インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第十四話 清算する過去

昼過ぎに北海道へ到着した作戦メンバー。あぁ、時差ボケが…………。なんせ、向こうは深夜ミッションで、こっちについたらついたで昼過ぎ(日曜日)なんだぞ。体内時計の針が狂うわ。

今回は全員の帰還にプラスして300人程ギガベースから降りてくる。強襲を仕掛けたデュノア社の社員達である。全員、手にアタッシュケースを持っているがスルーしておこう。

 

「ここが…………企業連本部か…………随分と大きい物だな、隆文」

「そうか? 中には千人をはるかに超える人数がいるんだ。これでも少し狭く感じるぞ」

 

親父の隣にたっている男は、今回の依頼主でありデュノア社社長、アルクロイド・デュノア。親父の知り合いという事なので、保護です。

とりあえず、カラードに戻ろう。機体を整備をしなければ。久々の実戦だったんだ。メンテナンスはしっかりしないと。

 

 

「うぉっ⁉ 専用ジェネレーターが爆発した⁉」

「こ、こ、これは、もしや…………(シュバァァァァッ)コジマッ‼」

「キュイィィィィィィィ」

「あ、AMIDAちゃん‼ そ、それは押しちゃダーー」

「キュイ?」ポチッ

『システム、戦闘モードを起動します』

「AMIDAACが起動しちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 

…………カラードへもどると、そこには変態の姿がたくさんあった。ヴァーカ、何OVERED WEAPON用の増幅ジェネレーターを爆発させてんだ、ミグラント。あと、コジマ粒子とS-11を濃縮してミサイルの弾頭に込めるな、トーラス。それに、AMIDAに他の知識を教えるんじゃない、キサラギ。AMIDAが賢くなってんだろが。

まぁ、いつものカラードに戻ったんだ。変わりないのは嬉しいさ、…………良くも悪くも。

 

「…………お、龍之介」

「あれ? レギア、お前今日帰ってきてたの? てか、フィオナはどうした?」

「…………一度に多く聞くな。俺はホワイト・グリントの調整。オーバード・ブーストをふかしてたら二番ブースタの出力が低くてな、様子見だ。あと、フィオナは今日、あのメンバー(箒、簪、静寐)と出掛けるとか」

「なるほどな…………てか、お前一度に多く聞くなと言いながらも、すべて答えてんじゃねぇか」

「…………細かい事は気にするな」

 

気にするわ‼ と突っ込みたい気分にはならなかったのでスルーしておこう。てか、ブースタの調子悪いの? あのアホみたいな出力を持ちながら、これもアホとしか言いようがない強靭なブースタが? まぁ、なっちまったもんは仕方ねぇか。

 

「レギ兄、この人誰?」

 

俺がラインアークのオブさんが作ったブースタについて考えていた時に、レギアが誰かに呼ばれた。声からして小学生…………って、小学生⁉ それも、女子⁉ 流石にレギアとフィオナが「アーッ‼」して子供産んでもそれはねえ。じゃ、誰なんだ?

 

「…………グリン子か。こいつは龍之介、俺の部隊の隊長だ」

「ふ〜ん。じゃ、龍兄だね‼」

「あだ名決まったんかい‼」

 

待て待て、もっと理解できないことが一つあるぞ。名前がグリン子という事はわかった。だが、服装が問題だ。よく見りゃ、ホワイト・グリントみたいな格好してんじゃねぇかよ‼ なんなんだよ、一体⁉

 

「な、なぁ、お前の名前は?」

「私? 私はホワイトグリン子と言います」

 

何故だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼ 何故こうも前世で知っていたものがこの世界にあるんだよ‼

学園にいる七瀬歩や、このホワイトグリン子だってそうだ。歩はナツユメナギサのヒロインの一人だし、ホワイトグリン子はMMDモデルのあれだぞ。なにこれ、あれか、ドッキリか⁉ そうなんだろ⁉ きっと何処かに隠しカメラがしかけてーーないか。

いやでも、信じ難いな。レギアの肘のあたりまでの身長(レギアの身長167cm)位で、あんな幼い声とか…………やっぱドッキリ何じゃね?

 

「そ、そうか。まぁ、これからよろしくな」

「こっちこそ、龍兄」

(こう呼ばれるのも悪くはないな…………)

「…………グリン子、俺の部屋に戻ってろ。ここは危ない」

「うん、わかった、レギ兄」

 

そう言ってグリン子はカラードエリアを出てレギアの自室へ戻る。

 

「なぁレギア…………あれ(グリン子)、どっから拾ってきた? それとも、お前とフィオナで「アーッ‼」でもしたのか?」

「…………するわけないだろ。とりあえず、回想モードで説明する。あれは昨日、ホワイト・グリント(原寸大AC)のメンテをしてる時だったーー」

 

『…………こんなものか。各部異常なし、と』

 

ガサッ、ゴンッ

 

『ひゃぅっ‼』

『‼ …………何者だ‼』←051ANNR(人間用)を向ける

『ひっ…………‼』

『…………子供? (なぜ、こいつはホワイト・グリントと似た格好をしているんだ?) なぜ、ここにいる?』

『な、何故って言われても…………気がついたらここに…………』

『(⁉ 何なんだ、この感覚は⁉ この母性本能(?)をくすぐられるような感覚は⁉)』

『あれ、レギア? 何してるのーーって、その子なに?』

『…………フィオナ、俺決めた』

『な、なに、レギア?』

『…………俺、こいつ飼う』

『飼うってレベルじゃないでしょうが‼』

 

「ーーという感じだ」

「なるほどな…………って、途中の表現聞くとあからさまにロリにしか聞こえねぇよ‼ なにそれ、フィオナ同意したのかよ⁉」

「…………ああ、即同意したよ。『この子、可愛い‼』とか言ってたからな」

「あんたら…………いろんな意味で吹っ飛んでるわ」

 

もうダメだ、俺。こいつらに引っ張り回される未来が見えてやまん。あれ、もしかしてグリン子って、ホワイト・グリント(ネクストISの方な)のコアの擬似人格? まぁ、ほぼオリジナルに近いけど、こんなにも早く出てくるもんなのか? それはねえか。

てか、俺の機体、俺の機体。まだハンガーにかけたまんまだわ。どれ、久々に改造加えるか‼

 

ーー10分後

 

作者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼ 頼むから改造のシーンを書いてくれ‼ 本当、扱いが不当に思えてくるから‼

…………もぅ、いいよ。なんか、このネタも前にあったよね。

とりあえず、今回の改造箇所はブースタと足裏。ホバー移動ができる位まではよくなった。ただし、VOBつけるといろんな意味で死ぬる。

 

「実戦での異常箇所はなし、か。本当頑丈だよな、お前」

 

俺は、つぶやくように目の前に鎮座する相棒(榴雷)に向かって、語りかける。無論返事などないけどな。ただ、一瞬だけバイザーのラインアイカメラが光ったように見えた。

 

『カラード主任有澤龍之介、至急本部最重要エリア、代表室までお越しください』

 

あ、親父からの呼び出しか? 早めに行こうか。

榴雷を格納して、俺はカラードを後にした。…………後ろで発生した炸薬の爆発音を聞きながら。

 

「ハラショォォォォォォォォォ‼」

 

テクノクラートかい‼

 

 

 

 

 

…………代表室に入る前に残念なお知らせだ。先ほど発生したテクノクラートのロケ誤射で、カラードの外壁に亀裂がはしった。これにより、しばらく施設の復旧に当たる羽目になりそうだ。…………親父に報告しなければならないな…………

 

「カラード主任有澤龍之介、入ります」

「そんなにかしこまらなくていい。いつも通りで構わん」

「そう言われても…………ほら、客人おるし」

 

客人=アルクロイドだ。今回は一体どんな話なんだ?

 

「主任、企業連及びカラードへのデュノア社加盟が決定した」

「ほう。んで、人員は?」

「いつも通りの六人までとしよう。そのほうがいいのだろう?」

「そうだな。良かったっすね〜、企業連への加盟が認められて」

「はい…………もう、なんとお礼をもうしたらいいのやら…………ありがとう」

 

アルクロイドのおっさんは深々と頭を下げて礼を言ってきた。なんか、こそばゆいなー。

 

「んで、用件はそれだけじゃないんだろ、親父?」

「ああ。おいアルクロイド」

「はい…………その、個人的な頼みなのですがーー」

「俺は年下、敬語いらない」

「それでは…………私の娘、シャルロットに会わせてくれないか?」

 

アルクロイドのおっさん、あんたシャルロットに会いたいのか。いや、会いたいに決まっているよな。この間の作戦の時拾えた音声の中に、『愛娘を抱きしめることすらできなかった』と言ってたもんな。

 

「できるぞ。シャルロットに会いたいんでしょ。今すぐ行きましょうか」

「ほ、本当か⁉」

「明日、学園に連れて行く。その時にあって来い。そして、あんたがした事の本当の意味を教えてやってくれ。あいつ、結構マジに受け取っていたようだから」

「っ‼ …………わかった」

「よし、そうと決まりゃ、準備しましょうか‼ アルクロイドのおっさん、タキシードかスーツでも用意しててくだせい。あと親父、俺の持つ『管理者権限』使わせてもらうで」

「わかった。だが、やりすぎるなよ」

「あいよー」

 

そう言って部屋を出る俺。あ、管理者権限っていっても⑨とか熾天使とか使うわけじゃねえから。

 

 

 

 

 

翌日

イクリプスで学園へと戻った俺にプラスしてアルクロイドのおっさん。なんか、平和だよなここ。ISを使った戦争をこの間していただなんて思えなくなるわな。まぁ、俺個人だけで70人近くの生命を奪ったのだがな。

 

「あ、総合案内受付所に行くと多分許可もらえると思いまっせ。管理者権限使用したんで。てか、案内しますわ」

「何から何まですまないな。今度、何かお礼をさせてくれ」

 

アルクロイドのおっさんのお礼か…………ワインとか? あ、俺飲めねえや。みんな、お酒は二十歳になってからね。

そうこうしてる間に総合案内受付所についた。

 

「うーす、一年一組の有澤です。期限大丈夫すよね?」

「えっと、有澤君の外泊期限は問題ありません。良かったですね、織斑先生の鉄拳を食らわなくて」

「ははは…………あれ、死にますからね」

 

とか談笑していると、受付嬢が俺の後ろにいたアルクロイドのおっさんに気がついたようだ。

 

「あれ、そちらの方は? 全然、連絡もないんですが…………」

「済まんが、これに免じていれてやってくれ」

 

そうして俺が提示したのは、一枚の紙とカード。カードには三つのエンブレムが描かれている。

営業及び統括本部企業連のエンブレム。

開発及び研究カラードのエンブレム。

戦闘及び傭兵管理グローバルコーテックスのエンブレム。

このカードを提示する、すなわち指示に従わぬ者はこの企業連の三柱より制裁が加えられる、管理者権限の使用だ。あんまり使いたくはないんだけどな。

 

「い、いや、別にそんな、企業連関係の方ですよね? なら、問題ないですよ、ははは」

 

受付嬢さん、あんた目が虚ろ。やっぱ管理者権限は使うべきじゃなかったよ…………。

正直、これ国際IS委員会にも通用するんだよね、なんでだかはわからないけど。だから怖い。本当に⑨を撒いているんじゃないかって思う。

とりあえず、無事にゲートを突破。そのままの足で職員室へ向かう。

 

「…………私はどうするべきなんだ?」

「あ、職員室に行ってさらに許可を取れば問題ないんじゃないすか? 最悪、これもあるし」

 

そう言ってカードをちらつかせる俺。

 

「…………いや、普通に行ったほうが向こうのためだと思うな」

 

アルクロイドのおっさんには合わなかったようだ。

 

 

「んで、そこの親父さんとデュノアを合わせたいと、そう言うんだなお前は」

 

いろいろ端折って現在千冬さんの目の前。てか、俺睨まれてね⁉ 睨まれてるよね⁉

ただ、『アルクロイドのおっさんとシャルロットを合わせたい』と言っただけだぞ。そこまで国際問題に発展するもんなのか?

 

「まぁ、できれば対談室の一つを借りれれば合わせてやりたいなぁと思っているんですけどね」

 

うひゃぁ…………千冬さんとの交渉はきつい。なんでかって、そりゃ狼に睨まれてるようなもんだよ。それか、核ミサイル発射口に座る気分。無論、どちらも気が気でなくなるけどな。

 

「問題ないだろう。確か対談室の15が空いていたはずだ。そこで構わん。デュノアはそっちで呼んでおけ」

「ありがとうございます、織斑先生。それともう一つ、生徒会室ってどこにあります?」

「このフロアの突き当たりだ。しかし何故、生徒会なんだ? 入るのか?」

「いやいや、そこは聞いたらダメですよ。後のお楽しみ」

「…………不吉な予感が」

 

ははは、何を言っているんですか、あなたは。そんな事あるわけないじゃないですか。

 

「そいじゃ、失礼しました」

 

決まり文句をいって、職員室を出る俺。外にはアルクロイドのおっさんが待っていた。

 

「どうだった? やはり、ダメだったか?」

「いんや、問題なし。対談室の15が空いているから、そこに行っててくれや。こっちからシャルロットを呼ぶわ」

「…………本当に感謝する。では、先に」

 

アルクロイドのおっさんは対談室があるほうへと向かって行った。よし、それじゃシャルロットを呼ぶとするか。流石に秘匿回線はまずい。プライベートチャネルを使おうものなら、鬼の鉄拳が飛んでくる。普通に携帯でと。

 

『もしもし?』

「おう、俺だ俺」

『え⁉ 今話題になっているオレオレ詐欺⁉』

「違うわ‼ 俺だ、龍之介。シャルルは今どこにいるんだ?」

『今、教室。ちょっと忘れ物しちゃって』

「ドジだな。まぁ、用件だけ言うわ。すぐに対談室の15にこい。いいな? 来なかったら、模擬戦な」

『わ、わかったから、模擬戦だけはやめて‼』

「ははは、冗談だ。それじゃ、またな」

 

そう言って携帯をきる。さて俺はどうするかな。よし、生徒会に接触するか。早くする事に問題はないからな。

俺は生徒会室があると思われるところへ向かった。

 

 

 

 

 

(シャルロット)は、龍之介に言われたとおり15番対談室へ来ていた。…………来ないと、あの多種多様な銃弾の奔流に飲まれちゃうからね。あれ、怖いんだよ。避けたと思ったら、突然三つに拡散したりするんだから。

でも、なんで対談室なんかに呼び出したんだろう? なにか、重要な話でもあるのかな?

ドアノブに手をかける。その時、何故か少し嫌な気配がした。でも、それはすぐに消えてなくなった。何だったんだろう?

中にはいると部屋は凄く暗かった。誰がいるのかもよくわからない。幸いにも入り口の近くに電灯のスイッチがあったからつけた。明るくなってやっと人がいる事に気づけた。

 

(え…………なんで…………)

 

そして、向かい掛けのソファに座っていた男の人に見覚えがあった。

 

「シャルロット…………」

 

そして、僕の本当の名前を呼んでくれたその男の人はーー

 

「…………父さん?」

 

僕にとって、良くも悪くも記憶に残っている父さんだった。でも、父さんを見たら急に何かが心の奥でふつふつと沸いてきた。

 

「…………何でさ…………」

「シャルロット? どうした?」

「何で、今になって会いにきたの⁉ 昔は僕の話なんか聞いてくれなかったくせに‼ まだ、僕は父さんの人形なの⁉」

 

僕の心の中に渦巻いていた感情が溢れ出した。もう、何もかも終わらせたいよ。

 

「どうせ、僕の事より会社のことなんでしょ。僕が何にもしないから、わざわざここまできて命令しにきたんでしょ‼ それとも、僕の男装がばれたから、引き取りにきたの⁉ どうして、僕には自由がないの⁉ ねえ、どうしてさ‼」

 

涙が溢れてくる。どれだけ僕が苦しい思いをしてきたのか、どれだけ母さんがさみしい思いをしてきたのか…………‼ この男はわかっていない。

 

「…………やはり、ばれたか。無理もない。もとより男装させる気などあまりなかったからな」

「男装させる気がなかったって…………それじゃ、これは僕を陥れるための茶番なの⁉ 父さんは僕をどうするつもりなの⁉ 強制送還して、牢獄に入れるか極刑にかけるかして、僕の存在そのものを消すつもりなんでしょ‼」

「いや、そんなつもりはーー」

「父さんのバカ‼ いつもいつも僕と母さんを見放して…………父さんは母さんの葬式にすら来なかったでしょ⁉ そんな、父親の元で暮らすんだったら死んだ方がましーー」

「話を聞いてくれ、シャルロット‼」

 

突然の大声に僕は一瞬怯んだ。…………あれ、今父さんは僕の事『シャルル』じゃなくて『シャルロット』って呼んでくれていた。いや、今だけじゃない。この対談室に入った時からだ。

 

「今は会社でもなんでもない、一人の父親として言わせてくれ。…………すまなかった、お前をこんなにも苦しめる羽目になるとは」

 

え…………父さん…………?

 

「今がこんな状態だから言えるかどうかわからないが、本当はお前を助けたかったんだ」

 

僕を…………助ける?

 

「お前を、どこの国からも干渉を受けないIS学園に入学させれば、あのクソババアの目を抜けられると思ったのだが…………どうやら読みが甘かったようだ」

 

クソババアと言うのは、本妻の人でいいのかな?

 

「まさかお前に、機体データを盗んで来いと命令するとは…………死んだ後でも腹が立つ」

 

確かに…………父さんの口からは盗んで来いなんて言われてない。いつも本妻の人の近くにいた人が言ってきた時点でおかしいと思えば良かった。というか、今死んだ後って言ったよね、父さん。

 

「でも、もういいんだ。あのクソババアもいない、下手に縛り付けるカタッ苦しい会社もない。…………お前がいいなら、もう一度二人でやり直そう、シャルロット」

「父さん…………僕…………僕は、何を…………」

「言うな。もうすぎた事だ。その贖罪は俺が持つ、本来はあのクソババアを抑えられなかった俺の力の無さが原因だからな」

 

うまく言葉が言えなくなっている僕を、父さんは優しい言葉と共に抱きしめてくれた。

 

(温かい…………)

 

それが一番の感想。こんなにも温かい人に僕は、どんなひどい事をさっき言っていたのだろう。

 

「うぐっ…………父ざん…………あゔっ…………ごめん…………なざい…………ひゔっ」

 

涙が溢れてくる。今度は違う、怒りじゃない。謝罪、申し訳なさ、そういったもの。

泣きじゃくる僕を父さんはさらに強く抱きしめ、頭を優しく撫でてくれた。

 

「謝るなって言ったろうに。それと、今は思う存分泣け。辛かったんだろう? 苦しかったんだろう? 泣いてスッキリするんだったら、いっそ大泣きしてしまえ」

 

ちょっと言葉が不器用な父さん。でも言いたい事は伝わってきたよ。それに、父さんも辛かったんでしょ? 背中が少し震えているよ。

 

「う…………うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………‼」

 

僕は今年に入って二回目の大泣きをした。父さんの胸の中で泣きじゃくる僕。なんか、高校生に見えないよ…………。

 

(一夏に見られたら恥ずかしいよ…………『シャルルは泣き虫だなぁ』とか笑われるよ…………)

 

そう思っていても、心の中でそれを受け入れている自分がいる。でも、なんで一夏が出てきたんだろう? そういえば、一夏にもこうやって抱いてもらったっけ。僕って、まだ子供っぽいね。

その後しばらく泣いていた僕だけど、父さんに聞きたい事が幾つかあった。

 

「そういえば父さん、『会社もない』とか『クソババアがいない』とか言ってたけど、何があったの?」

 

うん、なんか凄く気になる。なんで、なくなったの?

 

「なに、簡単な事。企業連の傭兵を雇って、社に強襲をしかけてもらい、クソババアを殺して、ビルを解体して、クソババア側の人間を皆殺しにし、企業連に吸収された」

 

うん、誰がやったのか想像がつかない。誰を雇ったんだろう?

 

「誰を雇ったの? 傭兵といっても専門分野が特化した部隊でしょ?」

「まぁな、俺が雇ったのは有澤親子。後そこになんかいろいろついてきた」

 

有澤…………もしかして、龍之介⁉

 

「へ、へぇ〜。と言う事はあのクソババアに縛られないっていうこと?」

「その通り。あ、そろそろ俺は企業連へ戻る。いつでも来い、メンバー全員で暖かく迎えてやるよ」

 

それも嬉しいけど、それだけじゃ足りないよ。僕は何年も話をしたことがないんだからね。

 

「それだけで許すと思わないで。僕がどれだけ苦しい思いをしてきたのか、わかってないでしょ?」

 

父さんの額からひとすじの汗が流れるのが見えた。ふふっ、なんか笑えるね。とても、おかしいよ。

 

「ぐ、具体的には何をーー」

「今度二人でお出かけしよ。今までそんな事できなかったし、それに」

「それに?」

「父さんとの思い出を作りたいから、かな」

 

五年近くあっていなかったんだ。それくらいは当然だよね。それに父さんとの思い出なんてなかったしね。

 

「そうか…………それならその日を楽しみにしてるぞ。じゃ、またなシャルロット」

「うん、いってらっしゃい父さん」

 

対談室を出て、スーツの上着を肩にかけ、父さんは企業連へと戻って行った。今日は凄く話したと思うな。父さんは、僕を大切にしてくれていたんだ、その事がわかってとても、良かった。

 

気がつけばもう夕暮れだ。

沈む太陽の両隣に雲が挟み込むようにして漂っていた。それが父さんと母さんと僕が並んで歩いている姿に見えたんだ。それを見ていた僕の頬を一筋の煌めきが流れた。




しばらくテスト期間なので更新が遅れます。
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