インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第十八話 予想できても回避できねえことがたまにある

「結局トーナメントは中止という扱いになっみたいだね」

「そうだろうな。あれだけやばい事が起きればそうなるだろ」

「だが、今後のデータ取りのため一回戦だけは行うらしいぞ」

「でもなぁ、これだけ行事が潰れるとな…………呪われてんじゃね、この学園?」

 

トーナメントの事情聴取後、俺たちは食堂にて昼飯を食っていた。俺が焼豚丼大盛り、箒がたぬきそば、一夏が海鮮ラーメン、シャルロットがミートソース。まぁ、俺はもう食い終わったんだが。

 

「リュウ、同席しても構わんか?」

 

オツダルが俺らの席のとこに来た。他にも簪、静寐、ベルリオーズ、レギア、フィオナがいる。って、企業連関係者全員揃ってるし。席足りるかな?

 

「問題ないよ。そこのテーブル動かしちゃいな」

「おばちゃん…………俺の心読めんの?」

 

ちょうど悩んでいた俺のとこに、さっきまで厨房にいた食堂のおばちゃんがテーブル動かしていいと言って来た。てか、俺の周りは人外だらけなのか? 千冬さんとか、食堂のおばちゃんとか、結構いるな。

 

「とりあえず、合体‼」

 

手頃な位置にあったテーブルを引き寄せ、俺らのところと合わせる。あ、結構あっさりと動くんだ。

 

「まぁ、これでええやろ」

「すまないな。お前ら椅子持って来て座れ」

 

オツダル、お前自分の椅子以外も持ってるだろ、両手に持っているんだから。誰の分だよ。

 

「ほらよ、簪。持ってきておいたぞ」

「あ、ありがとう…………」

 

簪かぁぁぁぁ‼ 何お前ら、付き合ってんの、付き合ってんの⁉

 

「以外と軽いんだな、この椅子。ほい、静寐」

「うん、ありがとう、ルーク」

 

うわぁぁぁぁ‼ ベルリオーズ、お前もか‼ てか、どうやったら企業連関係者同士でこんな事になるの⁉

 

「…………しかし、この席に企業連関係者がほとんどとはな。驚いた」

「まぁ、いいんじゃないの? こうやって集まる事も少なかったし」

 

レギアとフィオナは…………いつも通りだな。うん、企業連はリア充製造マシンかなんかか?

 

「まぁ、フィオナの言ってる事もあながち間違いじゃないな。龍之介、折角だから『お茶会』と行くか」

「おう、そうだな。レギアできるか?」

「…………問題ない」

「んじゃ、これな。一式あるぞ」

「…………直ぐ準備する。待ってろ」

 

レギアはそう言うと厨房の方に行く。どうせ許可は直ぐに降りるだろう。それに、道具一式が入ったアイテムボックス(擬似コアを使った量子化保存格納庫。見た目はトランクくらい)を渡したしな。

 

「おい、龍之介。レギアはなんで厨房に行ったんだ?」

「と言うか、龍之介がさっき渡したトランクは何?」

 

何も知らない一夏とシャルロットが俺に聞いてくる。ちなみに知っている企業連メンバーは皆楽しみにして待っている。

 

「まあまあ、待ってろって。そのうちわかるからよ」

「龍之介がそう言うなら」

「まぁ、楽しみは最後までとっておいた方がいいって言うしね」

 

二人も納得し、待つ事にした。

 

「…………淹れたぞ。少し待たせたな」

 

ちょうどその時、レギアが両手にトレーを持ちながらやってきた。トレーに乗っているのは淹れたてのコーヒー。香りがこっちまで流れてくる。

 

「…………はいよ」

 

レギアは一人一人にコーヒーを配っていく。あー、企業連での喫茶店業務の癖が出ているな。まぁ、悪い事はないんだけどよ。

 

「レギア、今日はどの豆を使ったの? 香りがいつもよりいいけど」

「…………上物のブルマンがボックスの中に入っていたからな。それを使わせてもらった」

「道理でか。やるじゃないか、レギア」

「…………あとは、これだな」

 

レギアはさらにもう一つ持ってきたトレーから配っていく。こいつは‼

 

「白栗モンブランか‼ 贅沢の極みだな、今日のお茶会は」

「…………折角、人が集まったんだ。これくらいは問題ないだろう」

「しかし、またもやこれが食べれるとはな」

「私は始めてだから、ちょっと楽しみ」

「それは、私も」

「じゃあ、一服といきましょうか」

 

フィオナの言葉を合図にコーヒーに手を付ける。

 

「おお⁉ これがコーヒー香りだと⁉ じゃあ、今まで飲んでいたのはなんだ⁉」

「これ、オルフェス君が淹れたの? 美味しい…………美味しいよ‼」

 

始めてレギアコーヒーを飲んだ二人は、市販のコーヒーと全く違う味わいの深さと香りの強さに驚きの声を漏らし、喜んでいた。

 

「良かったな、好評だぞレギア」

「…………喜んでもらえればそれでいい」

 

そう言ってレギアも自分のコーヒーを一口飲む。ベルリオーズは、白栗モンブランに手をつけている。どれ、俺も食うかな…………って

 

「俺のが無えぇぇぇぇぇ‼」

「あ、すまん。俺が食った」

「テメェか、ベルリオーズ‼ よし、堕呑死威堕呑死威汚覇薙死(楽しい楽しいお話)タイムだ。ちとこいや、オラ‼」

「ぐえっ⁉」

 

俺の白栗モンブランを食った犯人(ベルリオーズ)の首根っこを掴み、そのまま引きずる。

あ、しばらく音声のみで楽しんでくれ。

 

「よーしよし、これで問題ねえな」

「あのー、龍之介さん? 俺はなんで拘束されて目隠しをされているんだ?」

「まーまー、気にすんなって、ハハハ」←雷電用OIGAMIを出す

「あれ? ちょっと狭くないか?」←薬室に込められる

「はい、気にしなーい気にしなーい」←薬室を閉じ、炸薬をいつもの二倍で込める

「お、おい、なんか入ってないか⁉ 妙にサラサラしてるんだが⁉」

「心配するなって〜」←砲身を展開させる

「いやいや‼ 明らかになにかやばい音がしたぞ‼」

「はいはい、言いたい事はわかったよ。って事で、ちょっと海の藻屑になって来いやぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」←OIGAMIの発射ボタンを押す

 

ドオォォンッ‼

 

「qうぇゆいおhgっvgdhkjっgrうjhkjひgfvhjっtfっっdfjk5907っぐうzh‼」

 

あー、スッキリした‼

 

「ただいまー」

「お、おいリュウ‼ グレネード固定砲の発射音と同時に、ベルリオーズの声にならない断末魔が聞こえたが、何をした⁉」

「ん? 楽しい楽しいお話(堕呑死威堕呑死威汚覇薙死)タイムをしてきた」

「な、なんだ⁉ 言葉から、単語が持つ本来の意味とは全く違う物が感じられる⁉」

「ふぅ、やはり緑茶は一番落ち着くな」

「特に食後とかは」

「いやいや、こういうまったりしてる時でしょ」

「…………お前ら、切り替え早いな」

「レギア、それ突っ込んだらダメ」

「…………龍之介に逆らっちゃダメ龍之介に逆らっちゃダメ龍之介に逆らっちゃダメ龍之介に逆らっちゃダメ龍之介に逆らっちゃダメ龍之介に逆らっちゃダメ龍之介に逆らっちゃダメ龍之介に逆らっちゃダメ」

 

うん、若干一人崩壊しかけてるな。やりすぎちゃったかなー? でもさ、食い物の恨みっていうのは大きいんだぜ。

 

「ま、いいや。ところで、お前らのアリーナに無人機とかきたか?」

 

俺は一つ気になっていた事を聞く。流石に襲撃するなら俺のいるアリーナだけじゃなく、他も襲っている可能性があるからな。

 

「…………確かに来たな。ただ、一機だけだ」

「一機だけ? そうなのか、フィオナ」

「ええ。一機だけだったよ。さらに武装も何もしていなかった。だから、レギアがーー」

「…………メインブースターだけ撃ち抜いてやった」

 

レギアはさりげなく飛んでもねえ事を言って来た。てか、なにしてんだよ。ほら見ろよ、オツダルが古い過去を思い出しかけているぞ。

 

「簪、お前のところはどうだったんだ?」

「無人機なら来た。こっちはミサイルランチャーを搭載してた」

「ああ。そしたら、簪がな…………」

「なんだ? OVERED WEAPONとやらを使ったのか?」

「そ、そんな事ーー」

「うん、使ったよ」

 

俺はここでやばい事を思い出した。簪の機体に搭載されたOVERED WEAPONの事だ。

OVERED WEAPON08 [EXTERMINATION MISSILE]、MSACが、作りあげた殲滅戦用の狂気のミサイル。その性能は

 

「でもさ、多弾頭分裂型クラスターミサイルを250発同時発射(…………)するなんて思わなかったよ」

 

ほとんどチートと言っても過言ではない、オーバーキルな性能。一つのクラスターに二十発の小型ミサイル。その小型弾頭一つ一つが、BIGSOIXと同等の威力を持っている。…………とうとう、MSACも変態になったか。

 

「まぁ、無人機が知里一つ残さずに消えたんだけどね…………」

「簪、お前は非常時以外OVERED WEAPONの使用を禁止する」

「そ、そんな⁉ やっと見つけたロマンなのに…………」

 

オツダルにエクスタミネーションミサイルの使用を禁止された簪は、涙目で訴えている。あれを見たら大抵の人は許すと思うが、そこは真面目なオツダルの事だ、見事にスルーしやがった。女の涙の天敵だな、こいつは。

賑わっていた食堂が少し静まった。なぜか。頭にワカメを乗っけたアリーヤ野郎がいたら、まあ静まるだろう。ちなみに、こいつの正体は

 

「はぁっ…………はあっ…………。俺を殺す気か、龍之介‼」

「…………っち、死んでいねえのか」

「ベルリオーズを殺す気だったのかよ⁉」

「食べ物の恨みって怖いね…………」

 

OIGAMIで適当なとこに撃ち出したベルリオーズ。見事に海へ落ちたらしく、全身びしょ濡れで帰ってきた。てか、シュープリスを展開してるし。しかも、なんか網持ってるぞ。

 

「…………おい、お前なに背負ってるの?」

「お前に撃ち出されて着弾したところが、クロマグロの回遊コースでな。いい感じのがいたからMARVEで突いてきた」

「「「「「クロマグロ⁉」」」」」

「いや、俺も反省してだな…………悪かったな、という事でお詫びにクロマグロ」

「よくよく考えりゃ俺も大人気なかったわ。よし、マグロ捌いてくるから待ってろよ‼」

 

ベルリオーズからマグロを受け取って、厨房の方へ向かう。

 

「おばちゃーん、どっか広いところある?」

「もちろん、奥の方が空いてるよーーって、クロマグロ⁉ しかも、大物⁉」

 

やっぱびっくりするよね。目方でだいたい100キロはあるもん。義手がメキメキと悲鳴あげてるし。なんで、こんなに大きいんだ? コジマの影響で巨大化したか?

それはさておき、ちょうどマグロがおける広いところがあったから、さっさと置く。そして、俺のアイテムボックスからマグロ解体包丁(という名の大振り出刃包丁)を取り出す。

 

「よし、解体開始‼」

 

まず、包丁をえらぶたの内側から入れ、そのまま頭を切り落とす。って、

 

「ベルリオーズ、MARVEを頭から抜き忘れているぞ‼」

「すまん‼ 俺のミスだ」

「やっぱ、頭に突き刺す癖直ってねえんだ…………」

「まぁ、無人機もそれでぶっ壊したしな」

「何、このアサルトライフル。格闘武器? レイレナードの開発陣が言ってたぞ、改造してないのは突き刺すな、って」

「…………肝に命じて置く」

 

とりあえず、MARVEをベルリオーズに渡し、マグロの頭と胴を切り離す。

次に、尾ビレの付け根付近に包丁を入れて、これまた切り離す。腹を開いて内臓を取り出し、容器に移す。マグロは、捨てるところがない、素晴らしい魚だしな。

そして、五枚に下ろす。左右の背と腹、そして中骨。中骨についた身はあとで取るとして、背と腹の身をブロックに切り分ける。

 

「なぁ、オッツダルヴァ。龍之介って、魚屋の出身だったりするか?」

「いや、グレネード本家の有澤育ちだ。だが、釣りが趣味だからな、自然となったんだろう」

「いやいや、そんなのであんな大きなマグロを捌けるわけがないよ…………」

「まぁ、俺とカナダまでキングサーモンを釣りに行った仲間だしな。あいつ、現地でナイフ一本だけで捌いたな」

「…………そういえば、そろそろシーズンだったな。ベルリオーズ、今年も頼む」

 

よし、サクには切り分けた。あとは、サク三つでいいか。

 

「箒、部屋からあれ持ってきてくんねえ? あの封印と書いてあるやつ」

「わかった。すぐに持ってくる」

 

箒は俺が頼んだ物を取りに自室へ戻った。どれ、今のうちに包丁研ぎ直すか。あ、タレの準備してねえ。それに、ネギもねえ。まずいな。

 

「リュウ、ネギとってくるか?」

「え、どこ産のやつ?」

「トーラスファームの「それはやめろ」…………了解」

 

まぁ、ネギはなくても問題ないか。

 

「龍之介、とってきたぞ。これでいいのだろう?」

 

箒はちゃんと封印と書いてあるスーツケースを持ってきてくれた。

 

「あと、なんだ、龍之介、二人分追加になるけど大丈夫か?」

「マグロが多いから問題無えけど」

「そうか。良かったな二人とも」

「ええ。このような場にお招きしていただきありがとうございます」

「確かクロマグロだったわよね? 本国だと食えたもんじゃなかったからね。楽しみ〜」

「キュー」

 

二人とはセシリアと鈴、それにAMIDAの事だった。てか、AMIDAが手(?)にフォーク持っている光景はなかなかシュールだ。

とりあえず、箒にとってきてもらったスーツケースの中から道具と一式服装を取り出す。

服装、それは有澤重工が開いている有澤食堂の制服。板前スーツ。

道具、それは魚を捌き、美しく盛り付けるための刃物。包丁。

さあ、仕事の始まりだ‼

 

「クロマグロカーニバルです。美味しくいただきましょう‼」

 

先ほどサクに切った背の赤身を切り、それをシャリと共に握る。はい、赤身の鮨完成。

その作業をひたすら繰り返す。握る握る握る握る…………気がつけば、寿司屋で食うと○○万はしそうな量の鮨ができていた。それを桶に詰め、あいつらの元へ持っていく。

 

「へい、いっちょ上がり‼」

「おお、いい感じに仕上がったようだな、リュウ」

「まだ、これで四分の一くらいしか使ってねえよ。ベルリオーズは本当漁のプロだな」

「よせよ。俺はただ、詫びの品を持ってきただけだ」

「てか、これがマグロの赤身なのか?」

「赤身と言うより、トロ…………」

「贅沢の極み…………」

「…………俺、こんなマグロばっかの寿司、初めて見た」

「よく、スズキとかタイとか混じってるもんね」

「早く食え‼ あとがつかえる‼」

 

俺は寿司桶を置いてきて、次の料理に取り掛かる。今度は腹の方、いわゆる大トロの部分だ。スナズリとも呼ばれるこの部分は、濃厚な味があるが、脂が少しきつい。

そのスナズリを少し厚めの刺身にし、昆布だしの用意をする。昆布だしは土鍋にいれたまま。はい、鰤しゃぶならぬ鮪しゃぶの完成。

 

「おい、鮨は食い終わったか?」

「龍之介、俺初めてだ、こんなにマグロの鮨を食ったの…………いつもの千冬姉とかルカ姉とかミクとかレンとかリンとかに迷惑かけそうで、遠慮してたから」

「まずい‼ 一夏があまりの贅沢っぷりに、自身の過去を思い出しているわ‼」

「まぁいい。とにかく、前菜の鮨は終わったな」

「ええ。生で魚を食べたのは始めてでしたが、案外悪い物ではありませんわね。とても美味しかったですわ」

「そりゃ、ありがたいね。そんじゃ、鍋物は鮪しゃぶだ‼」

 

俺は昆布だしの入った土鍋二つと、大トロの刺身が乗った皿を人数分持ってきて、それぞれ並べた。

 

「大トロは脂が少しきついから、昆布だしにくぐらせて食え。ポン酢も用意しといたからな」

「鮪しゃぶ…………鰤しゃぶは食べた事があるが。新しい、惹かれるな」

「じゃ、早速。こういう風にこのスープにくぐらせて食べるんだよね」

 

からになった寿司桶を持って流しにおき、俺は次の一品を作り上げる事にする。使うのは尻尾側の硬めの部位。ここの肉をぶつ切りにし、なぜかあった大きめの鉄板の上に置く。あらかじめ加熱しておいた鉄板に置かれたマグロのテールはいい音を立てて、程よく焼かれて行く。そこに、日本酒(有澤酒造)と薄口醤油をぶっかける。日本酒が一気に蒸発するが、蓋(半球のあれ)を被せているので、香りが逃げる事はない。

ある程度時間が立ったらひっくり返し、焦げ目をつけて完成。マグロのテールステーキだ。わりと、俺の自信作だったりする。

 

「はーい。三品目だぜい」

「うおっ⁉ なんか、賄い料理みたいなやつがでてきたぞ⁉」

「これは…………有澤酒造の日本酒?」

「簪さん、お酒の香りでわかるの?」

「隆文おじさんが飲んでいるのと同じ香りがするから。何と無くは」

「まぁ、親父のとおなじ銘柄の酒を使っているからな。ほれ、冷めねえうちに食え」

「ねぇ、リュウ。阿弥陀丸用に何かくれない?」

「背中と尻尾の間の肉でいいか?」

「おっけー。じゃ、それお願い」

「はいよー」

 

厨房に戻り、AMIDA用の食物を用意する。使うのは、右の背と尾の間の肉。そこをぶつ切りにして完成。あとは、タッパーに入れてよし。

 

「鈴、これでいいんだろ?」

「ありがとね。ほら、阿弥陀丸、餌よ」

「キュイー」

 

俺はてっきり、最初持っていたフォークはネタ用品かと思ったが全然違う、使用用だった。AMIDAはフォークでマグロの身をさすと、それを口へと運んでいる。…………賢けえ。

ふと、視線をテーブルの方へ向けると、まだ出した料理に手がつけられていないような感じだった。

 

「え、ちょ、なんかダメだった? もしかして…………まずかったか?」

「そうじゃないんだ…………龍之介。味はいい、ここの食堂の料理に引けを取らない。でも」

「「「「「「圧倒的に量が多い‼」」」」」」

 

あ、そういう事ね。納得納得。やっぱ多かったかー。流石にマグロ半身分全部出したからな、多いか。

ちなみに残った分は、食堂のおばちゃんと教職員が美味しくいただきました。ただ、それでも余ったので、夜も食う羽目になった。…………当分、マグロはいいや。

 

 

 

 

 

飯が食い終わった後、自室で榴雷のメンテナンスをしていた。今日のオーバーロードでコジマドライヴ全基の出力が35%低下した。まぁ、こいつの自然回復能力だと三日程度で修復できるだろう。

 

「ふぃ〜、疲れた〜」

 

急に疲れが全身を襲い、ベッドへ倒れこむ。だが、頭には布団特有の柔らかさが来ない。代わりに、何か柔らかい物が触れている。

 

「…………龍之介、自然な流れで私の膝に頭を乗っけてどうするつもりだ?」

「ほ、箒さん…………す、すいませんでした‼」

 

なんと、俺は自然な流れで箒の膝枕を堪能してしまった。これは流石にまずい。そうは、心で思っているのに、体がいう事を聞かない。何故だ‼ やばい、箒は笑顔でいるのに、その後ろに紅龍が見える‼ …………あ、俺惨殺エンドかな?

 

「い、いや、謝る必要はない。…………むしろ嬉しいと言うか、なんと言うか…………」

「う、うん? そ、そうか」

「あ、ああ、しばらくこのままでも構わないぞ」

 

箒はそう言っているが、俺の脳内は絶賛警報が鳴り響いている。てか、離れないと俺の理性がぶっ飛びそうなのだが、箒の柔らかい太ももをもう少し堪能したいという俺もいる。

 

「じ、じゃあ、もう少しだけこのままで頼む」

「ほ、本当に少しだけだからな」

 

結局俺は、本能に負けてしまった。ふと、箒の方へ視線をちらっと向けると、その表情は少し赤らめていたが、とても優しい表情をしていた。

でも、本当に箒の膝枕、気持ちいいな〜。やべ、眠くなってーー

 

「有澤君、いますかー?」

 

きたけど、寝る事はできなかった。この声は真耶さんか‼ いいタイミングで場の空気をぶっ壊すとは、狙ったか山田真耶‼

 

「入りますよ〜? 実はです、ねーー」

 

って、真耶さん⁉ 俺たちを見て硬直しないで‼ それ、一番困るパターンだから‼

 

「お、お取り込み中、失礼ました〜〜〜‼」

「「ちょ、誤解しないでください、山田先生‼」」

 

真耶さんがまさかの暴走してしまった。笑えない。しかも、顔真っ赤。どこを見たら、ナニをどうしてる様子に見えんの。

 

「それで、俺になんか用があってきたんじゃないすか?」

「もぅ、さっきの事で忘れるところでしたよ‼ 今日から男子の大浴場が解禁されますので、今日の疲れを癒してきてください」

 

なん…………だと?

風呂が解禁⁉ マジか‼ うち(企業連)の老神の湯よりいい風呂なのかな?

 

「あと、企業連、と言うか有澤重工から雷電の湯という風呂場が追加されていますよ。良かったですね」

「温泉万歳‼ ありがとうございます、山田先生‼」

「い、いえ、これでも先生ですから…………教師として当たり前の事をしただけですよ」

 

とかと言って謙遜する山田先生。よし、今度レギア経由でいいデザートでも贈らせておこう。

…………てか、眼福なスタビライザーが目に入る。うん、しかもガッツポーズした時なんて結構揺れてたわ。

そんな視線を箒は感じ取ったのか

 

「…………不埒者が」

 

思いっきり拗ねてしまった。でも、正直、箒のスタビライザーより真耶さんのスタビライザーが大きい。まじで、あれは『男性の天敵』だな。

 

「それじゃ、浴場の鍵を開けておくので、早くきてくださいね〜」

 

そう言い残して、真耶さんは退室して行った。

 

「箒、ちょっと風呂行ってくるわ。留守番頼むぞ」

「また私は留守番役なのか⁉」

 

箒がなんか言っていたようだが、今回だけはスルーさせてくれ。

俺は大浴場へ向かって若干小走りになっていた。雷電の湯が楽しみだ。

 

 

 

 

 

大浴場についた俺は、とりあえず服を脱いでいた。ただ、脱ぎ辛い。義手の形状がフレームアーキテクトのそれと同形状なのだが、同形状ゆえ関節部とかその辺があまり自由きかない。結局、パージという最後の手段で脱ぐ事にした。

まぁ、着る時は楽なんだけどな。

 

「おおリュウ、お前も来たのか」

「なんだ、オツダル。お前も来たのか」

 

オツダルも来た。ちなみにベルリオーズはと聞くと、静寐とお話しているらしい。なんの話なのだろうか。

 

「てか、お前簪といい感じだったよな? な、実際どうなのよ?」

「な、な、なんだ⁉ わ、私はそんなやましい事などーー」

「なに? まさか、越えてはいけない一線をーー」

「まだ、付き合ってもいないのにするはずないだろう‼」

「つまり簪は好きだ、と?」

「ああ‼ その通りーーって、リュウ‼ 私が言った事は全て忘れろ‼ いいな、全て忘れろ‼」

 

オツダルよ…………そこまで否定すると何かとダメだ。自分で認めてますよ、みたいなことを言ってるようなものだぞ。

 

「まぁ、今までの話は置いといて。さっさと、風呂行きますか‼」

「そうだな。たまには大浴場もありだろう」

 

そう意気込んで、扉を勢い良く開けると、

 

「うおっ⁉」

「きゃあっ‼」

 

一夏とシャルロットの悲鳴。しかも、なんか二人が向き合ってるし‼ やべえ、すげえ常識ブレイカーというかイベントブレイカーが発動した。

 

(オツダル、俺の言いたいことわかるか?)

(ああ、もちろんわかるさ。とにかく、ここでいうセリフはこれしかないだろう)

「「お邪魔しましたー‼」」

「お、お前らちょっと待て‼ 誤解してんじゃねえ‼」

「僕って、(ラブコメ的な演出が)やっぱついてなーい‼」

 

一夏の怒声とシャルロットの叫びをバックに、俺とオツダルは下半身だけ着替えて自室に戻った。

ちなみに俺はその格好で戻ったら、箒のシャワー上がりに偶然あってしまい、頭にハリセンが落ちて来た。

 

 

 

 

 

翌日。朝のホームルーム。特に異常はないと思う。てか、あってたまるか。ただでさえ行事丸つぶれな上に、裏生徒会の仕事(主に、部活部屋の整備とか、まさかの教師の手伝い(強制労働))で疲れているってのによ。

 

「なぁ、龍之介。シャルル知らねえ? 俺、朝から見てないんだけど」

「知るかよ。てか、ホームルーム始まる」

 

ちょうどそう言った時にチャイムがなり、全員が席に着くと同時に、やつれ切った表情をした真耶さんと千冬さんが入ってきた。

 

「今日は、転校生を紹介します。というか、一人は済んでいるからしなくてもいいような気もするけど…………」

「まぁ、いい。おい、早く来い」

 

千冬さんにそう呼ばれて来た奴らは…………え? 三人? しかも、どれにも見覚えがある。てか、知ってる‼

 

「ジョシュア・オブライエンだ。よろしく頼む」

「ジェラルド・ジェンドリンだ。よろしく願おう」

「シャルロット・デュノアです。改めてよろしくお願いします」

 

ジョシュアにジェラルド、そしてシャルロット。うん、眩しい銀髪に輝く金髪が二人、きっと絵師がいたらすごい絵画が完成してたであろう。

だが、一つ考えてもらいたい。シャルロットは今まで男として振舞ってきた。そして、女子達はその振る舞いを間に受けてきた。事実を知っているのは一夏と企業連メンバーのみである。つまり、何も知らない人が、突然事実を告げられると…………

 

「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」」」

 

即席のアサルトアーマーが発動するわけであり、その声だけでガラスにヒビが入った。…………あり得ねえ、とうとう人の声は音響兵器へ進化したのか。

ちなみに、これを始めて味わったジョシュアとジェラルドは某龍の咆哮を食らったように、耳を塞いで体を硬直させていた。

 

「やかましい‼ これでHRは終わりだ。各自、次の時間の準備をしろ‼」

 

そんななか響き渡った千冬さんの声で、ひとまず静かになりなんとか、お騒がしい時間は終わった。

…………はずだった。千冬さんが出て行った直後、

 

「でゅ、デュノア君て、お、女の子だったの⁉」

「道理で、美少年じゃなくて美少女だったわけね」

「…………男装女子、売れる、今年のコミケは勝ったわ‼」

 

シャルロットへの質問攻めが始まった。ま、仕方ないよな。…………一人、ベクトルの違うやつがいるぞ。何を企んでいる、貴様。

 

「というか、女の子なのに『僕のような者の為に咲き誇る花のひとときを奪うことはできません』とか言ったり」

「い、いや…………」

「『こうして甘い芳香に包まれているだけで、すでに酔ってしまいそうなのですから』とか言って女子をいい気にさせてたのね」

「そ、そのっ…………」

「そう言えば、昨日男子が大浴場使っていたわよね。なんか、凄い声が聞こえたけど」

「え、えと…………」

「なるほど…………」

「なるほどねえ…………」

「う、ううぅ…………」

 

うわぁ、とんでもねえ質問攻めだな。一種の尋問じゃねえのか?

シャルロットは一応何かを言いたがってはいるようだが、圧倒的な女子達の弾幕台詞によって封殺されている。しかもシャルロット、顔が非常に赤い上に、なんだか目尻のあたりが…………

 

「…………なぁ箒、俺嫌な予感がするんだが…………」

「…………言うな、私だって同じだ」

「…………まず、空気がカオスじゃないか?」

「…………そして、誰も止められる奴がいない」

「…………もう、ダメなんじゃない?」

「……………………混沌だな」

「…………救援には迎えん」

「…………貴族の務めであろうとも、これは抑えられん」

「…………彼女は犠牲になった」

「と言うか、みんな台詞の前に空白ができてる」

 

企業連メンバー全員が一致してそう言えるほど、このクラスはカオスと混沌をさらにカオスを追加したくらいに、ヤバイことになっている。てか、レギアはただでさえ言葉少ない+台詞の前に間があるのに、さらに少なくなってしまったぞ。

次第にシャルロットの目尻には涙が溜まり始め、すでに鼻をすすってるようなそんな音がし始めていた。その数秒後

 

「う、あぁぁぁぁぁぁぁん‼ 一夏ぁぁぁぁぁぁぁ‼ 」

「ど、どうしたシャル⁉ なんで、泣いてんだよ⁉」

(((((感情が瓦解したぁぁぁぁぁぁぁ‼)))))

 

シャルロットは泣き出した。耐えられなかったのだろう。多分、いくら硬いダイヤモンドのハート(有澤装甲でも可)の持ち主でも、これは耐えられないだろう。ましてや、シャルロットはどこにでもいるような普通の女の子。耐えられるはずがない。

一夏の胸に顔をうずめて、ものすげえ泣いてます。てか、シャルロットってこんな泣き虫なキャラだったっけ?

 

「よう嫁、久しぶりだな」

 

そして、突然現れるニューカマー。ラウラは、ジョシュアに詰め寄るなり『嫁』発言をした。って、対象がちげえ‼ そこは一夏じゃねぇの⁉

 

「ラウラ…………いい加減、その名で呼ぶのはやめてくれ。私は男だ、婿の方が正しい」

「何? ドイツで教官をしていた時に『己の思うがままに』と言ったのは、お前じゃないか。この呼びかたは変えんぞ。異論は認めん‼」

「…………クラリッサ、あとで鉛玉とレーザー叩き込んでやる」

 

どうやら、ジョシュアとラウラは交際しているようだ。というか、ラウラ、ゴーイングマイウェイな奴だな。冷静なジョシュアすら、焦らせているぞ。てか、ドイツで何があったんだ? (後で聞いた話だが、ジョシュアの奴、MA(マシンアーマー)アガシオンで、ラウラと対決したらしく、そんで勝ったもんだから『よし、お前は私に相応しいと決めた。だから、嫁になれ‼』との事らしい)

 

「お久しぶりですわ、ジェラルドさん」

「せ、セシリア、ひ、久しぶりだな」

「…………ところで、あの時の答えを聞かせてもらえませんか? わたくし、まだ答えを聞いてませんのよ?」

「な⁉ い、いまここでなのか⁉ そ、それは、な、なんと言うか、その…………恥ずかしいだろう…………」

「…………わかりましたわ。ですが、必ず答えをお待ちしております。貴方がどんな答えを出そうと、わたくしセシリア・オルコットはジェラルド・ジェンドリンを愛しています」

 

こっちもこっちで、リア充レベルがヤバイよぉぉぉぉぉ‼ てか、ジェラルド、セシリアに会えて超ご機嫌じゃねえか‼ まさか、これが狙いだったのか、お前⁉ てか、セシリアじゃなく、お前が赤くなってどうすんだよ。『貴族の務め(ノブリス・オブリージュ)』の二つ名がかわいそうなことになってきているぞ。貴族の威厳無え…………

 

 

こうして一組はたった一つのカオスによって、多大な出血(出席簿)を強いられる。『一組の天敵』とも呼ばれるそれは、最も多くの被害者を生み出した人災である。

被害者、一年一組30名全員。




やっと、最新話です。
さて、そろそろこの章も後少しで急展開を迎えますよ

龍之介「マジで言っているのか? 「騙して悪いが〜」は通用しないからな」

問題ないですよ…………多分。
まぁ、とにかく更新頑張って、来年の春には完結させたいと思います。
それでは次回。

-追記-
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