インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
ーー 一年前、第二回モンド・グロッソ。
『間も無く決勝が始まります。出場選手は控室へ移ってください』
会場は熱気に包まれていた。理由は電光掲示板に表示された名前にあった。
織斑千冬。初代ブリュンヒルデにして、今大会屈指の優勝候補。皆が熱気に包まれないはずがない。
「試合まで控室へいるって言ってたしな…………そうだ、千冬姉のとこへ行って応援してこよう‼」
その熱気に包まれた人の中に、彼女の弟でありただ一人の家族、織斑一夏はいた。彼は、姉の晴れ舞台を見にはるばる日本から単身で来たのだ。
少しでも支えになれるよう、千冬のもとへ一夏は、激励をしに控室へ向かう。
「えぇーっと、確かここを右に曲がればーー」
ーーただ、彼が方向音痴である事を除けば問題はなかったと思うが。それでも、一夏はむかう。大切な姉がいるところへ。
「…………こちら、F01。目標を確認、これより確保に移る」
『F02、了解』
『F03、了解』
しかし、彼はこの時気づけていなかった。姉の有名さで、自分の身の回りに危険が潜んでいる事を。そして、静かに彼は会場から姿を消した。
一夏が何者かに連れ去られたと同時刻。
「何も起きないな。このまま、何もないまま終わって欲しいと思わないか?」
「…………ああ、そうだな。俺もそれは願いたい」
大会会場ゲートにいた二人の男はそう愚痴をこぼす。彼らの服装は、ボディアーマーが各所に追加された戦闘服に、コンバットヘルメット、アサルトライフルといった、軍人顔負けの装備である。大会会場ゲートの担当だとしてもこの装備は必要である。各国の代表が集まるのだ。テロリストなどに狙われるようでは、国のメンツが立たない。
「なぁ、さっきさぁ、一台出てったよな? 俺見てないけど」
「…………あぁ、あのバンの事か。確かに出て行った」
普通なら気にも留めない車の出入り。二人は、そこが気になっていた。まぁ、一人は見てないから仕方ないが。
『こちら
『こちら
状況はまずい方向へと転がり出した。新たにきた二人、メリーゲートとハングドマン。彼らは、二人の同僚である。今回は対象と呼ばれた人の警護としてきている。だが、気がついてみると、対象がいなかった。簡単に言ってしまえば、誘拐されたのだ。
『多分、奴らはもう行ったと思うぜ。そっちは不審車輌を見かけていないか?』
「…………不審車輌って、もしや‼」
そういうと、ゲートの担当していた男の片方が、光へ包まれた。
そして、光が止んだとき、そこには男の姿は無かった。
白い羽をモチーフにした背中のスラスター。
両手に持つライフル。
そして、光り輝くブルーの複眼カメラ。
「…………すまん、
そう言い残して、彼は向かった。
「馬鹿野郎が…………‼ 戻って来いよ、
同じ仕事場の仲間の挨拶を耳に求めずに、彼は音速で空を駆けた。
攫われた一夏を追い始めてから、はや三分。まだ、見つかっていない。ホワイト・グリントと呼称された彼は、普通ならあり得ないほど、内心焦っていた。
(ターゲットにもし被害が及んでいたら…………まずい‼ それだけはまずい‼ 意地でも見つけないと‼)
彼は、もう一度、機体のブースターを吹かす。再び音速へと突入した。
攫われた一夏が気づいたとき、彼はどこかよくわからない、倉庫らしきところへ監禁されていた。
(ーーそうだ、千冬姉‼ 俺は、一刻も早く千冬姉のところへいかなければならないんだ‼)
そう思い立ち上がろうとしたーーが、それはできなかった。
柱を背に、そこで鎖に縛られており、足に至っては枷がはめられていた。これでは、立とうにもまず、動く事すらできないだろう。
(くそっ…………‼ 俺は千冬姉の応援に来ただけなのに…………‼ それとも、俺に力がないから…………千冬姉の影だから、拉致られたのか⁉)
彼の思考はもうすでに、力のない自分へのやるせなさへ変わっていた。
「しかし、こんなガキ一匹拉致ったところで、何か変わりがあるのか?」
倉庫の奥から、一人の女性が出てきたーー異形のISを纏って。
その姿は、まさしく蜘蛛。
背中から伸びる八本のサブアーム。
後ろ腰から突き出た大型のユニット。
良かったのかどうかはわからないが、バイザーの部分のみ展開されていなかったため、一夏はその女性の顔を見る事ができた。
彼が抱いた印象は、切れ長の目に長い茶髪、少し姉成分をだす顔立ち。一般人からしてみればどうでもいい感想である。
「よぅ、坊主。どうだい、気分は?」
女性の方から話しかけて来た。どうやら、あまり敵意はないようだ、と一夏は受け取った。
「…………ああ、最悪だよ」
彼はそっけなく返した。無理もない、突然拉致られた挙句の監禁だ。そうならん事もない。
「まあまあ、そう捻くれるなよ。別にお前を殺そうなどと思っちゃいねえ。つか、そんな事したら真っ先に俺が殺される」
そう言って、女性はハハハと笑う。
「…………狙いは何なんだよ?」
「狙い? ああ、至極簡単な事。ーー織斑千冬の大会棄権、もしくは引退」
「なっ…………‼」
一夏は怒りのあまり、目の前の女性を殴りそうになったが、理性で落ち着かせた。まぁ、IS装備の人間を殴ったところで、こちらが痛いだけだが。
「てめえ…………そんな事して何になるんだ」
「おっと、これ以上は答えられないな。それに、奴さん来たらしいな」
そう女性は言うと、頭部バイザーを展開。その手にライフルとショットガンを呼び出す。
それと、同時に壁を突き破り現れるものがいた。真っ白い装甲に、青い複眼。背中から伸びる羽根。打ちひしがれていた一夏にとって、それはさながら天使のように見えた。
「おい、03‼ こんなやつ報告にねえぞ‼ 暮桜がくるんじゃないのかよ‼」
「知らねえっすよ、姐さん‼」
『…………
白い機体ーーホワイト・グリントは、一夏を縛り付ける鎖に手を出そうとした。が、
「てめえ、何者だ‼」
『…………答える義理はない』
「まぁいい。お前ら、そいつを少し離れた位置へ連れてけ。ここは、やらせてもらう。このオータム様がなぁ‼」
『…………邪魔を、するな‼』
ホワイト・グリントは、躊躇い無く、右手のライフルを撃つ。不意打ちであるそれは、避けられるはずがないと思っていた。
「チェイサぁぁぁぁぁぁ‼」
だが、女性ーーオータムは、八本のサブアームを自身の前に持って来て、それで徹甲弾を弾いた。
「こっちも行かせてもらうぜ‼」
オータムは、サブアームに自身が持っている物とおなじライフルとショットガンを装備させる。それを一斉に打ち出す。弾幕が一気に厚くなり、突破は不可能になる。
『…………くっ』
ホワイト・グリントは少し大回りをするような形で回避、そして両手のライフルを放つ。さらに、右肩の分裂ミサイルも放つ。全弾直撃すれば、シールドを七割削り取る。少しは勝機が見えたかのように思えた。
「ふん、ぬるいぬるい。おらおら、蜂の巣してヤンぞ‼」
『…………チッ』
再び一斉掃射をするオータム。また、分厚い弾幕が形成される。ホワイト・グリントは、背中のブースターを開き、全速力で離れる。その圧倒的な速さにオータムは追いつくまで時間がかかったが、かろうじて追いつく事ができた。が
『…………終わりだ』
振り向きざまに一発。八連分裂ミサイルの直撃を受けた。小型弾頭のすべてに搭載された、高性能爆薬。それらが、一気にアラクネのシールドを削り取る。機体はすでにレッドゾーンに達していてもおかしくはない。
「こんなんで…………終わるはず、ねえだろ‼」
だが、彼女は立ち上がる。そこまでして何の意味があるのか、ホワイト・グリントは気になった。
「っ‼ 連絡⁉ ーーくそ、わかったよ。残念だが、ここまでだ。引くぞ‼」
『…………待て‼』
しかし、何があったのかわからないが、突然オータムはその場を離脱した。無論、仲間を引き連れてだ。倉庫には妙な静寂が残る。
『ホワイト・グリント、すぐに帰投しろ。まずい、暮桜がそっちへ向かってる。奴さん、決勝戦を放棄しよった‼』
『…………っ‼ 了解した。すぐに帰投する』
『ああ、言っておくが、今回の独断行動は少し罰を受けてもらうからな。覚えておけよ』
そのような通信があったあと、ホワイト・グリントはライフルの銃口を一夏が縛り付けられている鎖に向け、一発放った。それは、的確に鎖を砕き、一夏にしばらくぶりの自由をもたらした。
そして、ホワイト・グリントはその名に恥じぬ速さで倉庫を後にする。暮桜をまとった千冬が到着したのは、その二分後であった。
一見、話を聞いただけではこのミッションが成功したのではないかと思われるが、現に違う。
織斑一夏を誘拐という想定される事態から守れなかった事、織斑千冬の大会二連覇を達成させられなかった事、その事がホワイト・グリントのパイロットーーレギア・オルフェスにとって作戦の失敗であったことを決定づける最大の事であった。
なお、レギアが受けた罰だが、単にホワイト・グリントの頭部スタビライザーの追加だけであった。
「いや〜、それにしてもこの時期の放課後は混むねえ」
「仕方ないだろ。皆、学年別トーナメントへ向けて練習しているんだ。ここまで熱心になるだろう」
「まぁ、第三アリーナは空いてるだろ。とっとと行っちまおうぜ」
「そうだね。早く行こうよ。混んでしまうといけないしさ」
学年別トーナメントまで、後一週間と二日。こんなに時期が近くなってくると、アリーナはどこも満杯だ。ガラガラのアリーナはほとんどないだろう。え? 第七アリーナ? あ、あそこはね…………やっぱ、試験機専門だから、練習には向かないんだよね。
ちなみに、上から俺、箒、一夏、シャルロットの順だ。箒も早い段階で、シャルロットの事を女ではないかと思っていたらしく、一応企業連側の人間だからという理由で話して見たら、そんなに驚きもしていなかった。適応するの早いぜ。
とにかく、第三アリーナへと向かっている時だった。後ろから数人の女子が駆け足でやってくる。
「ねぇ、今代表候補生が第三アリーナで模擬戦をやっているんだって‼」
普通なら何も取り留めない言葉だったが、なぜが異様な感じが少しした。
「箒、一夏、シャルル‼ 俺たちも早く行くぞ‼」
「え、な、なんで?」
「箒、シャルルに教えてやってくれ」
「ああ、何かまずい事が起きている。龍之介が焦るのは大抵そういう事だ」
駆け足で第三アリーナの観客席へ向かう。俺の心中は兎にも角にも穏やかではなかった。
そうしてアリーナへたどり着くと、そこには多くの生徒が集まっていた。その視線の先には、セシリアと鈴、そしてラウラがいた。だが、それは模擬戦をしているようには見えなかった。
ーーシステム、スキャンモード
こっそりと榴雷のセンサーを展開、スキャンモードを起動させる。
ーーブルー・ティアーズ、ダメージレベルC
ーー甲龍、ダメージレベルC、右非固定部位損失
ーー両機、搭乗者保護に異常発生
「最悪の事態じゃねえか…………」
俺は毒づいた。そして、搭乗者保護に異常発生した機体を纏う二人に、ラウラがワイヤーブレードを飛ばす。
そのワイヤーは首に巻き付かれ、二人は締められる。二人の顔は苦悶に歪んでいた。
「酷い…………あれじゃ、シールドが持たないよ‼」
「万が一、機体が強制解除されたら…………二人の命は‼」
「くそっ‼ ラウラ‼ 聞こえてんならやめろ‼」
箒達が叫ぶも、アリーナの中へは届いていない。アリーナのシールドは完全に音をシャットしてしまう物だから。
何もする手も無く、二人の装甲は、ラウラの叩き込まれる拳によって、突き刺さる蹴りによって、みるみるうちに破壊されて行く。
「くそガッ‼」
俺の中の感情がどんどん黒くなって行く。俺のダチが傷つけられていて見て見ぬふりはできねえ。
ーーシステム、起動します
ーーコジマドライヴ、全基出力上昇
ーー全兵装使用可
ーーM38 榴雷、起動します
「ウオォォォォォォ‼」
俺は無意識のうちに榴雷を展開。そのままアリーナのカタパルトへ繋がる道を走り出した。
「俺たちも行くぞ‼」
「ああ‼」
「うん‼」
後ろからは、頼りになる友がついて来た。
アリーナのカタパルトへ到着した。だが、問題はカタパルトのハッチが閉まっているということだ。
「チェストォォォォォォ‼」
ーー問題なんてなかった。箒がヴァイスハイトΩを展開。その手に持つサムライソードでハッチを真っ二つに切り裂いた。
「後は、任せたぞ、龍之介」
「助かるぜ‼ 一夏、ちょっとついて来い‼」
「おう‼ 言われなくても行くぜ‼」
俺はエクステンドブースターを両背部、両足に展開、そのままフルスピードで突っ込む。一気に加速した榴雷は、迷い無くラウラ目掛けて飛んで行く。
「その手を離さんかい‼ この野郎‼」
そのまま、右足のアウトリガーをフロントに展開、そして右足のエクステンドブースターをフルアクセル。
その状態で、ラウラを蹴りつけた。
「ふん、慣性停止結界も知らないとは…………ただの愚か者ーー」
「ああ⁉ 止めてみろよォォォォォォ‼」
ラウラのセリフはそこで途切れた。なぜか? 理由は簡単。奴の機体に搭載された第三世代兵装[
「がふっ…………き、貴様、い、一体何を…………」
「ただ単にてめえのその兵装が弱いだけじゃねえの? ただの蹴りも抑えられんとはな‼」
俺は両手に武装を展開する。
ーー右腕、NWインパクトエッジ装備
ーー左腕、NWインパクトエッジ装備
インパクトエッジーーパイルバンカーの要領で振動破砕ブレードを叩き込む兵器。
それを持つ左手を引き、ラウラの腹目掛けて殴りこむ。
「がっ…………‼」
「おっと、いけねえな。楽しみはこれからだ‼」
ドンッ、と炸薬の弾ける音がなり、二枚の振動破砕ブレードが叩き込まれる。
「あぁっ‼」
ラウラはあまりにも強い衝撃により、その顔を苦悶に歪める。こいつに積まれた薬莢一つに収まってる炸薬は、通常のパイルバンカーのおよそ二倍。デュノア社の作ったグレー・スケールの約四倍に匹敵する量だ。そいつが叩き込まれるんだ、肺が潰れてもおかしくはない。
「どうだ? 圧倒的な力の前に屈する気分は? 惨めだろう、情けないだろう? それをてめえは何も罪のねえあいつらに味合わせたのかよ‼」
「ぐはっ…………‼」
もう一発、右手の奴を打ち込む。再び炸薬が破裂する重低音が響くと同時に、ラウラは苦悶に顔を歪める。
「なぁ、軍人さんよ。今じゃ代表候補生だが、完全な軍属でない民間人をいたぶる。それが、軍人の売りなのか? 生きやすい物だな‼」
今度は左足のブースターをフルアクセルにした蹴り、ブーストチャージを食らわせる。シールドエネルギーはほぼ削れないだろうが、衝撃だけなら相当なはず。
「だ、まれ…………この有象無象が‼」
だが、ラウラはそこから立ち直る。それと同時に左手のプラズマブレードを起動し、俺に切りかかってくる。あれだけの衝撃を受けてもなお、立ち向かってくるとはな。機動の遅い榴雷に掠めるくらいはするだろう。そう思っていた。
だが、プラズマブレードは俺に届くことがなかった。
「やれやれ、これだからガキの相手は疲れる。私は面倒が嫌いなんだ」
「き、教官⁉」
そう、千冬さんだった。しかも生身で打鉄の近接ブレード[葵]を片腕で持ちつつ、パワーアシストによって強化されているプラズマブレードを押さえ込んでいる。…………なに、あなたは人外ですか?
「全く、模擬戦をやるのは構わんが、アリーナのカタパルトハッチを破壊されるようでは黙認しかねん。よってこの勝負は学年別トーナメントでつけてもらおうか。それでいいな」
「了解」
「教官がそうおっしゃるのなら」
「よし。なら解散‼」
その柏手は、銃声よりも大きく、そして空気を振動させるほどアリーナへ響き渡った。
「別に、助けてもらわなくても良かったわよ…………」
「そうですわ、もう少しで勝てたと思いますのに…………」
「お前ら…………あの状況で戦闘を継続してたら死んでるかもしれなかったぞ」
俺達は、現在保健室にいる。無論、目の前には包帯を各所に巻かれたセシリアと鈴。軽い打撲程度ですんでいたのが幸いと言っちゃ幸いだ。もし、機体が強制解除されていたと思えば…………人を殺したことなんてあるのに、ぞっとする。
「それにお前らの機体何だが…………ダメージレベルがCを超えている」
「なっ⁉ それは本当ですの⁉」
「ちょっと‼ それ冗談じゃないでしょうね⁉」
セシリアと鈴は信じられないのか、俺に詰め寄ってくる。頼む、暑苦しい上に、セシリアが持つ母性の塊、もとい眼福なスタビライザーが当たってる‼
「一旦、離れろ二人とも‼ 暑っ苦しい上に、なぜか俺の死亡フラグが乱立しそうなんだよ‼ ほら、詳細データ」
そう言って、二人にデータを見せると
「武装の大半を損失…………そのうえ装甲も七割が損失」
「おまけにエネルギーバイパスにも少しの異常ときた…………こりゃ、当面は整備しないといけないわね」
揃って深いため息をついた。これは応えるよな。国家の威信をかけて作った第三世代機が中破し、満足にデータが取れなくなるからねえ。でも、言っとくが、それお前らの責任だからな。自業自得だ。
「そういう事だ。トーナメントの参加は辞退する方向しかないだろう」
「まぁ、仕方ないわよね」
鈴は、元からサバサバした性格なので、参加辞退は仕方ないと割り切ったようだ。
「でも、二人がそんなに大怪我をしなくてよかったよ」
「そうだな。不幸中の幸いと言ってもいいだろう」
差し入れに飲み物を持ってきたシャルロットと箒が入ってきた(なお作者の文才がへったくそだからかわりに俺が説明するが、シャルロットも一応二人の救出に役立っている。保健室の用意やその後の処置などの作業だが)。
「あ、これ差し入れ。二人とも喉渇いたでしょ?」
「勘で、紅茶と烏龍茶を選んだが、それでよかったか?」
「ええ、なんだか申し訳ありません」
「ほんと、あたし達迷惑かけてばっかよね…………」
「ん? ところでなんで二人はラウラと模擬戦を始めたんだ?」
「「ぶうぅぅぅぅっ‼」」
「キュイー‼」
ここで一夏がほぼ爆弾ととってもいいものを投下した。そのため、喉を潤し始めていた二人は、盛大に吹き出した。なお、鈴を見舞いにきていたAMIDAに烏龍茶がかかったのはどうでもいい事だろう。てか、AMIDAはそんな事まで覚えるのか?
「な、なんて言ったらいいんでしょう?」
「そ、それは、女のプライドを傷つけられたとかなんとか…………」
「つまり、ラウラの挑発にのったと?」
「「…………はい、その通りです」」
箒の一言によって、二人の返答はとうとうCUBEのような抑揚のない声になりかけてしまった。
ちょうどその時だった。保健室の棚に並べてある薬品がカタカタと、少しずつ揺れ始めた。アカン、俺の直感が危険信号を流している。
「シャルル、入り口のドアを俺がいいと言ったら開けろ。箒、木刀でも竹刀でもいい、俺の直援。一夏、俺がこれから出すシロモノにベルトリンクを繋いでくれ」
「わ、わかったよ」
「り、了解した」
「お、おう。だけど、そのシロモノってーー」
「これだ。早くしろ、奴さんらは待ってくれねえ」
俺はその手にGANW-GG-08 アヴェンジャー・カスタムと背中にドラムマガジン一万発を装備する。
「一夏、ガトリングの横に穴がある。それにベルトリンクを繋げ‼」
一夏は、素直にベルトリンクを繋いでくれた。すでにガトリングの銃身は回転し始めている。銃身冷却剤は循環しているな。
「よし、シャルル‼ ドアを開けろ‼」
「わかった‼」
ドアの奥、そこにはここへ向かってくる女子の群れ。
「ちょっと痛えけど、俺達が生きるためだ。許しは請わん、恨めよ」
俺はトリガーに指をかける。そして、引いた。目をつむりたくなるほど眩しいマズルフラッシュと、耳塞ぎたくなるほどうるさい銃声。それと同時に吐き出させられるゴム弾。
気がつけばこちらへ向かってきていた女子の群れは、屍(あ、殺してないから問題なし)の山へと変わり果てていた。
「ふぅ、まぁこんなもんかな」
「龍之介…………」
「お前という奴は…………」
「前から薄々思っていましたが…………」
「ええ、今回ので確信したわ」
「「「「お前はとんでもねえドS野郎だな(ですわ)(よ)」」」」
「僕もそう思うよ。だって、ためらい無くアサルトライフルやガトリングを人に向かって撃つ人、そうそういないもん」
「お前ら…………ちょっと屋上こいや。汚覇薙死しようぜ?」
「「「「「文字表記がおかしいうえに、嫌な予感がするので遠慮します」」」」」
「んで、今回のトーナメントはタッグマッチになるらしいな」
寮への帰り道、結局三人と一緒に帰る事になった。あと、先ほど生産した屍の山から回収したプリントにそう書いてあった。
「あ、『ただし、テルミドールとベルリオーズの組み合わせのみ参加不可』だってよ」
「いや、あの二人を組み合わせたらな…………俺でも無理だな、勝つのは」
「「「えっ⁉ マジ⁉」」」
俺をみる目に驚愕がはいる三人。箒に至っては、かなり驚いているようだ。
「いや、だってあの二人のコンビやべえよ。俺が砲身の角度を合わせるまでに、シールドを半分削って行くんぜ。オツダルはレザライでぶち抜いてくるわ、ベルリオーズに至っては弾丸祭りだ。モタコブありったけの弾薬を俺にぶちまけてくる。まあ、OGOTO当ててはたき落としたけどな」
「「「やっぱ、容赦ねえ。と言うか、勝てる気のしない榴雷を削るとか、チートですか」」」
やっぱそう思われるのね。仕方ないと言ったら、仕方ないか。プライマルアーマーがあるから、装甲の表面ギリギリに展開しているシールドを突破できないからねえ。
「んで、一夏、お前は誰と組むんだ?」
「あれ? という事は龍之介、お前は決まったのか?」
「俺か? 俺は箒と組むぞ。他の連中がなんと言おうとこれだけは譲らん」
「り、龍之介‼ 私そんな事聞いてないけど⁉」
「ん、だって今決めた」
「そ、そういう事はもうちょっと早く言ってよ〜‼」
そう言いながら俺をポカポカ叩いてくる箒(女の子モード)。てか、この口調になるの久しぶりじゃねえの?
「…………ねぇ、あの二人って付き合ってるの?」
「…………ああ、リア充からも非リア充からも羨ましがられるバカップルだ」
一夏がシャルルにそう答えると同時に、『どうして今のような性格に変わってしまったのだろう。剣道一筋と普通の女の子、二つの性格に変わるようなってしまったのだらうか』とどうでもいい事を考えていたことは、龍之介が知る由もない。
「シャルル、俺と組まないか?」
「ふえっ⁉」
「いや、男装がばれたらまずいだろ。実質知ってるのは、俺と
「いや、僕は一夏と組みたいな。折角一夏からいいだしてくれたんだしさ」
「そ、そうか。それじゃ、決まりだな‼」
「うん‼」
(あるぇ〜? 一夏とシャルロットの顔赤くねえ? 夕日抜きで)
(確かにね。これは、どっちもほの字だね)
という事に気づいたのは俺と箒だけだ。てか、本人達に自覚ねえだろ‼
その頃、龍之介と箒の自室前。
『オラオラオラぁぁぁぁ‼』
「隊長、こちらへ接近する女狐が多数いるみたいよ」
「女狐などではない、ただの愚か者よ‼ 怯まないで、奴らをここへいれさせないで‼」
「「了解‼」」
一人はスナイパーキャノンを
一人はライフルとバトルライフルを
一人はスナイパーライフルを
迫り来る進撃の女子を、その先へいれさせぬため立ちはだかる。
そう、彼女らは一年一組の代表、龍之介とその彼女である箒の愛の巣を守る警備部隊である。
警備部隊隊長 相川清香
警備部隊副隊長 鏡ナギ
警備部隊隊員 谷本癒子
清香の放ったスナイパーキャノンが、その戦いの始まりを告げた。彼女らの戦いは、いつまで続くのか。それは、誰にもわからない。
ーーてか、お前らどこから武器手にいれたんだよ。
「「「代表が、私達にくださいました‼」」」
ーーさいですか。
なお、龍之介と箒は本日二度目の屍の山を見た。そして、見るなりこうつぶやくしかなかった。
「「…………何があったんだよ、おい」」
はい、やっと最新話です。テストとかテストとかテストとかいろいろあって投稿どころか執筆が完全ストップ…………面目ない。
龍之介「感想がくれば作者も頑張るかもしれないな」