インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
「あ〜、気持ち悪い。飲み過ぎだ、これ」
代表就任パーティの翌日、俺は二日酔いになった。あれ、酒飲んでねえよな、俺?
「お前…………酔ったとか。緑茶二リットルで酔うはずないだろ」
「どちらかと言えば、胃が死んでるような感じ…………うぷっ」
「とりあえず、これ飲んどけよ」
そう言って一夏が渡したのは、ソル○ック。
「おお、助かる」
俺はそれを一気飲みする。あ、なんか、気分が軽くなったぞ。効果あるな、これ。
「はぁ、なんとか持ちなおせたぜ」
「今度からは、飲み過ぎに注意だな」
「ごごっともです」
ま、俺の二日酔いは放っておいてと。なんだか、教室が騒がしい。なにがあったんだ?
「ねぇ、有澤君知ってる?」
「何を?」
「二組に転校生が来るんだって」
転校生か。というとあいつしかいないな。
「中国からの奴か?」
「そうらしいよ。なんでも、代表候補生なんだって」
ここで、俺の疑念は確信へと変わった。
「一夏、お前中国に知り合いっているか?」
「いや、覚えてねえや。誰かはいたような気がすると思う」
ま、いいか。
「あら、この私を危ぶんでの転入かしら?」
「それはない、あなたはそこまで有名じゃない」
「ま、専用気持ちだから名は知ってると思うよ」
「知ってなかったら、それはただの馬鹿だ」
セシリアがなんか、言ったようだが、簪、静寐、箒のコンボで撃沈。
「代表候補生ねぇ、クラス対抗戦に出るのか、そいつは」
「さすがにそれはないと思う。二組は代表がもう決まっているはずだから」
「それはそうと、有澤君。クラス対抗戦は絶対優勝してね‼ 応援しているから‼」
「なんで、お前らそんなに気合が入ってんの?」
「だって、優勝したクラスには学食のデザートフリーパス半年分が貰えるんだよ‼」
すまん、甘いものには興味ない。てか、苦手。あ、和菓子は別だ。あれほど、素晴らしい菓子はない。
「多分余裕だよ。今専用機を持っているのは、一組だけだから」
「そうは、いかないわよ」
一組で楽しく盛り上がっているところに水をさした人間が一人。
「二組にも専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単に、優勝はさせないわ」
ーーシステム、スキャンモード
ーー凹凸なし。砲撃には最適のポイントかと
馬鹿野郎、それは貧乳だ。砲撃には最適のポイントじゃねえよ。
「ところで、このクラスの代表は誰?」
「俺だ、何のようだ?」
「ふうん、あんたが二人目のレアケースという事ね。ーーんで、なんで、このクラスの人間はこいつを選んだわけ?」
「「「…………は?」」」
「だって、こいつ片目無いし、左手に手袋はめてるし、それになんだか感じ悪いじゃん。こいつのどこがいいわけ?」
「貴様…………‼」
「あなた…………‼」
「鈴、てめえ…………‼」
「あ、一夏ーー」
刹那、乾いた音が響いた。
「っ⁉」
「お前…………何様のつもりだよ‼ 龍之介のどこが気に食わねえんだよ‼」
「なによ、いきなり叩いて‼ ふざけないでーー」
「ふざけているのはあなたの方ですわ、中国代表候補生、凰鈴音。代表候補生と聞いてもう少し常識人だと思っていましたが、残念ですわ」
「あんた誰よ‼ なんで、私が怒られなきゃならないのよ‼」
「なんで、怒られないか…………教えてやろうーー龍之介をバカにしたからだ‼」
その時の箒は、凄かった。身体全体から赤いオーラを放ち(マジで目に見えた)、その手に木刀を持っていたから。そして、三メートルはある距離を一瞬で詰めた事。それは、人の常識を破った瞬間であった。
「ふう。箒、危ねえな、もう少しでお前も俺と同じになるとこだったな」
「‼」
危ねえ。今回は義手で止められたからよしとして、フレーム曲がってないかな?
「ま、仕方ないか。どうせ中国じゃ有名じゃないだろうよ。企業連なんてさ」
「き、企業連⁉」
「多分、お前なら簡単に潰せるな、国ごと」
「なによそれ、脅迫のつもり?」
「いや、本当の事だ、鈴。今からでも遅くない、龍之介に謝れ」
「はぁ? なんで、あたしが謝らなきゃいけないのよ‼」
話は平行線で続く。てか、うざい。なんだ、この野郎。いかにも、女尊男卑に染められた人間じゃねえか。ちなみに、企業連は反女尊男卑を掲げており、企業連内で、そんな事はねえよ。みんな平等。
「一夏、あとはいい。それと箒、木刀を降ろせ。義手が悲鳴をあげてる」
「す、すまん、龍之介。だけど…………‼」
「龍之介、お前なんで、平気なんだよ…………‼」
そりゃねぇ、企業連で鍛えた鉄の心があるからさ‼ それに、中国国内にAMIDAとNEO-AMIDAをぶちまけばそれでいいだろ?
「まーまー、気にすんなって」
「あら、この男よくわかってるじゃない」
「黙れよ、小娘が」
俺はドスを効かせた声で、凰の野郎を黙らせる。
「なぁ、お前はよ、俺をバカにした。それはどうだっていい。でもな、このクラス全員が決めた事に口出しする権利なんざ、てめえにねえんだよ」
ナーガを起動。右手にOXEYE HG25を展開、凰の眉間に突きつける。無論、トリガーに指はかけてある。
「さぁ、どうする? これ以上言うんだったら、俺はてめえを撃つぜ? このまま立ち去りゃ、何もする事はねえ」
「…………チッ。後で覚えておきなさいよ、二人目のレアケース‼」
何処かの悪役的な捨て台詞を吐いて、凰は二組へと戻った。必要が消えたため、ナーガを解除する。
「まずい…………」
「ど、どうしたの、龍之介」
「人を脅迫するの、楽しい♪」
「「「だぁぁぁぁぁ‼」」」
一夏が、箒(武士モード)が、セシリアが、静寐が、簪が、みんなが、ドリフよろしくずっこけた。なんで?
「…………お前、悪人だな、おい」
「そうか? 本気でやったら、ミンチ肉ができるぞ」
「「「それもそれで、危ない(ですわ)」」」
ま、いいや。面倒いし。
「おい、そろそろショートホームルームの時間だぞ。座れ座れ」
全員が席に座ると同時に、千冬さんが入ってきた。ちなみに、入った直後に行ったセリフが
「…………酢豚、ぶち殺す」
だった。明らかに、明確な殺意であった。
その昼、俺は食堂のカウンター席にいた。
「お、今日も空いてるな。おーい、箒もこいよ」
「う、うん」
俺は、手招きして箒(女の子モード)を呼ぶ。
「やっぱ、二席分予約席にしておいてよかったねぇ」
「お、毎度お馴染みのおばちゃん。あんたが予約席にしてくれていたのかい?」
「常連客サービスってやつだよ。ほい、お待ちどうさん」
おばちゃんから、俺は唐揚げラーメンを、箒はきつねうどんを受け取る。
てか、おばちゃん、めっちゃいい人やん。どっかの誰かさんとは大違いだ。二席分をこうして開けててくれてるのは、すげえ嬉しいわ。いや、と言う事は、情報が漏れている…………?
「なに、そんな事見てりゃわかるよ。あんたら二人が一緒にいる時ほど、楽しそうにしている時ないもの」
「人の心、読まんでください…………」
ま、確かにそうだけど。昔ならあった、心に空いた隙間のようなものが、今は埋まっている。これも、箒のおかげなのかもしれん。
てか、唐揚げラーメンうめえ。そして、量が多い。さらに、安い。唐揚げ系はマジでいい。
「しかし、よくこんな席を見つけたね」
「二日目の朝に使っていたのが始まりなんだけどな。割といいの、この席」
「へぇー」
俺は先に食い終わったので、いつものメールチェック。今回は…………トーラスかよ。
『主任‼ 聞いてください‼ あのコジマキャノン「ARSENIKON」のコジマパワーが足りないんですよ‼ どうやったら増やせますか⁉ あと、完成次第主任に送っていいですか?』
なるほどね。コジマの増強か。あ、そうか。コジマドライヴに直結すりゃいいんじゃね。どうせ何基も余ってんだろ。
『コジマドライヴに直結して、粒子を供給しろ。コジマドライヴは何基使っても構わんからな。あと、完成品は直ぐに届けろ』
返信完了っと。はてどんなものが仕上がるんだろうな。ま、一週間でできるだろうよ。あいつらの事だからな。
「龍之介、何してるの?」
「ん? 仕事仕事。あの変態達のお遊び」
「…………そういう事ね」
「ま、いいか。とりあえず、ごっそさん」
「あ、ごちそうさまでした」
「あいよー。んじゃ、また予約席にしておくよ」
俺と箒は、ひとまず教室に戻る。その途中、一夏とセシリアに会った。
「龍之介…………鈴に代わって、俺が謝る。すまなかった」
「なぜにお前が謝る?」
「そうだぞ、一夏。お前は何もしてないだろ」
「そうですわよ、一夏さん。 何もそんなに気に病まなくても…………」
「いや、幼馴染の俺がもう少ししっかりしていれば…………」
「一夏、お前は甘いな。少しは非情になって見たらどうだ?」
「そうですわね。少しはきつくなって見てはいかがでしょうか?」
「二人の言う事にも、一理ある。少し、非情になれ」
「わかった…………なんか、三人に励まされてしまったみたいだな」
その後、互いに笑いあった。ま、こんな関係が築けたのも、一夏の存在が大きいかもしれん。
だが、それよりまずい事態が発生していた。
「なぁ、龍之介…………お前の胸から翡翠色の粒子が出ているんだけど…………」
うわ、不吉な言葉を聞いたぞ…………
恐る恐る、ドックタグを見ると…………
「アカン、コンデンサーが満タンだ。入り切らんかったコジマ粒子が漏れてる‼」
「お、おい、それ大丈夫なのかよ⁉」
「コジマは、まずい…………」
「そ、それは、人に害がありますの⁉」
「いや、無い。ただ、高濃度圧縮されたコジマ粒子を浴びると、すげえ快楽に浸れるらしい」
「「「いろんな意味で危険だな(ですわ)」」」
ま、とりあえず教室へ戻ろう。
ちなみに、その後の授業は千冬さんに怒られました。
「なんだ、その健康に悪そうな光は‼ なんとかしろ‼」
「あと一週間待ってください‼ 過剰にエネルギーが溜まってるだけなんで‼」
「どうでもいいが、なんとかしろ‼ 私が授業に集中できん‼」
がんっ
「ぐはっ‼」
頭に、出席簿が飛んできた。なに、それが人間の成せる技だと⁉ じゃあ、俺はなんだ⁉
その夜
「くぅ〜、痛えわ。あれは、人間なのか?」
「少なくとも、人の域にはいないよ…………」
部屋で頭の痛みを癒している時だった。
「最っ低‼ 女の子の約束も覚えていないなんて、犬に噛まれて死ね‼」
二組の馬鹿でかい声が寮の廊下に響いた。てか、一夏の部屋が隣のため、すげえ良く響く。俺は、一夏の部屋へ向かった。
「おい、一夏。なんか、すげえ声が聞こえたけど、なんかあったか?」
一夏の部屋を覗くと、一夏が腹を抱えて悶えていた。な、何があった?
「くっ、大丈夫だ…………」
「全然大丈夫には見えねえ‼ 何があった?」
俺は、一夏を抱き上げる。お、軽いな。って、そういう問題じゃねえ。
「いや、鈴との約束を覚えていたはずなのに、いきなり鳩尾をISの拳で殴られてな…………龍之介、どうやらここが俺の器らしい。よかったぜ、お前とは…………」
「おい、一夏‼ しっかりしろ‼」
そのまま、一夏は俺の腕の中で、力無く腕を垂らした。嘘…………だろ…………
「おい一夏‼ 返事しろ、一夏‼」
「龍之介‼ 何があっーー一夏‼ おい、返事をしろ、一夏‼」
俺の声に気づいたのか箒が一夏の部屋へきた。
「…………箒、千冬さんを呼んでこい。なるべく早く」
「…………わかった」
箒に千冬さんを呼びに行かせたあと、俺は一夏の心臓に耳を当てる。心音は…………ある。という事は気絶しただけか…………。ふぅ、びびった。突然死ぬ間際のセリフを言ってくるんだから、心臓に悪い。
とりあえず、一夏をベットの上に寝かせて、顔に白布をかける。
「一夏ぁぁぁぁぁ‼」
「ちょ、千冬さん‼ 落ち着いてください‼」
「これが落ち着いていられるか‼ 龍之介、一夏はどうなんだ⁉」
暴走状態の千冬さんが来た。さすがブラコン。一夏の事になれば、悪魔をも超える人。
「千冬さん、残念です」
「どういう事だ⁉ 一夏は、一夏はどこなんだ⁉」
「一夏なら、そこですよ」
俺はそう言って、白布をかぶせた一夏を指す。
「嘘だろ…………ぁぁ…………」
「千冬さん⁉」
千冬さんは、気を失った。って、織斑姉弟‼ 二人揃って気絶すんな。
「千冬さん、目さましてください」
「はっ‼」
「それで、葬儀についてなんですが…………」
「ぶはっ‼ し、死ぬかと思った…………」
一夏が目を覚ました。あ、やべ、葬儀って、俺の葬儀になりそう。
「龍之介ぇ、いい度胸してんな、貴様…………」
「ちよっと待てーい‼ 龍之介は悪くねえ‼ 悪いのは、鈴だよ、鈴‼」
「…………どういう事だ?」
「説明すると…………」
現在説明中。
「…………という事っす」
「なるほど。あの酢豚野郎が一夏を殺そうとしたわけか。お、来週は、クラス対抗戦か…………ちょうどいい。龍之介、お前機体にリミッターかかってるよな?」
なぜに知っているんですか⁉
「お前が言ったからだろう」
「…………そういや、入学した時に言ったっけ」
「それでだ。機体の試験もあるんだろう? 一度リミッターを外してやるのもいいんじゃないか?」
「死人が出ます。俺の機体、軍用機をはるかに越した性能になりますよ」
「だからいいんだ。それで、凰の機体を再起不能になるまでぶっ壊せ。これは、命令だ」
うわ、きついね、この命令。リミッターを外すのか。別に、凰が死のうが死ぬまいかどうだっていい。俺が恐れてんのは、各国の代表に榴雷の鬼畜性能を見られる事だ。そうなると、各国が企業連に圧力をかけてくるんじゃないのだろうか?
「報酬はいくらで?」
「食券一週間分でどうだ?」
「了解、依頼はこなします」
「頼んだぞ」
凰の命<食堂の食券
「それじゃ、解散だ。お前らは早く寝ろよ。それと織斑、お前は私の部屋にこい。一時的にこの部屋を貸していたが、何かと不安だ。これからは、私と同じ部屋で生活するように」
「んじゃ、またな一夏」
「また明日、一夏」
「お、おい、待て。まずいぞこれは。離脱だ、離脱する‼」
「だが、断る」
「えげつねえ‼」
こうして、一夏は千冬さんの部屋に連れて行かれたのでした。
ちなみに、俺は今日も快眠だったぜ。
「ギャアアアアアアアアアアアア‼」
なお、寮長室から断末魔が聞こえたのは、また別のお話。
最近、文が短い…………