インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第三十五話 終リシ日々

IS学園に突如として鳴り響き渡ったアラーム。時刻は午後八時。多くの生徒はいつもと同じ時間を過ごそうと考えていた、その矢先だ。警報が鳴り、ライトが通常時から準警戒(レッドアラート)になり、非常用マニュアルに従って生徒達はシェルターへと避難し始めた。

 

「い、一体何が起きてるの⁉」

「これはただ事じゃないよ‼」

 

そして、いつも通りに集まっていた専用機持ちの面々も例外ではなかった。突然の事に、冷静に物事を考えるシャルロットも普段は大人しい簪も焦りを隠せられなかった。

世界でも屈指の防衛能力を誇るIS学園に危機が迫っている、それだけは誰もが理解していた。

 

「本当になんなのよ! また中国のバカ共がやらかしたんじゃないでしょうね⁉」

「中国だけではありませんわ! 祖国イギリスも何かをしでかした可能性が!」

「他にもアメリカやロシアの可能性も否定できん…………何が始まろうとしているんだ?」

「そんな事…………誰にもわからないよ。今は状況の収拾を待つしかない」

 

自国への不安を抱えるものは不安を曝け出し、比較的落ち着いている者はただ事態の収束を待っていた。状況がわからないのであれば、手の出しようがない。かえってそれが、彼女達に焦燥感を与えていた。

 

『現在待機中の専用機持ちに告ぐ。直ちに職員室まで集合せよ。繰り返す、専用機持ちは直ちに職員室まで集合せよ』

 

そんな時、校内放送で千冬からの招集命令が下された。その声の重みはいつにまして、重く感じる。そんな中でも一人、不敵な笑みを浮かべるものがいた。鈴だ。

 

「さて、どうやら仕事が入ったようね。鬼に怒られる前に行くとしますか!」

 

その言葉に惹かれるかのように、現在学園に残っている六人の専用機持ちは駆け足で職員室へと向かった。

 

 

「これで、今いるのは全員か…………」

 

職員室で待っていた千冬は、少し不安に満ちていた。

 

「仕方ありませんよ…………各国の代表候補生達は既に国に戻っていますし…………」

 

楯無のつぶやきも最もだ。いつ戦争に入ってもおかしくない、このご時世。その戦力の中心となるのがIS。しかし、ISがいくら頑丈でも、パイロットには限りがある。帰国していった彼女達は一種の補充兵なのだ。

 

「しかし、これだけの精鋭が集まってくれたんだ。良しとしよう。それでだ、お前達に頼みがある」

 

千冬は一呼吸おいてから言葉を続けた。

 

「現在、IS学園に向けて多数の高熱原体が飛来してくる。おそらくミサイルであろう。お前達には山田先生と協力し、IS学園の防衛を頼みたい。無理にとは言わん、お前達の意思も尊重する」

 

その顔に曇りが出ている千冬はそう告げた。自分の教え子を戦場に出してしまうことを後悔している、そんな表情である。無理もない。いくら訓練を積んだ代表候補生と言えども、その本質は十代の少女だ。そんな彼女達に戦場という特殊な場所は、いるだけでも精神に異常をきたすもの。千冬はその事を誰よりも感じているであろう。かつての()()()のパイロットであるなら。

 

「織斑先生…………今、私達には国からの招集がかかっているんです。10月15日までに来い、と。これが何を意味しているかわかりますか?」

 

楯無からの一言。それを聞いた千冬はカレンダーを見た。そこにある日付は十六日。

 

「お前ら、まさか…………」

「そのまさかですわ。国を離反しましたの」

 

セシリアがそう言った。代表候補生や国家代表が国を離反する、それは反逆行為に等しいものである。

 

「いやいや〜、参ったわよね〜。ISの強奪犯として指名手配されるのは」

「今は関係ないでしょ。元ロシアの私も、貴方達も、企業連の人間よ」

 

そう、彼女達は企業連へと移籍したのである。

 

『国がきな臭いので企業連に移りたいですわ』

『オッケー。んじゃ、サインして』

『国に嫌気が差したし、両親を殺されたから企業連の尖兵になるわ』

『敵討ちなら俺たちにもされてくれ、歓迎する』

『簪ちゃんに誘われたから、企業連に入りたい、でもオッケー?』

『カモォォォォン! 更識とは仲深いからハンコだけでいいよ〜』

 

経緯はどうであれ、どこの国家にも属さない最強の戦力を保持する企業連。どのみち国から離反した彼女らにある唯一の道はそれしかなかった。

 

「そういう事なので、ここにいる全員、迎撃任務にはいれます」

 

千冬はずらりと並んだ彼女たちの目を見た。恐怖や怯えといった感情も見えたが、それよりも、戦うという意思が何より強く瞳に映し出されていた。

 

「わかった…………だが一つ私から命令がある」

 

彼女たちの意思を理解した千冬は、全員わかっているながらも、あえてこう言った。

 

「死ぬな。絶対に生きて帰ってこい」

 

その言葉を聞いた楯無達は

 

「「「「「「「了解‼」」」」」」」

 

一斉に千冬に向けて敬礼をした。

 

「全く…………いつから私は上官になったんだ?」

 

何時もなら鬱陶しそうに見えるこの行動も、千冬にとっては自身の心を落ち着かせるに、とても効果的だった。迷惑かけてしまったな、そう心の内で思ったに違いない。

 

「…………山田先生、後は頼みます」

「わかりました。皆さん、第二アリーナに集合してください。説明は追ってします」

 

いつのも子犬のような山田先生からは想像がつかない、落ち着いたその声。楯無達は、より一層気を引き締めた。

戦場へのカウントダウンは刻一刻と進んでいた。

 

 

 

 

 

「EXA-05の接続はまだか⁉ 03の接続は終わっているぞ‼」

「D型装備への換装遅い‼ あと二分で仕上げろ‼」

「第一小隊に招集をかけろ‼ すぐだ‼」

 

俺と一夏、そして箒は現在企業連第一カタパルトデッキにいる。ここで俺の榴雷の換装が行われているんだが、D型装備への換装がすこし遅れている。というのも、D型装備とエクステンドアームズ(榴雷やヴァイスハイト、白牙などのシリーズに対応する拡張兵装)の組み合わせはした事がない。だが、今回はそれをしなければならないほど、まずい事態であるのだ。

 

「一夏、今回は刀では厳しいぞ。射撃兵装の追加を頼んどけ。ガトリングとサブマシンガンがオススメだ」

「さっきシゲさんに渡された。メガスラッシュエッジの裏とエクシードバインダーのウエポンラックに装備しているぜ」

「龍之介、ベリルショットライフルの追加を頼めるか? 多分、弾薬が足りないと思うのだ」

「オッケー、手配しておく。三班! ベリルショットライフルの予備を持ってこい! ありったけだ!」

 

しかしここで悲しいのか、一夏と箒の愛機である白牙と紅椿・舞焔はVOBが背部の形状上接続が大変。そして、こいつらが慣れてないのが大きな要因だ。だから大型の機動戦用ブースターユニットであるEXA-05が必要だ。無論、向こうについたら、パーツは格納だが。

ちなみにEXA-02は一夏の白牙に標準装備。あれがないと防御が紙装甲になっちまうからな。

 

「D型装備、換装完了しました!」

「EXA-05の取り付け完了です!」

「頼まれていた機体とNSG-Z0/Dも格納してあります!」

「第一小隊の招集も完了です!」

 

その言葉通り、それぞれの機体を纏った第一小隊の面々が集まっていた。

 

「任務内容はわかっているな? 俺達は六年前と似た事をする事になる。だが、今回は死者を決して出すな! これが俺からの命令だ。異論はあるか?」

「あると思うか? 私はこの主犯を見つけて水底に沈めなければ、気が収まらないぞ」

「俺もだ。民間人を巻き込むわけにもいかない。あの時は守れなかったものを、今回守る。それだけだ」

「…………失うのは辛い。家族を失う思いをするのは俺だけで十分だ」

「私はもう嫌ですよ。学園にはやっとできた友達もいるのに…………それを失うのは嫌です」

「思いが深過ぎて俺の言葉なんて霞むかもしんないけど、仲間くらいはきっちり守りたいからな、漢として!」

「私は、友人と過ごしたあの場所を失いたくない…………これ以上失いたくはないんだ!」

「思いは決まったな? 総員、出撃態勢に入れ‼」

 

その一声で、全員がカタパルトへと接続する。俺の背部から伸びる一対のブースターユニットにそれぞれ一夏と箒が乗る。

 

『一番機、発進どうぞ!』

「いけるな? お前ら」

「ああ、問題ねえ」

「いつでも構わん」

「よっし、バレットドラゴン、榴雷、出る‼」

 

リニアカタパルトから打ち出され

た瞬間に、EXA-05の大出力ブースターに点火、VOBをはるかに超える速度でIS学園へ向かった。

 

 

 

 

 

龍之介達が北海道企業連本部を発った頃、IS学園では

 

「三時方向、高熱原体再接近! すぐに迎撃して!」

「こちらも手一杯ですわ! 他はどうなんですの⁉」

「こっちも限界よ! というか、対艦ミサイルなんて聞いてないわよ!」

「残弾60%…………いつまで持つかわからないよ!」

 

すでにミサイルの第一波がきていた。しかも、大陸間弾道弾ではない。比較的安価で、破壊力もある対艦ミサイルだ。着弾すれば、被害は大きいだろう。だが、IS学園には未だ目立った被害はない。楯無をはじめとする、特別編成の迎撃部隊がすべて撃ち落としているからだ。

しかし、第一波到達より二十分が経過しているわけだが、すでにこの時点で弾薬が相当消費された。このペース配分で消費してしまえば、すべて撃ち落としきる前に弾切れになるだろう。

 

「くっ…………散布ミサイル、フルオープン!」

 

一向に減る気配を見せないミサイル群に痺れを切らした簪は、背部の武装を散布ミサイルへと切り替え、撃ち放った。散布ミサイルは追尾性能こそ低いが、広範囲に撒き散らされる。そして、僅かな追尾で獲物を逃さない。面での制圧に特化している装備だ。

放たれた56発の小型ミサイルは周囲を巻き込みながら、対艦ミサイルを破壊していく。だが、その数は、全体の数から見てしまえば、微々たるものにしかすぎなかった。

 

「ちょーっと、これはまずいわねぇ…………」

「お姉ちゃん! どうしたの⁉」

「IRBM…………一発だけ混じってるわ」

 

IRBMーー中距離弾道ミサイルのことである。アラスカ条約にて、核兵器の搭載が許されてない兵器である弾道ミサイルだが、弾頭にそれに取って代わる強力な高性能爆薬が仕込んである。その破壊力は、小さな街であれば灰燼と化してしまうほどだ。皆が恐怖するのも当たり前である。

 

「セシリアちゃん、狙い撃てる?」

「撃てなくても、無理を通すまでですわ‼」

 

セシリアはやっとの事で会得したビットとの並行操作を駆使しながら、手に持つスナイパーライフルの照準をIRBMに合わせる。だが、まだトリガーは引かない。

 

「今ですわ‼」

 

そして、トリガーを引いた。蒼白いレーザーはミサイルの信管を射抜き、起爆させた。その余波に、周囲の対艦ミサイルも飲み込まれ、誘爆していった。そう、セシリアはこれを狙っていたのである。また、並行操作で操っていたビットによって、さらにミサイルの数は減った。

簪によるミサイルのシャワー、静寐の大火力、シャルロットと楯無と真耶による弾丸の雨、鈴による面制圧、セシリアとラウラによる的確なスナイピング。そして、学園側の対空兵器、CIWSや地対空ミサイルによって、彼女達は第一波を凌いでいった。

 

「皆さん! 第一波は残りわずかです! 気をつけて迎撃してください!」

 

真耶もまた、リヴァイヴに取り付けたパッケージ[クアッド・ファランクス]の四門ガトリングでミサイルを撃ち落としていた。普段なら公式戦で使い所の難しいクアッド・ファランクスも、物量がものをいうこういう面では重宝されるのである。

みるみる内にレーダーからはミサイルの反応が消え、いつの間にか反応は全くなくなっていた。

 

「熱源反応消失…………なんとか凌げたようだな」

「そうみたい…………っ! 熱源反応、再度出現!」

「何ですって⁉ 方向は⁉」

「こ、この真下! 皆! 気をつけて!」

 

安心したのもつかの間。シャルロットのレーダーには、三つの光点が出現した。その反応はミサイルではない。

全員の気が海面に向かった瞬間、海中より三機のISが出現した。

 

「あのフォルムは…………無人機!」

 

黒い装甲、異様に長い腕。いろんな意味で印象強く皆の記憶にある無人機。それが三機、同時に彼女達を襲った。

 

「くそっ…………こんな時にくる、普通‼」

 

まず無人機が襲いかかったのは、鈴だ。武装は何も施していない。その手自体が鋭利なクローとして機能しており、手のひらの中心には荷電粒子砲が搭載されている。

そんな改良が施された無人機のクローに、鈴は青龍刀で切り結んだ。

 

「なによ、こいつ…………パワーが前とは段違いじゃない!」

 

だが、近接パワー型である甲龍のパワーを持ってしてでも、無人機を押さえつける事はできない。少しずつではあるが、青龍刀がクローによって削られ始めた。

 

「まぁ、弾切れなったから、どう考えてもこっちの仕事よね!」

 

楯無もまた、無人機にランスを突き立てる。アクアナノマシンによる水のドリルランスが、装甲を削るが、シールドバリアによって阻まれ、致命傷を与えられない。楯無は、この時ばかりは、シールドバリアの存在を疎ましく思った。

 

「これは本当にまずいわね…………」

 

気がつけばランスの切っ先は無人機の掌で押さえつけられ、その中心には荷電粒子砲がチャージされていた。

 

「よりによって私かぁ…………ついてないよ」

 

残りの一機は静寐に向かった。静寐は両手にハイレーザーライフルを呼び出し、撃ち放った。だが、それは容易にも無人機に回避されてしまう。

 

「まぁ、そうなるとは思っていたけどね!」

 

両背部のユニットを起動する静寐。それは、デュアルハイレーザーキャノン。二発のハイレーザーを放つ兵器。それを躊躇いなく放った。無人機は再び回避しようとするが、その破壊の奔流の前では、左腕を犠牲にする他なかった。

 

「やっぱり、勝つには使う事も考えないとね、OVERED WEAPON07を」

 

ネクストISでも勝つ希望の見えない事態に、静寐は焦りを感じていた。

さらに追い打ちをかけるかのように

 

「ミサイル第二波、来ます!」

「中に足の速いのが十機以上いる! そいつも無人機だ!」

 

ミサイルの第二波、十機以上の無人機。ただでさえ消耗している彼女達にとって、それは絶望にも等しいものであった。

 

「助けてよ…………助けてよ!誰か‼」

 

シャルロットの叫びは迎撃されていくミサイルの爆発音にかき消された。機体の傷も時間が経つ度に、増えていった。

鈴のダメージは計り知れない。衝撃砲を全て失い、残された武装は青龍刀一本。機体は今にも無人機に潰されそうだ。

楯無も同じだ。ランスは半ばまで罅が入り、アクアクリスタルを三分の一破壊された。防御力はかなり低下した。

セシリアは比較的ダメージはないが、それでもビットを二基も失い、レーザーライフルの弾数も心許ない。

ラウラは、無人機との戦闘でレールカノンを損失。ワイヤーブレードも多数失い、戦闘力を大きく削がれた。

シャルロットは、常に爆風と無人機のパルス砲にさらされ、装甲の多くに亀裂が走っている。使える火器も今手に持っているハンドガンが最後だ

簪は、途中無人機によって右背部のミサイルランチャーを破壊され、その衝撃で機体を大きく損傷していた。背部の兵装はもう使えないだろう。

静寐は無人機と撃ち合い、切り結び続けた結果、鈴と同じくらいダメージを受けていた。もはや、ここまでよく落ちなかったというレベルだ。

また、真耶をはじめとする教師部隊も限界が見え始めていた。本当の意味での絶望が、彼女達を襲った。

 

「早く…………早く来てよ‼ 龍之介ぇぇぇぇぇぇっ‼」

 

シャルロットの叫びは、今この場にいる誰もが思うことであった。だが、この場に彼はいない。誰もが、IS学園の消失を考えたその時だった。

不意に一機の無人機が、斜めに斬られた。そして、降り立つ深紅の機体。

 

「待たせてしまったな、皆」

 

紅椿・舞焔を纏った箒であった。

 

「ほ、箒!」

「私だけではないぞ」

 

そう箒が言うと、

 

「俺らの学び舎に手を出してんじゃねえぇぇぇぇぇぇっ‼」

 

白牙を纏った一夏が、片手で雪片弍型を振るいつつ、左腕に取り付けたダブルガトリングガンでミサイルを撃ち落としていく。

 

「沈め、カスどもが!」

 

オッツダルヴァが

 

「失敗は許されんからな!」

 

ベルリオーズが

 

「…………過ちは、繰り返さない!」

 

レギアが、それぞれの得物でミサイルを撃ち落とし、死力を尽くして防衛線を構築する。

そして、彼女達は見つけた。全身に武装を施し、翡翠の光を撒きながらこちらへと向かってくる機影を。

 

「全機、配置につき次第、迎撃作戦を開始せよ! 一発たりと撃ち漏らすな!」

 

誰もが待ち望んだ人間、有澤龍之介と強化された愛機の存在を。

機体名、榴雷D型(デストロイ)装備。破壊のための火器を満載した龍の相棒がその咆哮を上げた。

 

 

 

 

 

「全武装、安全装置解除! FCSロック、最大! 炸薬量、限界値に設定!」

〔EXA-05を格納! 単一仕様能力、解禁! ついでにリミッターも解除!〕

 

ー右背部、NW大型ガトリング

ー左背部、NW二連装ロングレンジリニアカノン

ー背部中央、NWマルチパーパスランチャー及びミサイルコンテナ

ー右肩部、NW大型対弾シールド及び十八連ミサイルランチャー及び二連装マルチランチャー

ー左肩部、NWガトリングガン及び七連装ロケットランチャー及びリニアバズーカ

ー右腕部、NW二連装オートキャノン

ー左腕部、NW二連装オートキャノン

ー右脚部、NW複合ミサイルコンテナ

ー左脚部、NW複合ミサイルコンテナ

ー全火器類、炸薬調節システム『キ○ガイ』にて適用

ーリニアシステム、電荷限界上昇、出力最大

ー単一仕様能力、[ENDLESS BULLET(終わりなき銃弾)]発動

機体制限(リミッター)解除、シールドエネルギー上限[無限()]、プライマルアーマー密度180%へ上昇

ーSYSTEM COMBAT MODE

ーM38TYPE2 DESTORY-TYPE [ENGAGED]

 

IS学園上空に来た俺は直様、ルリアに指令をだす。と言っても、FCS関連とかそういったもの。それだけのはずなのに、リミッターまで解除してるし…………この際、嬉しい誤算だがな。

そういったことを考えると、こいつはすでに飛んでもない破壊兵器である。というか、このハリネズミが負ける気がしない。主にリミカで。

 

〔ミサイルの第二波を確認、というかもう迎撃しているよね?〕

「たりめーだ、すでに散弾やら鉛玉、マイクロミサイルまで撃っているっつーの」

 

とにかく撃ち放たれる多数の弾丸やミサイル。それらは確実にミサイルを喰らい潰していっている。

今回、リニアカノンとリニアバズーカを装備しているわけだが、中身を拡散弾にセットしてある。しかも、分裂弾の全てが榴弾。爆風で信管を刺激して起爆処理は余裕なもんだ。

 

〔ミサイルの第三波! 発射地点を確認! アメリカとロシアの連合艦隊みたい〕

「よし、MPL(マルチパーパスランチャー)1、4にハルバードをセット。発射地点に照準を合わせてくれ」

 

俺はルリアにハルバード巡航ミサイルをセットするように指示する。ハルバードは大型のミサイルで、前に使用したハープーンとは比べようがない。使用弾頭はSK-01高濃度圧縮弾頭。核弾頭クラスの破壊力を手にした魔物だ。

 

〔セット完了! いつでもどうぞ〕

「よし、一番四番、ファイア!」

 

マルチパーパスランチャーより放たれたハルバードはミサイルの中を突っ切っていく。というか、第二波を削るに削ったからな、すり抜けやすいのも理由にあるか。

しばらくして、遠方で翡翠のきのこ雲が生じた。さすが、コジマ粒子とS-11の合成弾頭だ。余波で対艦ミサイルの多くを消し、本来の目的である、連合艦隊を壊滅させた。だが、あくまでレーダーでの判断のため、正確性は低いんだがな。

 

「各機へ通達! ミサイルは残り僅かだ! 無人機に注意しつつ迎撃せよ!」

「そう言われても、無人機がしつこいのよ!」

 

無人機は明らかに兎の差し金であろう。出なければ、こんなにISは投入してこない。それに、よく見りゃ、あれらはネクストIS用にかなり強化されていやがる。普通のISにはちと厳しいな…………。

 

〔あっくん…………何だか、皆がうずうずしてるんだけど…………〕

「そうか。どうやら自分の力を求める人のところに行きたがってるみてえだ。構わん、全機出しちまえ!」

〔皆! 自分のパートナーのところへ行って! 皆の力が必要だから!〕

 

突然、榴雷より飛び出た七つの光。それらは各方向へ飛び散り、力を求める人の元へ、戦場を駆け抜けた。

 

「さて、本腰いれるか…………全火器類、フルバァァァァァァァスト‼」

 

未だ残るミサイルと無人機に向けて、全身に積み込んだ火器を放った。戦場に、爆音と銃声のオーケストラが開演された。

 

 

 

 

 

(このままじゃ…………いつかは殺されるわ‼)

 

残された青龍刀一本で、ほぼ無傷の無人機と切り結ぶ鈴。だが、残された青龍刀も、刃が欠け始め、刀身にも罅がはいっている。いつまで耐えきれるのか、鈴にもそれはわからなかった。

 

「きゃあっ! こ、のぉ‼」

 

不意に回し蹴りをもらい、鈴は後ずさりせざるを得なくなった。体勢はまだ戻ってない。そこへ放たれる荷電粒子砲。普通なら速く見えるそれも、今の鈴にはひどく遅く見えた。

 

(あぁ…………死んじゃうのか、あたし…………ごめん、RD…………あたし、あんたの事ーー)

 

そして、破壊の光が鈴にーー当たることはなかった。

来るであろう痛みがない事に鈴は疑問を持ち、閉じていた目を開いた。

そこには大剣を二本構えた、マゼンタの装甲を持つISがいた。

 

「な、なんなの、この機体は…………」

〔待たせたな〕

「しゃ、喋った⁉ てか、声男⁉」

〔驚きすぎ…………姉さんの事、知らないのか?〕

 

マゼンタの機体は、無人機と大剣で切り結ぶ。だが、鈴の時とは違って、こちら側が圧倒的に優勢だ。現に、クローに刃が食い込んでいる。

 

〔まあいいか。俺はRDに頼まれた事を遂行するだけだ〕

 

そういうと、無人機を大きく弾き飛ばし、鈴の装甲にその手を触れた。そして、鈴と機体を光が包んでいく。

 

[コア相互リンク完了]

ーコジマドライヴ、正常稼動

ープライマルアーマー、展開

ーTCSユニット、正常稼動

ー大剣『ベリルバスター』、装備

ー肩部『インパクトランチャー』、装備

[NSG-X2/AD フレズヴェルク・アーマードラゴン、起動します]

 

光が弾け飛び、自身の姿がはっきりした鈴は驚いた。先程まで纏っていたボロボロの甲龍とは違い、突然現れたあの機体を纏っていたのだから。

 

「な、何がどうなっているのよ⁉」

〔これで俺はお前の専用機となった。もとよりお前の専用機だったらしいからな。まぁ、名前は形式番号だけだが〕

「へぇ、ならあたしがつけるわ。あんたとあたしの甲龍で二頭の龍…………甲龍・双蛟(ふたつみずち)なんてのは?」

〔気に入った! いくぞ、鈴!〕

「オッケー! いっちょ暴れるわよ!」

 

そういうと、鈴はブースターを全開、弾き飛ばされた無人機に切りかかった。

 

「さっきのお返しよ!」

 

その手に持つのは大剣ベリルバスター。ベリルユニットと呼ばれる機関から生成されるエネルギーは計測不能。故に強力であり、ISのシールドバリアなど

 

「おぅりぁぁぁぁぁっ‼」

 

いとも簡単に切り裂いてしまう。それにより無人機は左腕を切り落とされ、バランスを崩す。危険を感じたのか、無人機は距離を取ろうと後退したが

 

「逃がすか! あんた、右肩のやつをチャージ! 左肩は連射に切り替えて!」

〔任せろ! てか、俺の名前は劉 老龍(リュウ ラオロン)だ〕

「今はそんなこといいわよ! さっさとあれをぶっ潰すわよ!」

〔…………とんだじゃじゃ馬だな…………右肩部、チャージ率95%! 左肩部はいつでも撃てるぞ!〕

「わかったわ! こいつを黙って喰らいなさーい!」

 

鈴は左肩部のインパクトランチャーを連射する。このインパクトランチャー、砲身内部でTCSユニットが衝撃波を引き起こしている。それにより生じた衝撃波を放つのは衝撃砲と似ているが、インパクトランチャーの威力とは比べ物にならない。

連射された衝撃波は無人機を容赦無く穿つ。その衝撃で無人機は地表へ叩きつけられる。連射モードでこれなのだ。

 

「とどめよ。これでおさらばね」

 

右肩部のチャージされていたインパクトランチャーが放たれた。音速レベルの衝撃波の砲弾が無人機の胴へ着弾。その衝撃で無人機は四肢を飛び散らしながら爆炎へと飲まれた。圧倒的な破壊力、鈴は今まで苦戦していたのが嘘のように思えた。

 

「まぁ、なんにせよ、これからよろしくね、ラオ」

〔ああ、よろしく頼むぞ、鈴〕

 

新たな相方を纏った鈴は、ブースターを再点火、未だ戦闘を行っているみんなの元へ飛翔した。

 

 

 

 

 

「なんなんですの⁉ この無人機は⁉」

 

あらかたミサイルを迎撃したセシリアにも無人機の牙は向かっていた。すでに唯一の近接武器であるインターセプターは失われ、ひたすら距離をとって狙い撃つしかない。だが、無人機の機動力の前では無意味であり、逆に荷電粒子砲とパルス砲で削られていた。

 

「て、ティアーズ!」

 

残された二基のビットを飛ばし迎え撃つにも、かえってこちら側の損失を広げる結果となった。ビットはパルス砲で破壊され、セシリアの武装は手に持つレーザーライフルのみとなった。もはやセシリアに戦闘力と呼べるものはほとんどなかった。

 

「そ、そんな…………」

 

そのことに狼狽え、動けなくなった彼女に無人機はクローを突きたてようと一気に接近して来た。しかし、それは上空より放たれたレーザーによって阻害された。

 

「こ、今度はなんですの⁉」

〔あらら、驚かせちゃったようだな。ま、状況もやばいし、少し強引だが、させてもらうぜ〕

 

上空より降り立った蒼の機体は、その手に構えるライフルを下げ、セシリアの腕に触れた。すると、眩い光が蒼の機体を中心に広がった。無人機は好機と思い、チャージした荷電粒子砲を放った。だが

 

「その攻撃は効きませんわよ」

 

眩い光の中より現れた、あの蒼の機体。セシリアはそれに搭乗していた。その周りには翡翠の電撃を帯びたような球状のバリア、プライマルアーマーが展開されている。荷電粒子砲はこれにより、無効化されてしまった。

 

[コア相互リンク完了]

ーコジマドライヴ、正常稼動

ープライマルアーマー、展開

ーTCSユニット、正常稼動

ースナイパーライフル『ベリルショットスナイパー』、装備

ー肩部『スターリット・ティアーズ(星空の涙)』、装備

[SA-17/BT ラピエール・ブルーティアーズ、起動します]

 

そのウィンドウが消え、それと同時にセシリアは、スナイパーライフル『ベリルショットスナイパー』を構えた。長大な銃身は、セシリアの丈を遥かに超え、構えるのも一苦労だ。その構える隙に、無人機はクローで切りかかってくる。

 

「ビットをお任せしますわ」

〔はいよ! 全機、乱れ撃つぜ!〕

 

しかし、その隙を埋めるかのように両肩のビット『スターリット・ティアーズ(星空の涙)』を、射出する。その数、ブルーティアーズの三倍である十二。その全てが、高密度レーザーを放つことが可能だ。

ビットは縦横無尽に駆け回り、無人機へとレーザーを放っていく。その度に無人機は、いたるところを抉られ、右脚を撃ち抜かれた。そのせいか、バランスを失い、一度停止した。

 

「その隙、もらいましてよ‼」

 

その隙を猟犬(ビット)持ちの狙撃手(セシリア)は見逃すはずがなかった。その手に持つベリルショットスナイパーより放たれた高エネルギーは銃身内で臨界を突破し、闇に包まれた空に一条の軌跡を描いた。

無論、それはただの光ではなく、強力なエネルギーの塊。無人機の胴へ着弾したそれはコアを貫通し、その後ろにいたもう一機の左脚を吹き飛ばした。

 

「やれる…………これなら勝てますわ!」

〔それなら、一気に片付けるとしようか。あ、俺はニール・ガラント。よろしく頼むぜ、セシリア〕

「ええ。ニールさん? こそよろしく頼みますわ。ブルーティアーズ・シリウス、参りますわよ‼」

 

青星(シリウス)の名を冠したその蒼き雫は、戦場を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

「ちぃっ! こいつら、まだくるのか!」

 

ラウラは既に遠距離兵器を全て失い、プラズマブレードも右手のみ起動可能といった状態だ。それでも、無人機と互角に渡り合っているのは彼女の持つ技量が高いからだ。幾度もの交錯を繰り返す中、ラウラは焦りを感じていた。エネルギーがほとんど残ってないのだ。こちらの限界が刻一刻と近づくうえ、向こうのエネルギーがわからないというのは、相当な焦りを生み出す。

何度目になるかわからない切り結び。その最中、プラズマブレードが消えた。

 

「何っ⁉ このタイミングでエネルギー切れだと⁉」

 

そう、エネルギー切れだ。これでラウラは武装を失っただけではなく、自身を護るシールドバリアまで失った。

無人機はラウラを海面めがけて蹴り飛ばした。ラウラは海面に叩きつけられた時の衝撃を考え、受け身の体勢をとる。しかし、その衝撃はいつまで経ってもくることはなかった。代わりにあるのは、何かに抱かれているような感覚。なにが起きていると思い、ラウラは目を開ける。その視線の先にあったのは

 

〔無事か、ラウラ〕

 

漆黒の装甲に覆われたISがいた。

 

「お、お前は…………?」

〔後で話す。今はこっちが最優先だ〕

 

そのISがラウラの頭に手を乗せた時、光が辺りを包んだ。

 

[コア相互リンク完了]

ーコジマドライヴ、正常稼動

ープライマルアーマー、展開

ーTCSユニット、正常稼動

ーレールカノン『グスタフ』、装備

ーワイヤーブレード、装備

ー両腕部エネルギーブレード、装備

[M48/SR、ドラゴネッティ・シュヴァルツェアレーゲン、起動します]

 

「な、何なんだ一体…………」

〔お前のレーゲンと融合した、そうとしか言えん。それよりも、やつを撃破するのが優勢だ!〕

「そんな事、百も承知だ‼ 頼むぞレーゲン!」

 

ラウラは戸惑いを隠せなかったが、今は無人機を撃破する事が最優先だ。そう思い、背部のレールカノン『グスタフ』をチャージする。

 

「こいつを貰っていけ‼」

 

その言葉と共にレールカノンより高威力のAPFSDSが放たれた。その砲弾の破壊力は無人機の頭を掠めただけで抉るほどだ。しかし、まだ致命傷にはなっていない。

 

「ならば、動けなくするまでだ‼」

 

ラウラは肩部、腰部に搭載されたワイヤーブレードを射出する。このワイヤーブレード、ブレードにベリルユニットが組み込まれており、装甲に余裕で突き刺さる。無人機の腕を絡め取り、脚も同様にワイヤーが縛り付けた。その力は必死にもがく無人機の力を持ってしてでも抜け出せない。

 

「次は一撃だ! レールカノン、フルチャージ!」

〔了解!〕

 

絡め取った無人機のガラ空きになっている胴に向けて、レールカノンの砲身を向ける。レール基部には多大な電力が集積され、エネルギーの一部が漏れ出している。

 

「とどめぇぇぇぇぇぇっ‼」

 

そして、リボルバーが回転し、砲弾がチャージ限界に達したレール基部に進入した瞬間、電光が夜空を切った。無人機は爆発などする事もなく、パーツを彼方此方に撒き散らして消えた。

 

「さて、聞きたい事は山ほどあるが、今は仲間を助けなければならない。力を貸してくれ!」

〔言われなくても、いくに決まっている。あと、俺の名前はセルゲイ・グリードだ。行くぞ!〕

「ああ‼ セルゲイ、よろしく頼むぞ。シュヴァルツェア・ゲヴィッター、出る‼」

 

黒き雷雨(シュヴァルツェア・ゲヴィッター)を纏ったラウラはその雷の一撃に等しいレールカノンを放った。

 

 

 

 

 

「くっ…………弾がもうないよ!」

 

唯一弾薬が残っているハンドガンを撃ち尽くし、パイルバンカーとアサルトブレードで無人機と切り結ぶシャルロット。だが、機体のダメージは無視できないものになっている。殆どの装甲に罅が走り、少しのダメージででも砕け散りそうな程だ。さらに言えば、一夏の支援を受けられないため、戦況は劣勢であった。

 

「せえぇぇぇぇぇいっ‼」

 

一か八か、シャルロットはグレー・スケールを全弾無人機に打ち込んだ。だが、無人機はその手で受け止め、クローが二本吹き飛んだ程度のダメージしか受けなかった。

 

「う、うそ、でしょ…………」

 

シャルロットの弾薬は完全に尽きた。ブレードもパイルも損耗が激しくて、数回打ち合えば折れそうな程だ。それでも無人機は攻撃の手をやめる事はない。

 

「きゃあぁぁぁぁっ‼」

 

シールドが砕け散り、守る術までも無くした。一夏はそれに気づけてたようだが、無人機達に囲まれており動けない状況だ。

 

〔やらせるかよ!〕

 

そんな時、上空より弾丸が放たれた。それは、無人機とシャルロットを分断し、無人機の攻撃を中断させた。

 

〔ま、間に合ったぜ…………すぐ力になってやるから、ちょっとだけ我慢してくれよ‼〕

「え、ちょ、何⁉ 何が起きてるの⁉」

 

そう降り立ったオレンジ色のISが言う。その手がシャルロットの肩に触れた瞬間、光が彼女を包んだ。

 

[コア相互リンク完了]

ーコジマドライヴ、正常稼動

ープライマルアーマー、展開

ーTCSユニット、正常稼動

ーマルチキャノン、装備

ー左腕部『ブラック・スケール(黒の鱗殻)』、装備

[YSX-24RD/RR、ゼルフィカール・リヴァイヴ、起動します]

 

光がおさまった時、シャルロットはあのオレンジ色の機体を纏っていた。左腕には大型のシールドとパイルバンカー。両手には大型の銃が握られていた。

 

「こ、これは一体…………⁉」

〔君の機体と俺が融合したのさ。さて、早いとこ奴を倒そうぜ!〕

「う、うん!」

 

シャルロットは両手のマルチキャノンを交互に放つ。放たれるビームは無人機を掠めはするものの、直撃には至らない。無人機はクローを禍々しく光らせ、彼女へと切りかかった。普通なら高速切替でブレードに持ち替える彼女だが、初めての機体で武装もよくわからないのであれば、呼び出すのは無理だ。

 

〔マルチキャノン、フォームシフト〕

 

無人機のクローはシャルロットには当たらなかった。マルチキャノンが中折れし、そこからビームブレードが展開されていた。

 

〔サポートはこっちでしっかりする。そのパイルを目の前のスクラップにぶっ刺せ!〕

「言われなくても、とどめはさすよ‼」

 

シャルロットは左腕のブラック・スケールを無人機に叩き込む。すると、シールドの先端が展開しクロー状となり無人機を押さえ込む。そしてレールガンの原理でパイルが無人機の胴に打ち込まれ、見事貫通した。無人機にも絶対防御はあるが、それを普通にぶち抜いてしまった。つまり、絶対防御の作動をはるかに超える速度で打ち込まれたのだ。シャルロットはその事に若干の恐怖を抱いた。

 

〔何とかなったようだな…………〕

「そうだね…………ところで、君は何者なの?」

〔俺? 俺はウィルバー・アーク、コア人格さ。あと、機体名変えれるけどどうする?〕

「うーん…………リヴァイヴ・バレットテンペストでどうかな?」

〔いいね! よし、他も片付けにいこうか!〕

「うん! みんなにもウィルバーの事紹介しないといけないしね!」

 

シャルロットは両手にアサルトライフルを呼び出す。今度は高速切替が可能だ。ウィルバーが武装リストを彼女の頭にインプットしたからだ。

戦場に再び銃弾の嵐(バレットテンペスト)が吹き荒れるのは、そう遠くはない。

 

 

 

 

 

「さてさて…………私も潮時かしらね?」

 

楯無は無人機との戦いで、既に機体を撃破寸前までに追い込められていた。ランスは損失、アクアクリスタルは一個だけが残っている。こんな状況では、装甲が極端に少ないミステリアス・レイディにとって撃破されたも同然である。

無人機は荷電粒子砲のチャージに入っており、最高出力で撃とうとしているのが推測できる。

 

「簪ちゃん、ごめんね…………お姉ちゃん、あなたの結婚式に出られなさそうだわ…………」

 

いつもなら冗談で言うセリフも、本気で言っているかのように聞こえる。彼女の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。これから死ぬ恐怖なのか、妹である簪の結婚式に出られないのが悔しいのか、おそらく両方だろう。

チャージは限界に達している。破壊の奔流が銃口より迸るのを待つだけだ。

 

「それじゃ、さよなら…………」

 

破壊の奔流が放たれた。眩いほどのピンクに輝くその光は楯無を殺すべく突き進む。

 

〔死なせるかぁぁぁぁぁぁっ‼〕

 

しかし、その光は舞い降りた騎士のようなISが持つランスで切り払われた。

 

〔お前は絶対に死なせん! 手を貸せ!〕

「ちょ、ちょっと!」

 

舞い降りた水色の騎士は楯無の手を取る。再び楯無を光が包んだ。しかし、それは破壊の奔流とは違う。再生の輝きだった。

 

[コア相互リンク完了]

ーコジマドライヴ、正常稼動

ープライマルアーマー、展開

ーTCSユニット、正常稼動

ー複合ランス『プリンケプス』、装備

ーアクアクリスタル、各TCSオシレータに内蔵

[NSG-Z0/E/ML、ドゥルガー・アクエリアス、起動します]

 

光が収まり状況が把握できるようになった時、楯無はいつもと違う何かを感じていた。それもそのはず、あの全身装甲のISを纏っているのだから。装甲の少ないミステリアス・レイディならなおさらわかるだろう。

 

「な、なんで私があの機体を纏っているの⁉」

〔そりゃ、俺が選んだからさ〕

「…………そんな事を言うあなたは何者?」

〔このコア人格、蒼嶋コウだ。機体名はドゥルガー・アクエリアス、変更するか?〕

「いえ、このままでいいわ。それに」

 

楯無はランスを構えて言葉を続けた。

 

「あいつをぎゃふんと言わせないとね‼」

 

その言葉と共に背部のブースターを起動、一気に距離を詰める。その手に持つランスには水がまとわれていた。それもただの水ではない。ミステリアス・レイディが持つアクアナノマシンとドゥルガー・アクエリアスのコジマ粒子が混ざり合った、対ISシールドバリア専用の兵装だ。

 

「これでどうなのよ‼」

 

数回打ち合い、無人機に無防備な姿を晒させた。そのガラ空きの胴体にランスが突き立てられる。そしてその刃は回転を始め、無人機のバリアを削って行く。

だが、無人機も肩のパルス砲を楯無に放ち、迎撃しようとする。だが、各TCSオシレータより発生させられたアクアナノマシンとプライマルアーマーにより完全に防がれた。

 

「おまけにこれも持って行きなさい‼」

 

楯無はプリンケプスに内蔵されたショットガトリングを放つ。高威力の弾丸が無人機へのダメージを蓄積させ、そしてバリアを切り裂いた。

 

〔ショットランサーシステム、起動!〕

 

コウのその一言で、ランスを覆っていた水は無人機へ放たれ、そして盛大な爆発を引き起こした。

 

「なかなかえぐいわよ、これ」

〔ミストルテインの槍の五倍近いダメージ出せるからな〕

 

そんな爆発で無人機が無事なわけがなく、胴体は消し去り、一部のパーツだけが残る達磨となって海中に没した。

 

「さて、みんなのもとへ行くわよ。奴らを全部沈めるわ!」

〔そらきた! さっさと行こうぜ!〕

 

狂気の水、その言葉が一番しっくりくるドゥルガー・アクエリアスは一気に夜空を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

「静寐! そっちは持ちそう⁉」

「無理無理! 装甲も弾薬も尽きかけてる!」

 

簪と静寐は皆より二倍近い無人機を相手にしていた。なぜかネクストISには無人機がたかってくる。その事には既に気づいていたものの、いつの間にか囲まれていたのである。

静寐はOVERED WEAPON07[TWIN HUGE MISSILE]を使おうとしたものの、展開する前に背部のウエポンラッチを破壊され使用不可、簪も同様である。最も、簪の機体には手持ち火器などプラズマライフルの他にはレーザーブレード以外装備されていないのだが。

 

「こっちはミサイルが一切撃てないのに…………!」

「まずい! ライフルの弾が切れた!」

「こなくそぉぉぉぉぉぉっ‼」

「もう、いっそ一思いにしてよーっ‼」

 

簪は若干口調が崩壊し、静寐に至っては死にたがる様だ。それだけ切羽詰まって、危機的状況におかれているという事だ。簪はレーザーブレードを展開し、無人機の一機へと切りかかった。

だが、無人機は非情にも荷電粒子砲とパルス砲を全て簪へと放った。装甲と武装、挙げ句の果てに機体フレームの一部まで抉られた打鉄弍式に、主を護る術は残されていなかった。

 

「か、簪! 避けて!」

 

簪がはっと気づくもすでに遅し。荷電粒子とパルスは目前に迫っていた。簪はくるであろう死の痛みに備え、目をつむった。

だが、簪にはいつになっても貫かれ焼かれる痛みは来ない。

 

〔間一髪だったな〕

 

全身装甲のISがプライマルアーマーを展開し、全て防ぎ切っていたからだ。

一方の静寐も

 

〔遅れてしまった。すまない〕

 

マントを翻し、全弾を防ぎ切ったISに守られていた。

突然のことに無人機は戸惑い、行動を停止した。

 

〔〔よし、リンク開始!〕〕

 

その声が彼女達の脳に響いた時、二人はその全身装甲のISを纏っていた。

 

[コア相互リンク完了]

ーコジマドライヴ、正常稼動

ープライマルアーマー、展開

ーTCSユニット、正常稼動

ー背部、ビームオーブガン、装備

ー各種ミサイルコンテナ、拡張領域内に装備

ー両腕部、マルチパーパスランチャー、装備

ーハンドリニアガン、装備

[NSG-04Σ、ヴァイスハイトΣ、起動します]

 

[コア相互リンク完了]

ーコジマドライヴ、正常稼動

ープライマルアーマー、展開

ーTCSユニット、正常稼動

大口径散弾砲(ショットガン)『ボクサー』、装備

ー連装バズーカ『ライドカノン』、装備

ー左腕部、ダブルバレルガン及びレーザーバヨネット、装備

ー八五式防弾布、装備

ーエクステンドブースター及びサブブースター、装備

ークラッシュアーマー、装備

[M32FP、ウェアウルフ・ストライカー、起動します]

 

「こ、この機体は…………」

「龍之介君や箒のと似ている…………」

〔さて、一気に始末するとしようか、簪〕

〔あの出来損ないをスクラップにしようぜ、静寐〕

「よし、それじゃ」

「やるとしますか!」

 

簪は全火器を展開し、静寐はブースターを点火し一気に敵陣へと突っ込んで行った。

 

「吹き飛べ!」

 

静寐は接敵する度に、高威力のショットガンを放つ。口径57mmの破壊力は凄まじく、放たれた徹甲散弾が装甲を喰らいつぶす。だが、無人機もただやられているはずもなく、パルス砲を放ってくる。

 

「効かないよ!」

 

無人機の反撃で放たれた電磁弾は、プライマルアーマーと八五式防弾布によって完全に防がれた。防弾布は荷電粒子砲の直撃にすら耐える物。パルス砲程度では何ともないのだ。

 

「簪、支援お願い!」

「任せて!」

 

しかし、一人で四機も相手するのは大変だ。静寐は簪に支援要請した。

 

「ーーマルチロックオンシステム、起動」

〔総ロック数、四。ミサイルコンテナ展開、R1からR4及びL1からL4、ハッチ解放〕

 

簪の両腕に、両足に、両肩に、夥しい量のミサイルを隠し持ったコンテナが装備される。中から姿を覗かせるのは、狙った獲物は逃さない(マイクロミサイル)

 

「龍之介君の真似だけど…………フルバースト‼」

 

その言葉が引き金となり、全身よりミサイルが放たれた。その放たれた姿を表すなら壁。静寐との斬り合い、撃ち合いに気を取られていた無人機は、自分に向かってくる狂犬に気づく事ができなかった。

 

「ひょえ〜…………相変わらずえぐい」

「そうかな? それよりもーー」

 

簪と静寐は同時に後ろを振り向き、背後から急襲しようとした無人機の頭部を簪がハンドリニアガンで撃ち抜き、コアを静寐がレーザーバヨネットで貫いた。気が付けば、彼女達の周りにいた無人機達はその姿を消していた。

 

〔これで一落着か〕

〔そうだろうかな?〕

「いや、みんなも戦っている」

「そうだよ。だから」

「「行くしかないでしょ‼」」

 

二人はオーバード・ブーストを起動、夜空に翡翠の軌跡を描いた。

 

 

 

 

 

(皆、無事でいてくれ…………‼)

 

ただ一人、戦線に参加できないでいる千冬は、指揮所となっている職員室で、皆の無事を願っていた。本来なら自分も訓練機を纏い、ミサイルを斬り捨てたい思いだが、彼女の反応速度に訓練機がついてこれない。以前も打鉄に搭乗したが、回路がオーバーヒートを引き起こしており、オーバーホールが必要なレベルだった。

 

「…………今の私は無力だ。ただこうしてみている事しかできないのか…………」

〔何故だ? 何故あなたはそう思う?〕

「…………たとえ力があるとしても、それを活用するすべがない。そんな者は無力に等しいだろう…………」

〔力があるのなら、戦うのだな?〕

「…………ああ、その通りーー」

 

千冬はそこではっと思った。ここには自分一人しかいないはず。なのに、彼女は誰かと会話をしていた。千冬は気配を感じ、後ろを振り向いた。

 

〔やっと気づいたか、世界最強(ブリュンヒルデ)

 

そこには武者鎧姿のISが立っていた。その装甲は真紅に輝き、光沢を持っている。

 

「お、お前は…………」

〔私? 私か…………そうだな、あなたの専用機と言っておこう。それよりも戦うのだろう? 早く乗るといい〕

「ふっ…………随分人間味のあるISだ。何処かの駄兎とは大違いだな」

 

千冬は躊躇いなく、その機体の胸部装甲に触れる。すると千冬は光に包まれた。

 

ー搭乗を確認

ー武装、異常なし

ー全システム、オールグリーン

[NSG-Z0/D、マガツキ、起動します]

 

千冬はその機体ーーマガツキを纏う。彼女はその感触を以前の乗機である暮桜よりもいいと感じていた。

 

「さて…………切り捨てるか、彼奴との縁も。どうせ、ろくな事は起こさん。振り回されるんだったら、企業連の方がマシだ。その方が楽しいしな」

〔よく言う。さぁ、参るぞ!〕

 

千冬は職員室の窓をぶち壊し、夜空へと一気に飛翔した。その動きは現役の動き、そのものであった。

 

 

 

 

 

「おぅるぁぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

俺はひたすら弾薬をぶっ飛ばす。弾薬切れは考えない。考える必要ない。ただ焼き尽くして、焼き尽くして奴らを更地の元に埋めちまえばいいんだから。

 

「うっぜえんだよ、雑魚がぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

寄ってきた無人機を、腕のレールガンで弾き、仕込んでおいたレイザーブレイドを突き刺す。コアは蒸発し、重力に引きずられて海に沈んでいった。

 

「やっべ! 一機抜けられた! 間に合う奴は…………いねえな」

 

俺の戦闘位置はみんなと比べてかなり離れた位置だ。支援にくるにも時間はかかる。既に全FAISがコア相互リンクの完了を示している。それでも厳しいだろう。

 

〔あっくん! どうするの⁉ あのままじゃ、みんなが…………‼〕

「仕方ねえ! 学園にダメージが出るが、リニアカノンでぶち抜く‼」

「ーーその必要はいらん」

 

金属音と共に無人機が両断される。その時見えた、あの実体ブレード。あの刀は、テンカイ。という事は

 

「〔千冬さん‼〕」

「すまん、遅れてしまったな。援護する‼」

 

そう言うと千冬さんはマガツキのブースターを全開にし、敵陣へと斬り込む。紅い軌跡の後に爆発が発生する。って、どんな勢いで切り捌いているんだ…………。

 

〔あっくん、ラスト一機‼〕

「何処だ⁉ 座標は⁉」

〔六時の方向! 距離六千! 一気に撃ち抜いて!〕

「だったら、あれしかねえじゃんかよ! カモン、『ドーラ・ドルヒ』!」

 

背部のミサイルコンテナが格納され、再びEXA-05が装備される。そして、何よりも目を引くのが背部の160cm砲『ドーラ・ドルヒ』だろう。なげえのなんのって、砲身の先端が見えねえぞ。

 

「使用弾、特型APFSDS、装填‼」

〔装填完了、反動処理システム、起動!〕

「めんどいからぶち抜くぜ‼」

 

激しい反動と凄まじい速さで、特型APFSDSの30mmタングステン鋼芯が飛んでいく。望遠モードで確認すると、直撃と共に無人機が細かな破片に成り果てたそうな…………馬鹿げてんな、この破壊力。

 

『どうやら、先程のが最後のようです。敵性反応無し、状況終了です。私もすぐそちらに向かいます』

 

フィオナからの通信だ。どうやら、何とか全て終わったようだ。東の空が少し紅い…………夜明けかよ、全く。

 

「各機に通達、以上をもって作戦の完了とする。あと、俺から説明したい事もあるし、いろいろあるから適当な場所に集合な」

 

こうして、俺たちの防衛戦はこちらの損害軽微で済んだ。まぁ、破片で地面が抉れた程度らしいから、ガチの被害はなかった事だ。

それでも、国連も駄兎は戦争する気だ。今回の一件ではっきりした。やはり、あいつらも、自分の覇権だけが欲しい、俗物野郎だってこと。

企業連はまだ戦争を開始するつもりは無いようだが、それも時間の問題だ。気前のいいうちの面々もここまでされるとどうなるかわからねえ。下手すると、大陸の一つが地図から消えるかもしれねえぞ。

 

〔あ、あっくん、お父さんから伝言だよ、『烏と山猫は兎を狩るぞ』、だって…………こ、これって〕

「ああ、間違いない。親父が決めたんだ。逆らわねえさ。ーー俺も奴を潰さねえと気が済まねえんだからな‼」

 

親父からの伝言。それは、企業連の本当の姿を現すための禁断のキーだった。

さて、次の世界はどうなるんだろうな。

破滅か、存続か、変革か、それは誰にも知る由はない。




えと、まあ今回より投稿が超不定期になります。
というのも、学校の課題とかと両立するのを考えて、小説の時間を大きく削るしかない、という考えに行きつきました。うん、作者の要領が悪いだけです、はい。
それでも、この作品を読んでくださる皆様、本当にありがとうございます。

あと、榴雷D型装備が完成したので載せときますね。……ほぼパチ組みだけど。

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