こんにちは。もしくは今晩はご機嫌よう。
今日は令和初の博麗神社例大祭の日ですね。自分も顔を出してきます。
それはともかく前回のあらすじ。
冥界に着いた霊夢、魔理沙、咲夜の自機三人。
あっさり5ボスを倒し、6ボスと対決です。
しかしどうやらそうもいかないようで......
書いてるうちに前半がおまけっぽくなってしまったのは許してください。何でもしますから(ん?何でもするとは言ってないぜ)
前半魔理沙視点、後半榛奈さん視点と霧雨姉妹でいきます。
では今回もゆっくりしていってね!
目の前に広がるとてつもなく大きな桜。今まで見た桜の、何十倍も大きいその桜は満開かと思うぐらい桃色の花を枝いっぱいに付けていた。
だがその桜が普通の桜じゃないのは、一目で分かる。
何せこれでもかというほど妖力を纏っていたからだ。
そしてその桜の前、桜の花びらが舞う中、私達は春を奪った犯人と戦っていた。
こうなった始まりは簡単。私達が向こうに近づくと、向こうは私達を敵だと見なして撃ってきただけだ。
最初は一瞬だけ見惚れた。だがすぐに意識を切り替えて相手に立ち向かった。そんな余裕ができないほどに、相手の弾幕はこれまで戦ってきたことのある相手よりも強く、それでいて美しいものだったからだ。
しばらくやりあっても終わりが見えない弾幕の嵐。目の前に迫りくる弾幕に、無意識に箒を握る力が強くなる。そう熱くもないのに手汗が凄いのは、少し前から気付いている。
必死に避ける。身体を捻ったり、時に箒から飛び降りたりしながら。
撃ちながら避けるだけ。言ってしまえばそれだけなのに、それが楽しいと、いつも思っていた。
久しぶりに妹と再会して、初めて弾幕ごっこをした時だって心がワクワクして、心臓がはちきれそうだった。ずっと顔には笑みを浮かべていたと思う。アイツは私が手加減したとか言ってたが、それはアイツが自分の実力を自覚してなかったからだ。私はあの時、自分がやりたいように弾幕を放った。アイツが全力で向かってくるのを、受け止めるのが楽しくてしょうがなかった。最後に魔法と魔法のぶつかり合いになったときなんて、途中まで負ける気がしなかったのに、アイツの魔法の威力が急に上がってからはもう撃ち負けるとさえ思った。それもまた楽しくて、時間切れで引き分けになったのが、すごく惜しかった。またやりたいと思ったし、その後もアイツの休憩時間を見計らって勝負を挑んだ。最も、その後はギリギリだろうが圧勝だろうが、私の連戦連勝だったのが不思議だったんだが。
だがアイツが修行に出てからしばらくして、霊夢から聞いた。初めてフランと弾幕ごっこをしたあの日、アイツは霊夢と戦って、勝ったそうだ。それも今目の前に広がるぐらいの高密度の弾幕をぶつけたって。その後、霊夢の夢想転生を躱しきったって。そう、霊夢本人が悔しそうに言っていた。霊夢がこういうので悔しがるのが珍しくて驚いたが、私はそれ以上にアイツが霊夢に勝ったという事実に驚いていた。だって私は心のどこかで、アイツはずっと私の隣にいてくれると思っていたから。私の手が届かないほど強くなるとは思わなかったからだ。
そのアイツが、私がいつか超えると決めた壁を、いとも容易く超えて先に行ってしまった。努力の差とかじゃない。それを言ったらアイツの方が一日にやることが多くて、自分の技を磨く時間が少ないからだ。だから努力する時間ならば、私の方が確保できているはずだった。
なのにアイツが壁を越えて行けたのは、...悔しいが才能と環境の差なんだと思う。アイツは、私よりも先に魔法に触れて、その才能を開花させていた。それを知ったのは、まだ幼かったアイツに向けられるいじめを解決しようとしていた時だったが。
それに私が里を出た後、一人魔法の森で魔法の研究をしていた時、アイツはパチュリーに弟子入りして、魔法を基礎から習っていた。普通の人ならば独学よりも、誰かに教えてもらった方が早く上達できる。それはアイツにも当てはまることだったということだ。
だからアイツはきっと強い。まだ私に勝ったことはないけど、それこそアイツが自分の力を自覚してなくて、無自覚に手加減してしまってるからだ。きっと本気でやられたら、私は一回も勝つことが出来なかったと思う。
――悔しかった。アイツが今の私が越えられない壁を越えたことが。
そしてその実力を持っていたことを、姉として気づいてあげられなかった。
でも何より寂しかった。アイツがどこか遠くに行ってしまったように感じて。いやまぁ実際今どこで何をしてるのかすら分かんなくなってるんだが。物理的な距離じゃなくて、精神的な距離の話だ。
だからアイツがいない間も努力した。図書館から自分の力になりそうなものを色々と借りて、同じ森に住む人形遣いの家からも色々と拝借した。寝る間だって惜しんだ。パチュリーから色々教えてもらったりもした。たまに変なキノコを食べて体調を崩したが、それはいつも通りだった。
だから今の私は、昔の私よりもずっとずっと強いはずなんだ。
なのに何故だ。どうして。
目の前に広がる弾幕に、楽しいと思う
二人はこの弾幕をすいすい避けてる。余裕そうに、口元に笑みを浮かべながら。
対する私はどうだ。笑みを浮かべることなんてできない。当たりそうになる度に肝を冷やす。頬には嫌な汗が伝っていって、箒を握る手は白くなるほど力が入っていた。
駄目だ。こんなんじゃアイツに追いつけない。今まで目標だった霊夢にも、榛奈にも。
嫌だった。アイツ等が私を置いて行ってしまうのが。先へ先へと進んで、いつか私が追いつく前にいなくなってしまうんじゃないかって。アイツ等の隣に、私はいられないんじゃないかって。
そんなの嫌だった。だからこの勝負、私も活躍してやる。私だってお前らと同等でいられるんだぞって、そう笑って胸を張っていられるように。
――あぁそうだ、この程度、なんてことのない。ただ当たらないように良ければいいだけなんだ。今までと変わらない。
今だけは、楽しいか楽しくないかは捨てろ。とにかく勝つんだ。堂々と胸を張れる、そういう戦い方で!
そう思う私のところに、ひらひらと妙に光っている紫の蝶が、近づいてきて――
「――――っ!?」
なんだ、今の。
体中の毛がぞわっと逆立ったかと思ったら、心臓が鷲掴まれたと錯覚するぐらいぎゅっとなって、訳も分からず蝶を見れば、蝶は私から離れていた。
――いや違う。私が本能的に、こいつから距離を離したんだ。
こいつはやばい。触れただけで死ぬんじゃないだろうかとさえ思えた。
そして、その私の感覚はあながち錯覚でもなかった。
「魔理沙!その蝶に触れないで!」
「なっ?霊夢、どういうことだ?」
「その蝶からとてつもない死気を感じる......。触れたら最悪、死ぬかもしれないわよ」
「あら~、よく分かったわね~」
のんびりとしたその声は、この弾幕を作り出している存在。桃色の髪を持ち、水色と白の着物を着たふわふわ浮かぶ、まるで幽霊みたいな女性。いや、この土地にいるってことは幽霊かそれに似た類のものなのだろう。他の白い奴らとは違って、身体はあるあたり、亡霊か。
「ごめんなさいね。ちょっと楽しくって、思わず能力を使っちゃったわ」
「思わずで人を殺さないでくれ」
「そうねぇ。それで死んじゃったら、成仏も出来なくなっちゃうし。あっ、それで心配はしなくてもいいわよ。もし死んじゃったら、私が責任もってこの白玉楼で働かせてあげるから~」
「悪いがまだ死にたくはないんでな。心配ご無用だぜ!」
「うふふ」
何がそんなに楽しいんだか、満面の笑みで弾幕を放つヤツ。
のん気な奴だ。それほど余裕があるとでもいうのか。それとも元からそういう性格なのか。
まったく、楽しいからって人を殺さないでほしいぜ。
「この桜はね、後ちょっとなのよ」
「何が後ちょっとよ?」
「後ちょっとで、満開になる。貴女達のなけなしの春があれば、封印が解けるの」
「封印?何を封印してあるんだ?」
「何者かが封印されてるわ」
「誰だよ......」
「封印が解ければ、それも分かるわ。私はその何物かが誰なのか知りたいのよ」
「興味本位で封印解いたら駄目でしょ。何者か分からないんだし」
「でも私は知りたいのよ。だから覚悟しなさい。貴女達のなけなしの春、奪ってあげるわ!」
「ふん。そっちこそ覚悟しやがれ、死人嬢!」
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「やぁッ!!」
「ふん......」
「まだまだぁ!」
「甘い!」
次々に作って繰り出しても、あっさり避けられる弾達。
まあいい。元より当てる気何ぞさらさらない弾なんだから。
「この程度か悪魔の犬!」
「悪いけどそれは咲夜さんを言い当てた名称なんでねぇ!」
私は確かに犬っぽいと言われるような性格をしているかもだけど、咲夜さんの方が忠犬だ。しかも完璧で瀟洒な。私なんかに使っていい称号じゃない。
「それと人間を犬呼ばわりするなああああ!」
「ちぃ......!」
「おりゃあああ!!」
避けて避けて避けられまくって、一回も掠ることもなく避けられ続けるけど、正直それで構わないと思っている。
だって本命はそれじゃない。
「...まさか!?」
「遅い!」
「ぐっ...!?」
複数の弾幕が、それぞれ奴を葬ろうとしていたかのように見えたか?
だが本命は私自身の拳だ。それは確実に目の前の奴を捉えていて、今一撃を加えた。
しかしそれで倒れるほど奴も弱くないのは分かってる。
すぐさま飛びのけば、さっきまで私がいた位置に奴の弾が通り過ぎて行った。
「...まさか人間が私に一撃入れれるとはな」
「人間だって馬鹿にできたものじゃないってことだぜ」
「どうやらそのようだな。紫様が貴様にご執心なのも頷ける」
「...?なんで幻想郷の管理者が私に...?」
「貴様のような者が、人と妖のバランスを崩すからだろう!」
「はあ?何言って......」
「食らえ、式神『橙』!」
私の疑問に答えずに取り出したスペルカードは、彼女の式神を呼び出すもの...だったはずだ。
実際その通りのようで、空に隙間が現れると、そこから黒い物体が、私と九尾の間に落ちてきた。
どしんと落ちてきた衝撃で砂ぼこりが舞う中、私はいつ彼女の式が飛び出してきてもいいようにと、警戒しながら砂ぼこりの中を凝視する。
「.........」
「.........」
...しかし、いつまで経っても何のアクションも起こさない。
不思議に思うが、もしかしたら不意を突くための作戦なのかもしれない。
いくら2ボスのキャラだからって、あの藍の式神だ。そういう罠を仕掛けることができてもおかしくはない。
「.........」
「.........?」
はて、先に疑問に思ったのはどちらだったのか。
少しずつ晴れてきた砂ぼこりの中。うっすら見えてきた黒い物体に、私は眉をひそめた。
ありゃ、人の姿ではないのでは?
その私の思考は当たっていて、完全に砂ぼこりが消えた中、そこにいたのは緑の帽子を被った二本の尾を持つ黒猫。
但し仰向けに倒れ、目を回している。
「ちぇ、ちぇーーーーん!!」
急いで猫に駆け寄り抱える藍。変わらず目を回し気絶している橙(猫形態)。
はて、私達は戦っていたのだよな?
...何がどうしてこうなった......
「あ、あはは......」
もはや苦笑いしか出なかった。
その後とりあえず一時休戦にして、神社で橙を休ませてはどうか?と藍に提案すると、案外あっさりとそれを承諾してくれた。意外である。意外過ぎて一瞬私を葬るための罠かとも思ったが、それはルール違反以前にルールに則って正々堂々と戦う者としてどうなのかという考えに至ったので、無駄に警戒はせず布団を敷いたりお茶を淹れたりした。
いや勝手に人の家でこんなことしちゃ普通は駄目だと思うけど、そこはほら、幻想郷だし......
あ、駄目ですか?ごめんなさい。
まあ霊夢なら後で茶菓子でも渡せば許してくれるでしょう。何ならさっきお賽銭も入れたんだし。
そう思いながら寝ている橙の枕横に座る彼女にお茶を差し出した。
「...すまない」
「そこはお礼を言って欲しいかな~」
そう言いながら私は私で座布団を出して、胡坐をかく。気を抜いて良いときは、この姿勢が一番だ。
「...確かお前は、黒いのの義妹だったか」
「んー?魔理沙姉のことだったら、そう。血は繋がってない同い年の妹だよ」
「血が繋がっていない割にはそういうところは姉に似ているのだな」
「“そういうとこ”ってどこが似てるの?」
「人の家を堂々と使ったり、そうやって座るところだろうか」
「うっ...前者は痛いとこ突くね......。私としては別に霊夢の家を好き勝手に使おうとは思ってないんだよ?ただほら、ここ神社だし、霊夢は魔理沙姉の友達兼ライバルだし、お茶くらいならいいかなーって。さっきお賽銭も投げといたし」
「どうやら、アイツほど常識に欠けているわけではないようだな」
「魔理沙姉も常識の欠けた人ではないよ。分かっててやってるだろうからね」
「それは余計タチが悪いな」
「ごもっとも」
最初は藍も私のことを警戒していたのかお茶に手を出さなかったが、私がずずっ......とお茶を啜る様子を見てやっと警戒を少し解いたようだった。部屋の中に二人分のお茶を啜る音がこだまする。
その音の中に、呻き声が混じるまで私達はのんびりと過ごしてたと思う。
「ぅぅっ......」
「橙!?大丈夫か?橙!」
「ぅ......らん...しゃま......?」
「橙......!」
ようやく意識を取り戻したらしい橙をぎゅっと抱きしめる藍。橙は橙で猫形態だからあんまり表情の変化は分からないんだけど、なんだか嬉しそうだ。
これなら特に何か問題が起きるわけでもなさそうだな。
そう思ったのはフラグでしょうか?
橙は私に気づくと、じっと見てきました。
「っ...らんしゃま、どうしてこの人間が?」
「...?こいつは紫様が見張っておけと言っていた人間だ。こいつがどうかしたのか?」
「この人間、服装とか容姿が橙を倒した人間に似てます!倒すべきです!」
「何...?橙を傷つけた人間だと...?」
ギロリと睨む藍。橙も橙で私を睨んでいますが......
「はて...私に何か......?」
「橙を倒した人間が、お前に似ていたそうだ。心当たりはあるか?」
「まっさかー。貴女の愛猫を倒した人に心当たり?そんなものあるわけないじゃないですかー。ハハハ」
そう言ってみるが、二人の視線は私に向いたまま。これはどうやら私を敵だと認識している模様。
...いやね、正直心当たりはあるのよ。ほら、私って簡単に言える特徴なら魔理沙姉に似てるじゃない?金髪とか髪は長い方とか髪は縛ってるとか。服も意図していないのに魔理沙姉の色違いバージョンだし。とんがり帽子被ってるし。
だから似てるって言われても仕方ないと思うのよ。それどころか普段ならそう言われて喜んでるはずなのよ。
でもね、心当たりっていうのはそれだけに留まってなくてね。
ほら、今って春雪異変で霊夢達が異変解決に出向いているでしょ。で、橙って妖々夢の2ボスキャラでしょ?
後は分かるよね...?
「橙、その人間の特徴は言えるか?」
「確か黒い帽子に、白黒の服を着てて、箒を持ってました!髪はこの人間と少し違う金色の女です!」
「なるほど、十分な特徴だな。さて人間、ここまで言えば心当たりはあるだろう?」
「...アッハハ。いやぁ、ほら今って霊夢達は異変解決してるんでしょう?ならその過程で犯人と疑われちゃったんじゃないでしょうかねー」
「私を倒す前は、迷ヒ家の物を盗もうとしていました」
魔理沙姉えええええぇぇぇぇ!!
なんでそんなことしちゃったの!てっきり図書館でやらないからこの世界の魔理沙は私の影響で物を盗むことはしない手癖の悪い子に育たなかったと安心してたのに!
まさか魔法の森で会ったアリスさんが魔理沙姉との関係を色々とあると言っていたのは、魔理沙姉がアリス邸から
藍は藍で橙の話を聞いて「ほう......?」と私を見る視線の温度が変わってるし!?
私に救いはないんですか!?
「さて、さっきまでの戦いは一時休戦だったな。橙も目覚めたことだし、続きといくか」
「いやぁ、私としては興が削がれちゃったからもういいかなーって思うんですが......」
「大丈夫だ、問題ない」
それは問題ある時の台詞だってー!
えー、これはまた戦わないといけない雰囲気でしょうか。興が削がれたのは本当なんですよ!さっき橙が落ちてきたこととか、魔理沙姉のやっちゃったこととか聞いたらもう戦おうなんて気が無くなっちゃって!
なんとかこれを回避することって出来ないかな。例えばほら、これ以上に驚きの事態が訪れるとかさ......
「――っ!?」
「なっ...!?」
瞬間、私と藍はある力を感じ取った。
とても強く濃い、死を誘う力。
幽霊とか亡霊とか、その手の分野にしても生半可な者が持っているわけがないほど、強い死の力。
私の中で一人、これほどの死の力を持てる亡霊に心当たりがあったが、それにしてはおかしいほどに強く、暴力的だ。
しかもそれを感じるのは空の上の方から。
ということは、つまり......
「...おい、今の感じたか?」
「うん、感じた。むしろ感じない方がおかしい...!」
「え?え?どうしたんですか藍しゃま。何かあったんですか?」
「...橙は何も感じなかったのか?」
「はい......」
「これほど強く濃い力を感じられないとか、ある意味幸せ者だね......」
「橙。異変が終わったら特訓だ。今度は人間にやられるようなヘマをしないよう鍛えてやる」
「わ、分かりました......」
橙、ご愁傷様。
ともかくこれほどの気配を持つモノの正体。私が思いつく限りじゃ、あれしかない。
「ねえ八雲の式。一つ聞きたい」
「手短にな」
「
「っ!?...戦う前の発言といい、今のといい、お前は一体どこまでこの異変のことを知っている......?」
「いいから答えろ!西行妖は復活したのか!?」
「...まだのはずだ。でなければ、私達だけでなく、橙も含め全ての人間妖怪が死の気配を感じ取るはずだからな」
「ということは、まだ復活はしていない...と?」
「完全には...だ。この調子なら後数時間後には完全に復活してしまう。そうなれば紫様とはいえ、奴を抑え込めることが不可能になってしまうだろう......」
「数時間もあれば十分だ。それだけあれば、どうにかすることも出来る」
「どうするつもりだ?」
そう、問題はそこだ。
『どうにかする』とは言ったものの、その方法を私は考えてなかった。
だってそうだろう。原作じゃ、封印が解ける前までには霊夢達主人公が6ボスを倒して、宴会だ。後日談に紫達八雲家が出てくるけど、それは関係ないしな。
だから私も、霊夢達の後を追って、一緒に西行寺幽々子を倒すか、その手前で妖夢を倒すかのどちらか。或いは私が着いた頃にはもう終わってましたってのが私の中で描いてた未来だ。
西行妖が復活するなんてこと、私には想定することが出来なかった。
どうする?どうすればいい?
今から行って霊夢達と一緒に西行寺幽々子を倒すか?
それとも話し合いに持ち込むか?
駄目だ。もう既にこれだけ封印が解けてるんだとすれば、今更西行寺幽々子を止めたところで自力で春を集めて復活してしまうのではないか。
なら再封印か?
これは可能性がなくもない。一度封印することが出来た紫を味方に付ければ霊夢とのコンビで封印してくれるはずだ。
――それは少し無理だね。今の霊夢は弱い――
霊夢が弱い?そりゃ冗談だろ?
霊夢は歴代の博麗の巫女の中で一番強いんだぞ?
その霊夢が弱いって。じゃあお前はどれだけ強いんだって話になるぞ?
――どれだけ強いか。その力の片鱗くらいは、この異変で見せれるかな――
...交代するのか?
――今はいい。変わる時はこっちで判断するから。とにかく、八雲の式には、今から言うように伝えて――
「...簡単な話だ。復活する前に、再封印する」
「貴様如きができるとでも思っているのか?アレの封印は、紫様でさえ苦労したと聞いた。それを一人間が出来るとは思えん。逆に貴様が命を落とすのが落ちだ」
「出来る出来ないの話じゃない。やるしかない。でなければ幻想郷は自殺者で溢れ、すぐに崩壊するぞ」
「...ならば勝手にしろ。私は知らないからな」
「ああ。そうさせてもらう。...が、お前に一つ頼みたいことがある」
あいつが言えと言った言葉をそのまま口にし終わったところで、その言葉の意味を理解して驚いた。いや、どうしてそう言えと言ったのかに対して驚いた、と言う方が正しいか。
藍も私の口から伝えられる言葉に、驚きはしないが疑問を隠せないようだった。
だが今は非常事態。藍はその言葉の真意を確かめるのは後だと考えたのか、紫にその言葉を伝えると言って、橙を抱えて隙間に消えた。
さて、冥界への入口はこの死気を伝っていけば着けるだろうけど、時は一刻を競う。こうしている間にも、魔理沙姉達が心配だ。
人間にとって、死者の気配は毒。なら、死そのものの力は、猛毒だ。
私は帽子を深く被り直すと、飛び乗るように箒に跨って、宙に浮いた。
目指す先は冥界。西行妖の元だ。
お願いだから、生きててよ。皆。
____________________
「よかったのか?藍を通して紫に接触して。しかもあいつじゃなくてお前が」
「いいんだよ。いずれ紫には説明しておかないといけなかった。なら、向こうから接触してきた以上、こちらも手の内を明かしておいた方が、紫を味方に付けやすい。この状況も、言い換えれば絶好の正体を明かす機会とも言えるからね」
「しかしあいつにお前の過去...いや、あいつが忘れ去ってしまった過去を触れさせてしまう切っ掛けになるかもしれないぞ?」
「いいんだよ。いずれあの子も思い出さなきゃいけなかった。まだ過去を知るにはあの子の心は弱いけど、紫に接触すること自体にマイナス要素はないと思うよ。むしろ向こうを味方に付けることで、こちらの命が確保されるというメリットがある。なら、それに乗らない手はないよね」
「『○○○計画』。その対象は榛奈だ。貴重な人材、絶対に無駄死にさせるなよ」
「はいはい。
さて、私の友人はどう動くかな。式がきちんと伝言を伝えてくれてるといいけど。
――紫に伝えて。幻想から忘れ去られた巫女が帰ってきたって――
後書き~
ようやくここまで来たって感じです。この筋書きを頭の中で描き始めてから一体どれだけ経ったでしょうか。リアル経過月日2年な気がします。
ここから物語が急速に動いていって......なんてことはないと思います。いつも通りグダグダしますかね。
次回、ようやく榛奈さんが主人公組と合流です。そこからどう動くのか。私でさえ分かりません。(それでいいのか作者)
それでは次回もゆっくりしていってね!