インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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最近は一万字超えが多い気がする…………


第三十四話 「いつも」が終わるまで

『私は国連安全保障理事会議長、マグルシリア・レーアスだ。この場を借りて私が皆の総意を代弁させてもらう。統合軍事企業連合及びIS学園は過剰に戦力を保有している。それは現代社会における国際平和の基調を乱す物であると、我々は判断した。たかが一介の企業がここまでの戦力を持つ必要があるか? いや、必要ない。つまり、彼らは我々と戦争をしようと画策しているということだ。我々はこれに対し、しかるべき措置をとる必要がある。彼らを野放しにする事はできない。彼らの炎が燃え盛る前に、我々常任理事国及び非常任理事国が結集し、制裁を下す』

「何をほざきやがる、クソアマが‼ 戦争をする気があるのはてめえらじゃねえかよ、この××××××な××××××が‼ さっさと××××××して××××××しやがれ‼」

「龍之介⁉ 落ち着け‼ 規制がかかるセリフが乱射されているぞ⁉」

 

俺がテレビで演説をしているクソったれなアマに向かって暴言野次を飛ばしていると、箒が押さえつけにきた。

 

「これが落ち着いていられるか‼ ふざけた事をぬかしやがって‼ 過剰に戦力を保有しているだとぉ⁉ だったら、平和利用目的のISを軍事利用してるのはどこのどいつなんだよ‼ シナプス繋がってんのか、あのア○ズレ」

「し、しかしだな、国連は私達と不可侵条約のようなものを結んでいるのではないのか?」

 

箒の言っている事は正解だ。俺ら企業連が設立した当初に干渉を避けるため、不可侵条約を結んでいる。どちらも手出しはしない、そういうものだ。

だが、白騎士事件後、国連のトップが変わり、不可侵条約などギリギリ首の皮一枚でつながっていたようなもんだ。しかも、そのトップもIS信者篠ノ之束信者であり、女性至上主義社会に染められた世界の礎を作ったような連中だ。

つまり、今回の件には篠ノ之束が関与している可能性がある。今まで散々ゴーレムやらなんやらを投入してきたにもかかわらず、全部大破させられてきたからな。おまけにコアはこっちで破壊してるし。

あんな上っ面だけの条約なんざ、すぐに破棄されるとは思っていたが…………ここまで早いとはな。

 

「ああ。だが、このご時世だ。俺たちを恐れていた国連はない。バカで低脳な女性至上主義のアマ共しかいねえ。あいつら、男のがどうたらこうたら言って、条約を破棄したんだろ」

「そ、そんな事、政治家が看過するわけーー」

「言っただろ、このご時世だって。政治家の殆ども女性権利団体に買収されてんだ。奴らが一枚噛んでいてもおかしくはない」

 

女性権利団体には本当に困っている。この間の学園祭の事もあるが、何かと面倒なんだ。街中でも、男に金を払わせたりしてるやつ、あれ全部奴ら。まぁ、何度かは物理的にぶちのめしたし、世界の方もORCAの面々やオールドキングやオータム達が喜んで殲滅してくれてるから、少しずつ男女の均衡が戻り始めている。

 

「それよりも、問題はこっちだ。国連側がどう出てくるかわからん。戦争状態に入る前に『揺りかご』の用意をしないとな…………」

「揺りかご? それは一体なんだ?」

「そうか、『揺りかご』は俺と親父しか存在を知らないのか。ちょうどいい機会だし、教えてやるよ」

 

俺は榴雷の空間投影ディスプレイを呼び出し、データを映し出す。

 

「こ、これは…………新しいフラジールのパーツーー」

「違うわ⁉」

 

ボケとツッコミの反転。まぁ、フラジールの新パーツにも見えなくはないな、現物を見た事がないやつには。だが、決して違うからな。

 

「こいつが『揺りかご』だ。正式名称クレイドル(揺りかご)。企業連以外の非戦闘員及び民間人を収容する、飛行型居住プラットフォーム。二千万人は収容可能だ」

「なるほどな。不安に怯える人を優しく抱いてくれるから、揺りかごと名付けたのか」

 

箒は理解してくれたようだ。クレイドルの建造はすでに完了している。企業連の擬似コアで作った収容所に量子変換して準待機。五分もあれば五機編成の一から六十までのクレイドルが空へ上がる。まぁ、ここまで使うかどうかわからないけど、GAの連中がさ

 

『人命第一‼』

 

とか言うもんだから、とんでもない数のクレイドルができてしまったんだよ。ん? 資金はどこから調達してきたって? 女性権利団体のサーバーから奴らの口座にアクセスして引き下ろしたよ。勿論、口止め用にマシな政治家にプレゼントしておいて。

 

「だがな、こいつには一つ致命的な欠陥がある…………」

「欠陥? ここまで素晴らしいものが、か?」

「ああ…………クレイドルはその構造上、プライマルアーマーを展開できない」

「一気に安心できなくなったぞ‼」

「護衛として002-Bが着くが、果たしてどうなのやら」

 

002-Bってさ、ネクストISより性能低いんだよね。しかも、コジマアサルトライフルを標準装備、左腕は一体化したコジマレーザーブレード。誤射ったりしてみろ、クレイドルが崩壊する。

 

「そう言う事だ。002-B以外にも護衛は付けるさ」

「ああ…………だが、この日本の土地だけは戦場にしたくないな」

「そいつぁ…………俺も、俺達も同感だ」

 

俺はそう言ったのち、意識を手放していた。

 

 

 

 

 

「それにしても、まずい事になっちまいましたねぇ」

「ああ。てか、ヤバすぎんだろ。戦争だぞ、戦争。あ、整備よろしくね、シゲさん」

 

俺は久々に企業連軍事特殊技術研究部に戻ってきていた。まぁ、一番は死神システムが起動した後の榴雷のメンテナンス。あれの後は細かい検査やらなんやらでいっぱいだしな。そのためにも、榴雷開発部(とは名ばかりのとんでも技術者の集まり)の整備班によるメンテを頼む他ない。

ちなみに今話していたのは芝茂雄。整備班の班長だ。有澤重工時代からの古い付き合いでもある。榴雷の整備は専らシゲさんにしか任せていない。

 

〔それじゃ、シゲさんお願いね〕

「おう、ルリアちゃんじゃないの。そらもう、任せちゃってくださいよ。この男シゲがバッチリやりますよ‼」

 

シゲさんに整備をさせると、その後はものすごくよく動けるようになる。流石、整備士の鑑だ。

 

「あれ? 龍之介、お前も来ていたのか?」

「お、一夏じゃん。どうしたの、一体?」

「あ、一夏君もきたか。よっしゃ、それじゃ新作パーツを付けるから白牙展開してねー」

「あ、はい。お願いします、シゲさん」

 

どうやら、一夏はシゲさんに呼ばれてきていたようだ。というか新作パーツって…………まさか、

 

「ほほーいっと、整備完了。異常箇所ないから問題ないよ。それと新作パーツを取り付けるとしようかね〜」

 

そう言ってシゲさんが持ち出したのは、でかい積層シールドのようなものだった。

 

「し、シゲさん、こいつはーー」

「そうさ、主任のにも入ってるHW06エクシードバインダー。それのフライトモードだ」

 

シゲさんはエクシードバインダーを片手に持ちながら、一夏に説明していく。

エクシードバインダーは、シールド、ブースター、シザークロー、ライフル、フォトンキャノンと言った具合の、攻防両立兵器として申し分ない性能を持っている。

だが、ヘヴィウェポンシリーズでは最も扱いが難しい代物だ。重量もあるが、その特殊性もあり、使用者の賢明な判断が要求される。

 

「まぁ、そう気難しい顔するなって。こいつは俺からシゲさんに頼んだんだ」

「マジで? なんでまたこんなピーキーなブツを?」

「いや、白牙って火力低いだろ? だったら、俺が先鋒して切り込むしかない。そのためにブースターを頼んだんだ」

「戦争対策か?」

「それもあるけどさ…………もう、後戻りはできないんだろ? 千冬姉には言ってないけど、俺も企業連の仲間。俺が誘拐された時、助けにきてくれたレギアにも恩返しがしたいんだ」

 

…………気づいていたか。まぁ、わかるっちゃわかるよな、あんな目立つ機体に乗っているわけだし。

 

「まぁ、一番の理由はシャルだけどな」

「このリア充野郎が、羨ましいぞこのこの」

「お前も人の事言えないだろ、このこの」

「あ、あの〜、お二人さん? お願いだから、未婚の俺の前でその話やめてちょうだい…………」

 

シゲさんが目から汗を流し始めたので、この話題は打ち切りだ。

 

「あ、そうだ。ちょっと俺、散歩に行ってくるわ。シゲさん、後任せたよ」

「え? あ、ちょ、待って、待って下さい、主任〜‼」

 

俺はシゲさんの静止を振り切って、あのいつもの街へとむかった。

 

 

 

 

 

「やばー…………参ったな、これは」

〔そ、そう言えばシゲさん、今日って一年経った日?〕

「一年経った? 何の事だ?」

「主任の体に入ってるナノマシンの寿命…………」

「へ?」

〔ナノマシンを一年毎に打ち直さないと、あっくんがぶっ壊れるんだ…………〕

「それヤバくね⁉ マジで不味くね⁉」

「ルリアちゃん‼ 榴雷で打ち込んできて‼」

〔シゲさん無理‼ 内部から投薬できる量は足りないし、そもそもプロト・ナノはあっくん以外持ってないよ‼〕

「ぬぉーっ‼ なんてこった‼」

「オワタ」

 

 

 

 

 

俺は、軽く榴雷で飛んでいつもの街に来ている。まぁ、最近は戦闘続きだったし、この街は少し落ち着けるしな。それに、何かと思い出があるところでもある。

 

(っ…………なんだ、頭痛か)

 

だが、先程から変に頭痛がしており、まともに楽しむ余裕はなさそうだ。なんだろ、この原因? プロト・ナノの効果切れは明日のはずだしな、確か。

 

「あ、龍兄だ。やっほー」

「龍之介、お久しぶり」

 

何故かは知らんが、毎度毎度外出する度にリンに会っているのは気のせいだろうか。今回はミクと一緒に下校中の模様。なぜわかるかって? 制服着てるから。

 

「おう、久しぶり。あれ、今日って授業午前で終わり?」

「まぁね、なんか騒がしくなってきたから、教員の会議とかあるんだよ」

 

おそらく、戦争絡みであろう。でなければ、学校側もそんなことはそうそうしないはず。

 

「ふーん、そんで街の方に来たってわけか」

「そういう事、ねぇ龍兄も遊びにきたんでしょ? 一緒にまわろうよ」

「どこまわるつもりなんだよ」

「服屋さんとか靴屋さんとか?」

「無難だな」

 

まぁ、あとはいつ味わえるかわからない平和を堪能しておくのも悪くはないか。

 

「どれ、そんじゃ行くか」

「わぁい! ミク姉、龍兄、先行ってるよー」

「わ、ちょ、待ってよ、リン!」

 

ほんと、微笑ましい光景だなーと思ったりする。別に老けたわけじゃないんだが、最近こんな思考までできるようになってしまった。いいのか悪いのかよくわからん。

先に行ってしまったリンとミクの後を追うように、俺はついて行った。だが、その途中、また頭痛が始まった。それもさっきよりも痛みがはしる。さらに眩暈、手先の震え、異常な量の汗の分泌といった症状まで出てきた。まずい、これはプロト・ナノが切れてきた証拠だ。

俺はその場に崩れ落ちた。激しい頭痛と眩暈、足すら震えだし、立っている事すら辛い。

 

「り、龍之介さん⁉」

 

どうやら、ミクは気づいてくれた。

 

「龍兄⁉ どうしたの⁉」

 

ミクの声を聞いて、リンも反応してくれた。

 

「す、すまん、多分ナノマシンの効果が切れたみたいだ…………ナノマシンはここにあるから打ってくれ」

 

俺はズボンのポケットからあるケースをかろうじて取り出す。中には、五本の注射器がある。この全てに、俺のみが投与しているプロト・ナノが入っている。

プロト・ナノは企業連製ナノマシンだ。それも、俺専用の。義眼と義手を肉体と繋ぐ血液に近い存在。これがなければ義眼と義手は役目を果たさないし、必要なエネルギーを供給することもできない。加えて、俺の体の一部ーー内臓や筋肉の一部を修復する事もあり、俺にとっては必要不可欠。

しかし、複雑化した役割を持つため、今企業連で使っているナノマシンは次世代型。効果がきれる事はない。プロト・ナノは一年で役目を終える。定期的に打つ必要があるが、義手の肩にあるコネクタから打ち込まなければならない。一人では打てない。よりによって榴雷に入れておくの忘れてたからなぁ…………今度から気をつけとこ。

 

「で、でも、どこに打てばいいの⁉ わ、私、危ない薬も使った事ないし、使い方なんて…………」

「…………左肩の背面コネクタ、そこに差し込んで打てばいい」

 

俺はかろうじて動く右腕で、左肩を露出させる。俺からは見えないが、そこには機械の塊が見えているのだろう。

 

「うっ…………り、龍之介さん、これは…………」

「詳しい事は後で話す…………とりあえず、そこにある蓋を開けて打ってくれ…………」

「ふ、蓋って言われても…………」

「ミク姉! ここだよ、ここ! ナノマシン用コネクタって書いてあるよ!」

 

しばらくして、血管内にナノマシンが入っていく事を感じ、全身の筋肉が活性化していき、さっきと変わりない体調に戻る事ができた。

 

「ふぅ…………すまんな、迷惑かけちまったな。詫びといっちゃなんだが、あの喫茶店にでも入るか。俺、奢るぜ」

「あ、は、はい」

 

 

 

 

 

「おい、好きなもの頼んでいいんだぜ? あ、俺ブラックコーヒーね」

「そ、そういわれてもねぇ…………」

「な、なんか悪いような気が…………」

 

とりあえず、先程のナノマシン切れで倒れた事件現場から遠ざかるためと、お礼もかねて喫茶店に来たわけだが、何だか二人とも緊張しているんだよなぁ…………。俺、悪い事でもしたか?

 

「別に俺がいいって言ってるんだ。気にすんなって。…………それとも、左腕の事とか気になっているのか?」

「「‼」」

「まぁ、詳しい事は後で話すって言ったもんな。話してやるよ、お前らが注文した後で。てか、ミルクティーとオレンジジュースでいいか?」

「「十分です!」」

「おっけー、オーダーしておくから」

 

という事で、注文の品が届くまでしばらくお待ちください。

 

「さて、飲み物が届いたところで、話すとするか」

 

俺がそう言うと、二人は緊張した顔つきになった。

 

「あれは八年前だったかな。ちょっといろいろあってさ、一夏が誘拐されたんだよな」

「ゆ、誘拐⁉」

「ミク姉! 声が大きい!」

 

慌てて口を噤むミク。幸いにも今は客がそんなにいないため聞かれてはいなかったようだ。だが、聞かれていたらな…………俺、誘拐犯扱いじゃん、絶対。

 

「ミク、これからは何が起きても驚くなよ」

「は、はーい。気をつけます」

「んでな、一夏はヤクザに連れていかれたんだ。無論、大人は助けようとしたが相手はヤクザ、手出しできなかったわけ。そんな中一人のバカが乗り込んじゃったわけ、ヤクザの本拠に。あの時はやばかったなー。一歩遅れていたら、一夏はこの世にいなかったのかも」

「で、でも、一兄は助かったんでしょ?」

「ああ。でもな、ヤクザは銃をたくさん持っててさ、撃たれちゃったの、そのバカ。一夏と助けに来た俺の嫁さんの退路を確保するために一人残った。すでに左腕は撃たれてるのに。向こうからはロケットランチャーを撃たれるし、こっちは自分の武器で腕が吹き飛ぶしさ、大変だったよ」

「…………どう考えても、そのバカって龍兄だよね?」

「まぁな。俺は一夏を助けるために右眼と左腕を犠牲にした。それだけは変わらないさ」

 

俺は少し冷めたコーヒーを啜る。うーむ、やっぱりレギアのに飲み慣れてしまうと味が薄く感じる。

 

「…………やっぱり、龍之介さんってすごいね」

 

ミクが突然そんな事を言い出した。

 

「よせよ。俺はそこまでいい人じゃないんだ…………あの時も、あの日も、昨日も、俺は人の命を奪っているんだ」

「…………それでも、すごいよ龍兄は。龍兄は奪ってばっかりって言ってるけど、守ってもいるじゃん。一兄だって元気に生きているんだからさ。龍兄は誇りを持ってもいいんじゃないかな?」

「誇りか…………」

 

確かに俺は人間を両手の指の数以上殺してきた。だが、その果てに守った物は今もあるか。そう聞かれたら、イエスとしか答えられない。それは俺の周りにも、今俺の目の前にもいるから。

 

「…………まぁ、悪いもんじゃないからいいか」

 

また一口コーヒーを啜る。ミクはすでに飲み終わっている模様。未だリンはオレンジジュースをちびちびと飲んでいる。…………リンってさ、究極の可愛さの塊なのか? 箒は可愛いというよりも美しいとか『京都美人』みたいな感じだからな。

俺の視線に気がついたのか、リンは目線をこちらへ向けてくる。だが彼女は気づいていない。それが上目遣いになっているという事を。それを見たミクがものすごい勢いでツイ○ターをしているのはスルーしておこう。

 

「さて、そんじゃ他のところにまわるか。買い物する予定だったんじゃないのか?」

「そういえばそうだったね。気を取り直していこうよ。ね、ミク姉?」

「…………リンちゃんなうリンちゃんなうリンちゃんなうリンちゃんなう…………」

「ミク姉‼」

「ふみゅっ⁉ な、なに、どうかしたの⁉」

(あんたが一番どうかしてるぜ…………)

「もぅ、買い物行くよ」

「俺、会計すませてから行くわ。待っててくれよ」

 

 

 

 

 

「楽しかったねぇ〜」

「うん、久しぶりだもんね、買い物に来るの」

「…………ず、随分買ったなお前ら」

 

現在、また小休止代わりに喫茶店に来ている。まぁ、何も頼まずに会話しているだけだがな。

それにしても、女子って買うんだね、服とか靴とか。俺の周りにはショットガンとかスナイパーライフルを欲しがるやつがいたから感覚がずれてきているのかもしれない。

 

「なんかね、お金に余裕ができたから、おしゃれとかしてみたくって」

「今までは、学校の制服だけしか着てなかったようなものだしね」

 

そういえば、俺らが援助をするまではかなり切り詰めた生活をしていたんだっけな。そりゃ、おしゃれとかしたくもなるはずだ。これが年相応の女子か…………なかなか見れないものかもしれん。俺の周りの女たちは、みなさん戦乙女。

不意に携帯が鳴る。相手は…………シゲさんか。

 

「あ、シゲさん?」

『主任、大丈夫ですか? バイタルが派手に荒れてましたけど』

「問題ないぜ。仲のいい友達に会ったから、プロト・ナノを打ち込んでもらったわ」

『本当、こっちでも忘れてやした。義手のコネクタに定期的に打ち込む装置をつけましょうって』

「ああ、そうする。それで、本題は?」

『ナーガの改修が終わったので、そろそろ戻ってきてもらっていいすかね?』

「了解。すぐに戻るわ」

 

ナーガの改修が終わったようだ。さてどんな機体に仕上がっているのやら。重装甲機だといいなぁ。

 

「ミク、リン、俺そろそろ帰るわ」

「もうそんな時間なんだ…………もう少し一緒にいたかったなぁ」

「ん? なんか言ったか?」

「ふぇ⁉ べ、別になんでもないよ⁉ あは、あはは」

 

リンはいきなり笑い出したかと思いきや、これまたいきなりずーんとかずどーんとかといった感じにへこんだ。あぁ…………なんかテンションが低い時に現れる黒い線が見えるんだけど。

 

「まぁ、また来るからさ。そん時はもう少し長くいてやるよ。それじゃあな」

「またね、龍之介さん」

「うん…………またね、龍兄」

 

少し名残惜しい感じもするが、俺は喫茶店を後にし、企業連本部へとむかった。

 

 

 

 

 

「龍之介さん、帰っちゃったね」

「あぁ…………この間のお礼、いつ渡したらいいんだろ…………」

 

龍之介が帰った後も、ミクとリンは喫茶店に残っていた。特に理由は無いが、なんとなくいたかった気分らしい。

リンはおもむろにバッグから一枚のCDを取り出した。それは彼女が歌った楽曲が入ったデータディスクである。リンは以前助けてもらった時のお礼として龍之介に渡したかったのだが、機会を逃してしまい渡せずじまいだった。

 

「まぁ、そのうちまた会えるよ。その時に渡せば大丈夫だって。それか箒さんとか一夏に会った時に渡してもらうように頼むとかさ」

「それもいいとは思うんだけどさ…………龍兄には直接渡した方がいいような気がするの」

「そういえばリンって一夏よりも龍之介さんに頼っているもんね。ふ〜ん、なるほどなるほど」

 

少し赤い表情で話すリンをニヤニヤしながらミクは言葉を続ける。明らかに獲物を見つけた猛獣の表情である。

 

「リンってさ、実は龍之介さんの事がすーー」

「わ、わわわわぁぁぁぁぁぁっ⁉ み、み、ミク姉⁉ な、何を突然言い出すの⁉」

「というか、テンパりすぎ。もしかして図星だった?」

「…………」

 

リンはさらに赤い表情で俯く。

 

「そ、それは…………そう、だけど。龍兄には箒さんがいるし、私じゃ釣り合わないよ」

「別にいいんじゃない。釣り合うとか釣り合わないとか関係無いし」

「そ、そうかな?」

「龍之介さんの事だから『俺には嫁さんがいるけど、二人目の嫁がいても、二人とも平等に全力で愛してやる‼』みたいな事言ってのけそう」

 

言えてる、リンはそう言ってくすりと笑った。最初は、一夏と同じ近所のお兄さんのような存在。だけど、みんなよりも自分にかまってくれる龍之介に、いつしか心が惹かれていたのかもしれない、そう彼女は思っている。

 

「でも、龍兄の腕は驚いちゃったよ。まさか、義手だったなんてね…………」

「前に固定用ボルトがなんとかって言っていたから、少しはわかっているつもりだったけど…………肩口にすごい火傷の痕が見えたよ」

 

完全に肉体とつながっている義手を見たのは、二人にとって相当な衝撃を与えたにちがいない。肩口の切断面には火傷の痕が見られ、肉体と義手がボルトでつながっている。

だが、ミク達は知らない。そのつながっているボルトも龍之介の意思で解除可能な爆砕ボルトである事を。

 

「それでも龍兄はすごいよ。誰かを助けているんだから。私には到底出来ないよ」

「そういえば龍之介さんって苦手な物あるらしいよ」

「え? そうなの?」

「そう。なんでも、絵は全く描けないらしいし、チーズを食べられないんだって」

「超意外過ぎてビックリ」

 

この瞬間、龍之介が盛大なくしゃみをしたらしいが、二人の知らない事である。

日も傾き、そろそろ喫茶店を出ようかと、二人は席をたった。その時だった。

 

「お前ら、絶対に騒ぐんじゃねえ‼」

 

突然、覆面を被った怪しい男五人が入ってきた。背中にはリュックを背負っているが、そのファスナーの隙間から紙幣がチラチラと見える。どうやら、銀行強盗のようだ。

 

「へへっ、やっぱりこう言ってみるもんだな。簡単に黙らせる事できたぜ」

「おいおい、それはまだ取り出すんじゃねえよ。それに、下手に騒がれたら面倒だ」

「確かにな。だが、ここからどうする? サツの連中が嗅ぎつけるのも時間の問題ですぜ」

「だとすると、どうするかーー」

 

入ってきた強盗は何やら確認を始める。これからまた別の場所に移動するようだ。だが、

 

「犯人一味に次ぐ。君達は既に包囲されている。速やかに出てきなさい。繰り返す、君達は既にーー」

「誰だ! フラグを立てて成立させたバカは‼」

「あ、それ俺っす」

「このフラグメイカーが‼ いらねえフラグばっか立ててんじゃねえよ‼」

 

どうやらとんでもないフラガーがいた模様で、警察が喫茶店の周りを囲んでいる。さすが法治国家日本と言うべきなのか、こういう事に関しての対応は早い。

 

「どどうします、ボス⁉」

「狼狽えるな。ここは任せろ。俺は警察には譲歩しない」

「ボス‼ 任せましたよ‼」

 

強盗の方は放っておいても問題なさそうなので、一方の二人は

 

「な、なんでこんな事になっちゃうの⁉ 今日のラッキーアイテムの長ネギ持ってなかったから⁉」

「そ、それよりも、あの強盗達…………銃を持ってるよ‼」

 

もちろんこんな事を経験したはずもなく、ミクは焦りはて、リンにいたっては今にも泣き出しそうである。

強盗達が持っているのは、ショットガンとハンドガンだけである。流石にグレネードランチャーのような重火器ではないが、それでも一般人にとっては脅威であることに違いはない。

 

「とりあえず、車を用意させた。それまでくつろがせてもらうか。おい、そこの緑髪と金髪」

 

緑髪と金髪と呼ばれ、ミクとリンはビクッと体を震わせ、おそるおそる強盗リーダーへ顔を向ける。リーダーが所持しているのはスパス12。暴力的なまでの反動が伴うショットガンであり、又の名を『鉄の嵐』。世界で最も凶暴な銃器の一つである。それを肩に担いでリーダーは二人に指示を出した。

 

「お前ら、俺らに茶を出せ。早くしろ!」

 

この時、二人は思った。"従わないと、殺される"、と。

 

「は、はい…………」

 

ミクの焦燥感は最高潮に達し、リンの涙腺も崩壊寸前だった。それでも二人は、殺されないよう強盗達の指示に従うことにしたのだった。

 

 

 

 

 

「ん? なんかあったのか?」

 

丁度、帰るために榴雷を展開しようとした時だった。爆発音らしき物が聞こえた。あの音は、リボルビンググレネードランチャーの40mm擲弾が起爆する時の音だったはずだ。爆発時の煙を目で確認した。

そんな時、榴雷の緊急回線に通信が入る。

 

「こちら龍之介、どうぞ」

『おぉ、主任! 無事ですか⁉』

「シゲさん…………どうしてそうなんの?」

『いや、だって、主任が今いるのって下木戸(ゲキド)街っしょ。ついさっきなんすけどね、そこで銀行強盗が発生してるんすよ。もしかしたらなー、なんて思って』

「まず言うぞ。俺と強盗、まともにやりあったら強盗が死にかけるぞ」

『それもそうっすね。強盗は今、近くの喫茶店に立てこもってるらしいっす。人質もいるようでっせーーって、おい! 誰だ[02]を起動させたやつは! おい!』

 

そこで回線は切られた。02が起動している? 確かあれは感応プログラム[ココロ]を搭載した実験機…………まさか、一度触れたあいつに反応したのか⁉

いろいろと思考を巡らす俺に、今度は携帯が鳴った。

 

「はいもしもし」

『あ、有澤さん? どうも後藤です、二課の』

 

相手は下木戸警察署二課の後藤警部からだった。公務員で企業連とパイプを持つのは難しい事では無いが、誰もやらんからね。変態の集まりだし。でも、警察関連にはお世話になっているけど。

 

「後藤さん? もしかして強盗事件のやつっすか? 人質はいるの?」

『相変わらず情報が早いねえ。七人ほど取られてるらしいよ。あ、本題忘れてた。強盗達が迎えの車所望しているから、61でこっち来て』

「マジ? 別にいいっすけど、金は口座に振りこんどいてくださいよ」

 

そうして携帯を切った。さて、後藤さんに言われた通りのものを用意しますか。どうせ何しようが俺らの勝手だ。

俺はアイテムメモリ(小型化したアイテムボックス、現在はこちらが普及)から、ある物を取り出した。出した瞬間、地面は比喩抜きで揺れた。

それは、装甲に覆われ、無限軌道の脚部を持ち、二つの砲門を持つ、かつての陸の王者。

61式5型戦車。

前モデルの58式を改良し、装甲と火力及び不整地走破性能の強化を施した、有澤重工製の戦車。ちなみに対空防御も完璧。戦車の弱点とも言えるものはほとんどなくなった。

二連装155mm滑腔砲、7.62mm重機関銃装備。だが、搭乗員のスペースは狭く、二人乗るのが限界だ。こいつは企業連主戦力の一部である。まぁ、企業連がまともなものをつくるはずが無いだろう。こいつは、ISの攻撃にすら耐える装甲を持っているからな。挙句、時速も110キロ程で走破するし。

とりあえず、俺はそいつのドライバーの席に座った。ドライバーと車長兼砲手のシートはかなり離れている。ほとんどを弾薬庫と自動装填装置に食われているしね。

再び携帯が鳴った。全く、今日はどんだけ鳴ったら気が済むんだよ。

 

「はい、こちら有澤ですが」

『あ、龍兄⁉』

「どうした、レン。そんな焦った声をして?」

『み、ミク姉とリンが、全然帰ってこないんだよ‼ すでに帰ってくる時間はすぎてるのに!』

「マジかよ、それ! ちょ、俺これからお前のとこ迎えに行くから、あれを持って待ってろ!」

 

レンからの情報では、未だにミク達は帰ってないらしい。となると、やはり巻き込まれた可能性大だなこりゃ。

 

『わかった! 早く来てくれよ!』

「任せとけ!」

 

電話を切り、俺は61式のエンジンを起動させる。装甲の猛獣を動かす鋼鉄の心臓が唸りをあげ、無限軌道の音が派手に鳴り響かせながら、住宅街を走っていった。ちなみに、近隣住民はビビっていたがな。

 

 

「龍兄…………まだ来ないのかよ!」

「お、なんか言ったか、レン」

「遅いよ、龍兄…………って、えぇ⁉ せ、戦車⁉」

 

まぁ、驚くよな。突然迎えに来たと思いきや、目の前に戦車がいるんだから。

 

「時間がない。ドライバーシートは俺が乗っているから、砲塔の方に乗ってくれ」

「じ、状況がよめてないけど、の、乗ればいいんだよな?」

「早く乗れ!」

「はいぃぃぃぃっ!」

 

レンを砲塔の方に乗せ、俺は再び61式を進ませる。

 

『そ、それより、なんで戦車? 普通に来てくれても…………』

「馬鹿野郎。奴らが武装してたらどうするつもりだ。それに、こいつはちょっとした頼みで動かしている。あと、俺、暴徒鎮圧用ISメンテ中だから」

『武力制圧しかプランがない⁉』

「それが、一番簡単だし、俺のポリシーにもあっている」

 

流石に滑腔砲は撃たないけどな、と付け加えて俺は61式を停めた。なぜなら、目的地にはついたからな。すでに警察が包囲しているようだが、強盗達もそれに対抗してなのか籠城状態。未だに人質解放のめどは立ってない。

 

「お、どうやら来たみたいだねぇ。ほんじゃ、俺らは待機、後処理担当ね」

 

後藤さんが、そう合図を出し、俺らにもゴーサインを出してくれた。よし、仕事始めますか。

 

「んじゃ、レン。お前は喫茶店の裏口から入って行け。ただしアーバネルゼを展開してな」

『了解、龍兄。もし、強盗達と出会ったら?』

「撃て」

『容赦ねえ‼ と、とりあえず現場の判断でやっておくよ』

「オーケー。とにかく、早く行け」

 

レンはハッチを開けると、この間渡した自衛用のネクストIS[アーバネルゼ](頭部をホワイト・グリント、胴体を063AN、腕と脚部をLANCELのアセン)を展開し、裏口へと向かっていった。さて、俺の方もやりますか。

 

「おい、犯人一味ども、聞こえるか?」

 

スピーカー越しで犯人一味に話しかける。このスピーカー、肉声と同じ音が出る、優れもの。開発元はなぜかMSAC。ちなみに集音マイクも、壁越しであれ音を拾えるチート性能。開発元はMSAC。

 

「ああ? 今度はなんだよ」

「いや、お前らのとこさ今狙ってるから、さっさと投降してくれ。でないと撃っちまいそうなんだよ」

「へっ、日本の警察が弾撃てんのかよ。こっちには大金はたいて買った銃火器があるんだぜ。むしろこっちが撃ちてえくらいだ」

「んじゃ、撃てば? 俺表にいるから、撃ちに来いよ、馬鹿野郎共が」

「こ、この野郎…………! 舐めやがって!」

 

どうやら、癪に障ったらしく、一人が手にサブマシンガンを持って出てきた。だが、強盗はそこで気づけたかな。目の前にあるのが、滑腔砲の砲身である事に。

 

「あれ? 撃つんじゃねえの? 撃たねえんなら、撃っちまうぜ?」

「おまっ、ちょ、はいぃぃぃぃっ⁉ アイエェェェェェェッ⁉ センシャ、ナンデセンシャ⁉」

「うるせ、黙れこの野郎。降伏するのと滑腔砲ぶち込まれるの、どっちがいい?」

「降伏します‼ お、お願い、警察の人、た、助けてくださ〜い‼」

 

強盗はマジ泣しながら警察の方へ向かっていった。よし、一人は制圧したと。

どれ、俺も中を制圧しますか。

61式のドライバーシートの裏には大量の火器が仕舞ってある。おふざけで作った対ISミサイルとかも。その中から、比較的平凡なアサルトライフルを取り出し、喫茶店の中へ正面から入っていった。61式は格納したけどな。

 

 

「お、お前はなんなんだよ⁉ な、何が目的だ‼」

「うっせ、黙れこの野郎。あと眠っとけ」

「ひぎゅっ!」

 

強盗の頭に弾丸を当てていく。一発一発が致命的ダメージを及ぼすものだから、人なんて簡単に気絶する。その気になりゃ象だって失神するからな。ちなみに今ので三人目。まだいるのかもしれない。俺は歩みを進める。

 

「全く、弱えなぁ…………さっさと制圧して帰ろ」

「てめえ、そこを動くんじゃねえ‼ この女達がどうなってもいいのか‼」

 

さっさと制圧して帰ろうかと思った矢先、人質の二名に強盗達がそれぞれ銃口を突きつけていた。しかもスパス12。挙句、人質は

 

「龍兄…………‼」

「龍之介さん…………‼」

「人質ってお前らかよ⁉」

 

まさかのミクとリン。あいつら、まだ帰ってなかったのか?

とりあえず、さっきまでの腑抜けた思考は排除だ。今はこっちに集中しないとな。流石に誤射はないが、照準がブレる。

 

「さぁ、銃を下ろせ」

「ちっ、しゃあねえな」

 

俺は渋々従う事にした。ん? そんなにあっさりいってもいいのかって? だってもう、後ろの方にレンと02がスタンバイしてるんだもん。てか、やっぱ02はここに来たんだ。

 

「随分素直だな」

「まぁね。人質は殺されたくねえし、素直に従うもんだよ。うんーーやれ」

『こいつでもくらえ!』

 

強盗が油断した隙に、構えていたレンが対暴徒鎮圧兵装である電磁警棒を使い、鎮圧する。一応流れる電力は300万ボルトだからな、気絶くらいはする。

一方の02は、かなりあかん。強盗の頭を掴み上げてそのまアイアンクロー。気絶した本体に対してスタンナックルを五発も叩き込んだ。いや、それもうアカンて。死ぬから、下手したら死んじゃうから。とにかく、02はひとまず量子化して回収っと。

とまぁ、何はともあれミクとリンは解放、なんとか状況はいい方へと向かってきた。

 

『龍兄、こっちは何とかなったぜ』

「お、そうか。とりあえず、無事でよかったな、お前ら」

「ふぇぇぇぇぇん‼ 怖かったよ〜‼」

「レン、ありがとう。ところで、そのIS、どうしたの?」

『龍兄から貰った。男の俺でも使えるんだぜ』

 

こうして、全てが終わると思っていた、その矢先だった。

 

「畜生! 捕まってムショ暮らしになるくらいなら、いっそぶっ飛ばしてやらぁ‼」

 

起き上がったリーダーが革ジャンを広げると、中から姿を現したのは、60メートル四方を吹き飛ばせそうなレベルのプラスチック爆弾。所謂C4だ。それも腹巻きのようにつけているから、撃ち抜くにも無理がある。てか弾が暴徒鎮圧用にゴム弾だしな。

 

「つくづく面倒な野郎だぜ…………レン、下手に刺激するなよ、奴さん何をしでかすかわからん」

「どうするんだよ…………この状況まずくない?」

 

まずいのはわかってはいるんだけどさ、大抵何が起きるか予想はつくんだよね。

 

「おい」

 

ふと、聞き慣れたあの声が聞こえた。

 

「何だ、お前はーーッ⁉」

「その手に持っているコントローラを捨てろ。さもなくば、貴様の首をはねるぞ」

 

だって、箒が紅椿を展開して、強盗の首元にブレードを突きつけているんだぞ。この一撃だけでも、十分な威力は示す。

 

「ひ、ひいぃぃぃぃぃっ‼」

 

強盗はあまりの恐怖に耐えられなかったのか、起爆ボタンから手を離した上に、意識まで手放してしまった。

 

「おう、箒。助かったぜ」

「全く…………お前はいく先々で運が無いな。とりあえず、遅いから連れて来いと言われてーー」

「はいはい、わかったわかった。こっちも片付けは終わったから、そろそろ帰ろうと思っていたんだ」

「それならいいんだがな」

「あ、ついでだから、こいつら送ってきてもいいか?」

 

俺はそう言って、後ろの巻き込まれたメンツを指差す。

 

「そう言うと思った…………ああ、勿論構わないぞ」

「よし、じゃあ、帰るか」

 

全員が俺の言葉に頷き、肯定の意志を示す。こうして、俺たちは帰路についたのだった。

 

 

「ところで龍之介、ミク達をどうやって送って行くつもりなのだ? 榴雷だけでは無理なような気がするが…………」

「あ、心配ねえよ。こいつがあるから」

 

俺はアイテムメモリより再び61式を呼び出した。

 

「いや待て‼ 公道で戦車を走らせるな‼」

「ゴムパッドを付けてるから、アスファルトには傷つかねえぜ」

「これ、定員二名だろ⁉」

「砲塔の後ろのガードに乗っていてくれ。まぁ、なるようになるさ」

 

到着までの十分ほど、四人ほど派手に揺さぶられていた。ちなみに俺は何ともない。昔から、こういうのに乗っていたからな。

 

 

 

 

 

「シゲさーん、今帰ったで」

「おお、やっと帰ってきた。それじゃ、早速改修後の機体の御披露目だ!」

 

俺が帰った時、ナーガのお披露目会が始まった。その被せられていたシートが剥がされ、そいつは姿を現した。

頭部こそ変わってはいないが、それ以外はパーツが丸っと変わっていた。胴体は細かい装甲が貼り付けられ、TE耐性が上がっている。腕に至ってはもう完全にKEフレーム。追加のフレームで強化されている。脚部は盾パーツが廃されている代わりにCE装甲が取り付けられ、爪先も日本の爪状のパーツになり、ブーストチャージ時の攻撃力も上がっているように思える。

 

「こいつは…………ナーガなのか? 外観が大きく変わっていているな…………」

「仕方ないんすよ、初期型パーツのオンパレードじゃ中々厳しいもんでっせ。装備も少し改良加えてるんで、もう蛇龍(ナーガ)じゃない。ここは一つ新しい名前を、いかがすか?」

「こいつの? どんなやつなの?」

 

シゲさんは、一呼吸おいてから、その新しい名前を言った。

 

「ーー死火神龍(ティアマト)。全てを焼き尽くし、死を呼ぶ神の龍。どうです、この名前は?」

「ティアマト、か…………いいじゃん、その名前」

 

俺は新機体ーーティアマトの装甲に触れる。それと同時に、単眼カメラも碧に輝く。そう、俺を受け入れるかのように。

 

「よろしくな、ティアマト」

 

そう一声をかけて、俺はティアマトを待機状態にする。今度は、紅と黒、碧が織り成す模様を持つリストバンドに変わる。随分と洒落たもんだな、こりゃ。

 

「しゅ、主任! 主任はどこですか⁉」

 

俺が新たな相方に感慨深い物を感じている時に、カラードは少しの慌ただしさを見せる。そして、俺の元へグローバルコーテックスの人員がやってきた。その表情には焦りが見える。

 

「どうした? 俺はここにいるぞ」

「主任! 大変です! 先程、IS学園に向けて高熱原体が多数向かっているとの情報が‼」

「お、おい待て。それは、観測ミスじゃないのか?」

 

俺は突然知らさられた事に驚きを隠せなかった。それもそのはず、IS学園には未だ多くの生徒達がいるんだ。もし、その高熱原体がICBMだったら、シャレになんねえ。

わずかな望みをかけ、嘘である事を願ったが

 

「ーーいえ、観測班が確認し、本当の事であります」

 

その願いは虚しくも砕け散り、嫌な現実だけが目前にあった。

 

「そう、か…………わかった。シゲさん」

「ほい?」

「榴雷をD型装備に、あとEXA(エクステンドアームズ)03と05もセットしておいて。すぐに出る」

「あいよ…………って、正気⁉ 正気ですか、主任⁉」

「ああ、正気だ」

 

こうなってしまったら仕方ないんだ。もう、後戻りはできない事態にまで進んでいる。

なら、俺はどうする。変わらない、そんな俺の行動理念は変わらない。

 

「ーー全てを、焼き尽くす。それだけだ」

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