インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
クラス対抗戦3日前。
今日がアリーナを使える最終練習日だ。なぜかと言うと、大会用のレギュレーションにアリーナを調整するため、使えなくなるんだ。
ちなみに、今は第二アリーナにいる。俺以外にも一夏やセシリアと言った練習相手(という名の的)や、サポーターとしての箒や簪、静寐もきている。
「対抗戦まで、あと3日か…………。一回戦の相手って誰なんだろ?」
「さぁ? でも、龍之介の事だから、火力で封殺して終わりそう…………痛っ」
「まだ痛むのか? ならば休んでいた方がいいだろう?」
「そうはいかねえよ。龍之介が頑張っているのに、俺が手伝えねえのはなんだか虚しいしさ」
「ほんと、まっすぐだよね〜、一夏君って」
「確かに。そういうところは、織斑先生によく似ている」
自分が千冬さんに似ていると言われて、嬉しそうな一夏。よかったな、褒められて。だが、まっすぐで何事もいい方向に考えられるのはいい事だと思うぜ。
「あ、龍之介さん。対戦表が来ましたわ。こちらのデバイスをご覧になって」
「すまないな。で、対戦相手はーー」
「このあたし、中国代表候補生、凰鈴音よ、イレギュラー‼」
なに、乱入者だと。おい、誰でもいい、包丁と食材もってこい。料理するから。
「ちょっとあんた‼ 今、あたしの事『まな板』って言ったでしょ‼」
「何言ってんのお前? 自意識過剰なんじゃねえの、ヴァーカ」
凰の乱入により、ここの空気は一気に低下した。ちなみに、ここにいる全員、一夏が殺されかけた事を知っている。ただでさえ、印象が悪かったのが、さらに悪くなった。さすが、殺害未遂犯。
「あんたねぇ…………‼ 絶対、殺してやるわ…………‼」
「おー、こわこわ。殺人予告かい? てかこの間のやつで、一夏が死にかけてたんだけどな〜」
「っ⁉」
「それに、ISの無断展開はたとえ部分展開でも、国際法に引っかかるはずだよなぁ?」
「っち。まぁ、いいわ。どうせ用があるのは一夏だけなんだし。そこの小物には興味ないわよ」
「貴様、何をーー‼」
「はい、落ち着くー。ここは黙って見てろって」
どうやら、一夏に用がある代表候補生さん(笑)が何かするようだ。すこし、見届けてやろう。なに、弄るネタを増やすためさ。
「お待ちなさい。ここは一組のエリアですわ。あなたは二組でしょう。関係の無い人間は引っ込んでくださいまし」
「あたしは一夏の幼馴染よ。だから、一夏関係者。ほら、問題ないじゃない。あんたこそ引っ込んでなさいよ。外野には興味ないの」
「なっ…………‼」
「まあまあ、とりあえず落ち着いて(後で、この女をボコボコにしやしょうや、セシリア)」
「今は落ち着こう、イギリス貴族の嗜みが崩れる(ねぇ、この女いたぶるのにトラップ使ってもいい?)」
「…………そうですわね。申し訳ありませんわ、静寐さん、簪さん(トラップどころかIS使っても構いませんわよ、みなさんでぼこりましょう)」
凰は、余計なところで敵を量産したようだ。何でわかるかって? そりゃ、あからさまに何かを企んでいる表情のセシリアと、その隣で黒い笑みを浮かべている静寐と簪を見りゃわかるわ‼ そして、なんて言うんだろ、質量をもった空気がのしかかってるような感覚がしていた。簡単に言うと、息苦しい。
「ところで一夏、あの後反省したんでしょうね?」
一夏が反省? 反省するのはお前だろうが。二人しかいない貴重な男性操縦者(あ、企業連のネクストISの操縦者の殆どは男だよ、でもカウントはしないよ、擬似コアだから)の一人を殺そうとしたんだぞ。そして、日が経ったらまた顔を出すんだ。へぇ、随分と態度が大きいねぇ。それに、被害者に謝らせるとか…………呆れて声もでねえよ。
「反省? なんで、俺が謝らなければならねえんだよ」
「はぁ⁉ それじゃ、女の子が泣いていたらそのまま放って置くわけ⁉ 最っ低‼」
「何言ってんだよ‼ それに、約束だってちゃんと覚えてたじゃねえかよ‼」
「意味が違うのよ、意味が‼」
「あれって、酢豚奢りの意味じゃないだと…………だとしたら、あれか‼」
「やっと思い出したのね」
「…………ああ。だが、あんな意味だったとは…………龍之介のお陰だ」
「なに、あんたが教えてくれたの? へぇ、よくやってくれたわ」
「いや〜、それほどでも」
毒を大量に盛ったけどな。抉らせてもらうで、凰の心。
「それで、鈴…………約束の事なんだが…………」
「で、どうなの結局」
「はっきり言うぞ…………俺は」
「「「「ごくっ」」」」
「さて、凰のおみくじは…………」
「すまん、お前とはやれん」
「え…………」
((((バッサリいったよアイツ‼))))
「あ、凶がでた」
一夏、コジマ弾頭を凰の心に投下。見事直撃したようだ。
ただ、これを吹き込んだのは俺。
二日前
『なぁ、一夏。お前、凰と約束がどうたらこうたらって言ってたけど』
『ああ、それか。それはな、鈴が昔に、大きくなったら酢豚を毎日食わせてくれる、と言って来てな。てっきり、タダ飯を食わせてくれるかと思ったんだが…………』
『…………一夏、それってあれだ。日本では味噌汁でよく言うぞ』
『え? 日本では味噌汁と言う…………毎日味噌汁を飲ませる、毎日味噌汁を…………あっ』
『やっと分かったのか?』
『…………大方は。つまり、あれはプロポーズと言っていいんだな?』
『多分そうだろ。で、どうするんだ? 受け入れんの? 受け入れないの?』
『急いで断ってくる‼ 取り返しがつく内に』
『ちなみに、どこがそう思わせた?』
『なんて言うかあれだ。多分、鈴と付き合ってもろくな事が起きなさそうだし、それに』
『それに?』
『俺、鈴の事好きじゃねえんだ。うざいし』
『…………なるほどね。それだったら、ガツンと言って断ってこい‼』
などと言って、今日核を落としたわけだ。ある意味扇動。てか、凰があかん、白くなってる。
「ーーーー」
「…………そう言う事だ、俺の事は諦めてくれ」
そのまま、凰は更衣室を後にした。
「あ〜、なんかスッキリした。ギャラリーの皆さん、いかがでした?」
「「「「最高‼」」」」
「一夏もガツンと言ったねぇ、気分は?」
「ん? すげえ楽。なんか重石が取れた感じ」
その後、訓練をしたわけだが、皆の動きや作業が生き生きしていたのは、言うまでもない。
「あのイレギュラー…………ぶっ殺す‼ 絶対、あいつが扇動した‼ 後悔させてやるわ、このあたしを怒らせた事‼」
二組の代表候補生の叫びが寮内に響き渡っていたが、誰も気にも止めなかった。
対抗戦2日前。
放課後、俺はグラウンドにいた。理由はあるぞ。いつも通りのあれ。
『こちらスカイガード、着陸許可を願います』
「いいよー。そのまま降りて来て」
『了解しました』
うん、ヘリがコンテナを運んで来た。つまり、それの受け取り。今回のコンテナに貼られたロゴは、トーラス。と言う事は、あれだ。
「どもー、毎度お馴染みのトーラスで〜す」
「お馴染みじゃねえよ」
変態がやって来た。それも、超が付くほどの、重度の変態が。
「と言う事で主任、早速これを見てください」
今回きたトーラスチームの技術者は、コンテナのロックを解除した。
そこにあったのは、異形の物体だった。
右側は何故か三つ折りになった砲身、それに小型のドラム缶状の物体が十個。
左側には絶えず翡翠の光を漏らしている、コジマドライヴが十基。
それが、極太ケーブル二本で繋がっている。
「これが、主任のアイデアを受けて完成したコジマキャノン、『ARSENIKON custom』です‼」
「どう考えても、お前ら変態だな、コジマを垂れ流しにするとか」
「最高の褒め言葉です‼」
このコジマキャノン、両背部武装じゃん。フルチャージすると、これどんな威力になんの?
「ちなみに、これを発表したらGAチームや有澤重工チームが顔を真っ青通り越してコジマカラーに染まってました」
わかるぞ、その気持ち。何と無く想像してみよう。
『コジマは、まずい…………』←親父
『何これ…………ふざけてるの?』←メイ
『それが、コジマキャノンだと⁉ じゃあ、他のはなんだ⁉』←ドン・カーネル
こんなところか。ま、かなり悪い話だろうな。
「ちなみに、これをアルギュロスに積んで試射したんですが、直ぐにアルギュロスのプライマルアーマーが消滅しました」
「自社製品でも賄えないんかい‼」
ダメだこりゃ、俺のプライマルアーマーも100は持っていかれるんじゃないか? とんでもねえ大飯くらいだ。と言うか、アルギュロスのコジマドライヴ搭載数を増やせ、そして、ジェネレーターの出力も上げろ。
「とりあえず、量子化しましょ。ここにおいて置くのも問題ですし」
「そうだな…………じゃ、榴雷起動」
とりあえず、榴雷を起動する。
「システム、インストールモード」
ーー受託、システム、インストールモード起動。該当パーツ『ARSENIKON custom』を、拡張領域内にインストール開始します。
今回は、機体がまるっときたわけじゃないので、インストールするだけだ。それに、これにさほど時間はかからないだろう。アクアビット製のソフトウェアだから。
ーーインストール完了。システム、通常モードに移行します。
ほらな、ここまでに七秒しかかかってない。真面目にすげえ。
「それじゃ、私はこの辺で帰ります」
「あいよ。それと、明後日のクラス対抗戦見に来いよ、
「本当ですか‼ 必ずいきます‼」
「お、おう。わかったから、詰め寄るな」
「それじゃ、楽しみにしてますよ‼」
そう言って帰って行くトーラス技術者。全く、コジマが絡むと恐ろしく元気になるんだから。
あ、メールきた。差出人は、箒か。内容は
『龍之介、そろそろ寮が閉まる時間だよ。早めに帰ってきてね』
え、もうそんな時間ーーって、やべえ‼ 門限六時半だった‼ とにかく、走らねえと‼
なお、俺はギリギリで間に合った。無論、息は絶え絶えだが。でも、グラウンドから寮まで、約二分でこれた俺って人外なんだろうか?とりあえず、さっさと自室に戻る事にした。
「キュイィィィィィィ(遊ぼうよー)」
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉ なに、この大きな蟲は⁉」
どっかの
「キュイ、キュキュ(遊ぼ、遊ぼ)」
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉ こ、こっちくんな‼」
「キュッ、キュキュ(早く遊ぼ、遊ぼ)」
「ぁ、これ無理…………」
バタン
「モキュ? キュキュッ?(どうしたの? 寝ちゃったの?)」
そこには、失神した無様な代表候補生と、遊んでもらいたがっている蟲の姿があった。
何度も言うが、龍之介は全く気がついていない。
武装解説
トーラス社製コジマキャノン
『ARSENIKON custom』
企業連軍事特殊技術研究部トーラスチームが開発した、悪魔のようなコジマキャノン。以前のARSENIKONでは、コジマが足りなかったらしく、龍之介のアイデアをえて魔改造された一品。
コジマドライヴ十基から得られる膨大なコジマ粒子を、右背部にあるドラム缶状の圧縮機でチャージし密度を高める。これにより、あり得ないコジマの輝きを見ることができるようになった。なお、チャージ完了時間は5秒である。
現在は、榴雷の拡張領域内にある一丁のみ。再生産の予定はあるらしい。ただ、それを聞いたGAと有澤重工のネクストIS乗りは、顔をコジマカラーに染まっていたとか。