インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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受験終わって、ACVDしてたら更新遅れた…………


第二十九話 初日から忙し過ぎんだろうが

「どぉぅらぁぁぁぁぁぁ‼ 落ちろ、一夏ぁぁぁぁぁっ‼」

「や、やめろ‼ 死にたくねぇぇぇぇぇぇっ‼」

 

夏休み明け、初っ端から一夏との模擬戦だ。ただし俺には恐るべきハンデが課せられた。というのもな、

 

「近接オンリーなんて分が悪すぎんだろ‼」

 

射撃兵装の一切使用不可という、なんと言ったらいいのかわからないハードコアルール。てか俺に対して不利過ぎんだろうが。仕方なく、HW03ユナイトソード・バスターブレイドモードを片手で振るっている。通常の大剣モードと違って、こっちのモードは補助ブースターがついており、質量にプラスして莫大な加速を得る化け物だ。ちなみに、一撃一撃が重すぎるため、打鉄なんざ大破確定、コアなんて粉々に砕け散る。というか、まだ大剣あるわ、大剣と呼んでいいのかわからんけど、オーバードウェポンになら二つある。02と012だったはず。

 

「チクショー、振りづれえわ大剣。当たらねえんだよ‼」

「当たったら死ぬからな⁉ 確実に俺がザクロになっちまうだろうが‼」

「一応、リミッターかかっているんだから、大人しく受けて沈め‼」

「理不尽な⁉」

 

俺は逃げ回る一夏の背中に大剣を振り下ろす。だが、高機動近接特化の白牙(元はバーゼラルドのフレームに強化パーツを取り付けたゼルフィカール)にはなかなか当たらない。大剣自体、当てるのが難しいのだ。振りは遅いし、でかい剣だから自然とモーションも大きくなる。そのせいで動きの速い白牙のプライマルアーマーを削るだけにとどまった。俺のエネルギーはほとんど減ってないから問題ねえけどな。

大剣を振り下ろしたため、俺は大きな隙を晒してしまう。そこを、数々の模擬戦をくぐり抜けてきた一夏が見逃すはずはなかった。

 

「貰ったぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

一夏は雪片弍型を構え、零落白夜を起動する。あれの直撃はなんとしてでも避けなければならない。あのワンオフ・アビリティは試合の流れを破壊する、いわばバランスブレイカー、もしくはイレギュラーだ。回避しなければ、その先に待つのは、終わりだ。

 

「お熱いモーニング・コール‼」

「ちょ、まーーへぶらっ‼」

 

だから、顔面にスパイク付きの大型ハンマーをぶつけてやった。しかも、チェーン付きだから絡みつく。おまけに

 

「ハラショオォォォォォォッ‼」

「ぎゃあぁぁぁっ⁉ 爆発した⁉」

 

鉄球の中には有澤重工製炸薬とベアリングボールが詰まっている。爆発して、クレイモア地雷と同じ事になる。並のプライマルアーマーは余裕で消し飛ぶぜ。

 

「オラオラオラぁぁぁぁぁぁっ‼ まだまだ、コンボは続くぞ、この野郎‼」

 

俺はユナイトソードの柄を残して、そこにHW05メガスラッシュエッジをトライデントモードでアセンブルさせる。ただの薙刀モードよりはリーチもあるし、刀身が超高密度レーザーだから切断力も申し分ない。

 

「殺す気か⁉ 俺を殺す気なのか、龍之介⁉」

「オーバードウェポン使わないだけ、ありがたく思え‼ メインブースター切り落とすぞ」

「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

その後、しばらくトライデントを構えた俺が鬼で、それから逃げ回る一夏という謎の鬼ごっこが続いた。ちなみに、やけくそになってトライデントを投擲したら直撃して一夏が撃墜されたのは、どうでもいいか。

 

 

 

 

 

「ふぅ…………久々にストレス発散になったわ。それにしても、一夏ちょこまか動きやがって。斬れねえだろうが」

〔鬼だ…………鬼がここに潜んでいるよ…………〕

 

模擬戦終了後、俺はアリーナの更衣室にいた。一夏はここにいない。別のピットの方へ行った。

それにしても、あの機体ーー白牙を渡してから一夏の操縦技術はみるみる成長している。ランクでいえば、ハリと同レベルじゃないだろうか。半年前はダン・モロレベルだったのにな。

 

「まぁ、いろいろ溜まってたんだから仕方ねえだろ。ーーあと、出てこい楯無。ここには俺一人しかいないぞ」

「あ、あれー? もしかしてバレバレだった?」

 

俺がそう言うと、ロッカーの陰から楯無が現れた。

 

「別に箒は事情知ってるんだから来いよな。こっちも仕事での付き合い以外なんとも思っちゃいねえ」

「その仕事の件なんだけど…………大変な情報が入ってきたわよ」

 

普通ならちょっとおふざけ気味の楯無の口調が少し硬くなる。つまり、仕事の方にスイッチが入った証拠だ。

一応説明しておくが、楯無は暗部の人間だ。簡単に言えば、俺たちのように正面から物量でぶつかり合うような仕事ではなく、裏の見えないところでスマートに仕事をこなす。いわばカウンタースパイだ。

 

「…………どういう情報だ? 詳しく教えてくれ」

 

俺は楯無の言ったことが気にかかり、深く聞こうとした。

 

(アメリカ)(ロシア)(中国)(イギリス)(フランス)に動きがあったわ。詳しくはわからないけど、CIAやKGBはすでに動いているらしいわ。おそらく奴らの狙いはーー」

「ーーIS学園か企業連総本部、か」

「…………その通りよ」

 

楯無の声はいつにまして暗かった。相当こたえているのかもしれない。日本の暗部の家、その当主を17で引き受けてんだ、何かに恐れを抱いているのか、使命に押しつぶされそうになっているのか。どちらにせよ、精神的にイカれ始めている状況だ。

 

「なぁ、篠ノ之束の情報はきているか?」

「いえ、全くないわよ」

「これマジの話なんだが…………篠ノ之束が国際IS委員会に参加、常任五カ国を凌駕する発言権を得たらしい」

 

楯無はそれを聞いて目を見開く。どうやら入ってなかった情報のようだ。

国際IS委員会とは安全保障理事会常任理事国五カ国で作られる物だ。中国のは事務官が死んだ(というか仕事で殺した)ため新任の奴が入ったらしいが。

 

「そ、そんな事…………そんな事になったら、世界は篠ノ之束に振り回される…………‼」

「そういう事だ。という事で、ほら」

 

俺は楯無に一枚の紙を渡す。それは

 

「今あるだけのマシンアーマーじゃ少し頼りない部分も出てくるだろ。一番安いGAのノーマル[GA03-SOLARWIND]を五機納入しておく。パイロット分は足りているだろ?」

 

俺が出した紙は納入書だ。今更識が保有する戦力はMAレライエとMAエリゴル、MAサレオスが五機ずつの計十五機。対装甲兵器や対歩兵なら十分な戦力だが、ISが相手となると厳しいだろう。こうなった時には、数の暴力が戦局を左右する。流石にネクストは卸売りできないので、安いGAのノーマルになってはしまったが、それでも十分ISには対抗可能だ。

 

「こいつで、なんとかしのぎ切ってくれ。更識暗部と有澤重工の仲だ、これくらいはいいぜ」

 

もっとも、企業連側から送ってきたんだがな。変に金余りすぎだろ、親父。

 

「…………ありがとう」

「まぁ、こんなんで構わんさ。それじゃ、俺は授業に行かせてもらいまっせ」

 

俺はそうとだけ言い残して、更衣室を後にした。

 

「篠ノ之束…………あんただけは、俺の手で殺す」

 

自然と心のうちが呟きとして漏れ出ていた。まずいな、精神が安定してないのかもしれない。もう少しすれば落ち着くんだろうが。

 

〔あっくん…………〕

 

ルリアの声も今の俺の耳には一切はいってこなくなっていた。

まともになったのはその十分後だった。

 

 

 

 

 

「つーことで、俺らの出し物を決めたいと思う。何か案はあるか?」

 

現在、話し合い中だ。議題は、今月行われる学園祭についてだ。各クラスで出し物を出さなきゃならないらしく、我々一組もそれに追われているんだが…………

 

「なぁ、シンキングタイムを十分もやっておきながら、何一つ思いつかないってどうよ? 何か一つくらいはあるだろ?」

「「「…………」」」

「…………ないの?」

 

といった感じで、ネタが一つも上がってこないのだ。どうすりゃいいの? 真面目にどうしたらいいんだよ。てか、なぜに上がってこない? せめて一つや二つくらいはあるはずだろ。

 

「いや、だってさ…………このクラス、リア充レベル高いから、ホストクラブ的な物ができないし」

「安心しろ。そんな物、出た瞬間蹴り飛ばすから」

 

再び沈黙。やめてー、真面目に何か案がないの?

試しに箒に目線を送る。何故か合掌された。

次に、オツダルと簪に送る。オツダルのフンッという感じの目線と、簪の苦笑いだけが返ってきた。

静寐とベルリオーズに送ってみるも、返答に困られた。

レギアとフィオナに至っては無視された。ふざけんな、コラ。マイクロミサイルの嵐に叩き込むぞ。

 

「喫茶店などはどうだろうか?」

 

突然、何かしらの案が出たと思いきや、ラウラだった。しかも腕を組んで得意げに言っている。

 

「休憩所などで需要もあるであろう。ましてや、飲食店なら経費の回収も可能だ。どうだ? いい案だろう、バレットドラゴン」

 

ドヤぁ、といった効果音がついてきそうな感じでラウラは言ってきた。ちなみに、ラウラは俺の事を未だバレットドラゴンと呼んでいる。というか、俺の名前を呼ぶときに一貫性がない。龍之介だったりするときもあるしな。

 

「ちなみに、本音は?」

 

ここで俺はさらりと釣り餌を投下してみる。

 

「ジョシュアの執事服、もしくは燕尾服姿を見てみたい」

 

もろに釣れてきた。それも、ものすげえ大物が。てか、もうそれ自分が楽しみたいだけじゃねえか!

そうと思いきや

 

「執事服⁉ 燕尾服⁉ それ最高よ‼ イケメンだらけの喫茶店なんて理想郷(ファンタズマ)よ‼」

「それに釣り合うレベルの子達もいっぱいいるんだし、喫茶店の案には大賛成‼」

「ハッハー‼ 喫茶店よ、皆ぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

「「「イェアァァァァァァァァ‼」」」

 

かなりクラスの反響があったわ。これはすごい、あの膠着状態をたった一撃で破壊するとは…………代表候補生達って、意外とドミナントだったりする? それだったら、真面目に厄介だな。

 

「そんじゃ、出し物は喫茶店で構わないな?」

「「「代表の考えに、我々は逆らいません!」」」

 

そんなこんなで、俺らの出し物は喫茶店に決まった。てか、俺も執事服着んの? 勘弁してくれへんかな。せめてビジネススーツなら問題ないんだけど。左腕の関係上、着れる服は特注だからね。てか、俺厨房に行きてえよ‼ 接客なんて、俺無理だからな‼

 

 

 

 

 

俺は現在、裏生徒会室で踏ん反り返って椅子に座っている。ちなみに、企業連メンバー(シャルロットを除く)全員が入部している。ある意味すげえよな、これ。てか、実質上、学園側の非常時戦力と同じ扱いで、上からの命令がなくても個人判断でのネクストISの展開が可能だからな。教師部隊より優遇されているな、俺ら。

 

「ところで、リュウ。私達をここに集めたからには何かあるんだろうな?」

 

オツダルが少々つまらなそうな態度で聞いてくる。

 

「ああ、あるっちゃあるな。ものすげえ大物が」

「それはなんだ。俺にも教えろ」

「…………待て、ベルリオーズ。嫌な予感がする」

「裏生徒会の学園祭に出す出し物を決めたいと思う」

 

俺がそう言った瞬間、比喩でもなんでもなくて空気が重くなった。え、何、そんなに嫌なの?

 

「また考えなければならないのか…………?」

「何も思いつかない…………」

「やらなくてもいいんじゃない…………?」

「え、えーと…………何もないです」

 

箒、簪、静寐、フィオナの女性陣営はすでにやる気が失せ始めている。仕方ないよな、クラスのやつ決めだけでもそうとう時間と労力を食われたからな。

 

「まぁ、思いつかないと思って考えてきて正解だったわな…………俺らは、キャノンボール・ファストをやるぞ」

「「「マジで⁉」」」

「だってさ、レギアとジョシュアは言わずも、お前らのネクストIS速いじゃん。それを使ってみようかと思ってな」

 

こいつをうまく使えないかなと俺は思ったんだ。レギアとジョシュアは機体名も通り名も『ホワイト・グリント』だし、オツダルもベルリオーズもジェラルドも時速千キロを余裕で越せる。普通のISのキャノンボール・ファストでは味わえない何かをできると思うんだ。

 

「しかし、それをどう使うつもりなんだ? まともな方法では無理な気が…………」

「心配するな。競馬のような感じでやるから」

「現金を賭ける気か⁉」

「いや、食堂の食券。さっき、いろいろと買収してきた」

「そ、そうか…………」

 

ここまで言ってみたものの、なんだか乗り気ではなさそうな雰囲気を出している。よし、ここはいっちょ発破をかけますか。

俺は、男子チームに小声で耳打ちする。

 

「…………レース毎にトップだったやつには、休憩時間のデートチケットをやるぞ?」

「「「「「‼‼」」」」」

 

すると

 

「リュウ、お前の案は採用だ。さすが、カラード主任」

「お前の判断には狂いがなかったようだな。安心しろ、仕事はしっかりする」

「…………待ってろ、場を必ず盛り上げて見せる」

「私に任せてくれ。破壊天使の私が、番狂わせを起こしてみせよう」

「何を言うか。番狂わせなどさせる物か。勝つのは私だけだ」

「お前ら…………ちょろいわ〜」

 

派手に釣れたからよしとするか。うまい感じに、やる気を出してくれたのはいいが、ここまでくるとどんだけ甘々な充実ライフを過ごしているんだよ。もしここにいるのが前世の俺にしてみろ、サブマシンガンを乱射するかもしれん。

 

〔実際にやりそうだよね、あっくんなら。だって中三の時、非リア充同盟の幹部だったもんね〕

(やめろ、人の過去を掘り返すんじゃない…………)

 

まぁ、本当の事だから反論のしようがないが。だって、俺のクラス、周りが皆リア充なんだもん。しかも、リア充じゃないのって俺とルリアだけだったし…………空気的に無茶苦茶居づらかったんだよぉぉぉぉぉぉぉ‼

 

「そ、それで、私達はどうすればいいんだ?」

 

箒がそんな事を聞いてくる。

 

「ん? ああ、箒と簪と静寐は観客席で客席販売をしててくれ。フィオナは実況な」

「「「「はーい」」」」

「俺は倍率とかその辺の仕事があるから」

 

裏でちょちょーっと弄ったり何だりして、倍率の差がそんなにないようにしなければならねえからな。賭け事に弱い俺からの優しい配慮だ。

 

「んじゃ、俺はアリーナとかの申請とってくるから。後は解散な」

 

俺はそう言って裏生徒会室を後にした。

 

 

「という事で、一組の出し物は喫茶店、裏生徒会からはキャノンボール・ファストとなりました」

 

職員室にて俺は結果の報告を千冬さんにしていた。まぁ、クラス代表権裏生徒会長だからな、これくらいの仕事は必須なんだよ。

 

「ほぅ、なかなか無難な物を選んだようだな、キャノンボール・ファスト以外は。何か裏があるだろ」

「い、いや、そんな事あるはずないじゃないですか〜」

「…………」

「いや、マジで、これ本当」

「……………………」

「…………すいません、賭博しようとしてました」

「馬鹿者が」

 

刹那、俺の頭にドーザーが振り下ろされた。あ、ミスった、出席簿だ。あれさ、時々思うんだけど、実はGAN01-SUNSHINE-Lの膝アーマーだったりするのか? 結構重みも感じたし。

 

「まぁ、現金を賭けてないだけ、見過ごしてやろう」

「…………バレてたか」

「食堂の食券を百枚一括で買うやつがお前以外に誰がいる?」

「デスヨネー」

 

あっはっはー、千冬さんにモロ暴露たー。まぁ、見過ごしてもらったからいいけど。

 

「ただし、条件がある」

「はい?」

 

唐突にそう言われて俺は身構えた。結構、マジの目で見ているんだもん。これ、なんか既視感があるなー。

 

「その、なんだ…………ローディーを用意しておいてくれ」

「またとんでもない物を要求しますねえ⁉」

 

少し恥じらい気味に千冬さんはそう言う。なんでまたローディーさんを用意しなけりゃなんないんだよ。ちなみにローディーさん、本名はローディー・シュナイダー。専用ネクストIS[フィードバック]はGAN01-SUNSHINE-Eベースの中・遠距離射撃機。バズーカ武器腕とミサイルのラッシュは侮れない。ただ、装甲が少しGAN01-SUNSHINE-Lより薄いのが欠点。武器腕だから仕方ない。

ローディーさん自体は、めちゃくちゃいい人。いろいろとハードなGAによくマッチしている。本人は「かつて恋した戦乙女がいた」とか言っていたけど、貴方は何歳ですか。まだ二十六でしょうが。

 

「まぁ、学園祭の招待チケを五枚ほど学園長と生徒会長から貰ったんで、それで呼びますよ」

「おお、そうか。よし、賭博も酒の販売もして構わんからな」

「酒は二十歳をすぎてから」

 

そんなこんなでいろいろとあったわけだが、なんとか案はうまく通った。てか、千冬さん、もしかしてローディーさんに恋してる? それだったらローディーさんも脈ありかもしれねえな。だって、戦乙女なんて千冬さんくらいしか合わんだろうが。

 

 

「ふう、やっと一息つける」

 

すべての雑務を終えた俺は、食堂で一人茶を飲んでいた。無論、茶菓子もついているわけだが。

海の見える席でくつろぐ。しかも、夕日が沈みに入ってる。最高のシチュエーションなんだろうが、生憎一人。何かと残念だ。

 

〔人じゃないけど、二人でしょ?〕

「まぁ、コアも含めるとそうなるわけか」

 

ルリアがホログラムになってテーブルの上に乗る。てか、肩から離れてそんな事もできるんだ、と思った。

 

〔うわわわぁっ‼ 熱っ‼〕

 

…………なんかにつまづいてルリアがこけた。しかも手のついた先が湯のみ。予想より熱かったのか、涙目。てか、湯のみに触れて熱も感じられるんだ。ちなみに、それによって榴雷のシールドエネルギーが1減った。どんな仕様だよ…………。

 

「おいおい、相変わらず運動音痴は治らんのか」

〔う、うるさい‼ 後で、絶対防御カットするからね‼〕

「俺の能力で絶対防御なんて作れるが?」

〔チートだ⁉〕

 

ルリアを完封する俺。フハハハ、お前の反抗なんざ、ちょろいもんよ。

そんな時、俺の端末にメールが入る。今回は…………げ、ミグラントからだ。内容は

『主任、とてもまずいです。UNACに感情とかいろんな物が詰め込まれた新しいフォーミュラブレインとチップを搭載したら、UNACが自我を持っちゃいました、てへっ☆ 今のところ一機だけなので問題はありませんが、キサラギのNEO-AMIDAと何故か仲がよろしいようで、AMMONを従えたりしちゃってるんですが…………放置しててもよろしいのでしょうか? キャロル・ドーリー』

 

「…………アホか」

 

メールを見ての第一声がこれ。アホだろ、てかバカだろ、お前らこそフォーミュラブレインがやばいんじゃねーの、とか普通に思ってしまった俺はまだ常識人のはず。てか、なんで感情とか積もうとしたんだよ、どんな実験する気だったんだよ。ちなみに、四脚のUNACでスナイパーキャノン持ち、ボイスとブレインパターンは女だったようだ。…………変態、その称号はお前らミグラントに相応しい。

 

「というか、どんだけ人の可能性にかけているんだ?」

〔ミグラントらしいね〕

 

ルリアが少し笑う。どうやら、ミグラントのやっていることがおかしく思えたのかもしれない。まぁ、企業連自体やってることがネジ二本分ぶっ飛んでいるんだけどな。戦車が空中で回転するグレネードとか、六キロ先から釘の頭だけを綺麗に吹き飛ばすスナイパーキャノンとか…………数えたら切りがねえ。

 

「まぁ、言えてるっちゃ言えて『I've already fallen〜♪』あ、携帯鳴ってる」

〔どんな着メロにしてんの⁉ ジョシュアが00-ARETHAに乗りそうだよ‼〕

「縁起でもないこというんじゃねえ、ルリア。もしもーし」

『ああ、龍之介か‼ 頼む、直ぐに第一アリーナに来てくれ‼』

『龍之介君⁉ と、とにかく早く来て、じゃないと私ーー』

『オ嬢様、今日コソハ、仕事ヲマジメニシテモライマスヨ?』

『し、死ぬ‼ 助けーー』

 

プツッ。

それ以降、電話が通じることはなかった。とにかく聞こえたのは、逃げ惑う箒と楯無さんの声に、何故かダークネス化している虚さんの声。何が起きたんだ?

 

〔と、とりあえず第一アリーナにいってみよう〕

「…………なんだろう、ここ最近不運に振り回されているような」

 

重い足取りで食堂を後にし、凄惨な現場になっているであろう第一アリーナに向かった。

 

 

「助けてぇぇぇぇぇぇ‼」

「待ちなさい‼ お嬢様‼」

「…………なんなんだ、この惨状は?」

 

第一アリーナにて、地獄の鬼ごっこが始まっていた。方やミステリアス・レイディを纏った楯無さん。方やエリゴルに乗り込んでいる虚さん。ちなみにエリゴルには、アサルトライフル[フィルグート]とハンドグレネード、そして

 

「えいっ☆」

 

スカッーーパアァァァァン!

 

「し、死ぬ⁉ なんでパイルバンカーがレールガン並みの速度で打ち出されるの⁉」

 

マシンアーマー開発部の最高傑作[パイルバンカー2]。レールガンの原理を利用し、莫大な初速を得られる代物。しかも威力に反して反動が少ない。何このチート兵器は。ちなみに、その気になれば絶対防御も突破可能な魔物だ。

 

「何がどうなってこうなったんだ?」

「どうやら楯無さん、生徒会の仕事を放り出して逃げ出したらしい。それで、捕まえるように虚さんに頼まれたんだが…………」

「だが?」

 

箒は少し何かを思い出し苦い顔をしたが、ちゃんと答えてくれた。

 

「虚さんと同時に楯無さんを見つけてしまって、運悪く巻き込まれた」

「乙です」

 

という事は、すべての罪を楯無さんに払ってもらうしかないね。

 

「ルリア、仕事だ」

〔あいさー〕

 

俺は榴雷を展開し、両腕にNWインパクトナックルを呼び出す。殴り飛ばすにはこれが相応しい。

 

「楯無さーん、こっちこっち、カモーン」

「龍之介君⁉ た、助かった…………」

 

アリーナに入って、楯無さんを誘き寄せる。騙して悪いが、これも仕事なんでな、許しは請わん、恨めよ。

 

「チョイサァァァッ‼」

 

両腕同時にインパクトナックルを起動。デカイ握り拳が楯無さんを吹き飛ばした。パイルバンカーの杭の代わりに衝撃ダメージの大きい鉄塊拳に変えた物。インパクトエッジと同系統。

勿論、衝撃は計り知れず

 

「きゃうんっ」

 

吹き飛ばされて、地面にどさっと崩れ落ち、しばらく動くことはなかった。

 

「龍之介君、協力ありがとうございます。では、また」

 

虚さんは、崩れ落ちた楯無さんをエリゴルにのマニピュレーターで掴むと、そのまま第一アリーナを後にした。

アリーナには俺と箒が残された。

 

「戻るか」

「そうだな」

 

即、俺たちもアリーナを後にした。頼む、今日不幸一杯あったし、亡国機業も企業連が吸収したから、学園祭は何もないといいんだけどなー。

そんなこんなで、二学期初日は過ぎて行った。

 

 

 

 

 

ちなみに、感情が入ったUNACだが、テクノクラートのロケ誤射、誘爆事故からAMIDA達を守って大破。修復は不能となり、残骸は安置されることになった。

なお、AMIDA達はその残骸からしばらく離れることはなかったという。

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