インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
学年別トーナメント当日。
一週間のすべてを使い、行われるこの一大イベントは、学園内だけでなく、各国の代表達が代表候補生の成長ぶりを確認するものとしても有名である。そのため、会場のアリーナに設営されているVIP席はどこもすでに満杯の状況である。
無論、本気で熱をいれているのは、こんな代表達ではない。出場する生徒達だ。
「準備はいい?」
簪は自分の対戦相手を確認していた。最もBブロックであるため、時間はまだまだあるが。
「誰に言っている。私はいつでも問題ない」
「…………メインブースターがイカれないといいね、オッツダルヴァ君」
簪は企業連陣営のオッツダルヴァと組んだようだ。だが簪の頬は、オッツダルヴァに話しかけるたびに少しだけ紅潮させている。明らかにほの字である。
「心配するな。メンテナンスには問題ない…………はず」
「不安にさせるような言い方しないでよ‼」
「なに、冗談さ」
オッツダルヴァの茶化したような冗談に、マジ乗りする簪。結構怒っているようだが、頬をぷく〜っと膨らませている様子を見て、オッツダルヴァはなんとも言えない。
「と、とにかく‼ 私の機体はミサイルをばらまくような機体だから、巻き込まれないようにしてね」
「ああ、わかっている。そちらこそ、いつでもいけるんだな?」
「ええ。そのつもりだよ」
「なら、よかった」
簪とオッツダルヴァ、二人の機体特性はほぼ真逆だ。その連携がどう左右するか、本人達の努力しだいだろう。二人は、ただ勝つ事だけを考えていた。
一方静寐は
「ルーク、機体の調子は?」
「各部異常なし。むしろ、いつもより調子がいいくらいだ。だが、そのルークだけはやめてくれないか?」
「別にいいんじゃない。いつもファミリーネームで呼ばれてるしさ。たまにはあだ名を貰うってのもね」
ベルリオーズと組んだと思える。だが、ベルリオーズは静寐につけられたあだ名をどうにかしてもらえないかと思っている。実をいえば彼、一貫して『ベルリオーズ』としか呼んでもらったことがない。だから、こうしてあだ名をつけてもらうことに対して免疫がないのだ。
「…………まぁ、悪い気はしないからいいか」
でも、彼は満更でもない表情である。むしろ、喜んでいると言っても過言でもなさそうだ。
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
静寐も静寐で満足そうだ。そして、わずかだが頬が紅く染まっている。受け入れてもらえてホッとした証なのか、それとも別なものなのか、わからないが。
「静寐、頼みがある」
「え、なに?」
「お前の機体は支援にも使えるだろう? そうだったなら、ひたすらなにも考えずに撃ちまくってくれ。俺が突っ込んで行く」
「ルークは、それで大丈夫なの? 私の機体の火力、下手すると
「…………そこ自信持って言うなよ」
このチームは、このチームなりに大変そうだ。…………主に弾幕的な問題で。
「ちょっと、これで大丈夫なの?」
「…………問題ない。俺とお前のオペがあれば勝てる」
企業連陣営の一人、レギアはフィオナと組むことにした。最もな組み合わせであると思う。長い間、パイロットとオペレーターとしてやって来た二人だ、かみ合わないことはないだろう。
「いや、そういう問題じゃなくて…………」
「…………なんだ?」
そう、レギアは大事なことを忘れていた。それも致命的な問題点を。
「私、IS使ったことほとんどないんだけど…………ネクストISしかないけど」
「…………」
フィオナは普通のISに乗ったことはおろか、触ったことすらない。それを思い出したレギアは、クイック・ブーストの如く素早い速さで壁の淵へ行った。それは、ホワイト・グリントの名に恥じない速さだったが、「…………俺の…………ミスだ」と繰り返しつぶやくようになってしまった。
そんなんでいいのか、企業連陣営のエリート。
「しかし、すごい人だな。満員御礼としか言いようがないぜ」
「そりゃ、そうだよ。三年には各企業からのスカウト、二年生は成長ぶりを確認されるからね」
比較的くせのない組み合わせの一夏・シャルロットペア。タッグ練習では息のあったコンビネーションを確立させ、どこからでもかかって来いと言っているような表情を二人はしている。
「あー、第二試合か…………。へこむなぁ、これは」
「なんで? 少しは考える時間とか取れるから、マイナスの要素はあまりないと思うけど」
「初っ端からだと、あまり深く考えずに突っ込んでいけるから、俺としてはいいんだよ」
まっすぐ突き進んで切り伏せるタイプの一夏と、策を練りに練って撃ち抜くシャルロット。一見すればあまり相性の良いコンビとは言えないが、先ほども言ったとおり息のあったコンビネーションを確立させている。このペアに勝つのはなかなか難しいだろう。
「とにかく、まぁ、優勝目指すか‼」
「そうだね。でも、興奮しすぎないでね。試合に影響するかもしれないから」
「おう。んじゃ、ちょっと鼻唄歌うけど構わないか? なんか、鼻唄歌うと落ち着くんだよ」
「いいよ」
「それじゃ、いつも通りに。あいむしんか〜とぅ〜とぅ〜とぅ〜とぅとぅ」
「ちょ、ちょっと待って‼ その鼻唄を聞くと一億人くらいあの世送りになるような気がするのは僕だけ⁉」
シャルロット、完全にフロム脳です。ちなみに、どこぞの古王は何かピーンと来たと言っていたとか言っていなかったとか。
俺は現在、アリーナのカタパルトにいる。無論、榴雷を展開して。
ここの外はやけに賑やかだな。よっぽどこの試合が楽しみだと思われる。でもな、
「よりによって、第一試合に当たるとは…………運がいいのやら悪いのやら」
「まあ、全てを切り伏せれば、それでいいと思うのは私だけか?」
隣にヴァイスハイトΩを展開した箒が並ぶ。ヴァイスハイトΩのヘッドも本来なら装甲で覆われているが、バイザーパーツだけ取り外してヘッドギア的な感じになっている。それ以外は装甲で覆われているが。
「いや、だって派手にやりすぎるとあとの選手が平凡以下にしかみてもらえねえじゃん。やっぱ、あれは封印するか」
「…………ちなみに聞くが何を使う気だったんだ?」
「両腕にガトリンググレネード、両背部にハイスピードミサイル、あと適当にマイクロミサイルとバルカン」
「べ、別に問題ないと思うぞ。あったとしても、相手の方だけしかいかないからな」
それならいいんだけどな。実言うと、セシリアに聞いたんだが、代表決定戦の時にOIGAMI撃ったじゃん、躊躇いなく。そしたらセシリアは『もう、あれはグレネードとは思えません‼ ただの火薬の塊ですわ‼』と、トラウマになっていたようだ。
「そうか? それなら遠慮なく使うけど。ま、一人ずつ確実に倒すしかないだろうけどね」
「それが、確実だろう。…………だが、私をグレネードに巻き込まないでくれよ」
「わーかってるって」
誤射なんてやってみろ、サムライソードかベリルショットライフルが飛んでくるからな。もしくは、OVERED WEAPON09。てか09は何だっけ? 近接系であるような気はするけど。
「対戦相手は三組のやつか。訓練機を使ってくるようだが、気は抜くなよ?」
「もちろんだ。過信はしない。もとよりお前がリミッターをかけているんだろ」
「当ためえだ。そうでもしなかったら、酔うだろうしな。まぁ、それでも並の第三世代機と同等だけどな」
「…………もう企業連は、どこか箍が外れているんじゃないか?」
箒は何かボソッと呟いた。いやいや、企業連がおかしいのは元からだから。てか、こうなる前から変態の集まりだったから。
「とにかく、第一試合が始まるみてえだ。早いとこ始めようか」
俺は、カタパルトからいつも通りに飛び降りる。いい加減、これにも慣れてしまった。順応するってすげえよな。
「おい‼ ちょっと待て‼ 私をおいて行くな‼」
箒も、各所にある改良型エクステンドブースターをふかしてアリーナへでる。
だが、早すぎたのかどうかは知らないが、対戦相手はまだ来ていなかった。
その五分後
「ど、どうも、遅れてすみませんねぇ」
「な、何だか、ま、負ける気は、し、しません」
「…………物凄く声震えているぞ、おい」
対戦相手は来たのはいいが、ガクガクブルブルと体を震わせていた。てか、もう言葉すらまとも位話せてない。
ちなみに、相手が使ってる機体は、先日崩壊し企業連へ吸収されたデュノア社製ラファール・リヴァイヴ。現在もパーツは生産しているようだが、量産はする気がないらしい。社長のアルクロイドのおっさん曰く、『皆でパイルバンカーを作っていた方が楽しい』との事。なんでも、アルゼブラの名作[KIKU]に対抗するとか。アホやろ、おい。
まぁ、その事は今は放っておこう。
『それでは両者、試合開始‼』
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
なんと、開始直後に相手さんの一人が発狂した。両手に持ったサブマシンガンをひたすら乱射してくる。
「まずい‼ 相手が廃人になる前に発狂してしまったぞ‼ どうする、龍之介⁉」
「え、なに⁉ 俺のせい、俺のせいなの⁉」
「なぶふぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
「ちょ、落ち着いて‼ って、うわっ‼」
まずいまずい、発狂しすぎて誤射してるよ。
「ーーという、冗談は置いといて」
「「「冗談だったんかい‼」」」
「さ、始めようか。私のIS学園で行う、始めての公式戦を‼」
「「「どこぞの戦争中毒者になっているー‼」」」
もー知らない。俺は何も知らない。てか、ネタ多いな。
先ほど自我を取り戻した相手さんは、俺に向かって来た。その手に、アサルトライフルを持って。
「そらそらそらそらぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
「人格が変わったっていうレベルじゃねえだろ‼」
流石に連射性の高いアサルトライフルは、この鈍重な榴雷がよけきれるはずなく、七割がた被弾してしまった。
ープライマルアーマー129mmまで低下
まずっ‼ 21mm削られたか。でも、シールドは減らないんだよね。だって、
それでも銃撃の手が緩むことはない。アサルトライフルの弾が尽きたらしく、再びサブマシンガンを持ち撃ってくる。プライマルアーマーは、まだ100mmを切ってない。
「くっ、硬いバリアだな‼」
「お、褒めてくれるのかい? 嬉しいねえ」
「褒めてねえよ‼ てか、武装展開しないのか⁉」
あ、忘れてたよ。まぁ、頃合いもいい頃だしな。出しても問題ないよね?
「よっし、それじゃ行きますか‼ アセンブルコード『殲滅戦仕様』‼」
ーアセンブルコード『殲滅戦仕様』、適応
ー右背部、NWガトリンググレネード[SHIRABU]展開
ー左背部、NWガトリンググレネード[SHIRABU]展開
ー右腕部、NWマイクロミサイルランチャー及びガトリング展開
ー左腕部、NWマイクロミサイルランチャー及びガトリング展開
ー右脚部、NWマイクロミサイルランチャー及びバルカン展開
ー左脚部、NWマイクロミサイルランチャー及びバルカン展開
ー炸薬調節システム、全兵装に『並』で適応
「行くぜぇ…………レッツ、パァァァァァリィィィィィィィィィィ‼」
展開して、速攻でのフルバースト。せり出したガトリンググレネードキャノンからは、有澤グレネードが絶え間無く吐き出される。弾速は遅いけどな‼
「へっ、これくらいならよけるのも簡単だぜ‼」
「そうは簡単に問屋がおろしはせんよ」
相手さんがよけた先に落ちてくるのは、おびただしい数のガトリングの弾と、マイクロミサイル。無論、ガトリングの弾とミサイルが交差することもあるため、
「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
こんな感じに誘爆させて巻き込むことも可能。相手さんは、爆発で生じた衝撃により、動きを止められた。そして、そこへ迫ってくるのは
「試合の締めは、グレネードで決まり‼」
「ふぎゃっ‼」
うち放たれていた有澤グレネード12個の直撃を受けて、またもや爆風に巻き込まれる。センサーには、相手さんの意識が吹っ飛んだというアラートがなっている。…………やりすぎちったな、ちょっと。
一方の箒はと言うと
「チェストォォォォォォォ‼」
…………サムライソードで思いっきり唐竹割を相手に食らわせていた。うわぁ、ただでさえレイレナードとキサラギが共同開発した、振動破砕日本刀なのに、それで唐竹割をするとか…………相手さん、ご愁傷さん。
「まだよ…………まだ終わってない‼」
なんとか生き延びた相手さんは、ロケットランチャーを手に呼び出す。そして、撃ったのはいいが
「ぬるい‼」
まさかの箒が、ロケットランチャーの砲身を切り上げ、ロケット弾は明後日の方向へ飛んでいってしまった。
最後の切り札を失った相手さんとは反対に、懐へ潜り込んだ箒。空いている左手には、ブレードが取り付けられたベリルショットライフルが握られている。それを躊躇いなく相手の腹に突き刺し
「終止‼」
そのまま三連射。そして、会場にブザーが鳴り響く。紛れもない、俺たちの勝ちを知らせる物だった。
「お、来てたんか。セシリア、鈴」
試合が終わった後、俺は観客席の方に来ていた。一夏達の試合を見たかったからな。なんにせよ、ラウラとの因縁の対決だしな。
観客席には、専用機を現在フルで修復中のセシリアと鈴がいた。
「あら、龍之介さん。箒さんはどうしましたの?」
「…………
「てか、あんたの榴雷に箒の新型に、企業連はどれだけピーキーな機体を作ってるのよ」
「…………返す言葉がありません」
だって、企業連の皆が『汎用型はいらん‼ 特化させろ、一局特化だ‼』と、アホみたいになっているんだもん。ちなみに、俺もその一人だったりする。榴雷のコンセプトは俺のものだったりするしな。
あ、一夏達の試合が始まったようだ。
「リュウ、ちょっと賭けしない?」
鈴が唐突にそう言って来た。いわゆるトトカルチョですな。
「いいねぇ、乗ったぜ。んじゃ、負けた方が今日の昼奢りな」
「いいわよ。ねえ、セシリアもやりましょうよ」
「…………わたくしは、遠慮しておきますわ」
「なんでよ? もしかして、圧倒的にくじ運がないとか?」
「そ、そんなことありません‼ 龍之介さん、わたくしも参加させていただきますわ‼」
セシリア、そこで切れるとあからさまに、自分くじ運ありませんって言っているようなもんだぞ。
「それじゃ、一番最初に落ちた人を当てた人が負けね。あたしはラウラに賭けるわ」
「わたくしはシャルルさんに賭けますわ」
「んで、俺が残った一夏と言うわけねぇ…………不幸だ」
「…………何をしているんだ、お前達?」
IS酔いから復活したと思われる箒がこっちに来た。それでも顔は結構疲れ切っているように見える。
「何って、トトカルチョよ」
「ああ、博打か」
「何か別なものに聞こえて来ますわよ」
「箒もやるか? 誰が最初に落ちるかで賭けている。ちなみに『予想外の事態でトーナメント中止』という選択肢もある」
「それじゃ、私はそれに賭けよう。なんだか、実際に起きそうでな」
「縁起でもねえ…………」
あ、ラウラのパートナーが落ちた。決めては零落白夜か。お、シャルロットがライフルで牽制している。これは一夏達が優勢だな。最も、ラウラにダメージは通ってないように見えるが。
「あー、これ一夏が真っ先に落ちるパターンじゃない?」
「やめてぇぇぇぇぇ‼ 俺の財布が吹き飛びそう‼」
「運命ですわ、受け入れてください」
「まだどうなるかわからないぞ」
ラウラがレールカノンを構えた時、一夏のレザライが砲身を掠める。レールカノンは爆散、だがラウラはワイヤーブレードを飛ばし、シャルロットを攻撃する。
さらにプラズマブレードを起動、同時にAICも起動、動きを止められた一夏に接近し、ブレードを振り下ろす。
「うわ、ラウラ圧倒的だな」
「やはり、軍属が大きいんですか?」
「いや、それだけじゃなく機体のポテンシャルも高いようだ」
「衝撃砲を止められたトラウマが蘇ってくるわ…………」
シャルロットの援護を受けた一夏が、ガトリングを撒き散らしながらラウラへ突撃する。そして、振り抜かれる必殺の剣。誰もが終わりを確信したその一撃は、白式のシールドエネルギーの枯渇とともに無にきした。
「これで、一夏の線はなくなったわね」
「俺のマネーが…………」
「一流企業の息子が何言ってるんだ」
「恨むなら、自分のくじ運の無さを恨んでくださいまし」
今度は、シャルロットが突撃する。あの速さは、イグニッション・ブーストか‼ この試合で覚えたのか‼ しかも、構えているのはリボルビングパイルバンカー[
その時だった。シュヴァルツェア・レーゲンが突如として変形したのは。
「ちょ、なんなのよ、あれ‼ あんなもの見たことないわよ‼」
「ーーヴァルキリー・トレース・システム。…………やはり、搭載されていたか」
「そんな⁉ ですが、あれは確か…………」
「そうだ、開発はおろか研究も保持も禁止されている違法システムだ」
「私も、情報は少し知っているが、ヴァルキリーの動きを再現するため搭乗者に尋常ではない負担がかかる代物らしい」
チクショウ‼ あれはレイレナードが封印した00-ARETHAと同じようなもんじゃねえか‼ ま、アレサはレイレナードが武装を残して解体したようだが。
挙げ句の果てに、一夏もシャルロットもエネルギー切れかよ。まずいぞ、これ。
「箒、OVERED WEAPON09の使用を許可する。バリアを斬れ‼」
「任せろ‼」
箒はヴァイスハイトΩを展開。その背中に巨大な鞘に収まった、これまた巨大な太刀が装備される。
ーーOVERED WEAPON09 《MURAMASA》
レイレナードが有澤装甲を使い作り上げた最高の日本刀。それを箒は一息で抜刀。専用ジェネレーターにエネルギーがチャージされる。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼」
そして、ムラマサは振り下ろされる。ISのシールドバリアの五倍以上という強度のバリアが紙のように切り裂かれる。
俺は、アリーナの中へ飛び込んだ。真っ先に一夏の元へ走って行く。
「あの野郎‼」
「死ぬ気か、テメェ‼」
羽交い締めにして、VTシステムが発動しているラウラに殴りかかろうとした一夏を取り押さえる。
「離せ、龍之介‼ あいつを一発ぶん殴らねえと気がすまーー」
「目を覚ませ‼ 大馬鹿者‼」
俺は一夏を一発ひっぱたく。
「ああ、そうだよな。お前の大切な千冬さんをコピーされているんだ。きれるのも当然だよな。でもな、お前が何をやろうと勝手だけどよ、自分から死にに行くようなことだけは見逃せねえんだよ‼」
俺の説教をきいて、一夏は少し落ち着いたようだ。
「全く。死んだら、お前の夢も大切な人も失うことになるんだぞ」
箒もこっちにきた。未だにムラマサの専用ジェネレーターはチャージしている。
「…………一夏、無理しなくていいんだよ? できれば、無茶しないで。僕は…………一夏が傷つく姿は見たくないよ」
「…………」
シャルロットも一夏を説得し始める。ラウラの周りには訓練機を纏った教員が集まり始める。
「ほら、先生方が来たよ。一夏は無理しなくていいんだよ」
「違う…………そんなんじゃない。 シャルル、これはな俺がやらなきゃないけないんじゃない。俺がやりたいからやるんだ」
「それじゃ、なおさら今のままではやらせる訳にはいかないな。箒、チャージ残量は?」
「68%。IS一機分なら回復できるかもしれない」
「上等だ。ジェネレーターからガントレットにケーブルを繋いでやってくれ」
「わかった」
箒は、ジェネレーターからケーブルを引っ張り出すと、待機状態になっている白式へと繋ぐ。エネルギーがどんどんと白式へと流れ込んで行く。
「ーー残量0。チャージ分は全部渡したぞ」
「ありがとうな、箒。来い、白式‼」
一夏は白式を再展開する。全身の装甲が展開されるが、肝心の雪片弍型が展開されていない。
「雪片だけは、無理だったか…………すまない」
「謝ることはないぜ。龍之介」
「言うと思ったぜ。こんなんで良かったら貸すぜ」
俺は右背部にある兵装を展開する。
ー右背部、HW03ユナイトソード展開
バスターソードとしか言いようのない大剣が展開される。刃渡りは3.8m。『全てを叩き斬る』というコンセプトの元、開発された兵装。
「ほらよ。これでいいな?」
「おう‼ 恩に着るぜ‼」
一夏は俺からユナイトソードを受け取ると、肩に担ぎラウラの方へ歩み寄る。あとは、見守るのみ。
「そぅらぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
勢いよく振り下ろした大剣は、受けに入った雪片もどきを叩き斬り、そのボディに一太刀の割れ目を入れた。そして、黒いナニカは霧散し、中から弱り果てたラウラが出てくる。それを一夏が抱きとめる。これでハッピーエンド、そう思われた。だが、
突然、赤いレーザーが放たれた。
「まずいっ‼ 一夏、シャルル、ラウラを連れてピットに戻れ‼」
「おいおい、マジかよ…………」
「またか…………どうやら、賭けには強いらしい、いろんな意味で」
「な、なんなの…………あれ」
いつぞやの無人機が再び襲来して来た。おいおい、空気読めよな。
「迷ってる暇はねえ‼ 早く行け‼」
「お、おう‼」
「わ、わかったよ‼」
一夏とシャルロットがピットに戻ったのを確認すると、俺はやつに向き直る。
今回の野郎は、前回の改修型と思える。巨大なブレードを持ったやつ、腕が丸っと荷電粒子砲になってるやつ、パルス砲を搭載したやつ、あるいはその全部。数も見ただけでは十機ほど。
「おーし、おっけー。お前ら、全員処刑だぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
ー両背部、NWグレネードキャノン[OIGAMI2]展開
ー炸薬調節システム、『キチガイ』で適応。
ー単一仕様能力[
「まとめて吹き飛べ‼」
躊躇いなくOIGAMI2を撃つ。着弾と同時に生じる、馬鹿と言っても過言ではない爆発。この攻撃で大半の無人機はぶっ壊したかと思った。だが、
「マジかよ…………」
「あ、あれを耐えただと…………」
ほとんどの機体は無傷に等しかった。でかいブレードを持っていたやつは大破しているところをみると、あいつらがシールドになったのだろう。でも、あいつら実弾防御高くなってるはずだ。チクショー、レーザー兵器積んでねえよ‼
「…………もう、こうなったらヤケだ。コード『アームズフォート』」
ーコード『アームズフォート』適応
ー右背部、AFWスピリット・オブ・マザーウィル
ー左背部、AFWグレートウォール
ー右腕部、AFWギガベース
ー左腕部、AFWカブラカン
それは異形にして、途轍もない威圧感を誇る装備。
アームズフォート。企業連の移動型戦闘要塞。その武装の一部を使ったのがこの装備。
右背部にはBFFが保有するスピリット・オブ・マザーウィルの右甲板と三連装大口径実弾砲。
左背部にはGAの保有するグレートウォールのガトリングキャノンと多連装ミサイルランチャー。
右手にはGAの保有するギガベースのレールガン。
左手にはアルゼブラの保有するカブラカンの突撃破砕チェーンブレード。
「箒、ちょっとあの鉄屑、マジのスクラップにしてくるわ」
「あ、ああ。だが、無事に帰って来いよ」
「わかったよ。それじゃ、行ってくるぜ‼」
俺はオーバード・ブーストを起動。その速さで、レールガンとその他キャノンをうち荒れる。避けようのない砲弾に、数の多いミサイル。確実に無人機へと直撃して行く。
ー稼働限界まであと少しです。注意してください。
「チイッ‼ オーバーロードかよ‼」
砲弾が直撃する。四肢がちぎれ飛んでぶっ壊れる。
チェーンブレードが直撃する。ゴキャッと音をたてて破片が飛び散る。
「兎ぃぃぃぃぃ‼ てめえは何がしてえんだよ‼ くそが‼」
また一機破片へと姿を変える。残り二機。さっさと始末しようとした。だが
ー稼働限界です。システム通常モードに移行します。
オーバーロード。稼働限界が来てしまった。AFWはその駆動に多大なエネルギーが必要だ。リミッターを解除しなければならなかった。それを怠った俺のミスだ。
残った二機はそのまま何処かへ撤退していった。かのように思えた。
突然、一機がレーザーに貫かれた。それも、六本の。また、もう一機も緑色の砲弾が直撃し、爆散する。
「「へ?」」
俺と箒は揃って間抜けな声を出してしまう。そこに、通信が入ってくる。
『こちらホワイト・グリント、ジョシュア・オブライエンだ。久しぶりだな龍之介』
「ジョシュア⁉ お前、ドイツで
『今日付で終わりだ。ちょうどドイツから南半球を回って帰る途中に貴族さんと会ってな、ここに来た』
「貴族って言うと…………」
『ノブリス・オブリージュ、ジェラルド・ジェンドリン。私の事だ』
「やっぱりか‼ 道理で見た事のあるレーザーだと思った‼」
『まぁ、篠ノ之束という引きこもりには誇りはないらしいね。生きやすいものだよ、我々と違ってね』
「言えてるな、それ」
しかし、真面目にジョシュアとジェラルドがくるとはな。助かった。てかジョシュア、お前00-ARETHAのガトリングとコジマキャノン持ってきただろ。じゃなかったら、なんでコジマの光が見えたんだ。
『とりあえず、一回着陸したい。そこにおりても構わないか?』
「お、大丈夫だと思うぜ」
『そうか。すまないな、助かる』
そう言って、ジョシュアとジェラルドはおりてくる。そして、二人は機体を解除した。
「んで、どうすんの? お前ら。ここに降りたイコール鬼がくるぜ」
「誰が鬼だ、誰が」
「ぎゃあっ‼」
頭に飛んできた出席簿。それはもうただの鉄塊と同じ威力を持っていた。いってぇ…………
「それで、こいつらはなんだ。企業連の男性操縦者なのか? どうなんだ、有澤」
千冬さんはそう言って俺に詰め寄る。怖いっす、めちゃめちゃ睨んでない、俺の事?
「あながち間違いじゃないっす。てか、ジョシュアは普通に適性あるんで」
そう答えると千冬さんは
「…………はぁ、男性操縦者二名追加。私の心労も考えて欲しいな、企業連」
「ははは、そりゃ無理な注文ですな」
千冬さんはこめかみを抑えて考え始めた。あー、なんかすんません。
「とにかく、お前らついて来い。話がある」
「ブリュンヒルデ直々にいってくるとは、余程重大なのだな。行くぞ、ジョシュア」
「ああ、わかってる」
二人は千冬さんに、何処かへと連れていかれた。あれー? なんか、すげえデジャヴ感じる。前にもこんな事なかったっけ。
弾痕が目立つアリーナに俺と箒、二人だけが残された。
「龍之介、私達も戻るか」
「そうだな。ここにいても意味ねえし」
俺たちもアリーナをあとにする事にした。さて、これからどうしようかな。そうだな、一夏のとこにでも行ってくるか。
結局、今回の学年別トーナメントも中止という扱いになってしまった。
なお、無人機は他のアリーナにもいたらしく、撃破された機体の中に、04-MAREVが突き刺さっている残骸があったとかなかったとか。あと、メインブースターだけ撃ち抜かれた機体もあったとかなかったとか。