インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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幼少期 その二

約半年ほどの時間がすぎた。もう、秋に入ろうとしていた頃だ。夏休みも終わって、全員が登校するはずだが、しばらくの間有澤重工の都合により学校に行ってなかった。が、学力に支障は一切ない。そりゃね、前世で大学まで行っていれば、問題無いし。

ちなみに、都合と言っても、ただ単に新型グレネード砲の試射を行っただけだ。そういや、GAの社長が有澤グレネードを視察に来ていたな。まあ、見ている分には楽だろうよ。でもな、あれは黄泉の世界へ送り込まれるのと同じだったと思う。

アメリカのネバダ砂漠にある有澤重工所有射撃実験場にある台座にセットされたグレネード砲の実射テストの仕事だ。自分は、装甲車輌の中でトリガーのスイッチを押すだけだ。それを聞いて、楽だなぁと思ったけど、とんだ勘違いだった。

キ○ガイクラスのグレネードが圧倒的な弾速で約六百メートル先に落ちた。その榴弾の爆風と爆音は、本当にキ○ガイだった。比喩でも何でも無くて、俺が乗る装甲車輌を派手に揺らした。爆音に至っては、ヘッドホンをしていたにもかかわらず、耳をつんざくような音だった。鼓膜が破裂するかと思った。俺は、洒落抜きで失神しかけた。冗談抜きであれは、危ねえ。主任と呼ばれる男、綱田智史さんは『最高だぜぇぇぇぇぇ‼ 有澤グレネード、万歳‼』とか叫んでいた。………有澤、いろんな意味で変態だ。親父、何とかしてやれって。

なお、この兵器の名前は『OIGAMI』と言う。ACfaで単発火力の猛威を奮ったグレネードキャノンだ。あれは、確かに最強(最狂)だ。多分、着弾地点は地図を書き換える必要がありそうだ。

ただ、若干火力馬鹿になりつつある俺にとってこの《OIGAMI》は最高の浪漫武器であるものであると同時に、ISに積載させたいと思う武器の一つでもあった。

その後、五日目ぐらいに日本に帰ったわけだが、体はすげえボロボロだった。耳がやはり一番ダメージを被っていた。…………生活に支障が無いだろうか。それが今の時点で、俺が抱える問題だった。

 

あ、それと、有澤重工、GA、BFF、インテリオルユニオン、ローゼンタール、レイレナード、アクアビット、アルゼブラ、アスピナ機関、テクノクラート、オーメルサイエンステクノロジー、トーラス、ラインアーク、クレスト、キサラギ、ミラージュ、Ⅴ改めミグラント、セダケープ、マウトブック、コンペレット、スワコンプト、ウッドダウン、イオランドの24企業が集合体となった。原因は、有澤重工以外の企業の株が暴落したらしい。そのため経営困難に陥り、ほとんどの企業が国から捨てられた。普通なら、それで終わりだろうが、親父とお袋は違った。

 

『何、GAが、経営困難になっただと? ならば、うちの会社に入れれば問題ない』

『それに、アクアビットやBFFといった23企業の株価、おかしなくらい下がってますね』

『ここの提携企業が全て落ちたのか……とりあえず、緊急会議を開く。響子、提携企業への連絡を頼む』

『承知しました、社長』

そうして、有澤重工本社にてこの会議が行われた。『今後、どうして切り盛りして行くか』や『これから、どうやって市場を得るか』といった内容の話し合いが二時間近く続いていた。正直、長かったと思う。え? 何でそんな事を知ってるかって? いや、親父が俺を拉致って会議に連れて来たんだよ。ガキが楽しめるような場所ではない、楽しめるような物がない。しばらくして、とうとう聞いてるのに飽きて来た。

『あーあ、もう、いっそのこと全企業が一つの企業として纏まった方がいいんじゃないの?』

何気無く言ったが、そのつぶやきに気付いた親父にラインアーク社長、インテリオルユニオン社長、アスピナ機関所長のほか様々が俺を向いた。

『龍之介、今なんて言った……⁉』

親父が俺に聞いて来る。てか、親父の顔、めちゃくちゃ険しいんですけど。

『い、いや、ここにいる企業が全て一つの纏まった企業になったらいいんじゃないかって……』

『『『『『それだぁぁぁぁぁぁぁ‼』』』』』

へ? 何? え、まさか俺のアイディア採用⁉

『息子よ、お前は素晴らしいぞ』

『え? マジであのアイディア採用⁉』

『当たり前だ。あと、あの企業達はうちの会社に入れる事にした。問題は一切ないだろ?』

 

と、こんな事があったのだ。結局、有澤重工を筆頭とする24の企業が纏まった新企業《総合軍事企業連合》略称、企業連が誕生した。ちなみに、初代企業連代表はうちの親父だった。理由は、『有澤に任せておけば、あと安泰』だそうだ。いわゆる、クラスの学級委員を選ぶ時『○○○さんなら大丈夫』とかと言って、その人に押し付けるというのとなんか似ている。ちなみに、企業連本部は有澤重工本社のある北海道へ建設され、その景観はなぜかペンタゴン(アメリカ国防総省)に酷似していた。そして、その周りに各企業の施設が追加された。結構広かった土地もすでに満杯だ。

でも、まあ、どのみちこれで良かったのかもしれない。世界の流れはほかの誰でもない、自分たちが作り上げる物。それに、間違いなんて存在しないんだから。

 

 

 

 

 

約一週間ぶりに学校に戻って平和を実感した。耳の感覚も無事戻った。それに、爆音が無いだけで落ち着く。ただ、居残りさせられている点を除けば、全然いい。いや、悪い事をしたんじゃなくて、一週間分の授業内容を勉強させられていた。ちなみに、一夏と箒には先に帰っていった。居残りの課題も大した量もなく、サクサク進んで行く。程なくして課題も終わり、荷物をまとめて帰ろうとした時だった。

 

「あ、有澤‼」

 

先に帰ったはずの箒が、何かあたふためいて俺のとこにきた。多分、まだ家にも帰ってないのだろう。証拠にランドセルを背負っている。

 

「あ、箒。どうした? 家に帰ったんじゃなかったっけ」

「い、一夏が………うぅっ………」

 

一夏がどうした?

箒の目尻には涙が溜まっている。なんか不吉な予感しかしないんだが………。

 

「一夏が、連れ去られてしまったんだ‼ うわぁぁぁぁぁん‼」

 

なん………だと⁉

一夏が連れ去られた⁉ まさかすでに亡国機業の手が⁉ だが、ISも、出てない状態でさらうメリットがわからん。もしくは、アスピナ機関の連中がAMS検査に連れてったか⁉ とか、いろいろ考えたが箒から聞かないとわからないので、落ち着かせることにした。

 

「箒、落ち着け。まず、何があった?」

「うぐっ………。え、えっと、だな………」

 

話を要約すると、俺が居ない間に箒がイジメを受け、一夏がその事を教師に教えた。それは賢明な判断だ。………その前に一人だけ殴った事は伏せておこう。

だが、今日の帰りの途中、一夏が黒服の男に攫われたらしい。一夏も必死に抵抗したらしいが、小学生が大人に勝てる筈が無く、無駄な足掻きに終わった。

 

「箒、そいつらに何か心当たりは無いか? ほら、お前を虐めていた奴の知り合いとか?」

「い、いや、全然心当たりなんて………まさか⁉」

「やっぱ、あるのか?」

「あ、ああ。私に突っかかってきた奴の中に、御所河原っていう奴がいたんだ」

 

おい、御所河原って、どっかで聞いたような気がするんだが………。

 

「………それ、この辺りをシマにしているヤクザだろ」

「そ、そうだ。確か、一夏が最初に殴った奴だ」

 

冗談じゃない事だよ、これ。洒落にならない。だいたい、御所河原組って、ヤクザを何百人と仕切る大御所じゃねえか。有澤の護衛隊を呼ぶしか無いか。あ、ケータイあった。

 

「あ、親父か⁉」

『そうだ、で、何かあったか?』

「ああ、俺のダチ(一夏)がヤクザに攫われちまったらしいんだ」

『わかった。今、第一部隊をヘリで送る。それまで待機してろ』

 

くそ、北海道からココ(東京)までどのくらいかかると思ってるんだ⁉ 早くしねぇと、一夏が…………‼

 

「あ、有澤‼ ど、どこへ行く⁉」

 

俺は、知らずのうちに、当ても無く走り出していた。箒が声をかけて来たが、わからなかった。ただ、焦燥にかられて身体が動いていたーー

 

 

 

 

 

「あ、有澤‼ ど、どこへ行く⁉」

 

()は、急に駆け出した有澤を追いかけた。何処かに連絡をいれていたようだが、有澤は、一夏を助けに行くつもりなのだろう。でも、そんなのは無理だ。子供が大人に勝てるはずがない。

 

「あ、有澤、待て‼」

「うるせぇ‼ こうしてる間にも一夏は、まずい状況にあるんだぞ‼ 助けに行くしかねえだろ‼」

 

私だってその思いは同じだ。でも、

 

「む、無茶だ‼ 大人に勝てるはずがない‼ それに相手は、ヤクザだ。死に行くようなものだぞ‼」

 

それがいかに無謀だか、理解している。死にたくはない。けど、一夏を助けたい。けれども、有澤には傷ついて欲しくない。でも、初めての友達(一夏と有澤)に辛い思いはさせたくない。それの繰り返しが頭の中で回り続ける。

簡単に言ってしまえば、私は有澤の事が少し気に入っている。一夏もそうだが、有澤は前にただ一人でいる私に話しかけて来てくれた、心優しい人間だ。その優しさが、私にとってはとても嬉しかった。

だからこそ、傷ついて欲しくない、そう思っている。それがただの自己満足だとしてもだ。だが、有澤はこう言った。

 

「それでも、俺は、友を助けたい。仲間を見捨てるなんてできるかよ‼ 仲間を見捨てるくらいだったら、死んだ方がまだマシだ‼」

 

有澤は、諦めて居なかった。こいつは、馬鹿だなと思う。誰かのためにならどうなってもいい、本当にそう思っているんだろう。

しばらくしてふと、目があった。その奥には、曇りなど無く、諦めすら見えて居なかった。その瞳に、私は吸い込まれそうだった。

ああ、こいつなら一夏を助けてくれる、そう思った。

 

でもこの時、私は体に悪寒が走った。ただ、それが何を示すのかは、この時点で私に理解する事などできていなかった。それが、破滅への刻限であったとしてもーー

 

 

 

 

 

走り出してから何分が経っただろうか。俺は、『御所河原組』と大々的に書かれた表札がある門の前にいた。何故だか知らんが、箒もついてきた。

 

「ここに一夏がいると見ていいな」

「根拠は?」

「勘だ」

「………」

「………頼むから、そんな目で見ないでくれ」

 

正門から入ろうとはしたが、ヤクザ二名が立っているため、危険と判断。裏門から入った方がいいだろ、監視も薄そうだし。

 

「裏門へ行くぞ」

「わ、わかった」

 

とりあえず、裏門へ向かおうとしたのはいいが、今の服装を考えてそれはまずいと判断した。今の俺たちの服装は、完全な私服。俺はまだいいぞ。問題は、箒だ。中に侵入するんだったら、まず、スカートはアカン気がする。それに、ランドセルを背負ったままでの任務遂行は辛い。てか、無理だ。

 

「箒、お前はここで待機していろ。そして、俺がここへ一夏を連れて来たら、全力で連れてけ」

「お、おい、お前は一人で行く気なのか………?」

 

箒が、恐る恐る聞いて来た。そりゃ、仕方ねえもん。私服で潜入するのは無理だ。あ、俺も私服か。いや、能力使うか。

 

「ああ、そうだ」

「そんな…………危険すぎる‼」

「心配するなって」

 

箒、目尻に涙をためんなよ。今生の別れじゃねえんだ。

 

「あ、そうだ。俺が戻ってきたら、俺の事名前で呼んでくれよな」

「え………そ、それは」

「行って来る、待っててくれよな」

 

俺は、箒をおいて、裏口から侵入した。

 

 

 

 

 

中に入って見たのはいいが、割と人がいない。念のため、先ほど能力使って作り上げた《ステルス迷彩ジャケット》を着る。武器も、AC用ライフル《CWG-ARF-180》を装備する。

 

(しっかし、でけえ屋敷だな。無駄に金が絡んでいたりしないか? てか、どこから稼いできたんだ?)

 

どうでもいいような疑問を抱きながら、屋敷へ乗り込んだ。

屋敷の中は、割と広い。だが、少し妙だ。

 

(おかしい………こんだけ広い敷地があるんだ。何故、こんなにも人がいないんだ?)

 

人気がない。簡単に言えばそうだ。廊下、庭、部屋、その全てにおいて人がいない。

 

(まさか、感付かれたか?)

 

それはないか。ステルス迷彩は起動している。視認される事はまずない。とりあえず一夏の救助が最優先だ。先へ進もう。

 

襖をあけ、部屋を進み続ける事30分。まだ一夏は見つからない。

 

(まずい、これはまずいぞ。どこにいるんだ、一夏⁉)

 

俺の感情はどんどん焦燥に駆られ、焼かれる。明らかに自分でも焦っているのがわかる。

次の部屋へ向かおうとした時、通り過ごした一つの部屋から、おっさんの声とガキの声が聞こえた。俺はその襖に耳を立てる。

 

『頭、このガキを連れてきてどうするんすか』

『ほんと、あんま意味がないっすよ』

『黙ってろ、そのうち息子が言うさ。始末はそれからだ』

『親父、こいつなんだが、完全にボコボコにしていいわ。こいつのお陰でとんだとばっちりは食らうは、こいつに殴られるわ、散々や。もう、いいで、やってくれ』

 

ガキというのは、一夏のことだ。そして、一夏はこれからナニカされるようだ。ダメだ、させるわけにはいかん。

とりあえず能力で、超小型のOIGAMIを創造する。サイズは、ハンドガンくらいだ。それを、その襖めがけて、トリガースイッチを起動させる。

その直後、襖は木っ端微塵に弾け飛び、辺りを爆煙が覆う。多分何人かは腰を抜かしてはいるだろう。俺はステルス迷彩ジャケットを脱ぎ捨てる。もう、こいつに意味はない。

 

「よォ、御所河原。お前、俺のダチに何してんだ?」

 

俺は、御所河原の息子へと怒気を含めた声で語りかける。多分、青筋が幾つも出ているだろうな。…………だって、一夏が両手両足を縛られて気絶している姿を見たらな。

 

「はん、お前の知った事じゃねえよ。別にいいだろ、借りを返すくらいさぁ」

 

御所河原の野郎も怯まず言ってきやがる。借りを返すだと? 笑わせんな、お前らがしてる事は第一級犯罪レベルだからな。

 

「………わかった」

「だろ? だからさーー」

「………テメエは最低の下衆野郎だってことがな」

 

俺はライフルに指を掛け、銃口を向ける。迷いはない、どうせ撃ち出すのは衝撃弾だ。気絶する程度しかない。

躊躇い無く、フルオートで弾をばら撒く。撃ち出され、目標へ向かう小さな金属の牙は、相手を牽制するのにちょうどいい。すると、数人がうまい感じに気絶する。ちょうど、一夏の近くにいる連中だ。俺は、全力でかける。その手に友達を取り戻すため。

一夏は体重が軽いので、担ぎやすい。肩に担いで、裏口を目指す。

 

「逃がすな‼ 追え、奴らをここから出すな‼」

 

御所河原の野郎がそう言うと、奥のフロアから、約200人の子分がでてきた。………なんか絶望的。

 

「死に晒せや、オラ‼」

「ぬおっ⁉ ライフル弾⁉」

 

やばっ、あいつら火器を持ってやがる。ライフル、ショットガン、ハンドガン、ロケラン、サブマシンガン。もう、ヤクザよりマフィアの方がよっぽどしっくり来るわ。

 

「うらうらうらぁぁぁぁぁぁぁ‼」

「ギャアぁぁぁぁぁ‼」

「グフォぉぉぉぉぉ‼」

 

追っ手二名排除完了。ダメだ、片手でライフルの連射に耐えられねえ。それに、もうマガジンが尽きる。残弾は、あと8発。とにかく走るぜ‼

全力で走ると、次第に裏口が見えてきた。ちなみに後ろでは銃火器のワルツが奏でられてるぜ。怖いわ………

 

「りゅ、龍之介‼」

「箒、一夏回収したぜ‼ あと、お前に預ける」

 

裏口で合流した俺は、箒に一夏を預けた。箒にあとは、一夏を安全圏まで運べれば完了だ。

 

「龍之介は、どうする気だ?」

「あ、俺? 俺はだな『お前ら、頭に逆らうやつを抹殺せよ‼』『うおぉぉぉぉぉぉぉ‼』あれを、ここで抑え切る」

「そんな…………無謀だ‼」

 

箒は、反対して来る。どんだけ優しいのこの娘は。

 

「大丈夫だ、後で必ず合流するかーー」

 

から、と言おうとした瞬間、左腕に激痛が走った。

 

「っーーーー‼⁉」

 

あまり気は進まなかったが、痛みのあるところを見る。左肩が貫通していたよ。血も止まらねえ。

それでもなお、マフィア達はやって来る。

俺は、ライフルを構えるが左腕が上手く動かない、と言うより動かせない。

 

(ちっ、神経まで切られちまったか………⁉)

 

右手だけでライフルは一応撃てるが、ほとんど当たりもしない。このままでは、一夏と箒にまで被害がでる。

 

「箒………早く……行け……」

「無理だ‼ お前だけおいて行くなんて、できない‼」

「……馬鹿……野郎…………行くんだ…………」

 

アカン、痛みで声が出ねえ。痛覚だけは生きてるのかよ。

 

「嫌だ‼ 全員で戻るんだ‼」

「……大丈夫……俺は、戻って……来る…………行け、早く…………‼」

 

痛みに逆らいながら、箒へ指示を飛ばす。でも、もともと頑固なやつだ、そうそう言うことは聞いてくれない。箒は、少し渋ったような顔をしている。

 

「……それなら、私と約束してくれ」

「……は…………どうした?」

「必ず、帰ってきてくれ‼」

「…………りょーかい」

 

そして、箒は一夏を担いで何処かへ向かって走り出した。しばらくして、姿は小さくなっていった。ふっ、ちゃんとしてくれるんじゃん。

さて、残るは大量のマフィア達とクソガキ一名。ちょっとプッツンといってしまいそうな俺は、能力を使用してある武装を作り出す。

 

ーー全てを暴力的なまでに蹂躙し焼き尽くす、規格外武装。

ーー全てを破壊する悪魔の兵器。

 

それが、俺の背中に出現した。

右肩の方に六枚のチェーンソーを装備した、破壊を求めた凶器。

 

《OVERED WEAPON GRIND BLADE》

 

グラインドブレードーー破壊を具現化した、その兵器が俺の右腕に装着される。そして、左腕につくパーツが俺の左肩から腕を一本ーーーーーーパージした(切り飛ばした)

 

「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼‼‼」

 

辺りに響き渡る断末魔。それだけ、ものすごく痛い。今は痛みなんぞ残っていないが。

俺は、グラインドブレードを起動させる。装着されている六枚のチェーンソーが高速で回転を始める。次第に、ソーの部分が赤くなり始め、全体的に炎をまとっているように見えて来る。俺は、それを構え、矛先をヤクザどもに向けた。

 

「撃てぇ‼ これがワシらのシマを荒らした罰や‼」

 

マフィア側は、RPG7を俺に向かって撃ってきた。運良く、グラインドブレードのチェーンソー部分に当たり、俺への被害はなかった。だが、急に視界が暗くなる。いや、視界が少し狭くなったのか。

突然、右眼から激痛が走る。だが、声は出さない、出せない。グラインドブレードの痛みの方が何倍と痛いわ。あれ、俺の神経と血管にリンクして、エネルギーを、供給してんだぞ。死ぬかも…………。

 

ーー必ず、帰ってきてくれ‼ーー

 

死ぬの却下。俺、やっぱ生きていかなきゃ。そのためには、こいつらに犠牲と言う名の礎になって貰わねば。

 

「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 

俺は、グラインドブレードを突き出しながら、ヤクザに向かって走る。チェーンソーの色はすでに赤を通り越して、一層暴力的な"アカ"。回転に至っては、それはもう削り潰す勢いだ。

それが、先頭を突っ切ってきた奴に当たった。

 

「ギャアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァ⁉⁉⁉」

 

まず、掠めた腕が飛ぶ。そして、慣性の法則に逆らえずに流れてくる肉体が、バラバラになる。胴は抉られ、ただの肉片と化す。

ーーそれはもう、ただの暴虐の始まりだった。

ヤクザ達は怯まずに向かって来る。

 

「アァァァァァァァァァァァ‼‼」

 

だが、それを俺はグラインドブレードで薙ぎ払う。男達は、声すらあげられず、肉片へと成り下がる。

それがしばらく続いた。簡単に言ってしまえば、ここはすでにーーーー地獄へと成り果てていた。

 

 

 

 

 

一体どのくらい荒れていたのだろうか。グラインドブレードの回転が収まった時には、当たり一面に鉄の臭いが充満し、血の霧が漂っていた。

周りをみれば、肉片、腕、足、原型をとどめていない頭部、ちぎれ飛んだ臓物などが散らばっていた。当たり一面に人の気配すら感じれねえ。あれだけいたヤクザが、今ではただの形骸にしかすぎなくなってしまった。

グラインドブレードは、役目を終え、粒子となって虚空へと消えた。できれば二度と再び使うことがないことを願いたい。

 

「う…………おっ、と……」

 

危ねえ、激しい立ちくらみがきた。左腕は、肩から先がついてねぇや。右眼は、ナニカ破片が刺さっていた。右手でそれを取り、そこら辺に投げ捨てる。俺の損傷、右眼と左腕。これでは、まともな生活は無理だな。

しばらくして、上からローターの回転する音が聞こえる。上を見上げれば、ヘリがいた。それが、今ここへとおりて来る。あの型のヘリは企業連のやつだ。

 

「へへっ…………来るの……おせーよ、おや……じ…………」

 

俺は、その場に膝から崩れ落ちた。そこから先の記憶は、今ひとつよくわからない。




自分で、書いてて思うんですが、グラインドブレード生身で使うとかなりエグいですね…………
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