばらく彼女達は放っておくかもしれないことを、先に伝えておきます。
さてさて、次回、多分霊夢、魔理沙、咲夜達の話ですね。
次回もゆっくりしていってね!!
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