東方想本録   作:蒼霜

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今回はほぼ話が進みません
紫さんの性格と話し方が本当に分からん
( ´・ω・`)


第6話 僕と隙間は相性が悪い

博麗神社で隙間に入った直後、僕は里の地面に立っていた。

……失礼。間違った表現をしてしまった。

 

僕は里の地面に()()()()()()()()()

ようするに、もぐら式晒し首の状態である。

裏路地だったので人目が無いのが救いだ。

 

「紫さんの大丈夫が信じられなくなってきたんですが。もしかしてわざとやってませんか?」

 

「……何故上手くいかないのかしら」

 

上体を隙間の縁に乗せ、手を口に当てて何やら考え始めた紫さん。

その仕草がわざとらしく見えるのは気のせいだと信じたい。

 

「……それより早く助けてくれませんか?」

 

正直、首だけで上を見上げるのはかなりキツい。

それに土が湿っているので、服も湿ってきた。

だから、早く隙間で助け出してほしい。

 

「隙間で助ける事はできるけど……良いのかしら?」

 

そういえば隙間での移動と相性が悪いんだった。

 

「隙間が無理ならどうしたら良いんですかね……」

 

「少なくとも私に手伝えることは無いし……あなたの能力で何とか頑張ってもらうしかないわ」

 

あ、自分の能力の存在をすっかり忘れてた。

えーと……何とか出来そうな方法は、と……

 

「周りに被害が出そうなやつしか思い付かない……」

 

僕が外でしていたゲームのジャンルはFPSゲームである。

だから、破壊するための装備はすぐに思いつく。

しかし、その全てが爆発物なので周りに被害が出る。

それに何よりここは幻想郷だ。

外の危険物を必要以上に幻想郷に持ち込むのは無粋だ。

それに自分が巻き込まれるのも嫌だし。

 

「紫さん、お願いがあるんですけど良いですか?」

 

目を閉じたまま声をかけるが返事がない。

 

「紫さ……あ、いない」

 

上を見上げると、紫さんが居なくなっていた。

隙間から上半身を出していたので足が見えず、それ故に気が付けなかったのだろう。

これで自分から何とかする方法が無くなった。

もはや、誰かが見つけてくれるのを祈るしかないと言うことだ。

先ほども言ったように、ここは裏路地である。

午前中からこんな暗くじめじめした所など誰が通るだろうか?

 

神よ、何故私を見捨てたのですか(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)……」

 

ふと聖書の一節を思い出したから言ってみた。

 

(1度は言ってみたいセリフ、本当に言えた~)

 

そう現実逃避していた時、救世主が現れた。

 

 

_____________________

 

 

 

「そこのあんちゃん。そんなところで何をしてるんだ?」

 

店の裏口らしき扉を開けて現れたのは、白い鉢巻きをし、同じく白いはっぴを着たおっさ…おじさん。

怪訝そうにこちらを伺っている。

 

「神は私を見捨てなかった!」

 

「………………」スッ

 

「ちょっと待ってお願いですから無表情で中に戻らないでください!」

 

嬉しくて叫んだら、静かに扉を閉められた。

確かに危ない人みたいに見えたかも知れないけど、目の前に首まで地面に埋まっている人がいたら助けるよね普通!?

え?何々?そんな状況なんて見たこともないし聞いたこともない?

それに首まで地面に埋まっている人なんているのかって?

ここにいる僕が栄えある一人目だよ!(怒)

 

あ、おじさんが戻ってきた。

 

「それよりあんちゃん、助けが必要みたいだな」

 

「必要です。すみませんが掘り出してもらえませんか?」

 

「あいよ!俺に任しときな‼」

 

(この人、良い人だ……!)

 

______________________

 

 

       ただいま救出中

 

______________________

 

 

 

「ところであんちゃん。何で地面に埋まってたんだ?」

 

シャベルで掘り出された後、おじさんはこう聞いてきた。

まぁ、当然理由を聞きたくなるよね。

 

「埋まっていたと言うか……埋められたと言うか……」

 

本当はどっちなんだろう?

僕としては紫さんがわざとやっていないと信じたい。

 

「あんちゃんが言いたくないのなら別に構わないぞ?」

 

「あ、いえ。そういう訳では無いんですけど……」

 

「ははっ!秘密は誰にでもあるからそんな気にすんな!」

 

おじさんはそう言って、ゴツゴツした手で僕の肩をばしばし叩いた。

人の話を聞いて欲しいし、そんなにばしばしと叩かないで欲しい。めちゃくちゃ痛い。

 

「ところであんちゃん、名前は何て言うんだ?」

 

「『(あおい) 想手(そうた)』です」

 

「ほう、想手か。ずいぶんと良い名前じゃねえか。俺は『笹平(ささひら) (じん)』だ。仁と呼んでくれ」

 

「仁さん、助けて頂いて本当にありがとうございました」

 

「どうってこたぁねえよ。俺は困っている奴を見ると、どうしても助けたくなる性分でな。いつも通りに助けただけだ」

 

「『いつも通り助けただけ』って自然に言えるって、すごくかっこいいっすね」

 

「そうか?人として当たり前の行いだろ」

 

そんな風に『人として当たり前』と自然に言えちゃうところもかっこいいと思う。

 

 

______________________

 

 

 

「ところで学校……寺子屋はどこですか?」

 

ようやく本題を切り出すことが出来た。

いろいろなハプニングのせいで、寺子屋で教師として雇って貰えないかと言う目的を忘れてしまっていた。

 

「何をしに行くんだ?見た限り、想手はもう寺子屋に通う歳でもねえだろ?」

 

「実は教師として雇ってもらいに行くんです」

 

「そうか!それは楽しみだ!実は俺の子どもが寺子屋に通っていてな。もし想手が先生になったら、ぜひ面倒を見てやってくれ!」

 

仁さんがすごく応援してくれた。

これは頑張って採用試験に合格するしかあるまい。

 

「寺子屋の場所が分からないので、教えてくれますか?」

 

仁さんは地元の人だし里の構造には詳しいだろう。

だから分かりやすく道を説明してくれると考えたのだが……

 

「この道をぐーっと行って、あそこら辺の角を曲がって、でーっと歩いて行ったら見えてくる。こっちからぐるーっと回って、ずいーっとまっすぐ進んでも行けるぞ」

 

…………全く分からなかった。

里の人々はこの説明で分かるのだろうけど、僕には見当もつかない。

いや、もう一回聞いたら分かるかもしれない。

 

「もう一回お願いします」

 

「じゃあもう一回言うぞ?この道をぎゅーっと行って、あそこら辺の角をくっと曲がって、どーっと歩いて行ったら見えてくる。こっちからくるっと回って、だーっとまっすぐ進んでも行けるぞ」

 

「…………もう簡単で良いのでこれに地図を描いてくれますか?」

 

結局分からなかったので、簡単に地図を書いてもらって、仁さんと別れた。

 

「想手!寺子屋での用事が終わったら来てくれ!」

 

これは別れ際の仁さんの言葉。

 

僕は「ええ、もちろん」と答え、その場をあとにした。

 




仁さんには、これからも出てもらうつもりです。
それでは次回をお楽しみに(⌒0⌒)/~~


聖書から引用した文は、イエスが磔にされた時に叫んだとされる7つの言葉のうちの1つです。
正確な訳としては、「我が神、我が神、何故私をお見捨てになったのですか」となります。
新約聖書の『マタイによる福音書』では27章46節にヘブライ語で「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」として、『マルコによる福音書』では15章34節にアラム語で「エロイ・エロイ・ラマ・サバクタニ」として書かれています。
今回は『マタイによる福音書』の表記を使いました。


僕は新約聖書を全て読みました。
意外と面白かったので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?

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