インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第二十三話 答エシ者

ーーキアァァァァァァァァァァァ

 

その獣に似た叫び。その咆哮とともに、海面が波打ち始める。箒をはじめ、専用機持ち達は警戒する。

そして、水柱がたった。それも、福音が没した時より遥かに大きい水柱。それが消えた時、そこには福音がいた。

 

「なんなんだ…………あれは?」

「あれが…………福音ですの?」

「まずいわ…………やばい予感がする」

 

それぞれが自由に言う。無理もない。再び現れた福音は、その姿を大きく変えていた。

銀の装甲に走るラインの各所が太くなり、何かを送るエネルギーパイプのように見える。そして大きく変わったのは翼。機械質な翼が無くなり、変わりに青いエネルギーで形成された翼が生える。それを見た全員が直感した。ーーこれはまずい、と。

 

「各機、福音を撃て‼ 奴を近づけるな‼」

 

福音にレールガンを放つラウラの指示により、簪と静寐はミサイルを、シャルロットは残弾が残り僅かなバズーカを、セシリアはレーザースナイパーライフルを、鈴は熱殻拡散衝撃砲を、箒はベリルショットライフルを、それぞれ撃つ。

だが

 

「こいつ…………‼ 全く効いてないだと⁉」

 

福音はそのエネルギーの羽で自身を包み、迫り来る砲弾、レーザー、弾丸、ミサイル、衝撃、その全てを防ぎ切っていた。

 

『対象の殲滅を優先』

 

そのマシンボイスと共に、福音は大型のエネルギー球を作り出す。それは、とても巨大で、ISなら飲み込んでしまうレベルだった。

 

「逃げるぞ‼ あれに捕まったら、終わりだ‼」

 

ラウラに言われるまでもなく、回避行動をとる専用機持ち達。福音はそのエネルギー球を転がす。そのエネルギー球は、転がされた方から進路を変えて、ラウラを目指す。

 

「動きの遅い私を狙ったか‼」

 

ラウラはジグザグに動き、エネルギー球を回避しようとしたが、エネルギー球はまるでミサイルのように追尾してくる。そして、それはなおも接近してくる。砲戦に特化したため、機動性が格段に下がっているレーゲンに回避するすべはない。ラウラは物理シールドで防御を試みるが、そのエネルギー球はそれすら破壊してラウラを飲み込んだ。

 

「皆…………感情的に、なるな…………」

 

物理シールドを全て失い、レーゲンは海中へと沈みゆく。

 

「ラウラ‼ よくもラウラをやったわね‼」

 

それに激昂した鈴が青龍刀を構え、福音へと斬り込む。だが、福音は剣筋が見えているのか、的確に弾いてダメージを通らせない。

 

「ちぃっ‼ これでーー」

 

焦った鈴は、衝撃砲を撃とうとするが、この状況下でウエイトのある空間圧作用兵器を使ったのが、判断ミスだった。いくら連射が可能な衝撃砲であろうとも、空間に圧力をかけるにはそれなりのチャージ時間がかかる。その僅かな隙、だが福音にとっては大きな好機、それを逃すはずもなく、鈴の右腕の装甲と、四門ある衝撃砲のうちの一門を回し蹴りで破壊する。

 

「きゃあぁぁぁぁっ‼」

 

鈴は海面へ叩きつけられた。次に福音はセシリアへと目をつけた。セシリアは、自機が鳴らすロックオンアラートを聞き、福音からの距離をとった…………はずだった。

何か大口径の砲弾を撃つような音、その音とともに福音がセシリアへと迫り来る。

 

「そんなっ…………‼ データではここまで速くなかったはず…………‼」

 

セシリアはそれに驚愕の声をあげる。無理もない、足の装甲が開き全部で十基のブースター、その全ての同時着火による急加速。引き離せるわけがなかった。

 

「っ‼ こうなったらーー」

 

セシリアはライフルを構えるが、それは接近した福音に殴り飛ばされる。そして、そのエネルギー翼がセシリアを包み込む。

 

「い、いくら軍用でも、この性能は余りに異常ーー」

 

翼が神々しく光った次の瞬間、セシリアは全方位からの飽和攻撃を受け、海中へと沈められる。

 

「セシリア‼ この野郎‼」

 

その様子を見ていた簪は、バックユニットのミサイルをASミサイルから16連ミサイルに変更、さらに肩に32連連動ミサイルを展開し福音へと撃ち放つ。だが、福音は再びエネルギー翼の繭に包まれると、その攻撃は無意味に終わる。そして、福音はその繭をゆっくりと開く。放たれるのは極太のハイレーザー。福音との距離は200。避けられるはずがなかった。

 

「簪‼ プライマルアーマーを最大出力にして‼」

「静寐‼ ダメ、避けーー」

 

静寐が福音との間に入り込むが、ハイレーザーは二人を纏めて吹き飛ばた。いくらネクストISの持つプライマルアーマーであっても、貫通属性ーーつまり、レーザーなどには弱い。二人の機体の耐久値も大幅に減少した。

 

「簪‼ 静寐‼ 貴様、よくもっ‼」

 

親友の簪と静寐が飛ばされたのを見た箒は、福音を射抜かんばかりと睨みつけ

 

「ーー寄って、斬るーー‼」

 

サムライソードを抜刀。福音へと斬りかかる。福音はその手に、レーザーガトリング[M134L]を展開し、応戦する。だが、箒はその攻撃が当たってもものともせずに突っ込む。

 

「はあァァァァァァッ‼」

 

福音の至近距離に近づき、サムライソードを振り下ろすが、レーザーガトリングの銃身に受け止められる。銃身はすでに切られているが、福音はその間に再び連射モードへと入っていた。

 

「ぐっ⁉」

 

福音は箒の胸ぐらを掴み上げ、その翼を零距離まで近づけ、光弾を放った。辺りには、箒の声にならない叫びが響き渡る。だが、その声も暫くすると弱々しくなり、福音は興味が失せたように、近くの小島へと放り投げる。

 

「よくもっ‼ よくも、皆を‼」

 

シャルロットはその手に持っていたバズーカを捨て、ショットガンを展開し福音の頭へと突き付けた。

だが、福音はショットガンの銃身を掴むと、そのまま無理矢理奪い取り、投げ捨てた。そして、シャルロットの喉をつかみ上げると、その無防備な彼女の体に、拳を叩き込んだ。

 

「がはっ‼」

 

いくらただの殴りであっても、ISのパワーアシストがあるため、衝撃だけでもかなりのものになる。その衝撃で、彼女は吐血してしまう。

そして喉を掴んだまま、福音はレーザーの再チャージへと入った。

 

 

 

 

 

「何のために戦う、か…………」

 

俺は歩にそう聞かれていた。何のためって言われてもな…………

 

「そうだな…………やっぱり、守るために。そう、大切な仲間を、シャルを守るために、俺は戦う」

 

すると、自分の中ではまとまっていなかったはずなのに、すぐに答えが出た。それを聞いていた俺も、自分はこう思っていたんだ、そう再認識した。

 

「そう言うと思ったよ。一夏は、誰よりも真っ直ぐで、思いの強さも人一倍。そんな人が、仲間を大切にしないはずがない」

 

歩はさらに言葉を続ける。

 

「そんな一夏だから、自然と周りの人間が惹かれて行く。ーー私もそうだったから」

「…………そう言われると、なんか恥ずかしいな」

 

歩に言われて気づいた事が一杯ある。その中でも、自分の思い、それがどんなものでどんな事を考えていたのか、改めて考えさせられた。

やがて、この白い空間に夕日が差し始めた。

 

「あ、そろそろ時間。ちょうど白式の修復も終わった。あとは一夏次第だよ」

「俺次第?」

「今、皆は福音を落としに行っている。でも、皆もう危ない」

「っ‼ 歩、速くしてくれ‼ 俺は、あいつらを、シャルを失いたくねえ‼」

「わかった。それじゃ、先に行っていてね」

 

そう歩が言うと世界が白く染まって行く。そこで、また俺の意識は何処かへ吹き飛んだ。

 

 

一夏がコアの世界から退室したあと、歩は一人呟く。

 

「…………『大切な人のために』か。その考え、一夏の姉さんと同じだよ。だったら、このコア本来の力を解放しても問題ないよね? その意思を貫けるんだったら」

 

その呟きは、決して大きくなく、すぐ消えてしまいそうなものだったが、それが言いたがっていた意味は、決して小さなものでもなかった。

 

 

 

 

 

「何のために力を使う、か」

 

俺はルリアに問われたその質問にすぐ答えられていない。

俺が使ってきたその力は、結局破壊しか導いてこなかった。理不尽なまでの破壊は、ただ空虚感を俺に伝えてくる。いつもの火力バカの俺はいなーー待て、俺が火力バカになった理由。あの頃は、『堕落しきった女を叩き直す』とかといっていたが、俺はそこから暫くして箒が俺の彼女になった時から、変わった。

 

「ーー俺はあいつを守りたい。そのための力なら、テロ屋だろうが、国家だろうが関係ねえ。全力でぶち壊して守り抜く、俺の圧倒的火力と装甲と共に」

 

ーーそうだよ。俺の力は、ぶち壊すために使うんだ、大切な人を邪魔する全てのものを破壊するために。大切な人に傷一つつけさせないために。

その事が口から出た瞬間、ルリアの表情は本当に心から喜んでいるような表情だった。なんで、そんな表情するんだ、お前?

 

「あっくんの力の使い方、それはきっと間違いじゃないと思う。少なくとも、私はそう思う。まさにあっくんの生きてきた通り。それに、最もあっくんらしい考えだしね」

「…………面と向かって言われると恥ずかしいな」

 

俺は頬をかく。まあな、俺としちゃこれ以外は思いつきそうにもないし、変えるつもりもねえ。一度曲げたら、歪んだ砲身と同じように、思いの乗った弾は出ねえしな。

 

「それじゃ、そろそろ行かなきゃね」

「何処へだ?」

 

おいおい、ルリアはどこへ連れて行く気なんだ? 俺まであの世送り?

 

「決まっているよ。あっくんのいた世界へ」

「お前…………マジ?」

「おおマジ」

「お前のその弱っている身体でか? 確実に倒れるぞ?」

「大丈夫。今の私は前の私とは比べ物にならないほど頑丈だから」

 

なんだか、ルリアは俺の最近の人生を知ってるかのように言うし、身体が頑丈になったと言っている。まてよ、もしかしてだが、一つだけ心当たりがある。

 

「そうか。いろいろとありがとよ、ルリア…………いや、榴雷」

 

そう言うと彼女は、『任せて』と言った。それを聞いたのを最後に俺の意識はブラックアウトした。

 

 

「だっはぁっ‼」

 

俺は一気に肺へと空気が流れ込んでくる感覚を感じながら、呼吸を整える。少しして息が落ち着いたところで周りを見渡す。辺りは夕暮れに差し掛かっており、白い砂浜が少し茜色に染まっていた。どうやら、ここは小島のようらしい。

 

〔そっちには着いた?〕

 

ふとルリアの声がした。あ、と思って俺は胸のドッグタグを取り出す。すると、ルリアのホログラムが展開される。

 

〔その様子だと、無事生き返ったみたいだね〕

「さりげなく、とんでもねえ事を言い出すんじゃねえ‼」

〔だって仕方ないでしょ。左腕が肩口から丸っと吹き飛んだ上に、右脚の太ももの中間から下が千切れ、その他裂傷、火傷、内出血、さらには肝臓が損傷。逆にこれでよく生きていたと思うよ〕

 

ルリアの報告を聞いてうげっと思う。どんだけ俺怪我してんの。普通の人間なら死んでいてもおかしくないと思う。

しかし、今の俺の身体はどうだろうか。傷一つ無い、出撃前の肉体へと戻っている。流石に元からの義眼と義手は治ってはいないけどな。それでも、よくここまで綺麗に治ったなと思う。

 

「それよりも、機体の方は問題ねえのか?」

 

俺は別の視点に目を向ける。流石にあそこまで、派手にやられたら、復旧は難しいだろう。プライマルアーマーやオーバードブーストのエネルギーとなるコジマ粒子の生成機関、コジマドライヴはどうなったんだ?

 

〔そう言うと思ったから、データを開示するね〕

 

そうルリアが言うと、目の前にウインドウが展開される。俺は、その性能に、空いた口がふさがらなかった。

 

[第二形態 榴雷・弍型]

ーシールド残量、5800

ープライマルアーマー、300mm

ー装甲厚、180mm

ー肩部内蔵30mmガトリング二門

ー腕部内蔵80mmレールガン二門

ー第二世代型コジマドライヴ四基搭載

ー全ブースター、00-ARETHAへ変更

ーアサルトアーマー使用可能

 

「…………第二形態移行(セカンドシフト)したのか。って、第二世代型コジマドライヴってなんだよ⁉」

 

第二世代型コジマドライヴに世代わけなんてねえぞ⁉ おまけに、ブースターを00-ARETHAに変更しただと⁉ やべえ、なんかチート臭がプンプンしてきた…………。

 

〔第二世代型コジマドライヴは、ただ単に粒子放出量を増やし、環境条件による減衰を無くしたコジマ粒子を生成できるようにしたやつだよ〕

「そいつは、まぁ、助かるんだが…………これ、重要機密の塊になってね?」

〔…………〕

「黙るなよ‼」

 

まあいいか。とにかく、機体を展開してみよう。感覚がつかめなきゃ意味がねえしな。

 

「おい、ルリア。榴雷を展開するぞ」

〔わかった。それじゃ、システム起動。榴雷、展開〕

 

ルリアがそう言うと、俺の身体に馴染んでいた装甲が纏われて行く。その重さは前と比べてもかなり重い。そして、両肩と両腕に少し重みを感じる。きっと追加された固定武装だろう。

 

「よし、展開には問題ねえな。てか、お前はどうなんの?」

〔基本コア人格だからね。機体展開後はあまり喋らなくなるよ。でもオペレーター程度は言うかな〕

「了解。それだけ覚えておくわ。少し、索敵するか」

 

俺は不意にレーダーへと目を移す。まぁ、この辺は変化ねえな。やっぱ、元が高性能すぎたか。

だが、俺はそこに表示されている光点に気がつく。一つは何もなっていないが、周りに七つもの光点があり、その全てが点滅ーーつまり機体限界を示していた。その機体反応は

 

「ーーティアーズ、甲龍、ラファール、レーゲン、神楽、打鉄弍式、ヴァイスハイト⁉ なんで、あいつら…………‼」

〔織斑君の敵討ちらしいよ。でも、その相手である福音がかなりの異常性能だった。だから、落とされた〕

 

ラファールの光点は、福音とほぼ重なっている。そして現在進行形で点滅が速くなっている。まずいぞ、これは‼

 

「ーールリア、少し荒っぽくなるが、問題ねえな。福音を落とすぞ」

〔言うと思ったよ。いくら、荒っぽくても問題ない。オーバードウェポンも使いたい放題使ってもいいよ〕

「そいつは、最高の報せだな。おかげで、俺の"戦艦"が使えるぜ」

 

全てのオーバードウェポンを凌駕する、俺のみ使えるオーバードウェポン。こいつで俺は福音を落とす。

 

「流石にVOBはまずいからな…………よし、[リコリス]リフトオフ」

 

俺は背中に接続される、大型の兵装を展開する。それは、いつか俺が作った支援装備。弾薬庫とブースターを兼ね備えた兵装。

ACOSW-01 [リコリス]。背部通常兵装を封印する代わりに、圧倒的な火力を得る、別名『空飛ぶ弾薬庫』。

俺はその化け物を背負う。後方に重心がずれるが、この際関係無い。ただ、全てを焼き尽くすのみ。

 

「榴雷・弍型、出るぞ‼」

〔システム、戦闘モード‼〕

 

リコリスの大型ブースターが点火される。その出力はVOBの四分の三程度だが、それでも十分な速さだ。

俺は、全速力で交戦区域へと飛翔した。

 

 

 

 

 

「ぐっ…………‼」

 

シャルロットはその首を福音の手によって締め付けられていた。展開されているエネルギー翼のチャージまでほとんど時間は無い。シャルロットは目を閉じた。

 

(一夏…………ごめん)

 

それは、勝手に出撃してしまった事。

それは、怪我を負わせてしまった事。

それは、もう一度そばにいてあげられない事。

もう出来なくなってしまう事への、謝罪。シャルロットの頭の中にはそんな言葉が浮かんでいた。

翼の輝きはまだ増して行く。すでに秒読み体勢へと入っている。

 

「いち、か…………」

 

それでも、愛する人の名前を息が詰まる中、紡いで行く。

 

「会いたいよ…………一夏…………」

 

そしてシャルロットは硬く目をつぶる。これからくる、破壊の奔流を受ける事を覚悟して。

 

ーーィィィイィィィィンッ

 

そして、レーザーが放たれた。だが、シャルロットは気付く。自分には何も衝撃が無い事に。目を開けると、そこにはさっきまで彼女の首を締めていた福音が、右腕のアーマーを破壊された状態で吹き飛ばされている光景だった。

 

(な、何が、起きて…………)

 

シャルロットは戸惑うが、それは目の前に降りてきたものによって納得させられる。

 

「俺の大切な仲間は、これ以上やらせねえ‼」

 

それは、白式・雪牙第二形態、雪風を纏った、一夏であった。

 

 

「いち、か…………なの?」

「おう、待たせたなシャル」

 

シャルロットが不安そうな声で一夏に聞いてくる。その声はとても震えていた。

 

「うぅっ…………一夏ぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 

突然、シャルロットは泣き出して一夏に抱きついた。

 

「ど、どうした?」

「よかった…………無事でよかった…………」

「なんだ、心配してくれてたのか?」

 

そう言うと、シャルロットはコクっと頷く。そうか、そんなに心配かけていたんだな、そう一夏は思った。

そんな時、ロックオンされているという事を知らせるアラートが白式からなる。どうやら、福音は一夏に目をつけたようだ。

 

「シャル、少し待っていてくれるか? あいつとのリベンジ、まだ果たしていないからな」

「うん…………でも、無茶だけはしないでね」

 

そうシャルロットが答えると、一夏は肥大化した計八基のスラスターをふかし、福音めがけて飛翔した。

 

「俺が相手だ、こいシルバリオ・ゴスペル‼」

 

一夏の叫びに呼応するかのように福音は、光弾をチェーンガン並みの速度で連射する。それを一夏は避けようともせず、左腕を前に構える。そこには、第二形態に移行した事によって追加された多機能武装腕(アームド・アーム)雪風(ゆきかぜ)]が装備されていた。

 

「何度も食らうかよ‼ 雪風、シールドモード‼」

ー[雪風]シールドモードに移行、相殺防御開始

 

その中心にあるパーツから蒼白いエネルギーシールドが展開される。これは、あらゆる攻性エネルギーを無効化させる零落白夜のシールド。福音から放たれた光弾は、一夏へ届く事はなく、その盾によりかき消されてしまう。

 

「へっ。俺の『零落白夜・修』は千冬姉の『零落白夜』とは違うぜ‼ 」

 

一夏が使用している単一仕様能力『零落白夜・修』。それは、かつて千冬の乗機・暮桜の零落白夜とはある点において全く違っていた。

ーーシールドエネルギーを殆ど消費しない。

それは、『IS殺し』とも呼ばれる零落白夜が完成したものであった。攻撃にのみ特化し引き換えに守りを失う覚えたての(零落白夜)は、時を経て今その修練を終えたものが彼の手にある。

剣でも運動でもいい。初めの頃は誰もが体力的な問題で、疲れ果てていただろう。だが、練習して行くうちにどんどん疲れがたまりにくくなってくる。基本的なところはそこなのだ。結局は、単一仕様能力は発現して終わりではない、戦いの積み重ねで、本当の覚醒となるのだ。

 

福音は、大量の光弾を打ち消しながら突っ込んでくる一夏に危機感を募らせていた。

一方の一夏は、光弾が止んだタイミングで、雪風をカノンモードへ切り替え、ハイレーザーカノンを連射する。だが、動きの早い福音には当たらない。

 

(くっ‼ こうも当たらないか…………‼)

 

一夏の焦りは焦燥となり、胸を焦がしていく。そうなると、如何せん命中率が落ちる。残弾数も残り半分まで落ちた。

 

「(もう、一か八か‼)うおォォォォォっ‼」

 

一夏は雪片弍型を抜刀する。そして、増設された背部スラスターを全基フルアクセルにする。その速度は福音にも劣らない、むしろ凌駕しているといっても過言ではない。一気に肉薄した一夏は、雪片を振りぬく。だが、

 

「なっ…………‼ 雪片を…………受け止めた⁉」

 

福音は左手で雪片を掴み、抑えた。そのまま、翼のエネルギーを臨界までチャージする。その間、0.1秒。回避できるはずがなかった。だが、福音は雪片を掴んでいた手を離す。すると、一夏と福音の間をレーザーが通り過ぎて行った。一夏はその先に視線を向けると、そこにはセシリアがFENRIRを構えていた。いや、セシリアだけではない。鈴も、ラウラも、そしてシャルも、その得物を構えて、福音を見据えていた。

 

「一夏さん、狙撃の支援、させていただきますわよ‼」

「一夏‼ 衝撃砲が必要ならいくらでも言いなさいよ‼」

「レールガンは生きている‼ 砲撃ならいくらでもするぞ、一夏‼」

「早くそんなの、ぶっ飛ばしちゃおうよ、一夏‼」

 

全員がダメージを負っていたが、その目に宿る闘志は燃え尽きていなかった。逆に、まだまだ燃え盛っている。一夏はさらに雪片を握る手に力を入れる。

 

「よし‼ 行くぞみんな‼」

「「「「おう‼」」」」

 

一夏は右手の雪片と左手の雪風、そして大切な仲間と愛する者を信じ、福音へ再び対峙した。

 

 

「箒‼ 無事なの⁉」

「ああ…………なんとかな」

 

一夏達が福音と対峙した頃、簪と静寐は箒が投げ飛ばされたと思われる小島へ来ていた。案の定、箒はいた。ダメージもそこまで酷くはみえない。プライマルアーマーによるダメージ減衰のお陰だろう。

 

「とりあえず、立てる?」

「大丈夫だと言っているだろう。心配かけたな」

「まぁ、でも、無事で良かった」

 

三人は少し安堵の感に浸る。仲間が無事でいた事に緊張の糸がほぐれたのだろう。安堵の息を漏らす。

 

「福音が、白式と交戦⁉」

 

簪が、ふとレーダーに目をやるとそう光点が示していた。

 

「一夏君が復活したっていうの⁉ あんなに酷い怪我を負ったのに⁉」

「…………そうか、やってくれたんだな、彼奴が」

 

静寐がその事に驚きの声をあげるが、箒はそうでもなかった。むしろ、納得しているような感じである。

 

「と、とにかく、支援に行こう‼ あの福音に単機で勝てるはずない‼」

「そうだな。回復もちょうど終わったところだ、行くぞ‼」

「ちょ、ちょっと待って‼ こっちに超音速で向かってくる機体がいるよ‼」

 

静寐がそう言ったのを皮切りに、その場にいた全員がその方向をみる。目に入って来たものーーそれは、背中にリコリスを背負った榴雷・弍型の姿であった。

 

 

 

 

 

(ん? 小島に擬似コア反応が三つ…………彼奴らか‼)

 

俺は福音めがけてブースターをふかしている中、近くの小島に擬似コア反応があったため、急遽クイック・ブーストをして反転、その小島へ向かった。

小島へ近づくにつれてヴァイスハイト、打鉄弍式、神楽の姿が見えてきた。うむ、箒達三人だな。俺はその小島へ降り立った。

 

「よう、お前ら。怪我とかねえか?」

 

俺がそう言うと、全員鳩が豆鉄砲を食らったような顔になっていた。って、俺がここにいるのがそんなにおかしいか?

 

「りゅ、龍之介…………なのか?」

 

箒が不安そうな声で俺に聞いてくる。

 

「おう、俺だ。幽霊なんかじゃねえぞ」

「龍之介‼」

 

箒は俺に抱きついて来た。うわっ、どうしたんだ、いきなり。

 

「よかった…………生きてて、よかった…………心配したんだぞ…………」

 

俺の胸の中で箒はすすり泣く。それを俺は、優しく撫でてやった。

 

「まぁ、なんとか約束は果たせたよな。『必ず戻ってくる』という事はさ」

「馬鹿野郎が…………人にこんなに心配させておいて」

 

箒は泣きながらそう言うが、俺にはどうも涙声なので怒っているのかどうかがよく伝わってこない。

 

「な、なぁ、簪、静寐。俺がいない間に何があったんだ?」

「えっと、龍之介君がシグナルロストしてから、一時間後にMIA(作戦行動中行方不明)判定されたり」

「あと、装甲の破片が見つかったりして、生死が絶望的な判定されたりしていたよ」

「…………人を勝手に殺すな」

 

まぁ、仕方ないか。現に生死の境を彷徨ったしな。流石にその事を話すのは引けるな。

 

「とにかく、福音を落としに行くか‼ リベンジするぞ‼」

「「「おう‼」」」

 

皆がそう高らかに返事した。よし、準備はいいな。

 

「それじゃ、先に行っててくれ。俺は、こっから一発撃ってから行くからよ」

「わかった。先に行ってるからな」

「頼むぞ」

 

先に箒達を生かせる。うむ、準備をするか。

 

「ウェポンアセンブルシステム、HW01、02、04起動。アセンブル開始」

ーウェポンアセンブルシステム、受諾。アセンブルを開始します

 

すると三つのヘヴィウェポンが展開、一度パーツごとに分離してから、また組み合わせられる。俺の右手にはHW02スパイラルクラッシャーのグリップ、その次にHW04グレイヴアームズのランチャーユニット、最後にHW01ストロングライフルの銃身が接続され、榴雷の全高の二倍近い銃器が展開される。便宜上ロングレンジ・スナイパーキャノンと呼ぼう。ステータス上での射程距離は約十キロ。福音を狙撃するには容易い。

俺はバイザーを下ろす。

 

「眼帯排除(パージ)。バイザーとの相互接続(リンク)…………異常なし」

 

眼帯も外して、さらに精度をあげる。脳へダイレクトに情報が流れ込むが、問題はない。すぐに眼帯つけりゃ、元に戻る。

 

「目標との誤差、範囲内。射線上に味方機は確認されずーー吹きとんじまいな‼」

 

トリガーを引く。そして、強烈な反動と衝撃が体全身にかかる。その衝撃は周りの砂をも巻き上げ、反動は6t弱にもなる榴雷を後退させた。撃ち出されたAPFSDSは普通に初速がレールガンすら凌駕する勢いで、福音にぶち当たった。無論、福音は文字通り吹き飛んだが。周りにいた一夏達はすげえビビっていた。

 

「どれ、俺も行くか‼」

 

眼帯を付け直した俺はロングレンジ・スナイパーキャノンを引っ込めると、再びリコリスのブースターへ点火、福音を目指した。

 

 

 

 

 

「ん?」

「どうしたの箒?」

「ヴァイスハイトの様子が少し変だ。さっきから、なんか進化しそうな気がする」

「それどこのポ○モン?」

 

福音めがけて飛翔した箒は、しばらくして自機に少し異常を感じていた。

 

「二人は先に行っていてくれ、私もチェックが終わったらすぐに行く」

「わかった。でも、無理だったら後退してね」

 

静寐がそう言うと、二人は先に福音を目指す。箒は、ウインドウを呼び出し、チェックする。だが、特に変なところは一箇所もなかった。

 

(なんだ、一箇所もないではないかーー)

 

そう思った矢先のことだった。ヴァイスハイトが眩い光に包まれたのは。箒はその眩しさに目を閉じた。

そんな中、箒の耳に一つの言葉が入ってくる。

 

(ーー力を欲しますか?)

 

その言葉は箒の心へと響く。

 

(ああ、欲しいさ)

 

箒もまたそれに答える。

 

(何のため、力を使うのですか?)

 

再び質問される。

 

(大切な人と背中を互いに預けられる、そんな風に使うな、私なら)

 

箒はそう答えられる自分に驚く。そして、自分がどう思っていたかを、実感して行く。

 

(なら、あなたのパートナーにこの力をーー)

 

箒が最後にそう聞くと、光はだんだん弱まって行き、視界が元に戻る。そして、箒の目前に新たなウインドウが展開された。

 

[コア相互リンク完了]

ー展開装甲を一部に適応

ー日本刀型近接ブレード『朱雀』実装

ー背部エクステンドブースター二基増設

[紅椿・舞焔、起動します]

 

「紅椿・舞焔…………」

 

箒は、新しくつけられた機体名を呼ぶ。今までも赤かった装甲はさらに輝きをまし、焔のような、咲き誇る椿のような、見るものを魅了する輝きを持っていた。

 

「これが、私の新しい力…………」

 

箒はその機体の感覚を確かめてから、エクステンドブースターを点火する。

 

「この力…………使いこなして見せる。ついて来いよ、紅椿‼」

 

展開装甲とエクステンドブースターによる相乗推力により、まるで流星のような紅い尾を引かせながら、箒は福音めがけて飛翔した。

 

 

 

 

 

〔福音を捕捉‼ 接敵まで距離1000‼〕

「了解‼ ミサイルハッチ、フルオープン。派手なパーティと行こうぜ。おい一夏、聞こえているな?」

『おう、バッチリ聞こえているぜ‼』

「今から十秒いないに退避しろ。爆発に巻き込まれるぞ」

『わかった‼ すぐに退避すりゃ、いいんだな?』

 

一夏はそう言うと退避してくれた。周りにいた皆もそうだ。よし、これで問題はねえな。誤射なんて考えずに済む。

 

「行くぜぇ…………フルバァァァァァァァァスト‼」

 

俺の叫びと共に、リコリスの小型ミサイル、大型ミサイル、48口径155mm滑腔砲が火を吹く。戦艦並みのミサイルに、戦車の主砲を超えるキャノン砲。その全てが、ロックされたただ一つの目標ーー福音めがけて撃ち込まれる。

福音は、迎撃できないと判断したのか、エネルギー翼を体に巻きつけた。すると、ミサイルやら砲弾やらを受け止めた。それもノーダメで。マジ…………?

 

「うわ、全弾防御かよ…………泣けるわ」

〔福音のエネルギー翼は、確実に減衰されているよ。ダメージは通っている‼〕

「プライマルアーマーみたいなもんかよ…………なら、ひたすら減衰させてやるよ‼」

 

俺は155mm滑腔砲の砲弾を対IS徹甲弾から、有澤グレネードへ切り替える。並のプライマルアーマーを消し飛ばす減衰性能をもつこいつは防げないだろう。俺は再び、ミサイルハッチを全展開、一気に百近いミサイルとグレネードを放った。

だが、福音は防御などせずに、スラスターをふかして回避した、その場にエネルギー翼の一部(…………)を残して。

熱源に反応するミサイルは全てその高熱を放つエネルギー翼の一部に反応し、本来の目標とは違うものに着弾した。グレネードは、破壊されていない左手に持ったレーザーガトリングで撃ち落とされる。福音はここで初めて回避と迎撃を行った。

 

「エネルギー翼の一部を切り離して、フレア代わりにしただと⁉」

〔福音がこっちに気づいたよ‼ 迎撃して‼〕

「言われなくてもわかってる‼」

 

俺は肩に内蔵されたガトリングと両腕の大型ガトリングを撃ちながら、対ISキャニスターを交互に撃つ。福音はそれを交わすか、エネルギー翼による防御で防ぐ。確実に彼我の距離は詰められていた。

 

「どぉうりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 

その叫びと共に、吹き飛ばされる福音。その後には一筋の紅いラインが残った。

 

「無事か、龍之介‼」

「箒、お前…………その機体は」

 

紅いラインの正体は箒だった。だが、纏っている機体がヴァイスハイトと少し違う。ブースターの増設に、紅く輝かしい装甲、そしてコジマ粒子と共に放出される紅い粒子、さらにはその粒子と同じ色をしたレーザーを纏っている日本刀。この機体は一体…………

 

「ああ、こいつの事か? どうやら天災が作った第四世代機のコアとヴァイスハイトのコアが相互リンクしたら、この[紅椿・舞焔]になっていた」

「舞焔、か…………いい機体に進化したな」

「龍之介、お前の背中は私に任せろ。私は、そのために力を手にしたのだからな」

「ーーそうか、ならお前の背中は俺が預かってやるよ」

「ではーー参る‼」

 

箒はその機体ーー紅椿を駆り、戦場に一筋のラインを描く。サムライソードと日本刀型近接ブレードの二刀流により、福音は一気に追い詰められて行く。

 

「龍之介、こいつを任せたぞ‼」

「あいよォ‼」

 

箒が福音を蹴り飛ばし、俺の方へ向けさせる。俺は左手にオートキャノンを展開する。そして

 

「ヒャッホォォォォォォォォイ‼」

 

福音の腹へオートキャノンを突きたて、そのまま零距離で撃った。福音は吐き出される高威力の弾丸により、シールドを削られる。

 

「おい、龍之介。仲間外れは良くねえな、俺も混ぜてくれよ‼」

 

そう言うと一夏は一気に福音へと接近、そして雪片を振り抜く。福音のエネルギー翼の一つがかき消される。

福音はバランスを崩すが、苦し紛れに光弾を連射してきた。

 

「のわっ‼」

〔リコリスに被弾‼ 弾薬庫に引火するよ‼〕

「ちくしょう‼ リコリスを引っ込める‼」

 

福音が放った光弾はリコリスへ着弾した。リコリスは性質上、攻撃を受けない事を前提に作ってしまったため、被弾すると誘爆(……)する、必ず。俺は急いでリコリスを格納する。ちくしょう、虎の子の兵器が。

俺はオートキャノンを両手に呼び出す。こうなったら、弾幕勝負だ‼ バランスを崩した福音へ向けてトリガーを引こうとした時、福音が上に打ち上がった(…………)。…………へ?

 

「ーー悪いけど、女の子を傷物にしたんだよ。同じ痛みを味わってもらわないとね‼」

「シャルロット⁉ お前なに持ってんだよ⁉」

 

福音を打ち上げたのはシャルロットだった。その手に構えているのは、パイルバンカーだった。

 

「企業連デュノア社の試作品、XPB-01『緋の鱗殻(スカーレット・スケール)』のお味はどう?」

 

XPB-01『緋の鱗殻』と呼ばれたパイルバンカーは、肝心の杭が恥じ知らずというくらいに太い。その杭を打ち出す砲身88口径は変態の領域だ。炸薬の詰まったマガジンも外付けの大型ドラムマガジンときた。…………シャルロット、お前だけは変態になるなよ。

チートレベルのパイルバンカーを食らった福音は、腹部の装甲を失いつつもエネルギー翼を再度生やして、光弾を撃つ。

 

「オラオラァァァァァァ‼」

 

こういう時にだけ限るが、オートキャノンの弾がばらけるのは嬉しい。光弾がどんどんかき消されて行く。やべ、銃身が赤くなってきた。

 

「おい、一夏‼ さっさと止めを刺せよ‼」

「わかってる‼ でも、当たらねえんだよ‼」

「ごちゃごちゃ言ってねえで、突っ込んで斬って来い‼ そのためのスラスターだろうが‼」

「うおォォォォォォォッ‼」

 

一夏は、雪片を振りかぶって一気に袈裟斬りをする。だが、福音はそんな単調な攻撃をバックステップのみで回避する。

 

「今度は逃がさねえ‼」

 

しかし、一夏も負けていない。雪片を振り抜いた後、二段瞬時加速(ダブル・イグニッション)をし、左手のクローを起動。その刃に零落白夜を纏わせ、突き立てる勢いで、福音へと肉薄する。

 

「突っ切って行け、一夏‼」

「一夏さん、振り返らないで‼」

「真っ直ぐ突き進みなさい、一夏‼」

「余所見などするな、一夏‼」

「一夏君、その勢いで行って‼」

「そのまま行って、一夏君‼」

「一夏‼ これで終わりだよ‼」

 

仲間達が一夏へと激を飛ばす。無論俺も

 

「お前の勝つ姿、俺に見せつけろ、一夏‼」

「そう言われると、負けられねえだろ‼」

 

砲撃のような響き渡る声をだす。一夏もそれに反応して、さらに速度を上げる。そのスピードはもう、白い閃光(ホワイト・グリント)と言っても過言ではない。

 

「これでラストォォォォォォォォ‼」

 

とうとう、一夏は福音へクローを突きたてた。その勢いのまま、福音を小島へ押し付ける。俺たちも急いで急行した。丁度深々と零落白夜を突き立てている一夏の喉笛に福音の手が伸びていた。

 

「全く…………あがくなよ、運命だ。受け入れろ」

 

俺はその手を腕部内蔵レールガンで弾く。それが、最後の抵抗だったのだろうか、福音はエネルギー翼を失い、アーマーが粒子へと化して行った。その場には、福音の操縦者があれだけ激しい戦闘を行ったのに、怪我一つない姿で横たわっていた。

 

「はぁっ、はぁっ。終わった…………のか?」

「ああ。お前の勝ちだ、一夏」

「やったね、一夏‼」

「うわっ、いきなり抱きつくなよ、シャル」

 

勝利を祝ってなのかシャルロットが一夏へ抱きつく。一夏もそれに驚いているようだが、どこか安心したような表情をしている。一夏は抱きついてきたシャルロットの頭を優しく撫でていた。また、簪と静寐は互いにハイタッチを交わしたり、セシリアと鈴とラウラは福音の操縦者を大急ぎで運んで行ってまた戻ってきたりと、とても微笑ましい情景だった。

 

「これで、終わりか…………」

「ああ、そうだーー」

 

箒がなんかしみじみとした口調で言ったので、俺も返答しようとしたが、それは厚さ300mmのプライマルアーマーにぶち当たったレーザーによって阻害された。おいおい、またかよ…………

 

〔ここから二キロ先に未登録のISコア反応‼ 数は十‼〕

「チッ‼ 兎の奴、本気で俺を殺す気か?」

「龍之介⁉ 無事か⁉」

「おう、問題ねえぜ…………俺の怒り以外はな」

 

そう俺が答えると、俺を除く全員の顔が引きつった。どうした、そんなに怖いか?

まぁ、丁度いいか。福音の時は動きが速かったから"アレ"使ってねえし。折角だから使ってみるか。俺は、榴雷のコマンドからあるサウンドを流す。それは、ラッパの音であった。

 

「な、なんだ、このラッパは⁉」

「このラッパ…………何処かで聞いたと思えば、旧日本海軍の艦砲射撃の合図ではないか‼」

「って言うか、企業連でのマニュアル思い出した‼ 確か『ラッパの音が聞こえたら、榴雷の半径二十メートル内にいる人間は衝撃に備えて』って…………」

「み、皆‼ 早くシールドのレベルを引き上げろ‼ 吹き飛ぶぞ‼」

 

どうやら、警告のために流したあのラッパは良かったようだ。実体シールドを持ってる奴は展開、それ以外も衝撃に備えて姿勢を低くしていた。これなら、遠慮なく撃てるな。

 

「アセンブルコード『大艦巨砲主義』‼」

ーアセンブルコード『大艦巨砲主義』、受託

ーOVERED WEAPON10、起動

ーCODE[大和]、承認

ー各部異常なし、OW10起動します

ー単一仕様能力[ENDLESS BULLET]、起動

 

俺の合図と共に俺の背部に大型の兵装が展開される。

三連装46センチ砲。それが二基、砲口を正面に構えていた。

それはISに積むには非常に大きくて、とてもじゃないが扱いきれる代物ではない、普通のIS(…………)ならばな。

俺の榴雷はその点問題ない。供給エネルギー量もクリア、反動制御もクリア、照準速度もクリア、浪漫もクリア。このOVERED WEAPON10 [大和]を扱うことが可能だ。

俺は、大和を展開すると、本体のアンカーが砂浜に突き刺さる。姿勢はそれにより、安定性がました。

 

〔未確認機がこっちへ向かってきている‼ すぐに迎撃して‼〕

「心配すんな、こいつが当たれば問題は全て解決するぜ」

 

よし、弾頭にトーラスオリジナルの弾頭『SK-01(S-11とコジマ粒子を混ぜたもの)』を込めて、戦闘準備は完了。砲の角度も誤差なし。派手に行くとするか‼

 

「チャージエネルギー全解放‼ 各砲塔の照準異常なし‼ 一番砲、二番砲、発射‼」

 

46センチ砲を六門同時発射。刹那、凄まじい衝撃波が生じた。それにより、砂浜にアンカーを突き刺さしていたが、榴雷は後退する。俺の体にも、いくら絶対防御があるとはいえその衝撃を完全に殺すことはできなかった。砂は派手に舞い上がり、俺の後ろにはクレーターが形成されていた。

無論、そんな勢いで吹っ飛んで行った砲弾は、圧倒的な速さで無人機にぶち当たった。その瞬間、緑色のきのこ雲(…………)ができた。

 

「きのこ雲⁉ まさか、核兵器ですの⁉」

「あんた、海洋汚染する気なの⁉」

「日本の非核三原則はどうしたんだよ⁉」

 

いろいろ言われるが無視。第一、俺のコジマ粒子には毒性も汚染も何もない、至ってクリーンなものなんだよ。それに、S-11はただ単に核と同等の威力を持った、企業連オリジナルの弾頭だからな。欠点としては、大型火砲かミサイルにしか搭載出来ないところだな。

 

〔四機の撃破を確認。一機は大破しているけど、戦闘を継続。残りはまだ目立った損傷は無いよ〕

「了解。それじゃ、さっさとスクラップにしちまうか‼ いい、ストレス発散だ‼」

〔敵機、散開。それぞれ三機ずつ‼〕

 

再びロックオンをかける。自動照準により、ロックオンした方に自動で向いてくれるから嬉しい。いちいち500キロを超えた砲門の向きを変えるのは辛い、肉体的にも精神的にも。

砲弾のリロードが完了した事を知らせる、ウインドウが表示される。よし、もう一回撃つぞ。あんなぶっ壊れた人形なんぞ、跡形もなく消し飛ばしてくれるわ。俺は大和のリミッターレベルを一つ下げた。

 

「リミッター限定解除。一気にたたみかけるぞ‼」

 

そして放たれる砲弾。リミッターという首輪が外されたためなのか、その弾速はレールガンにも匹敵する速さで飛んで行った。

弾着まで、わずか二秒。レーダーに表示されていた赤のマーカーが全て消えた。きのこ雲はなくなったが、代わりに海上には緑色の霧が舞っていた。

 

〔全敵性目標の撃破を確認。無人機はコアも何もかも残さず破壊したよ〕

「ふぅ…………やっと、終わったか」

 

俺が力を抜くと、それにつられてなのか大和の砲門が全て水平状態になる。チャージエネルギーを使い切った戦艦の主砲は粒子へ戻り格納される。俺はバイザーを解除、素顔を海風にさらす。その風は疲れ切った身体を優しく撫でていく。

 

「終わったな、この戦いも」

「ああ、俺たちがこの戦いの勝者だ」

 

あれほどまでに青く澄み渡っていた空は、いつしか茜色の輝きへと包まれ始めていた。

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