インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第二十四話 それぞれの『答え』

「作戦完了‼ といいたいところだが、貴様らは重大な違反をおかした。それはわかっているな?」

 

夕暮れの元、旅館へ戻ると俺たちを待っていたのは千冬さんの説教だった。ま、仕方ないか。箒達は無断で出撃したからな、そりゃ怒られもするわ。

 

「いえ織斑先生、責めるなら私を責めてください。皆は、私が脅迫して連れて行ったんです。ですから、懲罰は私だけにしてください」

 

箒がそう言って、前に出る。その手には紅椿・舞焔を呼び出して。

 

「いいえ織斑先生、箒さんが言ってるのは嘘ですわ。皆さんを脅迫したのは、このわたくしです」

 

セシリアがティアーズを腕に呼び出し、ライフルを持つ。

 

「織斑先生、セシリアは大嘘つきです。皆を脅したのは、私です。私がやったんです」

 

鈴も甲龍を展開し、青龍刀を持つ。

 

「教官、皆をそそのかしたのは私です。彼女達に罪はありません」

 

ラウラはレーゲンを呼び出して訴える。

 

「いや、皆嘘を言っている。皆を連れて行ったのは、私がやったんです」

 

簪が打鉄弍式を展開してそう言う。

 

「私が主犯です、織斑先生。私が皆を脅迫したんです」

 

静寐は神楽を呼び出し、思いを語る。

 

「いや、皆嘘ばっかり。僕が皆を連れて行ったんです、織斑先生。責めるなら僕を責めてください」

 

シャルロットがラファールを呼び出して罪を作る。

皆が、その罪を自分一人で引き受けようと、ありもしない罪を作っている。自分一人が受ける事で、仲間への負担を減らすために。本当にこいつら、仲間のためになると必死なんだから。そこがいいところなんだけどな。

 

「やかましい‼ 少しは黙ってろ」

 

千冬さんがそう言うと、皆押し黙る。

 

「お前らには罰をやろう。無論、男子もだ。学園に戻ったら一番印象に残った事を作文にして提出しろ。原稿用紙一枚分、それが罰だ」

「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」

「言っておくが、人の命を救ってくれた事に感謝したいくらいなんだ。罰はこれくらいで十分さ。それに…………皆、無事に帰って来たからな」

 

千冬さんはそう言って夕日の方を見る。ああ、これは恥ずかしいんだな。こんな感じに素直に礼を言うのはあんまり見ないもんな。

 

「それじゃ、皆さんメディカルチェックをするので、一旦こっちにきてください。あ、織斑君と有澤君はここで待っててくださいね」

 

真耶さんがそう言って、俺と一夏以外を引き連れて行く。少し広く感じる大広間の窓から、柔らかい海風が俺の頬を撫でて行く。

 

「なぁ、龍之介」

「なんだ?」

 

突然一夏が俺に聞いてきた。

 

「俺は、皆を、シャルを守れたのかーー俺と白式は」

「さぁな? ただ、守りたかったものは残っているか?」

「え?」

「守りたかったものが残っているかって聞いているんだ。お前が守ろうとしたものをよ」

「ーーああ、そうだな。ありがとな、龍之介。やっと実感することができた」

「よかったな…………」

 

俺は少しぶっきらぼうに答えてしまった。思い出されるのは、かつて無力だった頃の自分。前世で犯した、叶えられる願いを砕いた事。それらが脳の奥から流れてくる。

 

「龍之介、どうした?」

 

不思議に思ったのか一夏が聞いてきた。いけね、こんな感じに卑屈になっちまってはダメだ。

 

「なに、昔のことを思い出しただけさ。気にするな」

「それジジイくせえぞ?」

「お前にだっていつかはわかるさ」

 

もう少し海風に当たりたくなったので、俺は外へ行く。ただ夕日が紅く俺を照らしていた。…………眩しい。

 

 

 

 

 

「では、話しちゃってもいいかな、キャロりん?」

「はい。情報の確証がとれました。紛れもない事実のようです」

 

晩飯の後、俺と千冬さんはガルシアとキャロルに呼ばれてランドクラブの方へきていた。俺は何度も入ったことがあるから別段驚きはしないが、千冬さんは『企業連は世界と戦争する気か?』と呟いていた。まぁ、あれだけの戦力があれば国家解体戦争ができるんじゃないかって思う。

俺達がきているのは艦橋のブリーフィングルーム。かなり広いところに四人だけってのは少し寂しい。

 

「そんでもってガルシア。ここまで呼んだっていうことはそこまでまずい情報なのか?」

 

俺はガルシアへ聞く。

 

「あぁ、本来ならあっちゃいけねえ話だ。正直、ふざけてるとしか言いようがないレベルのやつ」

 

返ってきたのはまずい情報ということだった。仕方ねえ、これでもカラードの責任者だ、知っておかなければならない。

 

「そうか…………なら、ガルシアと言ったか? その情報とやらを教えてもらおうか?」

「ああ、いいぜ。もとよりそのために呼んだのだからな」

 

ガルシアは一拍おいて、口を開いた。

 

「篠ノ之束が、国際IS委員会の老人達と接触。表向きには公表されてないが、篠ノ之束の国際IS委員会の一員として登録、老人達の祖国へ技術提供をするとの事だ」

 

その口から放たれた情報は、俺の思考を追いつかせるのに時間を取らせた。は? 篠ノ之束が国際IS委員会に入った? そして技術提供をする? ふざけてるにも程がある。

 

「そして今回の福音の暴走、それも篠ノ之束の仕業です。カラード主任も見たでしょう、突然のタイマー起動にあの銀の装甲へ入って行く黒いライン。あれは篠ノ之束がハッキングしてインストールした、プログラムです」

 

キャロルからも同様にふざけた内容がドンドンと流れて行く。何のために兎はこんな事をしているんだ。世の中にはあの兎を神だの天才だのという輩がたくさんいる。だが、俺はそう思わん。彼奴は、限られた視界しかもてないただの人間失格者だ。

 

「その情報は本当なのか⁉」

 

千冬さんは声を張り上げてガルシアに問う。

 

「ああ、残念ながら本当の話だ。何故篠ノ之束が入ったのかはわからない。だが、人間の可能性を潰したのは確かだ」

 

ガルシアはいつものちゃらけた感じでは無く、しっかりとした態度で答える。

 

「そうか…………」

 

千冬さんはそれを聞いて、椅子に腰掛ける。その目はどこを見ていたのかわからない。だが、その目が敵を見るような目であったのは確かだった。

 

『こちらステイシス。目標の破壊を確認。海洋上にはあまりなかったぞ』

『こちらシュープリス。目標の全破壊を完了。離島にはもう無いようだ』

『こちらホワイト・グリント。旅館より三十キロ範囲内のAS粒子は、完全に消滅した』

『こちらノブリス・オブリージュ。ハワイ島基地付近に撒かれていたAS粒子発生装置の破壊を確認』

『こちらホワイト・グリント。ハワイ島基地付近のAS粒子サンプルを回収。帰投する』

 

どうやら通信が入ってきた。俺の同僚達は仕事をしているらしい。

 

「AS粒子?」

 

その通信の中に聞きなれない単語があった。AS粒子? コジマ粒子ではないのか?

 

「ああ、それのことですか。この海域とハワイ島基地付近に撒かれていた粒子です。どうやら、エネルギーシールドやプライマルアーマーへの減衰効果を示すものです。これを我々はアンチシールド粒子、通称AS粒子と呼んでいます。なお、これにも篠ノ之束が絡んでいると、我々は想像しています」

「そうか…………ガルシア、キャロル、ご苦労さん。親父への報告書の提出忘れるなよ」

 

俺はそうとだけ言って、ブリーフィングルームを後にした。

 

 

俺はランドクラブの格納庫へ向かった。特に意味はない。ただ、気分的に行きたくなっただけだ。

 

〔あっくん、随分疲れてるね…………〕

 

声のした方へ目をやると、ホログラムとなって現れたルリアがいた。てか、ちっさ‼ 十五センチあるか?

まぁ、ルリアに言われたとおり疲れているのかもな。今日だけでいろんなことがあったからな。

 

「気にするな。寝れば何とか治る」

〔だといいけどね〕

 

気がついたら格納庫へきていた。相変わらず広い。こんなに広いのに、MAが五機しかないのはいささか寂しい。

ふと目を凝らすと、一機だけ違うのがあった。そのカラーリングは有澤重工の塗装。肩には龍のエンブレム。フレームはGAサンシャインに頭部が霧積。手にはバズーカとグレネード、背部にガトリングとミサイルコンテナを装備している。さらにいえば、機体の各所に付けられた重量が半端じゃない数々のスタビライザー。

見間違えるはずない。あの機体はーー

 

「ふ、ふははは」

 

思わず悪い笑みが現れる。どうやら、ガルシアはただの休暇できてなかったようだ。その証拠にここにある機体がそうだ。メモ紙がはってあるこいつは六年前に乗っていた、俺の相棒だ。因みにメモにはこう書いてある。

『主任、兎がこの辺にいるらしいぜ。ちょっと狩をして来いよ、山猫(リンクス)ーーいや、(ドラゴン)

 

〔あっくん、これは一体?〕

「まぁ、黙って見てなって。じきに分かるさ。日本を守った山猫(リンクス)って者がさ」

 

俺は、そいつに背中から乗り込む。そしてハッチが閉じると、カメラアイからの情報が脳へ流れ込む。マニピュレーターの感覚が手で直接触っているように伝わってくる。ああ、この感覚。久しく感じてなかったな。

俺は、カタパルトハッチを開けるとそこからオーバード・ブーストで飛び出す。夜の空に翡翠色の線が走った。

 

 

 

 

 

「なんで⁉ なんで⁉ 束さんの最高傑作なのに⁉ なんで⁉ なんで、あんなゴミ虫の作った紛い物に力を預けたの⁉」

 

オーバード・ブーストをふかしてある程度きた。ちょうど崖のあたりをすぎた時に、兎が叫ぶ声が聞こえた。俺は、音を立てずに茂みの方へ隠れるように動いた。

 

「なんで⁉ あの機体だって、無人機だって、束さん特製なんだよ‼ なんで、あんなぶっ壊れた人形達に負けるのさ‼」

 

はっはー。どうやら兎は相当キレている様子だな。まぁ、負けるのも無理ないわな。あんな、低脳なプログラムじゃ、粗製UNACの一機にも勝てやしない。俺達、リンクスやレイヴンの前ではただの的だ。

 

「まぁ、もういいんだけどね。委員会に話はつけたし、あんなゴミ虫、すぐにでも消せるや」

「それはさせられねえな、篠ノ之束」

 

俺は歩行で向かう。機体重量が半端じゃないので、岩盤がへこむ。俺のネクストAC(パワードスーツ)『撃震』は、そんな事御構い無しに歩みを進める。

 

「よう、好き勝手やってるようじゃねえか。ーー貴様の所為で、俺達は地の底に落ちたけどな」

 

俺の声は冷たく響く。だが、兎はこっちに表情を向けると、明らかに邪魔者を見るような目でこっちを見てきた。

 

「全てはISのため。クラッキングさせてもらったよ、資金を集めるためにね。むしろ感謝して欲しいくらいだよ」

 

兎はふざけた事をぬかしてきた。は、感謝する? するわけねえだろ、雑魚が。

 

「感謝する? ふざけてんのか、てめえは。そのISの所為で職を失った連中や、家族を引き裂かれたものの痛みが分かるか‼ その強大な軍事兵器の所為でな」

「ISは軍事兵器じゃない。私の理想郷を作るための駒。宇宙で使うために作った。それを軍事利用したのは、お前たちじゃないのか?」

「ざっけんなよ‼ てめえが、白騎士事件を引き起こしたんだろうが‼ あのミサイルすべて落とすような性能しか見せつけていないんなら、そうとしか受け取れねえよ‼ お前が一番最初に兵器として使ったんだよ、クソ兎」

 

いい加減イライラしてきた。兎は罪を認めていない。ふざけるにもほとがある。

 

「それに、IRBMが民間区域に落ちたんだ。死者は一人もいないなんてなっているが、実際は死んでんだよ。あの地域にいた約800人がな‼ 中には子供もいたんだ。てめえさえいなければ、こんな事にはならなかったはずなんだよ‼」

 

実際、マスコミも政府も白騎士事件での死者は0人となっているが違う。IRBMが民間区域に落ち、その周辺に住んでいた約800人もの尊い命が失われた。この事実を政府もマスコミも報道していない。報道すればISの価値が下がると考えたんだろ。その区域は現在立ち入り禁止エリアとなっており、誰も入れないような状態になっている。

 

「へぇ〜。で、それが何か問題?」

「なっ⁉ 貴様…………‼」

 

いい加減頭にきた。イカれてるにも程がある。俺は右手のバズーカを突きつけた。一発でも撃てば、こいつの肉体なんざ簡単に飛び散るだろう。

 

「別に、そんな有象無象はどうだっていいんだよ。私には、ちーちゃんといっくん、箒ちゃんがいれば、それでいいんだよ」

「とんだ人格破綻者だな。どれもこれも独りよがりすぎる。それなら、お前の周りから大切な人が離れて行くのも当然か」

「なんだと?」

「ふっ、話す事はもう何もない。だが、心しておけ。その惰弱な発想が、お前の人生を崩壊させる事をな」

 

俺はバズーカの銃口を下げる。

 

「お前達には言われたくないね、ゴミ虫風情が。せいぜいお前らには地獄の底がお似合いだよ」

「まぁ、いいだろう。だが、俺達はもう負けやしない。特に、この世界の秩序を破壊したお前にはな‼ 秩序のある世界に、不純物はいらない」

「不純物? 私は違うね。不純物はお前達だよ」

「そうか。ならばーー」

 

一度下げた銃口を上げ、バズーカを放つ。撃たれた地面はえぐり吹き飛び、土煙が舞う。

 

「俺達はお前の作った世界を焼き尽くす。人類が平等である世界のためにな」

 

土煙が晴れた時、兎はすでにいなかった。

俺はオーバード・ブーストで旅館の方へ戻った。いつか始まるだろう、(篠ノ之束)の作った理想郷(ファンタズマ)へ狩に入る(レイヴン)山猫(リンクス)達の戦争の鍵と共に。

 

 

 

 

 

(一夏)は旅館を抜け出して海の方へ来ていた。特に泳ぎたいとかそういうわけじゃなく、海風に当たりたかった。本当に月は明るい。満月が海面に映っている。

 

「一夏…………」

「ああ、シャルか。こっち来いよ」

 

どうやらシャルも来たようだ。ただ、少し寒いのかパーカーを羽織っている。

 

「どうしたんだ一体?」

「急に潮風に当たりたくなってね。ちょっと抜け出してきちゃった」

 

どうやらシャルも俺と同じらしい。シャルは寄り添うような形で俺の隣へ座った。

 

「それよりも、一夏。体の怪我はなんともないの…………? 傷跡、残ったでしょ…………?」

 

シャルはそんな事を聞いてくる。確かに怪我はなんともないし、傷跡もない。噂によれば、龍之介の方がやばかったとか。

 

「ああ、なんともない。なんか目が覚めたら治ってた」

「そ、そんな⁉ ちょっと見せて‼」

 

シャルはそう言うと、俺の袖を捲る。そこには傷一つない俺の腕があった。

 

「本当だ…………治ってる」

「だろ? だから、シャルも気にするなって。皆無事で終わったんだから良かったじゃないか」

「よくないよ‼ だって、僕の所為で一夏が怪我をしたんだよ‼ そんな簡単に許されたら僕は…………」

 

あー、思いつめちゃったか。シャルはいろいろと一人で抱え込んじゃう癖があるからな。

 

「じゃ、今から罰をやる。目を閉じろ」

「う、うん…………」

 

シャルは俺のいう通りに目を閉じてくれた。俺はその無防備になった彼女の額を指で弾く。所謂、デコピンだ。それをされたシャルは、驚いて目を開き、鳩が豆鉄砲を食らったような表情になった。

 

「ほい、これで終了。もう、思いつめたりはするなよ」

 

だが、彼女はすぐに頬を膨らませて

 

「も、もう‼ 人が真面目な話をしてるってのに」

 

そっぽを向かれてしまった。いや、そんな露骨にされても困る…………

 

「…………でも、怖かった」

「え?」

「一夏が怪我をして、意識を失って、しばらく目を覚まさなかった時、もう会えないんじゃないかって思った…………」

「…………」

「そうしたら僕は…………ぐずっ…………どうしたらいいか…………ずびっ…………わからなくなって…………ひう

っ…………」

 

シャルは涙と共に、自分の心うちを話してきた。そうか、親御さんとの仲は良くなったと言っていたけど、それでも拠り所は俺にあったんだ。

涙を流している彼女を、俺は優しく抱きしめる。

 

「心配するな。俺はここにいる。もう、お前を離したりなんかしない、ずっとそばにいるさ」

「い、いちかぁ…………」

 

シャルは俺の胸の中で泣き出した。まぁ、今日くらいはいいか。いろいろと心配させてしまったもんな。

しばらくしてシャルが泣き止んだが、それでも優しく抱きしめ続けた。そんな時、不意にシャルが口を開いた。

 

「一夏、僕ね、一夏の事が大好き。だから、もう何処にも行かないで。我儘なお願いだけど、ずっとそばにいさせて」

 

どうやら、俺も思いを伝えなきゃいけないようだ。

 

「ああ、俺もシャルの事が大好きだ。もう、何処にも行ったりさない。だから、お前もずっとそばにいてくれ」

 

そして、互いの顔を見つめ合う。月光に照らされた彼女はとても綺麗で、儚く壊れてしまいそうな感じで、でも強く生きようとしている、そんな意気が感じられた。俺はそれを感じさせるアメジストの瞳に魅せられた。

少し風が強くなってきた。そろそろ戻らないと風邪をひくかもしれん。

 

「そろそろ戻るか」

「うん‼」

 

月下の砂浜を二人で手を繋いで歩いた。多分、こんなに落ち着いて歩いたのは初めてかもしれない。波の音、月や星達の光、虫の音、それらがまるで俺達を祝福しているかよのように聞こえてきたのは気のせいじゃないと思いたい。

 

〔願いが叶ったね、一夏〕

(ああ、これからはしっかりと守り抜くさ、彼女の笑顔を)

 

俺の相棒からも祝福された。俺の隣にいる彼女は笑顔でいる。俺はこの笑顔をずっと守っていたい、改めて決心した。

 

 

 

 

 

旅館に戻った(龍之介)は、箒を探す事にした。理由は簡単だ。今日は7月7日、七夕であり、箒の誕生日だ。もちろんプレゼントだって用意してある。あの時(護衛任務の時)は素性を表しちゃいけないのが絶対だったから、全然祝ってやる事すらできなかったからな。しっかりと祝ってやりたいんだ。

 

「だけどよ、何処にいるんだよ…………」

 

探すこと10分。旅館の中には全然見当たらなかった。くそぉ、どこに行ったんだよ。

 

「あ、リュウ。どうしたのよ、そんなに焦って」

「げえっ、有澤主任…………」

 

ちょうど、外にでた時だった。鈴とRD(本名レイ・ドミナート。専用擬似コア搭載AC『ヴェンジェンス』)が並んで歩いていた。って、おいコラRD、俺とあって「げえっ」はねえだろ。

 

「だって、主任。俺と模擬戦した時、躊躇い無くOVERED WEAPON03 HUGE CANNONを両手持ちで撃ってきたじゃないすか。あれ以来、トラウマっすよ…………」

「うん、俺もやりすぎた。反省している」

「ほんと、企業連ってイカれてるわよね。変態の巣穴なのかしら?」

 

GAE、有澤、クーガー、アクアビット、トーラス、キサラギ、アルゼブラ、デュノア『最高の褒め言葉です‼』

 

「今、地の文に『デュノア』ってでたわよ⁉」

「細かい事は気にしない方がいいっす、鈴ちゃん。小皺が増えーー痛っ、殴ることないじゃないすか、鈴ちゃん」

「うっさい‼ この馬鹿RD‼」

「お前ら仲いいな」

 

なぜか鈴とRDの相性がすごくいい。何故だろ、やっぱ主要キャラなのに不当な扱いを受けたから?(鈴はメインなのに描写少ない、RDは企業に誘われて行ったら悲運な末路)

まぁ、こいつらは放っておこう。今は箒が優先だ。

 

「なぁ、お前ら。箒を見てないか? 旅館にいないんだ」

「箒? それなら、向こうの方にいたわよ」

「向こうって何処だよ⁉ お前の感覚じゃわからねえ‼」

「えっと、ここから近いところにある崖の方っす。NSG-04(紅椿・舞焔)のマーカーがそこにあるんで」

 

RDがヴェンジェンスのレーダーで見つけてくれた。ふぅ、助かる。もし俺がそれをしたら確実に千冬さんのOVERED WEAPON[SYUSSEKIBO]を食らうもんな。それはヤダ。脳漿が確実に飛び散る。

 

「RDサンキュー。それじゃな。あと、お前ら付き合ったらいいんじゃねえか?」

「な、何言ってるのよ、リュウ‼」

「無理無理無理‼ 俺なんかが付き合えるわけないっすよ‼」

 

去り際に軽く茶化して行く。こいつらからかうと面白いんだわ、これが。

おっと、本題からそれていた。俺はプレゼントを小脇に抱えて、箒がいるという崖の方へ向かった。

 

 

崖の上には箒が立っていた。ちょうど満月なので、月明かりに照らされた箒は、なんだか神秘的な感じで、俺の心は魅せられた。

 

「龍之介?」

 

どうやら箒は俺がいることに気づいたようだ。

 

「ああ、俺だ。こんなところで何しているんだ?」

「ちょっと、星が見たくてな…………今日は七夕、天の川が見たかったんだ」

 

そういえば、昔も箒は自分の誕生日の夜ーーつまり七夕の夜には必ずと言っていいほど、天の川を見たがっていた。なんで気がつかなかったんだろう。

 

「そうか。それより、今日はお前の誕生日だったろ」

「覚えててくれたんだ…………」

「忘れるかよ。特別な日なんだ、忘れるわけにもいかねえ。ほら、プレゼントだ。受け取ってくれ」

 

俺がプレゼントを差し出すと、箒は受け取ってくれた。そして、中を開け始める。でてきたのは

 

「これは…………リボンか?」

「ああ。今つけているやつ、八年も経っているんだろ? 流石にもう限界も近い。付け替えるにはちょうどいい頃合いかなと思ってな」

 

箒がいつもつけてくれていたリボンの色違い。前は緑色のやつだったけど、今回は白いのを選んだ。時代がどう変わろうともまっすぐに前を向いて歩いている箒に相応しいと思ったからな。

 

「龍之介、ありがとう」

「気にするなって。気に入ってくれたか?」

「ああ。折角だからつけてみてもいいか?」

「もちろんさ」

 

そう答えると、箒は今まで使っていたリボンをといた。そのリボンは長い間使い込まれていたようで、色もあせていた。だが、それが俺の代わりに箒を支えてくれていたと考えると、何だか嬉しい気分になった。

箒の髪が新しいリボンで結われる。下ろした姿も良かったが、箒にはポニーテールが一番よく似合う。

 

「ど、どうだ? に、似合っているか?」

 

箒は少し自信なさげに俺に聞いてくる。無論、答えは決まっている。

 

「ああ、よく似合っている」

 

その言葉以外、何も思いつかなかった。俺は箒の隣へ寄り添った。いつだったかは覚えてないが、天の川を一緒に見る、という約束はまだ守れていなかったからな。

 

「龍之介」

「ん? どうした?」

「ありがとう」

 

その笑顔。俺は消したりなんかさせない。ずっと、ずっと、守り続ける。それが、俺が勝手にした約束だ。

無意識のうちに箒の肩を抱いていた。まぁ、箒もなんか納得してくれているし、良しとしたい。

 

〔守り続けるのはいいけど、勝手に死なないでよ?〕

(死にはせんよ。俺が死んだら、それこそ約束が守れなくなるからな)

 

俺の決意は揺るがない。それこそ、歪みのない真っ直ぐな意志で、突き進む事を。

それはいいとして、久しぶりに箒と並んでいるわけだが、その顔の美しさは、相変わらず綺麗だった。

 

「へくちゅっ‼」

 

…………まぁ、たまに見せる子供っぽいところもいいんだけどな。

 

「おいおい、そんな薄着でいるから風邪をひくんだ。ほら、こいつを着ろ」

 

俺はきていたジャケット(企業連正式採用モデル)を脱ぎ、箒に羽織らせる。

 

「そろそろ、戻るぞ。早くしないと、千冬さんに怒られるかもな」

「そうだな、ふふっ」

 

満点の星空のもと、俺達は旅館の方へ戻った。さざ波の音が、ただ浜に響き渡っていた。

 

 

 

 

 

『こちら企業連特殊軍事技術研究部(カラード)第零課。主任、間も無くYSX-24RD/WF(ゼルフィカール)NSG-Z0/D(マガツキ)、ロールアウトします。また、NX-BT、NX-RR、NX-SR、NX-ADの調整も終了します。以上が定時報告です』

「了解した。完成後は、すべて彼処へ運べ。頼むぞ」

『了解しました』

 

報告を受けた龍之介は通信を切った。

 

「…………準備は整い始めた。あとは彼奴らの気持ちがどうなるかだな。皆、すまない…………」

 

世界がどう変わっていくか、それは彼等のみしかわからない。

ただ、その中でもわかるのは、意志あるもののみが、この世界を作っていくという事だけだ。

 

彼の呟きは、星空へとすいこまれるように消えて行った。




よっしゃぁ‼ なんとか年内に『学園生活』は書けたぜ。これからもこんな拙い小説ですが、今後ともよろしくお願いします。感想、待ってますよ〜。
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