インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第三十話 学園祭はがっつり楽しめ

「ようこそ、喫茶『レイヴンの休息所』へ。歓迎しよう、盛大に」

 

学園祭当日。我らが一組の喫茶店の前には長大な列ができていた。というのも、時間限定のランダムだが、一夏、オツダル、ベルリオーズ、レギア、ジョシュア、ジェラルドの接客が受けられるから、らしい。まぁ、執事だけではないんだがね。シャルロット、簪、静寐、フィオナ、ラウラ、セシリア、箒のメイド達もいる。この辺の衣装を調達してきたのがラウラなのだから、驚くも無理ないだろうな。皆、バッチリと着込んで、準備万端のようだ。

一方の俺はというと

 

「…………ねぇ、あれって有澤君だよね…………?」

「…………なんで、ガチのスーツ姿なんだろ…………?」

「…………有澤君は、奉仕してくれないのかな…………?」

 

入口付近で、入場管理をしていた。仕方ねえだろ、接客業は俺の仕事じゃねえし、管理・粛清・殲滅が俺の本職だ。そんなこんなで、入場管理を任されていたわけだ。ガチのスーツ姿にサングラスだが…………ヤクザと勘違いされないだろうか?

 

「三名様ですね。空いている席へご自由にお座りください」

 

慣れない敬語で話す俺。ここまで話せるようになるまで、箒と特訓したのは今でも鮮明に思い出せる。というか、敬語すべて覚えるまで二週間かかったってどういう事よ。どんだけ、脳のフォルダがなくなってんだよ。

 

(む、無理だ、接客なんぞできねえ…………)

〔すでに瀕死状態だね〕

(俺が敬語でしゃべるなんてそうそうねえからな、第一)

 

俺、企業連一取扱が危険なセレンにだって、普通にタメで話してるし。親父や依頼主にだってタメでしか話した事ねえし。いろんな意味で、終わってた。

 

「ほぅ…………誰が企業連一危険なやつだって?」

「そりゃ勿論セレンに決まってーー」

 

俺は、この時命の終わりを覚悟した。何故かって? 列の先頭に件のセレンがいたからだ。勿論、読心術も持っている。何気、千冬さんにも劣らない。というか、セレンのネクストIS[シリエジオ]とまともにやりあえなさそうにない。理由? 俺の装甲はEN兵器に少し弱いから。

まあ、そんな事はさておき、問題は俺の前にいる鬼だ。顔こそ笑ってはいるが、さっきから拳をパキパキ鳴らしている。…………これ、死んだんじゃないか、俺?

 

「いい度胸してるじゃないか、カラードに戻ったら覚悟しておけよ」

「…………い、一名様、ご案内〜」

 

何はともあれ、目の前の鬼から回避する事はできた。これで助かる。頼むから、当たる時はお前の恋人の首輪付きことライルに当たれ、十九歳。

 

「あれ? もしかして龍之介さん?」

 

冷や汗を流しながらセレンに毒ついていると、また声がした。

 

「あ、お前らか」

 

視線を少し下にやると、フランとリリウムがいた。ああ、忘れてならんがハンスもいる。こいつら、企業連で一番年下だからな。せっかくだから、招待チケで誘ってみたのだ。

 

「龍之介様、リリウム達はどうしたらよいのでしょうか?」

「今、セレンが入っていった。どうせあいつのことだから、四人掛けの席を独占してるだろ。そこに行っておけばなんとかなる」

「すみません、主任。それでは」

 

三人もまた中へと入っていった。しかし、まだあいつら十四と十五だぜ。しかも、望んで戦場に出ているんだ。まぁ、フランの場合オペレーターだけど。ちなみに、リリウムが第四小隊、フランとハンスは第三小隊だ。

 

「それにしても、企業連メンバー誘い過ぎたかな? …………親父とかも来ているんだが」

「呼んだか?」

「ドヒャア⁉」

 

親父⁉ 突然現れないでくれ‼ 心臓に悪いわ‼

あ、お袋もいる。チケ渡したからくるとは思っていたが…………企業連は何かとぶっ飛んでいるぜ。代表が直々に現れるか普通。

 

「いや、仕事ですぐに戻らなければならないから、そんなには長くいないわよ」

「大変だなー、それでは御主人様方、奥の席の方へどうぞ」

 

流石に他の人間に任せたら大変なことになる。精神がガリガリと削られるであろう、きっと。かくいう俺も、緊張している。

 

「ふむ…………なかなか趣がある喫茶店だな」

「此方がメニューとなります」

「ほう、俺はコーヒーだけで構わん。お前はどうする?」

「私は紅茶だけで。それじゃ、お願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

表面上は普通を装いながら、内心恐ろしく焦っていた。だって、真面目に緊張するぞ、これ。親父は親父で有澤マークの腕時計がチラチラ見えてるし、お袋も胸に光り輝く有澤マークのネックレスをつけてるし…………学園、焼け野原になるのかなぁ?

 

「レギア、五番テーブルにコーヒーと紅茶。至急用意してくれ」

「…………そんなに急がなくても問題はーー」

「親父とお袋」

「…………すぐに用意する」

 

すげえ、親父とお袋って言っただけでこんなに反応するのか。やべーな、親父とお袋の権力。多分、世界に喧嘩売れるんじゃないか?

 

「…………念のため上物のブルマンとダージリンを使っておいたからな」

「世話かける」

 

レギアからコーヒーと紅茶を受け取り五番テーブルへ運ぶ。この茶器はすべてセシリアが手配したものらしいが…………ものすげえ高そうだな。持つだけで手が震える。

 

「お待たせしました。コーヒーと紅茶になります」

「うむ、いい香りだ。悪くない」

「これ入れてるのレギアでしょ? やっぱりあの子は天才よ」

 

企業連の人間ならわかる事だよな、レギアがコーヒーや紅茶を入れるのが上手い事。レギアのみ厨房の方で働いている。というのも、下手なインスタントを使うよりも美味いから。だよなー、俺もあのコーヒーは好物だから、その理由はわかる。やっぱりさ、あいつはあれなんじゃね、一種の天才。

そうこうしているうちに、親父達は飲み終えた。

 

「それじゃ、俺たちはもういくからな」

「おう。御主人様方、またのご来店をお待ちしております」

 

形式上ではあるが、こんな形で締めなければならない。親父達はそのままの足で帰っていった。…………一瞬、窓から見えたんだが、山神で来てねえか親父達? 一応、企業連最強のアームズフォートなんだよな、あれ。全武装がグレネードという浪漫仕様。装甲なんて厚いところじゃ5000mmあるらしい。今のところまともにぶち抜ける火砲は俺の160cm滑腔砲[ドーラ・ドルヒ]で放つ20mm特型APFSDS弾だけ。しかも、装甲表面に謎の防御スクリーン(原理不明、クレストやミラージュが関与)、プライマルアーマーまで展開しているし…………勝てる要素無くね? まぁ、親父達のバイオメトリクス無いと使えないらしいが。

 

「あ、有澤君、そろそろ疲れたでしょ?」

 

突然、同じクラスの相川さんにそう言われた。

 

「いや、そんなに疲れてはいないが…………何故だ?」

「少し二組と話をつけてきてね、ほらさっきまでお客さんが一杯入っていたでしょ? だから、皆に休憩させようかなって事になったんだよ」

「なるほどな、了解」

「休憩ついでに学園祭を回ってきたら?」

「いや、仕事に遅れるかもしれないと思うとな、どうも…………」

「リュウ、お前はその心配するな」

 

そう言ってきたのは、燕尾服に身を包んだオツダルであった。オーメルのランク1とだけあって、見事な着こなしだ。あんま、関係無いと思うけど。

 

「私達にはアレ(デートチケット)があるが、お前には無いだろ? 折角だ、篠ノ之と楽しんでこい」

 

オツダルは真面目な顔でそう言ってくる。どうやら、俺を行かせたいもよう。

 

「はいはい、わかったわかった。だが、アレ(デートチケット)が手に入らなかったからって、恨むなよ?」

「フッ、その心配は不要だ。勝つのはこの私に決まっている」

 

そうかい、そうとだけ言って俺は箒を呼びに行く。

 

「箒、学園祭回ってこようぜ」

「しかし、いいのか? 休憩時間は十分しかないらしいが…………」

「なんかオツダル達がカバーしてくれるっぽいぞ。別に問題無くね?」

「オッツダルヴァが? それなら、いいか」

 

言っておくが、箒もメイド服なのだが、ちょっと胸が見えかかっていて危険だ。俺の精神を守るプライマルアーマーが削られているぜ…………

 

「そんじゃ、ちょっくら行くとしますか」

「ああ」

 

スーツ姿にメイド服という謎の組み合わせではあるが、これはこれで楽しいのかもしれん。

 

 

というわけで、俺は現在学園の廊下を歩いています。

いや、だってさ、回ってこいと言われたものの、いくあてねえし。ここといって行きたい場所もないんだよなー。

 

「箒、お前行きたいところとかある?」

「いや、特にないな。強いて言えば、道場の方か?」

 

道場か…………まぁいいんじゃねえの。なんか面白いものとかありそうだしな。

 

「よしじゃあ行ってみるとするか」

 

そう言って道場の方へと向かった。

 

 

「「…………」」

 

道場に来たのはいいが、なんといったらいいのかわからん。とりあえず、剣道場の方に来たんだが、そこにいたのは剣道着に身を包んだ怪しげな人間であった。しかもさりげなく水晶とか置いてあるし…………怪しさ満点だ。

 

「おお? やっと初めてのお客さんが来たようだねえ?」

 

何故に疑問系? 、と思ったがあえて突っ込まないでおこう。

てか、さらりとすごいこと言ったよな。俺らが初の客とか…………

 

「…………部長、なにしてるんですか?」

「これは、《紅の侍》こと篠ノ之君だね? いやぁ、普通にしちゃったらインパクトが無いと思ってね? 占いにしてみたんだよ? でも、それでもなにか足りないから剣道着に身を包んだわけ?」

「どこかネジが吹っ飛んでますね」

 

企業連ほどはぶっ飛んでないだろ、と内心思う。まぁ、そこまでぶっ飛ぶような事はないだろと思うが。

 

「ところで占いといっても、何占いを?」

「これだよ?」

 

そういって部長が取り出したのは

 

「キュイ〜?」

 

AMIDAだった。って、

 

「何処からんなもん仕入れたんだよ⁉ へ、これ何⁉ なんでここにAMIDAがいるわけ⁉」

「これはね? 凰君から借りたんだよ? 今、この子に頼っているけど、阿弥陀占いをしてるんだよ?」

「どんな占い⁉」

 

俺は果てし無く頭が痛くなって来た。てか鈴よ、すごいな。生体兵器のAMIDAがIS学園のマスコットになってるぜ。やっぱり好きな人は好きなんだな。俺は普通だが。

 

「ざっと、こんな占いかな?」

 

そういって部長が見せたのはアミダくじ(…………)だった。

 

「このくじの上をね? この子に動いてもらって行き着いた先が結果になるんだ?」

 

AMIDAの阿弥陀丸がアミダくじの上を動く…………ギャグか。というか、AMIDAもAMIDAで「キュ、キュ〜イ」とか言いながら、脚を動かしてノリノリになってるし…………もうどうにでもなれ。

 

「それじゃ、何を占う? なんでもできるよ?」

「部長の喋りがやっとまともに聞こえた」

「それじゃ、オススメで」

「よし? じゃあ、二人の運勢を適当に占うよ? 阿弥陀丸、やるよ?」

「キュ〜イ」

 

部長の合図と共に、AMIDAがアミダくじの上を動いて行く。その先にあるのは何かが書かれた物が入っていそうな封筒。しばらく、くじの上を動き続けて、一つの封筒を俺達の前に差し出した。

 

「どれどれ…………『女子は男との縁は切れない、相方に目を配れよ』だ」

「へぇ…………んで、俺は『逆流注意』⁉ 『暴走する事なかれ』⁉ どういう意味だ、こりゃ⁉」

 

流石にAMSから光が逆流することはねえだろ。てか、逆流ってなんなんだ? よく使うけどあまり深く考えたことないな。今度フラジールで検証してみよう。

 

「てか、よく見つけましたねぇ…………こんな、茶目っ気のあるくじ」

「そう? 他にも『水没注意』とか『範囲(エリアオーバー)注意』とかもあるよ?」

「どれも縁起じゃない…………」

 

水没注意とか…………オツダル見たら泣くんじゃね? あいつ、かなりダメージ深く負っちゃってるからな…………それでいいのかよ、オーメルランク1。

 

「それじゃ、占いは終わりだよ?」

「おお、そうすか。それじゃ、俺らはこれにて」

「キュ〜イッ」

「阿弥陀丸も元気で頑張れよ?」

 

時間も時間だったから、俺たちは教室の方に戻ることにした。あぶねー、休憩終わるところじゃん。遅れたら制裁が待ってるんだろうな…………。それを考えると、やけに嫌なので急いで戻ることにした。

 

 

 

 

 

「…………ハッ‼」

「どうした、CUBE?」

「プランG、所謂逆流ですね。主任は私を使って実験するつもりのようです」

「やめろ‼ それ以上言うとーー」

「あ、光が、眩しい光、脳に直接…………AMSから光が逆流するーーギャアァァァァァァァァァァァァァッ‼」

「…………言わんこっちゃない」

 

 

 

 

 

「…………おい、一瞬CUBEの断末魔が聞こえたような気がするんだが…………」

「ああ。あいつ、精神が脆いからな。ちょっと悲観的思考しただけで断末魔あげるぜ?」

 

とか言って誤魔化すも、俺が原因なんだろうか。逆流の実験をフラジールでやると思ってしまったから。それだったら本気で謝っとこう。

それはおいといて、何やら教室の方が騒がしいぞ? 何があったんだ?

 

「おい、なんだか騒ぎになっているようだぞ? 早く戻った方がいいのでは?」

「そうだな。とにかく、急ごう」

 

俺たちは小走りで教室の後ろーー喫茶店の裏口から入った。

 

「リュウ、戻ったのか」

「おうおう、こりゃ一体どういう状況なんだ? 誰か説明してくれ」

「それなら私が説明する。実はだな客の中に女性権利団体の輩が混じっていたようで、ちょっとした騒ぎになっているんだよ」

「原因は?」

「フィオナが応対していたんだが、どうもな…………何やらいちゃもんつけられたところを、レギアが仲裁に入ろうとしたが止めといたぞ」

「だろうな。あいつ、フィオナが絡むと流血沙汰にしてしまうもんな、何でもかんでも」

 

レギアも困るがそれ以上に厄介もんだな、とオツダルはやれやれと言った感じで呆れている。確かに、ああいった連中は好きじゃねえし、今までに楯突いて来た支部はことごとく壊滅(物理・精神・社会的)させてきた。

 

「学園祭の喫茶店だから期待はしてなかったけど全く…………誰が男の入れたコーヒーなんて飲むのよ!」

「きゃあっ!」

 

アマは頼んだコーヒーをいれたのがレギアだと知ると、そのコーヒーの入ったカップを必死で応対していたフィオナへ投げつけた。

無論、そんなの俺ら(企業連メンバー)が見過ごすわけにはいかない。幸いにも中にいた客はちょっと外の方に出ていたので、店内はガラガラ。つまり、制裁ができるのだよ。とりあえず、中が見えないように、能力つかってガラスをマジックミラーにしよう。勿論、向こうからこっちは見えないように。

 

「さて、そこまでにしてもらおうか」

「なんなのよ、あなた達は」

「さてな? 何処に喧嘩売ったかわからんようだし、『ステイシス』『シュープリス』『ホワイト・グリント』尋問やっちまいな」

 

俺の合図と共にオツダルが縄でアマを縛り上げ、ベルリオーズとレギアが互いにアマの頭に銃口を突きつけつつ、尋問していく。ちなみにわがこアマはすでに瀕死。てか、そのまま死ねよ、俺はあんたらのような人間が好きじゃねえんだ。

一方のフィオナだが、やっぱり投げつけられた時に、コーヒーを浴びてしまったようだ。やっぱフィオナにもネクストISを渡すべきか。オペレーター専用機として。だって、プライマルアーマーが大抵の事から守ってくれるからな。

まぁ、メイド服の方にシミがついてしまったようだね、これは。流石にこれは俺らが応対する場面ではないので、箒達に任せよう。なんたって、能力を無駄につかってメイド服を予備二十着生産しておいたのだ。不足分も余裕で補えるぜ。

 

「おい『バレットドラゴン』、尋問は終わったぞ。場所も聞き出せた。こいつは、日本の支部のやつらしい」

「オーケー。んじゃ、その身柄こっちに渡してくれや」

 

オツダルからアマの身柄を受け取った俺は、こんな事もあろうかと隣の空き教室に用意しておいたネクスト用OIGAMI(反動は無い)の薬室に炸薬と共に込める。無論、炸薬はたっぷりサービスだぜ。

 

「一名様、(海へ)お帰りで〜す‼」

 

その合図と共に火を吹くOIGAMI。すでに意識を失ったアマはそのままはるか彼方へと吹き飛んで行った。ははは、ザマァみやがれ。そのまま海の藻屑として消えるがいいさ。オツダルではないが、貴様には水底がお似合いだ。

 

「リュウ、私のセリフを取るな。空気になってしまうだろう」

「それもそうやったな、すまんすまん。てか、営業再開しようぜ」

 

俺はマジックミラーを解除してもとのガラスに戻す。うん、無駄な労力だったな。

みなさんどうやらお昼の時間らしく、今日解放されている学食の方に行ってしまった。無念‼

 

「着替えるといってもどれを着たらいいのかーー」

「これなんてどう?」

「か、簪⁉ わ、私にこれを着ろというの⁉」

「でも、これフィオナに合っているんじゃない?」

「静寐も⁉ で、でも、これスカート短いし、下も黒タイツとかじゃないし…………」

「別にいいのではないか? フィオナはドジっ娘だから、あってはいると思うぞ?」

「箒まで⁉ で、でも、このスカート明らかに短いでしょ⁉ しかも黒タイツじゃないから下手したら…………見えちゃうよ…………。って、ドジっ娘って何⁉」

「ちなみにフィオナにこのメイド服がお似合いだと思う人挙手してみて」

「「「「「ありじゃないか、フィオナ」」」」」

「み、皆の、裏切り者〜ッ‼」

 

な、なんなんだ? 更衣室側からすごい声が聞こえた挙句、フィオナの叫びが聞こえたぜ⁉ 箒、簪、静寐、シャルロット、お前ら何をやらかしたんだ⁉

 

「こっちは無事に終わったぞ、龍之介」

「お、おう。んで、そこのカーテンに隠れてるのはフィオナか?」

「ああ。だが、中々出てこようとしないのだ」

「だ、だって…………この格好は、ま、まずいって…………」

 

な、何がまずいのだろうか? やべえ、見るのが恐ろしく怖くなってきた。てか、俺そんな物用意したか⁉ した覚えがねえ‼

 

「ほら、大丈夫だって。…………じゃないとレギアがーー」

「わ、わかったわよ。出ればいいんでしょ! 出れば‼」

 

若干ヤケクソ気味になったフィオナが俺らの前に現れる。だが、俺らはその姿に言葉を失った。というのも、上は普通にメイド服だが、ミニスカに黒のニーソとローファーというレギアが大喜びしてしまいそうな装備。そして、なんとも言えなくなるのが、

 

「…………猫耳、だと⁉」

 

レギアも声に出して行ってしまいたくなる一品、猫耳カチューシャである。もしかして、山猫とリンクスをかけているのだろうか。なら残念だ、フィオナはリンクスではないのだよ。てか、猫耳カチューシャなんて何処から仕入れてきたんだよ。

 

「うぅ…………やっぱり恥ずかしいって…………」

「…………フィオナ」

「な、なに?」

「…………その格好で試しに『にゃ〜ん』と言ってみてくれ」

 

れ、レギア⁉ 貴様、フィオナに何をするつもりだ⁉ と思ったやつは俺だけじゃないはず。

 

「ふぇっ⁉ にゃ、何を突然言うのよ‼」

「…………やってみてくれ」

「や、やらないよ⁉ 絶対やらないからねッ‼」

「…………頼む」

「うぅ…………にゃ、にゃあ?」

 

フィオナはレギアに言われた通りにしたのだが…………なんなんだ、この破壊力は⁉ 周りをみてみれば、野郎共はともかく、女子達もなにか悶えており、男持ちの女性陣も「これは仕方ない」と言った感じで、フィオナに見入ってしまっている。

なんというか、あれだ。頬を少し赤く染め恥ずかしがりながらも、ちょっとだけ手でも仕草をし、上目遣いでレギアを見るその姿を見てしまえば、誰だってそうなるわな。これぞフィオナならぬ、ふぃおにゃですかな?

 

「…………」

「れ、レギア?」

「…………ガハッ…………」

「レギア⁉」

 

突然鼻から愛を噴き出しながら、崩れ落ちるレギア。その量はシャレになってない。ざっと見ても一リットル以上出てるんじゃね?

 

「…………こ、これは…………いい…………」

 

その言葉を最後にレギアは気を失った。って、

 

「レギアがぶっ倒れちまったぞ! どうすりゃいいんだ⁉」

「ダメだ‼ アスピナの連中もこれには対応できん‼」

「それよりも輸血だ‼ レギアにはそれが必要だ‼」

 

そんな感じで、ドタバタが引き起こされて大変だった。まぁ、珍しい物が見れたからよしとしよう。

あと、一組でふぃおにゃはすでに御法度となってしまった。何故か? あれは人類種の天敵だからだよ。男子も、女子も問答無用で虜にするからな。

 

 

 

 

 

「…………何故だろう、頭が痛い」

「レギア、世の中には知らんでもええ事だってあるから、今回は知るな。てか、知ったらOIGAMIな」

 

先程の羨まけしからんイベントにより気絶していたレギアも回復した事なので、現在俺たちは第六アリーナの方へときている。勿論、キャノンボール・ファストのためだ。用意しようとしたんだが、第六アリーナにはレースコースができてるもんだからな、驚いたぜ。

 

「それにしても、満員御礼だな。まだ時間の余裕はあるぞ?」

 

ジェラルドのいっている事もあながち間違ってはいない。というのも、すでに観客席は満席状態にあるからだ。それも、まだ開始まで十分以上時間があるわけだが…………どんだけ楽しみにしてんだよ。

 

十分後。

 

『これより裏生徒会によるキャノンボール・ファストを、始めます。まずは第一レースからいきましょう』

「おーし、お前ら定位置につけよ」

 

俺の一声で、すでに一つの景品にしか目がいってない野郎共はラインの上に並んだ。しかし、速いネクストISって、黒か白しか無くね? もっとこうカラフルでもいいんだと思うんだけどな。サベージビースト? あれはそこまで速くない。

俺はバカみたいに音のうるさいバズーカを構える。これがあれだ、トラック競技でよく使われるあれ。無論、炸薬だけの空砲だから安全性は保証するぜ。

 

『それでは間も無くスタートします。3…………2…………1…………始めッ‼』

 

その合図と共に俺のバズーカが轟音をあげる。それが引き金となってか、レースに出ている五機のネクストISは一斉にオーバード・ブースト、音速域に到達するまで一秒とかからなかった。

そう言えばこのレースのレギュレーションを説明していなかったな。

 

・基本オーバード・ブースト及びクイック・ブーストによる飛行動作。

・攻撃による妨害行為は認可。

・ただし、コジマ兵装は使用不可。

・アサルトアーマー使用不可。

・無論、VOBは使用不可。

 

という、至って普通なレギュレーションだ。

 

『遅いな』

 

流石はジョシュア、まさかの二段クイック・ブーストを出し、一気に他との差をつける。だが、これが妨害行為ありだから油断は禁物なのだよ。

 

『ふん。ホワイト・グリント、大袈裟な伝説もここまでだな』

 

アサルトライフルとレザバズを撒き散らせながなら、連続クイック・ブーストでジョシュアに食らいつくオツダル。そのスピードは周りが停滞(ステイシス)しているようにも見えるだろう。

レースも丁度ジョシュアが一周目をクリアし、その後続々と第二周へと突入して行った。

ここまでの順位は

・一位 ジョシュア

・二位 オツダル

・三位 レギア

・四位 ベルリオーズ

・五位 ジェラルド

と言った具合だ。やはり、ジェラルドが最下位か。あの破壊天使砲積むとエネルギー消費が激しくなるんだよな。てか、みんな僅差。そんなに差がついてないんだよな。

 

『このまま行くぞ‼』

『…………させるか‼』

 

突然、レギアが速度をあげ始める。そして、右手のライフルをオツダルが絶賛噴射中のオーバード・ブースタ目掛けて放った。って、おいコラ。何をやらかしてんだ、てめえは。

 

『オーバード・ブースタに異常だと⁉ ダメだ、出力が上がらん‼ くそっ、狙ったかレギア‼』

『…………‼』

 

オツダルが降下しながら文句言うが、レギアはガン無視で進み続ける。

 

『遅かったじゃないか』

『…………』

 

そして、ジョシュアと並び、勝負は第三周目まで突き進んだ。

ここまでの脱落者は今のところオツダルのみ。他はピンピンしている。というか、レギアの場合、オツダルのブースター狙いだったしな。事あるたびにブースターだけ撃ち抜く、ある意味変態だ。

 

『…………俺は、勝つ‼』

 

何を思ったのか、レギアは背面飛行を始める。そして、ジョシュアの真下へと入り込んだ。そこからはライフルのフルオート射撃に分裂ミサイルの嵐。

ジョシュアも避けるが、やはり速度を落とされてしまう。だが、ジョシュアも黙っているわけでもなく

 

『やらせんぞ‼』

 

アサルトライフルとレーザーキャノンを放つ。ラインアークのホワイト・グリントはオーバード・ブースト時に背部ブースターを左右に開く。つまり

 

『…………っち‼』

 

どうしてもブースターに当たる。だが、フラジールほどは脆くないから、そこまでのダメージは受けない。さすがワンオフ機。

 

『どうした? その程度なのか?』

『…………デートチケットは』

 

レギアは再度クイック・ブーストを繰り返していく。

 

『俺の物だぁぁぁぁぁぁっ‼』

 

その瞬間、レギアの姿が消えた。かと思いきや、かなり先の位置を突き進んでいた。もしかして

 

『二段クイック・ブーストだと⁉』

 

クイック・ブーストを溜めてからある一定のタイミングで出せるピーキーな技術、二段クイック・ブースト。ジョシュアの十八番である。この難易度が高い技術を、レギアは土壇場で成し遂げた。すげえ。

 

『…………俺は勝つ。勝ってフィオナとデートを楽しむ‼』

 

公言すんな、おい。某小隊長みたいなセリフになってんぞ。

勿論、このレースはレギアの圧倒的勝利で終わった。言っておくが、これらの会話は全然観客には聞こえてない。てか、聞かせたらまずい内容とかいっぱいありすぎるからな。

ちなみにその後のレースだが、

 

『当然の結果か』

 

第二レースはベルリオーズがグレネードではたき落として勝ち、

 

『遅い。この程度、ぬるかった』

 

ブースターの修復が終わったオツダルが第三レースを制し、

 

『許しは請わん、恨めよ』

 

第四レースでは、何処から持ち出したか知らんが、追加ブースターの00-ARETHA/Bを装備したジョシュアが余裕勝ちで、キャノンボール・ファストは幕をおろした。

これにより、ジェラルド以外全員がデートチケットを入手できた。一人入手できなかったジェラルドは、派手に落ち込んでいた。御愁傷様。

 

 

 

 

 

「おい、オブライエン。そこは抜けられただろうが…………」

「まあ仕方ない。あの分裂ミサイルを食らったら、確実に固められる」

「そういうお前は何にかけていたんだ?」

「レギアに決まっているさ」

 

ちなみに、千冬とローディーが観客席からレースを見ていた事を龍之介は気がついていなかった。その時の二人は大層楽しんでいたとか。

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