次回が少し長くなる予定なので、今回は短めです。
「……釣れない」
あれから更に1時間。
あの1匹以来、竿が揺れたのは一度もない。
ちなみに、何故か秋刀魚以外では魚は一切釣れない。
これについては諸説あるが、深海棲艦の奴らが食っているというのが、一番有力な説だ。
「ぁぁあ! どうすりゃいいんだよまったく!!」
資材は無い、食料もパンの耳、執務室へ戻ったら多分書類が増えてる。
ああ、もう提督辞めたい。
「金もねぇし、どうすりゃいいんだよマジで……」
ちなみに、所持金は3000円。
戦争中のために消費税は40%まで上がってます。
つまり、大したものは買えません。
本当に、話が違う。
俺が教官から聞いていた提督の仕事というのは、こんなんじゃなかった。
もっと……明るくて、楽しそうで、幸せそうな仕事だった。
俺の考えが甘かったという事なんだろうか?
仮にも戦争をしているのだから、脚色をしていると疑うべきだったのだろうか?
それとも、自分の所だけがこんな感じで、他はもっと楽しくやれてるのだろうか?
ふと、士官学校でよくつるんでいた奴のことを思い出す。
あいつも確か、俺と同時期に提督として着任したはずだ。
あいつの方は、明るい場所なのだろうか?
あいつの所は、パンの耳が食事なんて、考えられないのだろうか?
あいつの所は、暖かいところなんだろうか?
「……」
ダメだ。こうなってはもうダメだ。
落ち着け。落ち着いて深呼吸をしろ。
「……戻るか」
俺は立ち上がる。
もう、疲れた。
少し、寝よう。
俺は提督用に設けられている部屋に向かい、そこで少し仮眠を取る事にした。
そう言えば、まだ私物の入った荷物の確認すらしていない。
早く開けておかないと。
ギィ、ギィ、ギィ……と、何か重い物を引きずるような音が、廊下で鳴り響いていた。
ギィ、ギィ、ギイ……と、その音はゆっくりと動いていく。
ゆっくり、ゆっくりと。
やがて、とある扉の前でその音は止まり、また更に、ギギギィィィ、と音がなり、最後に小さく、トン、と音が聞こえ、その音は完全に止まった。
すると、タッタッタッタッ、と、足音のような音が、廊下に響く。
その音はやがて小さくなり、1分も経たないうちに、聞こえなくなってしまった。
その廊下に、静寂が広がる。
その扉の横についてあるプレートには、"提督室"と書かれていた。
その扉の先には、現在18歳という若さの提督。
「御弓 稔」が、仮眠をとっている。
スヤスヤと、幸せそうな寝顔を浮かべ、寝ている。
今、自分の周りを徐々に囲みつつある、"殺意"に気づかずに。