頭痛
人間という存在は、不可解な物、者、または突然の非日常を恐れる習性を持っていることがある。
その習性は、常識に囚われてしまい、非現実を、または非日常をとことんまで嫌う者たちに多い。
こんな風に書くと、まるでその存在は人間ではなく、そこら辺にいる動物のような印象を受けてしまう。
だが、俺……「御弓 稔」には、どうやってもそう言った存在が、動物のようにしか見えないのだ。
「元帥閣下に向かって、その態度はなんだ貴様!!」
ほら、こういう事になるからだよ。
だから嫌いなんだ。
変わる事を恐れる奴らは。
全く同じ日なんてくるはずが無いのに、彼らは何の代わり映えも無い日常とやらを求める。
その傲慢な態度のせいで、どれだけの人間が苦労を強いられているのかも知らずに。
……いや、もしかしたら、知ってて無視してるのかも。
そんな考えが、更に俺をイラつかせる。
と、そんな事を思っていたら、いつの間にか俺はタンスに頭から突っ込んでいた。
まぁ理由はわかる。
どうせ、あのクソ野郎に殴り飛ばされたんだろう。
頭がキリリと痛む。
……帰りに熱さまシートでも買って貼るか。
「御弓稔、貴様にもう用は無い。とっとと失せろ」
ああ、はいはい。
結局あんなに切れて殴っておいて、アッサリ興味なしですか。
どんだけいい顔したいんだよ、あんたらは。
「……失礼しました」
せめてもの仕返し……と言うのは違うと思うが、やる気の無い声を出し、俺は会議室を出た。
まぁ、なんとなくお察しかもしれないが、俺が今いるのは、大本営。
つまり俺の上司連中の溜まり場だ。
俺は、ここに新規艦娘の建造許可を貰いに、わざわざここに来ていたのだ。
……いや、おかしいでしょ。どう考えたって。
普通新しく艦娘を建造するのに、許可なんて普通必要ない。
全て自己責任みたいな感じになるが、いつ建造しても良いことになっている。
しかし、俺の所だけは違った。
何故か週一で送られる資材の中に、建造に必須の開発資材が含まれておらず、更に出撃を許されているのは鎮守府から10kmも離れていない海域限定だ。
まぁ、ちゃんとデイリー任務は達成しているし、開発資材がないおかげ?で艦娘は2艦しかおらず、しかもそのうちの1艦しか出撃出来ないので、黒字にはなっているのだが……
やはり、この状況には不満しか残らない。
やっと電との関係も、お互いに慣れてきたかなぁ……という所なのに。
……そう、電だ。
あの時の取り決めから、現在まで約半月。
相も変わらず俺たちは、お互いを、信頼できる『道具』として接していた。
電も俺に向けて殺気を放つ事なんて滅多に無くなったし、時折笑顔を向けてくれる事もある。
まぁ、もう1人の方は、まだまともに顔も合わせれていないのだが。
まぁ、そんな感じだ。
俺は電を、電は俺を、自身の信頼できる『道具』として接する事で、なんとか繋がっている。
そんな、"歪"と言っても過言ではないかもしれないような信頼関係が、俺と電の間にはあった。
まぁ、そんなのでも良い。
どんな形でも、"信頼してくれる"というのは良いものだ。
まぁ、時折怖い所もあるのだが。
それでも俺は電を『道具』として必要とし、電は俺を『道具』として信頼する。
そんな関係で良いんだ。
俺たちは。
しかし頭が痛い。
あの野郎。いくらいい顔したいからって強く殴りすぎだろ。
はぁ、と大きなため息を吐きながら、俺は痛む頭を抑え、とっとと外に出る。
ここから鎮守府まで高速バスで約6時間。
今日も良い報告をするのは不可能だが、せめてものお詫び……という感じで、なんか甘いものでも買っていってやろう。
そんな事を思いながら、俺は鎮守府へ帰るため、大本営を後にした。
俺の事を、絡まりつくようなほどネットリとした視線で観察している存在に、身震いしながら。