道具になれ。と、この人は私に言った。
玩具ではなく、人間でもなく、道具になれと。
「……どういう、意味なのです?」
私は尋ねる。
どういう意味でそう私に言ったのか、なんとなく理解していながら。
私は少し、期待している。
もしこの人が、私の思った通りの事を言ってくれるのなら。
もしこの人が、私を"玩具"ではない存在にしてくれるのなら。
もしこの人が、私を"人間じゃない存在"と認識してくれるのなら。
私は、もしかしたらこの人の事を、信頼……とまでは言えないかもしれないが、一応、信じる事は出来るのかもしれない。
この人は、この鎮守府の"提督"は、少し微笑んだ。
微笑み、私の既に理解できている質問に、答えてくれた。
「簡単な事だよ。俺はお前にどんな形でも良いから、信頼してもらわないといけないんだ」
「これ以上、パン耳生活は嫌だし、何よりまず、戦果をあげないと支援してもらえないからな」
「だけど、提督っていう存在を憎んでるお前には、"人間として"信頼しろと言ったところで、無理だろうと思ってな。ならどうすれば信用を得れるか。こう考えた時、思い出したんだよ。俺の教官が言ってたのを」
「「艦娘を人間として見るな。自身の"兵器"だと思え」ってな」
「だから、その考えを応用したんだ。自身の道具を信頼しない軍人なんていないだろうしな」
そこまで聞き、何故か、何故かほんの少し、涙が出てきそうな気がした。
そう、そうです。
そうなのです。
私は、電は、何も人間だと言い張るつもりは無いのです。
むしろこう言いたい。
「人間なんかと一緒にしないでほしいのです」
人間なんかと一緒にしないで欲しいのです。
私は兵器。
艦娘という名の、兵器なのです。
玩具でも、人間でもない、艦娘なのです。
私は、少し笑いました。
いや、どうなのでしょう?
笑ったのでしょうか?
笑えたのでしょうか?
分からないです。
だけど何故か、何故か、笑いが込み上げてくるのです。
涙までもが、一緒に付いて。
笑みが……溢れました。
頬に、水の通った跡を残して。
笑えました。
笑うことが出来たのです。
とても久しぶりに。
笑顔を、浮かべることが出来たのです。
俺がこの鎮守府に、本当の意味で、"提督として"着任して来てから、早くも一週間が経とうとしていた。
あの日……俺と電が、互いの事を"道具"として、信頼関係を築いてからの日々は、短く感じた。
なんとかデイリー任務の出撃を達成し、それのおかげで装備開発の任務も達成できた。
そのおかげて、燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトの4つが、一週間で各300ずつの支援を受けれることになった。
やっとだ。
やっとここから、始めることが出来る。
ここから先の事なんて、全く分からない。
いや、分かるわけがないのだ。
未来は待ち受けるものじゃない。
未来は作るものだと、信じていたい。
「司令官! 大本営からお電話が来たのです!」
「ああ、了解!」
俺は電の言葉に返事をし、笑顔を浮かべ、電から受話器を受け取る。
ここから始めよう。
俺と電がいる、"白こそ正義"がスローガンの鎮守府の物語を。
やっと、やっと一章が終わったぁぁ〜〜〜!!