「さて、やっと帰ってきた訳だが……」
毎度の如く、高速バスに揺られて6時間弱。
もう疲れた。
今日はもう何もしたくない。
そんなこんなを愚痴りながら、とりあえず執務室へ向かう。
電に、俺が居ない間にやっといてと、ある程度の書類を押し付けていたのだが……どうせ糖分が切れたとかなんとか言って、頼んでおいた仕事を殆ど放置しているんだろう。
まぁ、仕事が終わるまで寝かせる気は無いのだが。
(深い意味は無い)
ふと、窓から外を眺めた。
時刻はヒトロク:マルマル。
既に冬が近づいてきており……と言うか既に冬だ。
外の木はすっかりと寂しい姿を晒している。
この鎮守府に着任して半月ほど。
つまり、まだ2週間しか経っていないのだ。
もう、何ヶ月もここで過ごしているような、錯覚に囚われていると言うのに。
時間というのはかったるいものだ。
こちらの都合なんて一切気にせず、時に早く、時にゆっくりと進んでいく。
時に人を惑わせ、狂わせ、悩ませながら。
俺にとってはゆっくりと、のんびりと、進んでいく。
ほんの少し、ほんの少しだけ、笑みを浮かべた。
偶には父さん達に電話でもしよう。
そんな事を、思いながら。
「おーい、電〜。仕事してたか?」
そう言いながらドアを開け、中に入ったのだが……まぁ、予想通りと言うか、何というか。
「もうやなのです。糖分が足りないのです……」
そう言って机に突っ伏している電が、そこにはいた。
本当予想通り過ぎて、ちょっと笑ってしまう。
そんな俺には目もくれず、机に突伏し続ける電。
何故か、本当何故だか分からないが、思いついてしまい、俺は電の頭に手を置く。
そして、ワシャワシャと、しかし髪がグシャグシャにならない程度に加減して、撫でる。
そんな俺に、電は面倒そうな表情をしながら、俺を見上げてくる。
最近、と言うかあの"取引"をした時から、電はこんな感じだ。
俺が突発で思いついた行動を、面倒そうな表情をしながらも合わせてくれてる。
なんか……うん。
そんな電に、レイン……いや、何もない。
うん。
「ほら、プリン買ってきてやったから、さっさとそれ終わらせろ」
電の頭から手を離し、目の前にプリンの入った袋を置いてやる……置いた瞬間に、もう1つを半分くらい食ってやがる。
本当、甘味だけには目がないな。こいつ。
そのまま、数分間プリンを無言で食べ続ける電。
その姿に、また少し、笑みを浮かべてしまう。
まぁ、少しぐらいは手伝ってやるか。
電が放置している書類を上から数枚取ってみた。
……本当に何もやってないんだな。こいつ。
まぁ、良い。
俺は提督用の机に座り、書類を片付け始める。
こんな日常も悪くはないな。
そんな事を、思いながら。
"歪な平凡"と言うタイトルな2章ですが、歪なのは少しだけで、大体こんな感じに進んで行きます。