令嬢戦記   作:石和

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 初めまして、石和です。
 名前は最近行った温泉地です。適当ですね、すみません。

 web版幼女戦記面白いな、ターニャちゃんのお友達を作ったら楽しそうだな、ついでに女子が一人増えるからいいかな、参謀本部にぶち込みたいな、なんて簡単すぎる思いから見切り発車。文章まともに書いたこともないのに、ちゃんと着地できるか不安しかありません。文系出身者ですが、得意科目は理科社会、苦手科目は数学・物理・国語な人間ですので確実に素質はありません。無いもの尽くしで誠に申し訳ありません。

 では高身長・変人・身分良し(ただし偽の身分で活動)の令嬢戦記を楽しめる方はお楽しみください。


3/3追記:スコップからシャベルに表記変更、訂正ばかりでまことに申し訳ないです




第1話

 ああ、これは夢だ。懐かしき子供時代、屋敷を抜け出した秘密の時間。私が私である支えが、そこにある。

 

『こんにちは!』

『アナスタシア、久しいな。少し大きくなったか』

 

 夢の中で、あの人はいつだって私の名前を呼んでくれる。

 

 私はアナスタシア・フォン・プルシア、本名はもっと長い。帝国貴族プルシア公の娘に生まれた不義の子だ。父はプルシア公に認められた人間ではなかったために引き離され、プルシア公の一人娘であった母は8歳の時に遺言を残して死んだ。8歳で孤児院行きかと思いきや、世間体のため(または風聞を避けるために)仕方なしと引き取った母方の祖父母に愛なく育てられた。

 このように家族に恵まれなかった私を唯一かわいがったあの人。屋敷をこっそりと抜け出したときに必ず向かった図書館、そこで時々会っては話し相手になってくれた、それなりに身分のありそうな――――確か中佐とか大佐とかだった気がする、記憶は朧気だ――――軍人さん。名も知らず、それでいて懐いていたあの人に駆け寄って抱きしめてもらえば、彼と同じ髪色をした私の頭を必ず撫でて、細い目を柔らかく緩ませたのをよく覚えている。

 

『ねえ、軍人さん』

『何だね?』

『どうやったら、あなたみたいに賢い軍人さんになれますか。私もあなたみたいに、いろいろなことを知りたいし、同じ軍人にもなりたい』

『レディに軍人は厳しいだろう。だが、本を読み、興味のあることも無いことも知る努力を怠らなければ、賢くなれる』

 

 それから、私は勉強した。本を山ほど読んだ。屋敷中の本を読み漁り、読みたくても無い本は強請ったり、屋敷を抜け出した際に図書館で読んだ。淑女になれと教育してきた祖父母の期待に反して、私はどんどん学力を上げた。時折あの人と話をして、彼の優秀な頭脳が織りなす思考に感嘆した。

 

 私はなぜか、どうしても彼のようになりたかったのだ。しかし、士官学校に入学したいと祖父母に言い出せない。そのことをふいに漏らしてしまったとき、彼は糸目を開くと、今まで感じたことの無い威圧感を伴わせて言った。

 

『自分の望むものは、自分で掴め。そこに必要なのは、自分の力だ』

 

 耳から取り込まれる彼の力強い言葉、目から取り込まれる彼の瞳の色。金言と珍しい光景は私の記憶に鮮烈な衝撃をもって刻み込まれた。それを胸に、私はそれ以前よりも一層努力して知識を習得するようになった。

 

 12歳になるころに、私が士官学校を受験したいことを祖父母に告げた。案の定激怒した祖父母に内緒で、彼らが受けさせなかった魔導適性の検査を受けた。結果として人並みの魔力があること、軍に引き抜きたいという旨の手紙が祖父母に送られた。せっかく素質もあるのだから受験はさせてほしい、私がそう告げれば彼らはやれるものならと言わんばかりに偽の身分と受験票を用意した。そうして私は士官学校を受験し、首席で通った。実力を見て納得せざるを得なくなった祖父母は何も言わなくなった。

 

 無事士官学校に入学した私が貴重な休日に図書館へ行っても、そのころにはあの人に会えなかった。私と同じ髪の色、瞳の色をした、学者然の軍人さん。彼の声を聞けないのは悲しくて、寂しくて。でも、彼が軍人ならば、それも首都にいるようなエリートコースの軍人なら、私がエリートコースへ進めばきっとまた会える。そう思った私はがむしゃらに努力して、時折小さな同期ににらまれながらも座学だけは主席を勝ち取った。恐ろしく戦闘の素質がなかったのは残念だが、座学成績と士官学校後の実戦を評価され、

 

「起きろ!!ユリア・バーナード!!朝食抜かれるぞ!!遅刻だぞ!!」

「っ!………ん?ぬあ?」

 

たった今ベッドから蹴落とされた人間は、すなわち私は、ユリア・バーナードと名乗って軍大学に通っている。

 

 

 

 

 

 ……お見苦しいところをお見せしました。私はユリア・バーナード中尉、軍大学所属の学生です。この名前の経歴としては、孤児、士官学校での座学成績優秀者、配属先のライン戦線でシャベル姫の異名を頂き、上層部より軍大学入学許可を受け取ってここにいます。私を蹴り起こした人間は士官学校同期以来の付き合いであるターニャ・デグレチャフ中尉、私が小さな同期と脳内で呼んでいる幼女軍人です。参謀の人事局から狂人と評されたらしい彼女ですが、なぜか私の面倒を見てくれます。不思議ですね。多分、私が座学だけは優秀であるため、そこをうまく使いたいと寄ってきたのかもしれません。ですがこのざまです。ごめんねターニャちゃん。

 

「今日もありがとう。どうしても休日は眠たい」

「ふん。礼はレポートの感想でいい」

「ターニャちゃんレポート問題ないじゃん」

 

 それにあなた強いから大丈夫だと思う。撃墜王も涙するスコアだもの。野戦将校になればきっと人生の終わりまでいい身分かもしれない。私には無理だけど。

 

「お前が示してくる意見に興味があるのだよ、座学のみの主席殿」

「いやー、射撃が致命的なエラーって感じ?」

「お前の人より丈夫な防壁展開能力とその頭脳がなければ士官学校で斬っていた」

 

 いつもと変わらず容赦ない同期殿と大学へ向かう。今日は休日のため講義はない。しかし、寮の図書室では読む本が尽きたという友人は大学図書館へ足を運ぶというではないか。私も休日の暇を持て余すくらいならと、彼女についていくことにした(蹴り起こしてもらった)。ただし、今日は図書室より先にトイレへ行きたい。

 

「トイレ行ってくる」

「先に行っているぞ、ユリア」

 

 ターニャと別れ、トイレへ向かう。男子禁制である。そして手を洗って適当に束ねた髪を整えてから、本当の目的地へと赴く。

 

「バーナード中尉、入室します」

 

 気を張り、ドアを引く。嗅ぎ慣れた古書やインクの匂い、さらさらと聞こえるのは誰かの筆記音。町の図書館と違うのは、ここにいるのがみな軍人であることくらいであるが、それが問題なのはもう慣れた。私はターニャと一緒でひよっ子なのだ。そうである以上、私がするべきは上官に無礼をしないことと自分の目的を果たすことくらいである。なのでとりあえず、

 

「あの、お持ちしましょうか」

 

目の前を大量の本を持って歩く上官に声をかけた。

 

「……君は?」

「バーナード中尉と申します。ここの生徒です」

 

 自分の名前と身分を答え、上官殿が抱え込んでいる大量の本の上半分を奪うように持つ。そしてどこですか、と言って座席まで連れて行ってもらうと、そこで本を机に置いた。

 

「すまない、バーナード中尉」

「いえ。余計なおせっかいであれば申し訳ありません」

「いや、助かった」

 

 眼鏡をかけた上官殿――――名をレルゲン少佐というこの男性は、参謀本部の人事局で人事課長をしているらしい。優秀な人材なのだろう、良識ある紳士のような雰囲気が滲み出ている。気のせいかもしれないが、胃痛に悩まされそうな人間にも見える。

 

「貴官の噂は聞いている。士官学校では座学の成績優秀者、配属後は白銀の隣でシャベルを振るっていたと」

「恐悦至極に存じます。ただ、シャベルの話だけはご容赦ください」

 

 そんなに真面目な顔で言われると羞恥でシャベルを叩きつけたい、とは口が裂けても言えない。顔はきっと赤い。熱が集まっているのがよくわかる。

 この少佐が言いたいのは、私が軍大学に来る前、ライン戦線に少尉として配属されたときのことだ。前述の通り、私は射撃が致命的なエラーと言わんばかりに不得手である。というか、軍人失格レベルで射撃ができない。遠距離はおろか、至近距離でも的に弾を当てられない。術式で補助しても当たらないという発狂するレベルのエラーは、たいそう教官を悩ませた。魔法発動ができても射撃下手と連動した結果当たらないのでは航空魔導士どころか軍人など論外である。ただし、私は防壁の性能と、座学における頭脳の性能は抜きんでていたらしい。多くの教官の慈悲なのか何なのか奇跡的に卒業を果たし、ラインへと配属された。だが敵を撃墜できないのであればただの無能である。それでは軍にとって非合理的。私は首を切られる前に対策を練らなくてはならなかった。

 

「優秀であることに変わりはない。貴官は射撃が致命的という評価を下されたが、長所である防壁の硬度を生かしてシャベルを武器に近接格闘で敵を倒している」

 

 そう。私は思いついてしまった。人より硬く丈夫であるなら、自分で殴れるところまで近づけばいいのだと。非常に馬鹿であるが、それしか方法がない。戦闘中だけは脳筋になって、近接格闘のレベルを上げて物理的に敵を殴ることにした。途中から手が痛いからと武器を探した結果、わりとどこにでもあるシャベルをメインウェポンにした。普通、兵士はライフルと宝珠で戦うはずだ。私のなすことは非常識にもほどがある。

 

「発想の転換で弱点を克服する。いい思考だ、シャベル姫」

 

 そう、シャベルで殴りつけて敵を墜とす女性兵士は私。そしてその不名誉なあだ名を考えたのはターニャ・デグレチャフ。あいつが報告書に書いたり無線でそのあだ名を言わなければ私はちょっと変な兵士という地味な存在でいられた…と思う。思うだけで実際どうなったかは知らないけどね。

 とにかく前言撤回。目の前の少佐殿は真面目かもしれないが、紳士ではないと思う。少し楽しそうな表情になった少佐殿は椅子を引いて座ると、私に席を勧めた。仕方がないので礼をして座る。

 

「で、休日をなぜ図書館で費やそうと?」

「私は近接以外では無能です。魔力も自分で手一杯くらいしかないですので、頭を鍛えようと思いました」

「ほう」

「統計学、調査分析の技法、戦術、兵站……様々な知識を身に着けたいです。射撃下手にとって代わるかはわかりませんが」

 

 正直、射撃下手な時点で軍人失格は明白だ。今はチャンスを与えられて軍大学にいるが、いつ首を切られるかわからない以上、私はできることを努力するしかないのだ。エリートコースであの人を探すなんて豪語した過去は黒歴史に葬りたい。あの人のことは探したいけれど、エリートコースはちと無理だ。それでも、

 

「私は軍人として祖国に尽くしたいです。もちろん、軍からいらないと言われれば別の方法を考えるしかないのですが」

 

やれることはやる。やってやる。自分の力で掴むしかないのだから。少佐殿の目を見て意思を伝えれば、彼は納得したような表情を見せた。果たしてその納得が良いほうに働くのか、悪いほうに働くのかはわからないが。

 

「そうか。……時間を取らせたな」

「いえ。失礼いたします」

 

 席を立ち、礼を尽くして彼に背を向ける。自分の好きな統計データの集まる棚へ向かい、誰もいないことを確認した私は安堵のため息をついた。たいそう緊張していたらしい、チカチカと景色が光る。しばらく呼吸を整えて、私は今日の目的を果たしに資料をかき集め始めた。

 

 だから知らないのだ。少佐殿が手帳を取り出してさらさらと何かを書き留めていただなんて。 

 

 

 ちなみにこの日の帰り道、ターニャからゼートゥーア准将にお会いしたと聞いて驚いた。やっぱりターニャちゃんが参謀で狂人と話題になったのは本当なのかもしれない。

 

 




 見切り発車、続きがあるかもわからない。
 ですが誤字脱字、感想等ありましたらコメントいただけると幸いです。


 なお、web版は読みました。小説版は1巻を買ったばかりです。劇場版を楽しみに待ちます。



 2/22 酔っ払いが計算を間違えたようなのでアナスタシアさんの回想を一部訂正しました。
    あの人、どう考えても令嬢が子供の時すでにおっさんですね。
    私はいったい誰と勘違いしたのだろう、不思議。
    申し訳ありませんでした。

2/27追記:令嬢のスコップは大きい方のスコップ、足掛できるやつです。人によってはシャベルと変換してお読みください。そしてまた酔っぱらいのミスを訂正しました。スコップ姫はアサシンではない。もう酒の勢いで書かないし酒の勢いでしか確認しないようにします(絶対とは言ってない)。
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