ゾイド短編   作:MK-Ⅲ

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砲角

 西方大陸エウロペの一角、その中にある小国家の一つの中。

 

「あ~もう!

 今日の職場までの距離が長い!」

 

 火砲を多数搭載した大型ゾイドの操縦席で、一人の人間が盛大に愚痴を垂れていた。彼女の見た目はまだ若く、人によっては少女とさえ言うだろう。事実、彼女の年はまだ十七を数えるのみである。

 黒く短い髪と、同じ色の大きな瞳が活動的ながらどこか美しい印象を与える少女だった。

 

『文句言わないで。もう七割方進んでいるから、もう少しよ』

 

 だが、そんな彼女が乗っているゾイドはそんな少女の印象とは大きくかけ離れていた。多数の火砲を装甲に覆われた大型の全身に数多く備える、角竜型のゾイド。その巨大な体躯と重厚な装甲に加えた多数の火砲はさながら移動砲台という言葉を連想させ、味方に頼もしさを感じさせている。

 

「着いた先での補給、確かに受けられるんでしょうね?」

『今回の依頼人はかなりの大口だし、書面付きで確約貰ってるから問題無いわ。

 この前みたいに、ゾイド用の飼料と人間用の食料だけなんて事はないわよ』

 

 さて、彼女がここまで補給の事を気にしているのには理由がある。

 彼女が駆る大型ゾイドは一見すると重装甲高火力であるが、そこには火砲を多用するゾイドが避け得ない致命的な弱点がある。

 

「それだったらいいけどさ。この前みたいに、照準システムの最終調整が出来る場所が無いなんて御免だからね?

 ね、《カノンホーン》?」

 

 そう、照準である。一応、手動で狙うという最終手段こそある物の場面によってはそれが足枷になることは十分にありうる。そして、火砲を主力とするゾイドにとってそれは致命的であった。

 年は若いが乗っているゾイドとの付き合いはかなり長い彼女にとって、相棒とも家族とも呼べるこのゾイドと共に戦う時、その状態を最善にしようとするのは至極当然と言える事だった。

 

「――オォォォォ!」

 

 その彼女の呼びかけに答えたのか、《カノンホーン》と呼ばれたゾイドも低く野太い咆哮で答える。

 《カノンホ-ン》。トロサウルス型の大型ゾイドであるこのゾイドの名である。

 

『その心配のしようだと、流石の《レニ・カーチス》もやっぱり目撃情報から推測される《最悪の相手》は不安?』

 

 通信で彼女と益体も無い会話を交わすオペレータ役の少女も、黒髪の少女―「レニ・カーチス」―の事をよく知っているのだろうか、どこかからかいの色を含んだ口調で返していた。

 

「それ、分かってて言ってない?

 ま、相手が相手だから何時もよりは少し身構えないといけないけどさ」

『へぇ……ま、当然か。

 アタシ達が相手する中だと最上級の大物だもんね』

「本当にね。

 っと、ネレット。なんか町っぽいのが見えてきたけど……あれが依頼主のいる町?」

 

 呼びかけに、オペレーターの少女―「ネレット・オールター」―は画面を確認し、返答を返す。

 簡単な事ではあるが、その時間が平均よりも遥かに短い事に彼女のオペレーターとしての腕前の一端が見え隠れしていた。

 

『ええ、そうよ。

 もうそろそろ着くって連絡入れておくから、東側の格納庫に向かって頂戴。もう少し進むと見えてくると思うけど』

「ん、りょうかい」

 

 気のない返事を返し、雑談も交えた通信が終わる。

 それから間もなく、彼女は格納庫を見つけるとそこへと向かっていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 格納庫に着きゾイドを預けて間もなく、レニはある場所へと案内されていた。

 数分歩き、通された場所に居たのは初老の男性。一見すれば穏やかそうに見えるその男性は、その町の市政を担う人間の一人との事だった。

 

「遠い所ようこそ、お越しくださいました。Zi-ギルドのお方」

「いえ、この位でしたら問題ありません。

 それで、ご依頼の件ですが――」

 

 さっきまでの盛大な愚痴はどこへやら。レニは見事な営業スマイルで応えると勧められるまま座り、本格的な話に入る。

 

 彼女の所属する組織―Zi-ギルド―は、言ってしまえばフリーのゾイド乗りとその後方支援者の集まりである。

 何故わざわざこんな組織を作り上げられたのかと言うと、今現在の国家情勢に深く根差している。

 今現在の主だった三大国―ヘリック共和国、ガイロス帝国、ネオゼネバス帝国―は現在それぞれが戦争による国力の低下という問題を抱えていた。そこに拍車をかけたのが、戦争中に乗り捨てられたりして発生した大量の野良ゾイドと、ネオゼネバス帝国が大量投入した無人機キメラブロックスである。前者はダークスパイナーが投入されたばかりのころに大量に発生し、後者は暴走し制御を離れたものが無差別に暴れまわる事例が多発していた。

 そんな中、大国の手が回らない小国家や遠隔地において重宝されたのがフリーのゾイド乗り達だった。個人間の差異こそあれど、基本的に報酬を出し条件を守れば優先して働いてくれる彼らである。大国が自国の大都市の治安を維持するために激減した国力の多くを割かねばならない時に、その中から外れた者たちは強力な野良ゾイドを相手に後手に回りやすく、ひいては多大な被害を出しやすかった。この状況下にフリーのゾイド乗り達の仕事は激増したが、そのために必要な裏方や手配が間に合わないという現実もあった。

 そのために生れたのがZi-ギルドだった。この組織は、ゾイド乗り達への依頼の斡旋とゾイド乗り達の後方支援―ゾイドの定期的な整備、依頼中のオペレータの紹介、事前の情報取集、受けられる任務内容のレベル分けなど―を行い効率的にゾイド乗り達に仕事を、依頼主達にその戦力を提供する組織として誕生したのである。

 

「――で、これが問題の写真です」

「……はい、たしかに確認しました」

 

 そしてレニと彼女の《カノンホーン》の組み合わせは、若いながらも所属ギルド内部では十分エースと呼べる能力を持つ組み合わせとして知られる。

 今回そんな彼女とかのゾイドが選ばれた理由は、今見せられている一枚の写真が原因だった。

 一見すれば、写っているのは通常のティラノサウルス型ゾイドに思われるゾイドである。だが、所々にちぐはぐな意匠が見て取れる。

 

「やはり……《ジェノザウラー》なのでしょうか?」

「断定はできませんが……可能性は高いかと。

 ですが、所々に通常の《ジェノザウラー》とは違う意匠も見られます。もしかしたら、キメラブロックスと融合しているかもしれません」

「そう、ですか。

 それは、まるで……《リビング・デッド・バタリオン》のような……」

 

――《リビング・デッド・バタリオン》。

 本来はキメラBLOXのうち、機能停止した他ゾイドの残骸と融合した個体、またはそれを応用したネオゼネバス帝国の無人ゾイド部隊、通称《死霊兵団》の事。今回移された写真には、それに近しい意匠を持つゾイドが映っていた。そこから、大破などの理由で乗り捨てられた《ジェノザウラー》の残骸を、暴走し野生化したキメラブロックスが取り込み自己改修した姿ではないかと推測されていた。

 そして、素体が《ジェノザウラー》という事もあり高い戦力を持っている事が予想されたため、ある程度以上に高い能力を持つゾイド乗りであるレニが来ることになったのである。

 

「ゾイド用の飼料を主に狙ってきていますが、最近は小型ゾイドや輸送業者たちにも被害が出始めており、一刻も早い対処をお願いしたいのですが」

「ご依頼、承りました。一通りの準備が整いしだい、行動に移らせていただきます」

 

 内容と行動パターンを確認し、再度格納庫へとレニは向かう。

 彼女の愛機にして相棒を最高の状態にするために。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ほう……これがあなたのゾイドですかな」

「はい、そうですが。

 何かご用件でもおありでしょうか?」

 

 レニが《カノンホーン》の整備を進める中来たのは、さきほどまで話していた市政の男性だった。

 傍から見れば無遠慮にさえ思われるほど興味深げに愛機を見つめる彼に、レニは特に不快感を見せる事も無く応じていた。この程度の事は幾数多と経験してきた彼女にとって、邪魔にならない限りそこまで気にすることでもなかった。

 

「いや……私も、昔は軍でゾイド乗りをしておりましてな。どんなゾイドに乗っているのかと、気になってしまいまして。

 しかし、こうして見ていると。昔乗っていた《レッドホーン》を思い出しますな」

「この子……《カノンホーン》は、元々は私の故郷の国で《レッドホーン》の基幹技術を基に製作された、いわば同系列のゾイドです。コアはスティラコサウルス型ではなくトロサウルス型なので三本角になっていたりと違いはありますが、近しさを覚えるのも何らおかしくはない事ではないかと」

「なるほど。だからか……」

 

 男性はしみじみと呟き、彼女の駆る《カノンホーン》を再度見つめた。

 一方、レニはと言えば一言断りを入れたうえで再度調整に戻っていた。現地の気温や湿度などの自然環境に合わせつつ、同時に今現在の《カノンホーン》の状態も加味して細やかな調整を施していく。

 

 やがて数分ほどした後、男性は満足げにその場を去っていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「それじゃ、お仕事に行きますか」

 

 夕方になり、十分に調整と休息を終えたレニは出発していた。とはいっても、場所はそう遠くない。ゾイド用の飼料の保管庫と其処へと至る主だった道を見渡せる場所へと移動すると、彼女はある程度の緊張を保ちながら警戒体制へと入っていた。そこは今現在までの襲撃で最も多くの被害を被った場所である。

 

『レニ、聞こえる?』

「聞こえるよ。で、そっち何か分かる?」

 

 準備を済ませたころに入ってきた通信の主はネレットだった。

 周辺の状況の確認をしようとするレニに、ネレットは落ち着いた声音で答えていた。

 

『まだ周辺に反応はないわ。一応、対ステルス用レーダーも使って洗ったけど今はまだいないみたいね。

 もう少し力抜いてないと、最後まで持たないんじゃない?』

 

 軽口すら挟めるくらいには余裕があるという事なのだろう。なんだかんだと言ってこの二人の付き合いもそれなりに長いものがあり、レニもネレットが言うのならそうなんだろうと思って少しばかり力を抜いていた。とはいっても、周辺への警戒こそ怠る事は無かったが。

 

 暫くの間そうして警戒体制を続けていた彼女だったが、やがてネレットの通信によりモニタートレーダーに注力することになった。

 

『レニ。南方から反応。

 ただ……二つ出てる』

「二つ!?」

 

 流石に一瞬驚いたが、それらへの対処へのために来た以上は彼女と《カノンホーン》で何とかする他無い。

 それを一瞬で理解したレニは、情報の取得へと動く。

 

『出てる反応は大体同じだから、多分同機種。

 《ジェノザウラー》と似て異なる反応が出てるから、多分目的の《大物》だと思うけど』

「《リビング・デッド・バタリオン》が二体って事?

 さすがにマズイんだけど……」

 

 話しながらも、徐々に徐々にレニの身に緊張が漲っていく。

 やがて、《カノンホーン》のレーダーにも反応が出る。ついで、そう間を置かない内にモニターにも黒い影が映っていた。

 遠目には前傾姿勢をとる普通の《ジェノザウラー》のようにも見える。だが、その輪郭がはっきりとしていくにつれてその異様さもはっきりとしてきていた。

 片方は一見するとティラノサウルス型だが、その頭には派手な二本の角が見て取れる。また、前腕の肩にあたる部分には両方に三角形に近い形の装甲と一門の砲が見て取れる。さらに、尾部の先端も意匠が違う。おそらくは、《デモンズヘッド》の頭部と尾部、《ディプロガンズ》の頭部だろう。

 もう一体は完全に異形と化していた。頭部は平たく、突き出た二本の部位は鋏のように見える。背中には巨体に比して不釣り合いに小さな翼があり、前腕の肩には異様な方向に突き出た腕とも足とも似つかない何かが二本。こちらは、《フライシザース》と《シェルカーン》の部品だろうか。

 いずれも格闘戦に秀でた機体だが、同時に射撃戦には脆い構成であることが見て取れる。

 

「いいんだな!?」

『ああ、思いっきりいいぞ!』

 

 最期の確認を極めて短く済ませたレニは、操縦桿に指をかける。

 起動させたのは背中に二つある複数の射撃武器を集約したランチャーユニット、その中で最も目立つビームランチャー。かつて帝国大型ゾイドに多数積み込まれたそのビームランチャーを、《カノンホーン》は二門積むという事をしていた。

 なお、ランチャーユニットには他に、対ゾイド3連装リニアキャノンと地対地ミサイルポッドの二つが接続されている。

 片方ずつ素早く照準を付け些かの躊躇いも無く引き金を引く。

 

  ガギュウガギュウウウゥゥ

 

 放たれたピンクの閃光は、レニの狙い通りに二機へと殺到した。

 一方、狙われた二機は横へと動いてかわしこそしたものの、装甲の一部に焼け焦げたような跡が残った。

 

「―――――!!」

 

 二機が突然の攻撃に異様な叫び声をあげながら、その攻撃を放ったレニの駆る《カノンホーン》へと二方向に分かれながら進行してゆく。

 一方のレニは冷静に《カノンホーン》を操縦し、囲まれないように動きつつ頭部に装備された二本のビームキャノンとランチャーユニットの対ゾイド3連装リニアキャノンを撃ち自身の進行方向へと来ないように牽制してゆく。

 

「――オオォォォ!」

 

  ビシュビシュドドドドドドン!

 

「――――!」

 

 だが、彼女の放った射撃は当たること無く空を切った。狙っていた《フライシザース》頭は異様なほどの高度まで跳躍して交わしていた。背中に追加装備された《フライシザース》の羽の恩恵だが、レニはすぐさま対応してみせていた。

 

「ちょこまかと!」

 

 跳躍した勢いの向きを変えて《カノンホーン》へと向かった《フライシザース》頭だが、その時にはすでに《カノンホーン》の後ろ脚の太腿に装備されていた箱型の装備の上部が開いていた。そこから覗いていたのは、地対空ミサイルが合計八発。さらにそれが左右それぞれにあったために合計十六発。

 

「―――――――!!」

 

 それが直上へと一斉に放たれ、《フライシザース》頭へと向かってゆく。

 

  ドシュシュシュシュシュ!

 

 同時に、もう一体の《デモンズヘッド》頭へと前足の太腿部分に装備された同様の箱型装備の前部が開く。そこには、先の地対空ミサイルと同様の方式で装備された地対地ミサイルが計十六発。

 

「――――!」

 

 それが一斉に火を噴き、叫びをあげる《デモンズヘッド》頭へと向かう。

 

  ドシュシュシュシュシュ!

 

 ほぼ同時に着弾し、爆発。

 

  ドドドドドドオオオォォォォン!

 

 その煽りを受けて二機は動きを一時的に拘束される。

 

「そこっ!」

 

 レニはその隙を見逃さずに、空中の《フライシザース》頭には背面に装備された80mm地対空2連装ビーム砲と、胴体横に左右それぞれ装備された4連マルチミサイルランチャーで攻撃。《デモンズヘッド》頭には頭部ビームキャンとビームランチャーユニットの地対地ミサイルポッドを使用。

 射撃によって着実にダメージを受ける二機だが、それでも接近を止めようとしていない。《デモンズヘッド》頭は両肩の《ディプロガンズ》のレールキャノン二門で出鱈目な射撃を仕掛けてきており、結果的に牽制となっていた。同時に《フライシザース》頭も翼と足のブースターとマグネッサーシステムを器用に利用して降下してきており中々に厄介なことになっていた。

 

「――止め、きれないか!」

 

 レニが毒づいたその瞬間、背後に《フライシザース》頭が着地し、正面には間もなく《デモンズヘッド》頭が肉薄しようとしている。

 

「大人しくしていろ!」

 

 その大顎で両断しようとしてきた《フライシザース》頭に向かって《カノンホーン》の尾部のTEZ20mmリニアレーザーガン二門と後ろ向きについているAEZ20mmビームガン二門が放たれる。止めるには威力が足りないが、レニは元より普通に撃つだけで止まるとは思っていない。

 その狙いは、先の射撃によって装甲の剥がれた腹部に露出したゾイドコアブロックである。

 

「ちょっとは痛いだろう――!?」

 

 大顎が到達する直前、《カノンホーン》の射撃が腹部のゾイドコアブロックを捉えた。

 当然、ブロック単品での防御力には限界がある。腹部のゾイドコアブロックはその攻撃に耐えきれず、撃ち抜かれ爆散した。

 

  キュドオォォ!

 

「―――――――――!!!」

 

 同時に、《フライシザース》頭が異様な叫び声をあげる。その動きは先程までよりも鈍っていた。

 後ろを止めたレニは、改めて前へと注意を向ける。そこには、もうすでに肉薄しかけた《デモンズヘッド》頭がマグネイズスピアを構えマグネイズファングで嚙み砕こうと大口を開けていた。

 

「くらうかそんな物!」

 

 レニは予め用意していた背部のビームランチャーを、外しようのない距離にあるその両足へとそれぞれ向ける。放たれた極太の閃光は狙い通りにその両足を蹂躙し、使い物にならなくしていた。

 さらに、頭部のビームキャノンが追撃に入る。その一撃に、《デモンズヘッド》頭の《リビング・デッド・バタリオン》は完全に動きを止めた。

 一方、《フライシザース》頭もさすがに体勢を立て直しており、《ジェノザウラー》と《シェルカーン》の腕と頭部の大顎を威嚇的に動かしていた。だが、その動きにはやはり陰りが見られる。

 

「―――――――!」

 

 その咆哮を受けながらも一切慌てる事無く、レニも《カノンホーン》の向きを変えて正面に《フライシザース》頭を捉える。だが、その時にはすでに《フライシザース》頭はその四本の腕と頭を突き出しながら突撃してきた。

 

「――オオォォ!」

 

 《カノンホーン》が咆哮を上げると同時、レニは対ゾイド3連装リニアキャノンを両方とも撃っていた。狙いは《フライシザース》頭の両腕。

 動きの鈍っていた《フライシザース》頭に避ける手段はなく、合計四本の腕がその肩から弾き飛ばされる。

 

「―――――――――――!!!」

 

 最後の突撃とばかりに大顎で両断しようとしてくるが、レニはその先を正確に《カノンホーン》の三本角の間に捉えていた。

 

「跳ね上げろ、《カノンホーン》!」

 

 《フライシザース》頭の大顎が両断しようとする直前、彼女は《カノンホーン》の首と胴を思いっきり跳ね上げる。《カノンホーン》もまた、彼女の意志に応えその角を振り上げる。

 振り上げられた角は先に使用したビームキャノンを内蔵したものとは違い、金属の塊かハンマーとも言うべき純粋な格闘戦用の代物である。それを大顎の中心、稼動部が内蔵されたそこに叩き込まれる。しかも、ビームキャノンが内蔵された上二つの角が邪魔をして衝撃の逃がしようが無い。

 

 ゴンッ!

 

「――――――――――――――!!!!」

 

 その効果は絶大で、《フライシザース》の頭だった部分は真っ二つに叩き折られていた。

 さらに、強制的に上を向かされた事で晒された無防備な腹部に向かって止めのビームランチャーが叩き込まれる。装甲が剥がされブロックスの爆発があった腹部に、それを受け止める余裕は無い。

 その閃光によって腹部に風穴を開けられた《フライシザース》頭の《リビング・デッド・バタリオン》は完全にその活動を停止していた。

 

「―――オオオオオオォォォォォォ!!!」

 

 《カノンホーン》が勝利の雄たけびを上げ、その戦闘の終わりを告げた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

『レニ、終わった?』

 

 終了後間も無く、気楽な声で通信をかけるものが居た。オペレータのネレットである。

 

「終わったわ。

 結構キツかったけどね」

 

 レニの言葉に嘘は無い。今回は射程距離の差がもろに出た形になったため勝てたが、もし通常の《ジェノザウラー》が持っている荷電粒子砲やパルスレーザーライフルと言った強力な火砲を持っていれば結果はどうなったか。彼女は自信を持てない。

 

『そう、良かった。

 もう周辺にゾイド反応も無いし、帰ってもいいわよ』

 

 そんなレニの心情を知ってか知らずか、ネレットは常と変わらぬ調子で業務連絡をしていた。

 だが、レニにとってはもはや慣れたやり取りだったので特に気にした様子もない。むしろ、彼女にとってはここからが重要だった。

 

「あー、それなんだけどさ」

『何?』

「こっちで一泊してってもいい?

 消耗した上での夜間行軍はできれば避けたいんだけど」

 

 相手取ったゾイドを考えれば非常に少ないと言えるが、それでも弾薬はじめ種々の消耗があるのは確かだった。しかも、彼女の《カノンホーン》はそもそも夜間の行動がそこまで得意ではない。

 

『言うと思った。

 手配は済ませてあるわよ。それに、どの道倒したゾイド(そいつら)の回収は明日にせざるを得ないから、それまで横取りされないようにしてもらわないといけないしね』

「あんがと。じゃ、今日はこっちで止まるわ。

 なんか反応あったら連絡よろしく」

『了解した』

 

 いくばくかのやり取りを挟んだ後、彼女は借りている格納庫へと向かっていった。

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