インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
夏休み。
件の臨海学校が終わってからと言うもの、兎からのコンタクトは一切無く、戦争が始まる気配も無く、平和な日々が続いていた。俺としては、何かしらいろいろあると思っていたんだけどさ。例えば、企業連本部メガフロートと北海道をつなぎとめている爆砕ボルトが破壊されるとか、農業プラントにガソリン撒かれるとか、殺虫剤をキサラギに吹きかけられるとか、そう言うのを想像してた。まぁ、キサラギはいいか、別に。
とにかく、この夏休みと言うのは俺は楽しく過ごしたいわけなんだよ。
だが、俺が今いる場所は、明らかに平和とはかけ離れているところだった。
ーー誰だって、AFイクリプスの中にいたらそう思いたくなるわ。
まぁ、簡単に言うと企業連への拉致ですな。特に俺の場合は。だって、朝起きて直ぐにオツダルとベルリオーズとレギアが拘束してきたんだもん。しかも、フィオナ以外のリンクス共(箒達は除く)は先に本部に帰りやがった。…………あいつら、本気でしばいたろかな? ちょっと軽くゲロる位に。
「なぁ、龍之介。企業連ってまだなのか?」
「あと二分くらいだ。もう少しで着く」
そして今回はスペシャルゲストとして一夏達もいる。さらに千冬さんと真耶さんもいる。結構、豪華なメンツになったな。この中で企業連初心者は、一夏、セシリア、鈴、ラウラ、千冬さん、真耶さんか。気絶しないといいが。
「それにしても、私達のような部外者が行っても問題ないのか。仮にも軍事企業、機密の問題とかはあるだろ?」
「いや問題ないっすよ。基本的に、そういうやばいのは
「え? でも、そんな一箇所に集めてしまったら、安全性がーー」
「問題ないっす。榴雷と俺のバイオメトリクスが無いと隔壁は開かないし、外壁や内壁、隔壁といったありとあらゆる壁は、月とアルマゲドンが同時に落ちてきてもぶっ壊れないという代物を使ってるんで、破壊工作や侵入される恐れは無いっすね」
これ実際の話。まあ、コジマドライヴ生成炉や擬似コア生成炉があるレベル5第七ブロックには、万が一の核弾頭(汚染のないクリーンなやつ)を五個置いてあるしな。問題はねえだろ。俺以外でレベル5第一ブロックまでいけるのは第零課の連中十人だけだ。
窓の外を見ると、海に浮かぶメガフロートが見えてきた。その上にある、正五角形の形をした建物。ようやく到着したようだな。イクリプスは高度を下げて行った。そして、着地した時独特の振動が来てすぐにハッチが開いた。
「それじゃ、到着したんで、皆さんおりてください」
「おう。ありがとさん、オーメル輸送部隊」
とりあえず、到着したので、一夏達をイクリプスから降ろす。ちなみに、箒、簪、静寐、シャルロットは後部出撃ハッチから先に降りて行った。多分、ゲート前では準備が整い始めているだろう。
一夏達を先導するべく、道を案内して行く。
「それにしてもすごく広いですわね。本当にメガフロート何ですの?」
「ああ。確かにメガフロートだが、一応陸地と同じようなもんだぜ」
「やけに硝煙の匂いがするな。近くに射撃訓練場でもあるのか?」
「この辺は、ラインアークの管轄地なので、もっぱらレギア専用の射撃場みたいなものなんです」
「こんなものをよく作る気になったな。流石は、変態の集まりだな」
「多分、アクアビットとトーラスとキサラギが酒盛りを始めるような台詞です、それ」
「農園もあるんですか⁉ 本当にここ、軍事企業ですよね⁉」
「各企業の趣味が少し混じってますから、仕方ないんです」
「…………龍之介、俺、人体実験されないよな?」
「心配するな、いくら変態でも、人の命を弄ぶような真似はせん」
その間、企業連への質問や意見に対して、俺とフィオナで応対していく。結構、皆疑問に思ってるんだな。確かに、軍事企業なのに農園なんかやってたら、そりゃ疑問に思うわ。ちなみに農園はトーラスの趣味だ。というか、本部ビルの隣にある複合施設「ビッグボックス」の方がすげえから。真面目に。
そうこうして歩いている間に、企業連のゲート前が見えてきた。よく見ると、企業連全員が集まっている。
「おい、フィオナ。あいつらと合流するぞ」
「わかりました。行きましょう」
〔全く…………元気なんだから。さぁ、早く行くよ‼〕
ルリアがオートで榴雷を展開。フィオナがハードポイントに取り付けられたフックをつかんだのを確認してから一気に走り出す。流石にオーバードブーストだと、肉片に変わっちゃう。
すると、向こうからも何やら見覚えのあるタンク型が二機出てきた。雷電・甲と雷電・乙だ。
「親父、お袋、ただいま」
「よく帰ってきたな、龍之介‼ 心配したんだからな‼」
「生きてて良かった…………もう、無茶もほどほどにしてね」
「わーかってるって。もう、あまりにもひでえ無茶はしないよ」
済まんなフィオナ、空気的にフックから外れる羽目になって。まぁ、レギアと合流したからいいか。
俺は、ヘッドパーツだけを外した親父とお袋に抱きしめられた。どうやら、またもや心配をかけてしまったみたいだ。八年以来だな、親父達に心配をかけたのは。
「な、なぁ、親父、一回離してくれ…………タンク足の先端が股間に刺さってる」
「あ、済まんな」
いや、それで済まねえよ‼ 雷電型のタンク足は先端が尖っているからね。戦艦の艦首みたいな感じだな、イメージ的には。ちなみに、ちゃんとキャタピラで動くぜ。ホバータンクじゃないぞ。
「お、おい、龍之介‼ いきなり置いて行くなーーって、すげえ人‼」
一夏は企業連の人数の多さに驚いたようだ。この場にいるのだけでざっと三百は超えたな。それと、全員が出てきたと言ったな。あれは嘘だ。本部と
俺は、有澤重工の陣の前に立つ。それに続いて、同じく有澤重工から箒、オーメルからオツダル、レイレナードからベルリオーズ、ラインアークからレギアとフィオナ、ローゼンタールからジェラルド、アスピナからジョシュア、独立部から簪と静寐、デュノアからシャルロットがそれぞれ出て前に立つ。そして、全員でこの言葉を、一夏達へとかける。
『ようこそ、企業連へ‼ 歓迎しよう、盛大に‼』
同時に祝砲のGA製48口径155mm滑腔砲の空砲が空へ撃たれた。それを皮切りに、盛大な拍手が鳴り響き始めた。
一方の空の方も賑わっている。クレストとミラージュの戦闘機部隊が、今日限りの航空ショーをやってくれている。
「やっぱり、ああいう感じに、空を飛ぶのってどんな感じなのかしらねえ。すごく、気になるわ」
どうやら鈴は興味を示してくれたようだ。もちろん、一夏達はもちろん、千冬さんもその機動に見入っていた。
と、まあ金のかかったおもてなしはこれくらいにしてと、親父が千冬さんへ近づいて行った。
「いやぁ、久しぶりだね、千冬ちゃん」
「あ、あの、隆文さん。い、いまここでそう呼ばれると、視線が辛いんですが…………」
そりゃ、そうだろうね。普段絶対に見せない、恥じらいたっぷりの表情だもんな。少しは気を使ってやれって、親父。後ろには、目が点になってる代表候補生がいるんだからさ。
「それじゃ、皆さん。これから自由に行動して構いませんよ。ただ、変態が襲ってきたら迎撃してくださいね」
お袋‼ 最後の方シャレになってねえから。すでにアクアビットとGAEが臨戦体勢に入ってるぞ。
「うおぉぉぉ‼ なんか、ここまでテンションが上がったのって、有澤重工に遊びにいった時以来じゃね⁉」
「そうか。まぁ、楽しんできてくれ。それと、複合施設「ビッグボックス」にもいって見てくれよ」
「おう‼ わかったぜ‼」
「それじゃ、僕が案内してくるね」
IS学園のメンバーは先にビッグボックスの方へ向かったようだ。まぁ、カラードの方へさえこなけりゃ何とかなるだろ。…………これからやばい事が始まるからな。
「箒、有澤重工の案内係、任せるぞ。仕事が入った」
「任せておけ。その代わり、仕事は早く済ませてきてくれ」
「あいよ。ほな、行くぞ、アルドラ」
「了解」
俺はアルドラチームと共に、カラード管轄下試験評価アリーナへと向かった。
エレベーターを乗り継ぎ、メガフロートの最下層にある試験評価アリーナへ着いた。いや、それにしてもアルドラチーム、研究部のくせにかなり筋肉やべえな。タンクトップから見えてる上腕二頭筋なんぞ、もう柱みてえだ。
「主任、到着しました」
「おう。んで、今度は俺に何をさせるつもりなんだ?」
「心配しなくても問題無いです。主任が大好きな系統なので」
おいおい、俺が好きな系統って何だよ。
その事に疑問を持ちながら、俺は試験評価アリーナの扉を開いた。重々しい扉を完全に開けた時、俺の視界には、でかい筒が見えた。直径は俺より小さいが、シャルロットよりも大きい。箒がちょうどいいかもしれん。
「なぁ、このでかい鉄パイプが、今回の試作品なのか?」
「はい。まぁ、これ正面なので、横からみていただけると」
そう言われて、横へ移動する。どうみても鉄パイプのようだが、何かが違う。途中、アルドラチームの一人に目隠しをされて、見えなくなった。おいコラ、何をやってくれるんだ。
「では、主任。ご覧ください」
「な、なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁ⁉」
俺の視界に入ってきたのは、バカみたいにでかい滑腔砲だった。
「祖国ドイツにてナチスが作り上げた世界最大のキャノン砲。それを元に巨大化させたのが、160cm滑腔砲[ドーラ・ドルヒ]。砲身長64.96m、使用弾頭はSK-01、榴弾、特型APFSDSの三種類です」
「はぁ⁉ 口径160"cm"だと⁉ それで特型APFSDSを撃つのかよ⁉」
特型APFSDS。弾芯の太さは30mmだが、そのまわりに取り付けるカバーが砲の口径と同じ種類の弾頭。ちなみに46cm砲で、絶対防御をぶち抜ける。
こんな代物を160cmで撃つとは…………変態か、お前ら。
「…………おい、アルドラ。お前らにはがっかりした」
「し、主任⁉」
「もっと、早く言えよな‼ さっきから撃ちたくて仕方ねえんだよ‼」
そう言った瞬間、筋骨隆々な男達が一斉に万歳した。全く、本当にすげえ奴らだよ、いろんな意味で。
「んじゃ、インストールデータ、頼むぞ。俺は来客の方に行ってくるからな」
「任せてください。それに主任はまだ高校生なんですから、折角の休暇、楽しんできてください」
「おうよ」
俺は、評価試験アリーナを後にし、箒に連絡をいれる。
「お、箒。聞こえるか?」
『ああ、聞こえるぞ。どうした?』
「ちょっとビッグボックス行こうぜ。受付の仕事なら、そこら辺にいる井尾羅に任せて構わねえから」
『わかった。じゃ、ビッグボックスの前で待ち合わせにしよう』
「あいよ。んじゃ、また後で」
連絡をいれた後、カラードを抜け、本部から少し離れたところに位置する建物、ビッグボックスの前に着いた。ちなみにここまでの時間は三分もかかっていない。
〔あっくん、ビッグボックスって何?〕
「もうじきすりゃわかるから待ってろって」
肩に座っているルリア(やっぱりかなり小せえ)としばしの間会話をして、箒がくるのを待っていた。
「すまない。少し待たせてしまったようだな」
「いや、全然もんだーー」
箒が到着し、後ろから話しかけられたもんだから振り向くと、薄いピンクのワンピースを着た箒が、そこにいた。なかなか似合ってるもんだな、一言で言ったら
「可愛いな、それ」
「にゃっ⁉」
箒はその言葉に反応したのかどうかよくわからないが、猫のような鳴き声をあげてから、頬を赤く染めた。
〔箒ちゃんたら、あっくんに褒めてもらいたくてそれを着てきたんでしょ?〕
「な、何を突然言い出すんですか⁉ ルリアさん‼」
ルリアが少し微笑みながら箒へ話しかける。毎日のようにルリアが肩に出ているもんだから、箒に見つかり、説明した後、直ぐに仲良くなったんだよな、この二人。やっぱり、女同士通じ合うものがあるんだろうか。
〔それに比べて、あっくんの服装ときたら…………〕
「なんだよ、何か文句あるのか?」
俺の服装は、迷彩のグリーヴに半袖のレジスト、その上に防弾アーマーだ。別に私服が無いというわけでもないんだが、左腕のせいで上手く着れないんだよ。だから、基本はこんな感じだ。
〔…………もういいよ。いつも服装には無頓着だもんね〕
「ルリアさん、それすごくわかります」
ちくしょう、俺だけすげえ地味に削られてるんだけど。そろそろやめてくれないかな。
「さて、そろそろ行くか。ビッグボックスの方へよ」
「そうだな」
〔ちょっと楽しみ〜〕
三人でビッグボックスへ入ると
「ビッグボックスへようこそ。歓迎しよう、盛大にな」
まさかのメルツェル(ORCA旅団ORCA小隊のリンクス。専用ネクストIS『オープニング』)が受付にいた。しかも企業連恒例の台詞で迎えてくれる。
「おう、メルツェル。ORCAの連中は元気にやっているか?」
「ああ。まあ、ファントム小隊がこの間酒盛りした位だな、変わった事と言えば」
「あぁ…………オールドキングとオータムが原因か?」
「いや、マドカ」
「今月分減給しておけ」
メルツェルから厄介な事を聞いた事で、どれ移動するかーー
「おう、龍之介じゃねえか。箒と一緒に何してんだここで」
と思った時に、後ろから声をかけられる。げ、この声は
「てめえか、オールドキング。それと、お前もなんでオータムと一緒にいるんだよ」
「まぁ、いいだろ。俺だって男と一緒にいたい時だってあるんだよ」
「一緒にいるのはいいけど、昼間からR-18タグがつくような事をしないでね」
「自重だけはしてね。じゃないと、
「しねえよ‼ というか、お前の説教は説教じゃねえだろ‼」
「うるせえな。今日は客がきてんだろ。静かにしてろ」
まさかのファントム小隊全員がいた。オールドキング(本名 古岡
「それと、箒。お前も少し根を詰めているんじゃないか。少しは肩の荷を降ろすのも大切だからな」
「は、はい。ありがとうございます、オータムさん」
「硬いな。ま、それがお前のいいところだけどな」
オータムは、どこか面倒見がいい姉さんキャラと俺は位置付けている。オールドキングも似たような感じだ。スコールは淑女、マドカは妹か? まぁ、そんな感じだろう。
あ、オータムで思い出した。
「おい、オータム。今日、織斑姉弟が来てるんだ。一年前の事、謝って来いよ」
「わかった、それじゃ行こうぜ、王貴」
「おう。久々に刺激的に楽しもうぜ、秋奈」
オータムとオールドキングはそういうと、ゲーセン・娯楽エリア(管轄はクレスト)の方へ向かって行った。
「…………スコールさん、マドカ。何を飲んでいるんですか?」
「ブラックコーヒーよ。あの二人見てると、甘ったるくて」
「青汁。甘さを打ち消すには苦味が最適」
スコールって、割り方美人だと思うんだけど、男がよってこないらしい。あの高級そうな空気のせいか?
マドカの場合、手を出してはいけない。まだ14歳、手を出そうもんならロリコン呼ばわりされるに違いない
二人は植物園エリア(管轄はミラージュ)へと向かって行った。
「どれ、俺達はどこへ行く? 施設がでかい分、バカみてえにいろいろあるけどな」
「私は別にどこでもいいぞ。龍之介が行きたいところならな」
そう言われてもなぁ…………特別行きたいようなところ無いんだよな。
そんな時、ルリアが口を開いた。
〔ねぇ、水族館ってあるかな?〕
「水族館? ああ、あるぞ」
〔じゃあ、私はそこに行きたい‼〕
どうやら、ルリアは水族館を所望しているようだ。だがな、重量過多で一度海中に没しかけた榴雷の意思になったルリアが、よりによって水族館を選ぶとはな。
「そうか。箒もそれで構わないか?」
「ああ。そういえば、水族館っていままで一度も行ったことがなかったな」
〔それじゃ、決まりだね〕
箒も一度も行ったことがないって言ってるし、まぁいいか。あれ? 俺、何か忘れてるような気が…………
「よし。そうと決まったなら、早く行くぞ‼」
「おい、ちょ、引っ張るな‼」
〔きゃあっ‼〕
俺は、箒に引かれるがままに連れていかれる。場所は、ビッグボックス第二フロア。
第二フロアに着くまで、そんなに時間はかからなかった。だいたい二分くらいだな。
「ここが、水族館か?」
「いや、看板に書いてあるだろ」
そう、ここが水族館エリアだ。管轄は俺個人のため、俺が選び出した熱帯魚や海生獣が主に多い。
とりあえず中へ進む。まず始めに俺達を迎えてくれるのは、大水槽。南太平洋のサンゴ礁をイメージしたレイアウトの中を色鮮やかなスズメダイの仲間が泳いでいる。その他にもエビやヒトデもいる。
それを見た箒達は
〔わぁ、すごい綺麗〕
「見事な物だな」
たいそう喜んでくれた。こうして喜んでもらえると、担当している俺も嬉しいもんだ。
「よし、次に行くか‼」
「ああ‼」
〔うん‼〕
確か、順路通りに行くと次は…………淡水魚・アマゾン川ゾーンか。
手始めにピラニア。
「ピラニアって、テレビとかでしか見たことないが、意外と小さいんだな」
「下手に手を出すなよ。ナッテリーでも、人の指くらい噛みちぎるぞ」
〔怖っ。よく集める気になったね〕
続いてプレコ(ナマズの一種)
「割と愛嬌ある奴らだろ? あの顔つきとかさ」
〔あ、あのアーマード・プレコってあっくんに似合いそうじゃない?〕
「言えてるな。あのがっちがちに固めた装甲板が、だろ?」
特大水槽。
「しかし、いつ見てもコロソマの顔つきは、アホくさいな」
「な、なんだこの大きい魚達は? 私の身長と同じ位あるのではないか?」
〔ちょっと、ピラルク迫力ありすぎ…………〕
最後に黄金水槽。
「黄金水槽、だと⁉ た、確かに光ってる…………」
〔黄金に光る魚…………そして、大きい〕
「こいつらは、ドラドって言うんだ。派手なやつだろ?」
そんなこんなで、割とアマゾン川ゾーンもすぎて行った。結構始めて見るのも多かったと思うぜ。特に、ドラドは。
次は、ウミガメか。
〔なんか、このゆったりしてる感じ、癒される…………〕
「そうか。まあ、日本人は亀好きが多いらしいしな」
「それはそうと、甲羅や装甲板を背負っていたりするやつを見ると、龍之介が連想されるのだが…………」
箒よ、俺は一体どういうやつだと思われているんだ?
それはさておき、続いては…………おお、俺の大好きなゾーンじゃないか。
ちなみに箒とルリアは着いた直後に、口を開けて驚きを隠せていなかった。そりゃ、そうだろうな。サメ専用特大水槽が三つもあればなるか。
「どうだ? 俺が一番凝りにこだわった、サメ達は」
ちなみに、この水槽の中で一番大きいのはジンベエザメで10.8m。凶暴種(単に危険な奴ら)では、イタチザメで4.1m。本当はホホジロザメを入れたかったんだが、そうなると、水槽がとんでもない事になるから断念せざるを得なかった。
「ま、まぁ、なんというか。個性が分かれるだろうな」
〔口の隙間から見える歯が、ちょっと怖い…………〕
うん、だいたいそんな感想だと思ったさ。サメを美しいとか可愛いとかと感じている俺がおかしいのかもしれん。
「あれ、龍之介?」
「その声は、一夏か?」
ちょうどサメゾーンで一夏達と合流した。すでに、皆さんサメに釘付けです。
「それにしても、このサメ達はすごいな」
「ええ、確かにそうですわね。主に迫力が」
だろうな。こいつらをひ弱とか言ったら問答無用で殴るかもしれん。
「ね、ねぇ、僕、物凄く背中に視線を感じているんだけど…………」
「五匹のサメに見つめられているぞ、シャルロット」
何を思ったのか、シロワニがシャルロットを見つめていやがる。しかも全部オス。…………どんな感情、育みよった、おい。
「それにしても、大きいですね」
「ああ。水族館なんて初めて来たが、一般的なのもこんな感じなのか?」
千冬さん、その認識は違います。ここは、俺が管轄の水族館なんで、こんなサメオンパレードができるんです。他は早々で来ませんよ。
そして、俺は鈴へと一つ忠告をしておく。
「鈴」
「なによ」
「間違ってでも、こいつらをフカヒレにするなよ?」
「しないわよ‼」
現在、俺は比較的のどかな熱帯魚ゾーンにいる。無論、三大洋の熱帯魚を網羅したところだから、でかいハタの仲間ジャイアント・グルーパーとかもいたりする。買いきれなくなった場合、鍋にして食おうと思っている。
ちなみに箒はいない。どうやら、井尾羅が倒れてしまったらしく、受け付け業務に戻らなければならないようだ。という事で、ルリアと二人きりで満喫している事になる。…………後で、埋め合わせ考えとこ。
〔それにしても、水族館って、こんなに楽しいんだね〕
「お気に召したようでなりよりだ」
ルリアはすっかり水族館にはまってしまったようだ。
〔…………ねぇ、あの時の約束覚えてる?〕
「あの時? あ…………」
ルリアにそう言われて、ずっと引っかかっていた記憶の破片が全体像に纏まった。そう、あれは前世で高校三年の夏の日ーー
『ねぇ、あっくん。お願いがあるんだけど…………』
『なんだよ。俺ができる範囲でならいいぜ』
『そう‼ なら、今度の土曜、水族館に一緒に行かない?』
『水族館? なんでまた?』
『もともと、友達と二人で行く予定だったんだけど、急に用事ができて無理になったの。チケットも一枚余ったからどうかなー、って』
『その気持ちは、嬉しいんだが、その日に大学受験模試があるんだ。その、すまんな』
『ううん、気にしないで。でも、いつか絶対に一緒に行こうね』
『おう。その時は、最高の水族館を紹介してやるよ』
『約束だからね?』
ーーそうだ、そんな感じだったな。
〔あっくんは、ちゃんと約束を守ってくれた。その証拠に、この水族館。私が見た中で最高だよ〕
「ん、そうか。昔、言ったことがあるよな、『自分だけの理想の水族館を持つ』ってさ。俺、今になって夢が叶えられたよ。お前も喜んでくれたしさ」
俺は若干照れ臭そうに答える。前世の俺はあれだもんな、魚とカニに関して恐ろしいほどの知識を持っていたしな。本当は、前世でルリアに見せてやりたかったんだ、俺が勤める水族館をさ。
まぁ、ルリアが喜んでくれたし、約束も一応の形で果たせたから問題ねえか。
〔あっくん〕
「どうした?」
〔ありがとう〕
「…………へへっ、どういたしまして」
この瞬間、姿形は少し変わってしまったが、かつての幼馴染として触れ合えたと、俺は思う。
そんな時、連絡が入る。入電先は、カラードか。
「どうした、トラブルか?」
『ちょっと、主任、カラードに来客御一行様がきちゃったんですけど…………』
「へ? 今、そいつら第何ブロック? 1の序盤だよな?」
『ええ。ですが…………』
「ですが?」
『コンテナ搬入前のゼルフィカールとマガツキを見られちゃいました』
まじ? え、ちょ、第零課‼ まだ、コンテナ搬入してねえのかよ‼
「…………待ってろ、すぐそっちに行く」
そうして通信を切る。よし、あいつら減給だな。
「ルリア、悪いな。休暇は終わりのようだ」
〔大丈夫。もう、十分楽しめたよ〕
俺は急いでカラードへ戻る。頼むから、起動だけは勘弁してくれよ…………そう、切実に願いたい。
カラードに到着した時、もう、手遅れだった。
「り、龍之介‼ こ、これ何が起きたんだ⁉」
マガツキはまだ起動されてない(そりゃ擬似コアが入ってないから)。だが、ゼルフィカールが一夏によって起動されていた。
「…………どうして、こうなった?」
「簡単に言うと、一夏がケーブルに引っかかって転けた拍子に、触れちゃってこうなったんだよ…………」
シャルロットが説明してくれた。まぁ、どうしょうもないわな。
「一夏」
「な、なんだよ」
「ドアホ、大バカ、超マヌケ」
「ぐはっ‼」
ゼルフィカールをまとったまま崩れ落ちる一夏。仕方ねえだろ、自業自得だ。
「有澤、一夏の白式はどうなってしまうんだ?」
「ああ、それなら問題ないっす。ゼルフィカールはフレームだけだったんで、コアが入って起動したんでしょ。それに、外装もある程度なら出ますし」
千冬さんの疑問にそう答える。だって、ゼルフィカールにつけた覚えのない雪片と多機能武装ユニットがついてるんぜ。あれ、白式の名残だろ。
「それと、一夏。それもう、お前の専用機だわ」
「え⁉ どういう事だよ⁉」
「だって、白式とゼルフィカールがリンクしちゃったし、つけた覚えのない雪片手に持ってるし、もとよりお前の専用機として開発したからな」
「「「まじでぇぇぇぇぇ‼」」」
はい、大マジです。というか、兎に勝つためだな。だって、あの無人機、俺らネクストIS用にかなり強化されているから、万が一に備えての対策だよ。まあ、厳密に言えば、こいつはネクストISの中でもかなり特別な部類に入るしな。俺と同じ系統。
「こいつが、俺の新しい力…………なぁ、龍之介」
「どうした、異常でもあったか?」
「いや、そうじゃなくて。こいつと俺なら、守れるのか、皆を」
「そいつは、お前次第だが、まあ性能はいいぞ」
「そっか。じゃ、よろしくな。えっと…………」
「ゼルフィカールだが、名前つけられるぞ」
そう俺が言うと、一夏は少し考える。二、三回唸ったところで、ひらめいたようだ。
「よし、こいつの名前はは『
白牙、か。もしかしてYSX-24RD/WFの後ろ、ホワイトファングを日本語に訳したか? まあ、詮索はしないけどな。
「よし、それならちょっと武装選んで来い。初期だけじゃもの足りねえだろ」
「まあ、確かに雪片一本はきつい…………」
「じゃ、第八倉庫に行って来い。割といいやつ見つかるかもな。シャルロット、皆もついでに案内してやってくれ」
「任せて。皆、僕についてきてね」
そう言って、カラードから出て行く一夏と専用機持ち達。残ったのは、俺と千冬さんと真耶さんだけだ。
唐突に真耶さんが口を開いた。
「有澤君、君達は一体何がしたいんですか?」
「そうですね…………それだけは今は言えないです。でも、千冬さんはもうわかっていると思いますよ」
「ああ、あのバカか。まぁ、私はいずれこうなると思っていたさ。有澤、山田君にも教えてやってくれ」
千冬さんにそう促され、俺は言葉を続けた。
「俺達、企業連はこの世界の均衡を崩した元凶を潰して、女尊男卑を無くしたいんですよ。ただそれだけ」
なのに、兎は自分は悪くないと言い張る。いつ全面戦争に発展するかもわからない。
千冬さんと真耶さんはそれっきり口を閉ざす。
まあ、今はこれくらいしか言えないが、きっと世界を巻き込む戦争になるかもしれん。そうなった時、誰かかにかは死ぬだろ。それが俺なのか、はたまた違う人間か、それはわからない。だが、これだけは言える。もう、後戻りはできないって事だけは。
というかさ、
「なんで、お前らOVERED WEAPONを選ばせてんだよ⁉ それ、思いっきりボツネタ品だからな‼」
何を血迷ったか知らんが、OVERED WEAPON11[
こうして、夏休みの一日は楽しくも慌ただしく過ぎて行ったのだった。
これが、今年最後の投稿になります。来年もよろしくお願いします。