東方想本録   作:蒼霜

4 / 9
霊夢と紫さんの話し方ってこれでいいのかなー

名前は次回でようやく発表になります。

それでは第4話をどうぞ( ゚д゚)ノ


第4話 元の世界へ~博麗神社~

翌朝、早くに目が覚めた。

二度寝しようと思ったが、目が完全に覚めてしまい無理だ。

仕方がないのでベッドから下りて近くの椅子に座り、あの厚い本を手に取る。

昨日開いていたところをぼんやりと眺めること一時間、咲夜さんが朝食に呼びに来た。

 

幻想郷に来てからまだ何も食べていないので、さすがにお腹が空いた。

それに幻想郷では何が食べられているのかも知りたい。

咲夜さんにすぐに行くと伝えて本を置いた。

 

______________________

 

 

朝食はパン、スープ、サラダといった軽めの物だった。

どれもがとても美味しかった。

そして紅茶。

何の紅茶か全く分からなかったが美味しく頂いた。

以前飲んだ事がある種類だった気がしたのだが……

何にせよ、記憶が無いのでわかるはずがない。

 

 

その後、紅魔館を出た。

もちろん外の世界に帰るためだ。

昨日教えられた、僕を元の世界に戻すことが出来る人は、いつもどこに居るのかわからないらしい。

しかし博麗神社に行けば会えるという。

 

今は湖沿いの道を咲夜さんと歩いている。

咲夜さんが博麗神社まで送ってくれるそうだ。

大丈夫だと言いかけたのだが、人を食べる妖怪が出ると昨日聞いたことを思い出したので、お願いすることにした。

 

 

______________________

 

 

「そういえばこの湖の名前って何ですか?」

 

「この湖はいつも霧が出ているので、『霧の湖』と呼ばれ始めたようです。いつも妖精がこの近くにいるのですが…」

 

暇だったので咲夜さんに湖の事を聞くと、ちゃんと答えてくれた。

いつも霧が出ているから『霧の湖』というらしい。

…それよりも妖精の方が気になった。

 

「妖精ってあの妖精ですか?」

 

「何が『あの』かは分かりませんが、恐らくあなたが考えている妖精で合っていると思います」

 

咲夜さんの言葉を聞いて実際に見てみたくなったが、周りを見渡しても誰もいない。

 

「ここによく居る妖精は何か能力を持っているんですか?」

 

「氷を操る妖精などですね。氷を操ると言っても、妖精自体が弱いので脅威ではありませんが」

 

(それは咲夜さんが強いせいじゃ……)

 

 

______________________

 

 

 

しばらく歩くと村に入った。

咲夜さんが言うには、幻想郷の人間の大半はこの里に住んでいるそうだ。

 

「妖怪が襲ってくることは無いんですか?」

 

「妖怪の賢者が保護しているので、里の中で襲われる事はほぼ無いです。他にも妖怪退治を仕事にする者、里を護る妖怪などもいますから」

 

「里を護る妖怪……ですか?」

 

「『上白沢』という名前で、寺子屋で教師をしています」

 

「会いに行きますか?」と聞かれたが行かない事にした。

会いたい気もするが、教師なら朝は忙しいだろう。

 

(妖怪が人間の教師か……)

 

妖怪は人を食べると聞いたが、意外に人間と妖怪は共存しているらしい。

 

______________________

 

 

特に何事も無く、無事に博麗神社に着いた。

 

博麗神社は里からかなり遠い上、獣道を通らないと辿り着けない所に立てられている。

……参拝者なんて来るのだろうか?

 

「霊夢、いるんでしょ」

 

「こんな朝から何よ?」

 

神社の中から赤と白の服を着た巫女が出てきた。

普通の巫女装束とは違い、袖が本体と分かれている特徴的なものだ。

 

「紫を呼んでもらえないかしら」

 

「別に良いけど何かあったの?」

 

そこでようやく巫女さん(霊夢さんというらしい)が僕に気がついたらしい。

 

「あんた誰よ?」

 

「どうも外の世界から迷い込んだみたいで。記憶が無いので名前はわからないです」

 

「そう。災難だったわね」

 

そう言うと霊夢さんは、何かをし始めた。

いや、念じ始めたの方が合っているのか?

 

「どうしたの霊夢……あら?」

 

突然何もないところから人が出てきた。

空間に出来た裂け目から上半身を乗り出している。

 

「外の世界から誰かが迷い込んだなら、すぐにわかるはずなのに……おかしいわね」

 

この人(紫さん?)は一目見ただけで状況を把握したようだ。

 

「ここで元の世界に帰して貰えると咲夜さんから聞いたんですが……帰してもらえますか?」

 

「ええ、もちろん。今すぐにでも帰すことが出来るわ」

 

「今すぐにお願いします」

 

本当は幻想郷を観光してから帰るつもりだったのだが、妖怪に襲われる危険を考えて止めることにした。

 

「わかったわ、少し待ってもらって良いかしら」

 

そう言うと紫さんは別の空間の裂け目を開いた。

 

「この隙間に入ったら元の世界に戻れるわ。中に入ると落ちるけど別に大丈夫よ」

 

紫さんはそう言って裂け目の奥を扇子で指し示した。

覗き込むと空間の裂け目の奥には不気味な眼が見えていて、出来ればあまり通りたくはない。

しかしこれ以外には無いのだろう。

肩をすくめて後ろを振り返った。

咲夜さんにお礼を言うためだ。

 

「咲夜さん、ありがとうございました」

 

「いえ、大丈夫です。帰れることになって良かったですね」

 

咲夜さんはそういって微笑んだ。

 

それを見届けてから裂け目に向き直り、覚悟を決めて中に飛び込んだ。

 

 

______________________

 

 

「ちょっとぉぉぉぉ!自由落下とか聞いてないしぃぃぃぃ!?」

 

ただいま絶賛、自由落下中である。

僕はジェットコースター等が無理な人間だ。

さっきから目を瞑ったままなので、周りがどうなっているかもわからない。

 

 

段々と周りの空気が変わってくると同時に、自分の記憶も少しずつ戻り始めた。

(もしかしてさっきまで居た場所ってあの東方projectの世界!?)

記憶が戻るに連れて、あの世界が『東方project』として知られている事も思い出した。

東方のゲームをしたことはないが、よく東方のアレンジ曲を聴いていた。

もっと見て周りたかったと後悔したが、もうあそこに戻ることは出来ない。

それに自分は外の世界での生活がある。

そう自分に言い聞かせ、幻想郷への未練を断ちきった。

 

 

ようやく元の世界に着くようだ。

都会の喧騒が聞こえた気がして目を開こうとした―――

 

 

 

 

 

 

―――次の瞬間、後ろに引き戻される強い力を感じた。

 

「へ?」

 

思わず開いた視界に入ったのは、先ほど見たばかりの博麗神社。

そして見覚えのある人影を見下ろしている。

 

 

つまりは博麗神社の()()に放り出された。

 

 

「ちょっと?」

 

 

皆さんご存知の通り、人類には翼が無い

『人間は元々は天使の一族であり、肩甲骨は翼の名残』といわれる事もある。

 

「ちょっとちょっと!?」

 

だがそれはオカルトの類であり、科学的な根拠はない

仮に真実だとしても、人はもはや天使ではない

 

 

 

……長々とした話は止めよう

  つまり何が言いたいのかと言うと

 

―――『人間は空を飛べない』ということだ―――

 

 

 

「大丈夫って言ったじゃん‼これのどこが大丈――」

 

最後まで言い切らないうちに神社の屋根に叩き付けられ、舌を噛みかけた。

さらに屋根は衝撃に耐えきれず、僕は屋根を突き破って神社の中に落ちた。

 

_____________________

 

僕は生きていた。

普通なら死んでもおかしくない高さだったが、畳の上に落ちた事が味方したようだ。

 

「これのどこが大丈夫なんだよ……」

 

全身の激痛を堪えながら、先ほどの続きを言い切った。

そして誰かが襖を勢い良く開ける音と共に気を失った

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。