大本営
この小説では、ひたすらに戦果を上げた物を優遇するタイプ。
なので、運営が始まったばかりの鎮守府でも、戦果を上げない限り一切支援はしない。
いちよう資材などを先借りする事は可能だが、2倍にして次週までに返さないといけなく、損しかしない為、する人は滅多にいない。
しかし、ほんの少しでも戦果を上げたものにはとことんまで支援をくれるので、ブラック鎮守府が多数発生した。
なお、大本営としてはブラックだろうがホワイトだろうがどうでもいいらしく、そのせいもあって憲兵も殆ど気にしていない。
なお、食料品などは資材が配達される月曜日に一緒に送られてくるため、デイリー任務を達成しない限り、街で調達するか、特定の時期のみ、狩猟しないといけない。
とりあえず、これを理解していただければ、大体の「ん?」という所は解消されると思います。
現在の時刻はマルヨン:マルマル。
あれから夕食も食べず、ひたすらに爆睡していた俺が起きたのは、そんな時間だった。
軽く10時間は寝ていた所から、たったの2日でどれだけ疲れが溜まっていたのかが分かる。
だが、そんな事も言ってはいられない。
今日は日曜日。
明日までに何でもいいから最低1つ、デイリー任務を達成しなければ、来週もこの状態で耐え抜かなければならない。
つまり、下手すると7日間パン耳地獄に合うことになる。
……ダメだ。それだけは阻止せねばならん。
しかし、そんな地獄を回避するには、現在のところ、方法が3つしかない。
1つ目。
昨日と同じように秋刀魚一本釣りを行い、なんとかニ匹は釣る。
2つ目。
やむなしと判断し、大本営に資材を前借りする。
3つ目。
電に頼み込み、出撃してもらい、デイリーを達成する。
……まず2つ目は無いな。
前借りした所で次週までに返せる気がしない。
返せなかったら……ぺ◯カが持ち金に変わる所に連れて行かれるのかねぇ。
そして、3つ目は多分無理だ。
電は完全に俺と鉢合わせないように行動している。
それに、パン耳を貰ってきてくれてるのもあり、頼みづらい。というか頼めない。
とすると……1つ目しか無いわけだが。
正直言って、全く自信が無い。
よくよく考えてみれば、秋刀魚と言えば、夜に沖でライトをガンガンに照らして、網で一気に捕まえるのが一般的だ。
「……でも釣るしかないよなぁ」
俺はため息を吐き、適当に着替え、ドアノブに手を掛け……違和感を感じた。
この鎮守府……と言うか多分全ての鎮守府がそうだと思うが、ドアは部屋側から廊下へと押すタイプだ。
つまり部屋から出る為には、ドアを中から押さないといけない。
つまり……まぁ簡単に言うと、廊下に何か重くてデカイ物を置けば、簡単には部屋から出られなくなる。
つまりはそういう事だ。
「……マジかよ」
何も今みたいな切羽詰まった時に、仕掛けて来るんじゃねぇよマジで。
ああ、面倒だマジで。
俺は半分ヤケになっていると、窓に目が行った。
俺が今いる部屋は2階にある……と言うか、この鎮守府は二階建てだ。
ここから地面までの距離は、約4m程。
このぐらいなら、飛び降りても問題は無いだろう。
多分、恐らく……きっと。
ああ、躊躇している時間が惜しい。
俺はさっさと飛び降りるため、窓に近づき……
途端に感じるのは、濃厚な"殺気"
「っ!」
咄嗟に後ろに飛び退くと、コンマ差で砲撃音が響き、まどガラスが割れまくった。
「うおっ! 危ねぇ……」
もう少しで風穴が開くところだった。
危ない危ない……。
「じゃなくて!」
一体何事だ?
突然砲撃が撃ち込まれるなんて、まさか敵襲!?
とかいう考えは、ものの数秒で打ち砕かれた。
「チッ! 殺り損ねたのです」
「電! テメェか!」
ああ腹立つ。
いくら憎いからってこんな時にするなよ本当。
俺はとりあえず再び撃ち込まれるのを防ぐため、窓から離れる。
恐らく、ドアを開けなくしたのも電だろう。
そして、俺がイラつき、窓から出ようとすることを読み、
外から砲撃を準備していたのだろう。
あぁ、本当マジで面倒くさい……。
こうなったら、恐らく窓から出るのは無理だろう。
となると、ドアから出ないといけなくなるのだが……
「やっぱりダメか」
ダメだ。
どうやっても俺の力では開かない。
……壊すか?
「何か良さそうな物、持ってきてたっけ?」
荷物を探ってみる……しかし、ドアを壊せそうな物は入っていなかった。
……さて、どうするべきか。
部屋にある時計の針は、チクタクチクタクと、時が流れ続けている事を伝えてくる。
間も無く目覚めてから30分。
そろそろ空が明るくなるであろう時刻だ。
「ああ! なんかいい方法はないのか! マジで!!」
イラつき、ドアをダンダンと殴りつける。
蹴りつける。
喚き散らす。
対した効果は無い。その事実を見せつけられて、嘲笑われているかのような気がし、ドンドンと怒りが溜まっていった。
ーー俺が何をしたと言うのか?
ーー何もしていないだろうが!
ーーただ派遣された身として、頑張ろうと思っていただけだ。
ーーそれなのに何なのか。この仕打ちは。
ーー俺は、俺の4年間は、ただただこんな事の為に費やされたのか?
ーーふざけるな。
ーーふざけるな!
「ざけんなぁぁ!!」
俺は叫び、思いっきりドアを殴りつける。
バキッ! と音がしたが、それでもドアは開く様子を見せない。
「……」
何だろう?
何だか泣きたい気分になってきた。
俺は、こんな事の為に、艦娘達の、言わばストレス解消の為の道具になる為に、親と別れて4年間を過ごしたと言うのか?
そんな、まるで"捨て駒"のような物になる為に、生まれて来たと言うのか?
……違う。
違うだろうが!!
「そんな事の為に、生まれてきた訳ねぇだろうが!」
叫び、崩れ落ちた。
涙が、溢れてきた。
俺は、泣いた。
ガキのように、ガキみたいに。
……泣き喚いた。
しかし、何も問題は解決しない。
ただただ、時間が流れてゆく。
ふと、俺は部屋の端に設置されているタンスをみた。
何か……そこに気配のような物を感じたのだ。
何かが、見つけて欲しがっている。
何かが、タンスの扉を開けてくれる事を待っている。
何かが……期待して、俺を見つめている。
俺は、目を真っ赤に腫らしながら、フラフラと近づいて行き、ドアを開け放つ。
「……斧?」
その中には、大振りの、ズッシリと重い斧があった。
持つところはツヤツヤとした木で、先についている刃は……赤いシミが、所々ついている。
「……」
何故だろう?
何故か、この斧を見ていると、さっきの物とは別の感覚で、涙が出そうになる。
この斧は、大切に扱わなければならない。
そんな感覚が、俺を包み込む。
「……お借りします」
なぜか、そう言わなければいけないような気がし、俺は呟いた。
そして、ドアに再び向き直り、思いっきり振り下ろした。
ウルト◯マンネタとは何だったのか……