インフィニット・ストラトス 火力と愛と絆と 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
『よっ、誕生日おめでとう、箒』
『ああ、おめでとさん』
『あ、ありがとぅ…………』
『いやー、これで箒も八歳か。あとは一夏、お前と俺だな、七歳のやつは。だが、残念ながら、俺も八歳になるのよね〜』
『マジか⁉ てか、龍之介はいつなんだよ誕生日』
『俺の誕生日は、7月30日。いろんな意味で、よく忘れられる』
『わ、私は、忘れないからな、有澤』
『おお、珍しい…………箒が他人の誕生日を覚えようなんて。明日は、雪でも降るのか…………?』
『ふんっ‼』←思いっきり一夏の腹を殴った
『どぐはぁっ⁉』←思いっきり殴られた
『…………今のは、一夏が悪い。あ、箒、ちょっと渡したい物があるんだ。こっちにこい』
『何だ、渡したい物って。…………グレネードは勘弁してくれよ』
『ンなもん、渡せるわけねーだろ‼ 渡す前に誤爆して、俺あの世行きだわ‼』
『確かにそうだな』
『全く…………ま、話それちまったがいいか。ほれ』
『これは…………』
『ま、俺からの誕生日プレゼント。あんま大したもんじゃないけどな』
『あ、開けてみてもいいか⁉』
『問題なし』
『これは…………リボン、か?』
『んだ。お前、最近髪が長くて困るとか言ってたろ? 結うのにはちょうどいいと思ってさ。気に入ってくれたか?』
『うん‼ とても大事にする‼ ありがとう、有澤』
『礼はいらん。俺がしたくてしただけだしな。…………ところで、それどうする?』
『……………………』ぴくっ、ぴくっ←痙攣している
『…………放ったらかしで、いいんじゃないか?』
『そうか…………。そういえば、今日は晴れる予報だぞ。天の川が見られるんじゃないか』
『やったー♪ 天の川が見られる』
『え、えらく上機嫌だな』
『そうだ。有澤も一緒に見ないか、天の川』
『おっけー。んじゃ、夜いくわ』
(う…………う、うん)
(今日は7月7日、か。道理で、あのような夢を見るはずだ)
今日は、私の誕生日。今年で14才だ。それは嬉しいんだがな…………
家族と離れて、はや四年。四年前に会ったのを最後に、私達家族は要人保護プログラムにより、一度もあっていない。正直、一人で暮らすのは寂しい。
すべての原因は、私の姉ーー篠ノ之束だ。あの人が、
(もうこんな時間か…………)
時計を見ると、もう七時半を回ろうとしていた。まだ朝ご飯を食べていない事を思い出し、冷蔵庫を開ける。
(…………昨日の残りでいいか)
とりあえず、すぐに食べれそうなものを出し、電子レンジで温める。
「いただきます」
四年もこんな生活が続いているが、まだなれる事はない。一人で食べるご飯なんて味気ない事この上ない。
「ごちそうさまでした」
食器を流しに置き、私は学校の準備をする。急いで制服に着替え、準備をすます。
今日も、少しだるい。別に気分とか、調子が悪いわけではない。学校に行く事が嫌なのだ。これと言った友達もいないし、それに学校へ行くのも今日が最後だ。
「行って来ます」
私は、誰もいない家に向かって挨拶をし、登校した。
「806、対象は家を出ました」
「『
「了解、任務を頼む」
彼女が家を出た頃、ある一部の人間が動き出していた。それが彼女にとって吉となるか、凶と出るか、誰にもわからない。ただ一つ言える事は、彼等が誰にも
そんな視線は無視し、私は昇降口の下駄箱の前にいく。ただ、意識のうちに開けるのを躊躇う。自分の意識が、警告を出している。
だが、開けないと上履きを履けない。思考からの警告を振り払い、下駄箱を開ける。結果はーーハズレだった。
(今日もか…………これで何回目だろうな)
上履きが、片方だけなかった。仕方なく、片方だけでも履こうと思ったが、やめた。片方だけじゃ意味がないから。残された上履きを鞄にしまい、さっき脱いだローファーを下駄箱にしまう。私は、靴下のまま教室へと歩いていった。床の冷たさが執拗に足の裏から襲ってくる。…………正直これも慣れた、悲しい事に。ここにくる前も、その前も、イジメなんてあたり前だった。むしろ、イジメがないところなんてなかった。
「…………おはよう」
教室に入ると、先程まで喋っていた生徒の殆どが話をやめた。代わりに、ヒソヒソとした話が聞こえてくる。
「…………当然の報いかね」
「…………所詮、男の価値を下げた元凶が」
「…………おいおい、もうよしたほうがいいだろ」
「…………なんか、やってるほうもガキよね」
私を非難する声、庇護する声、そのどちらもが耳に入ってくる。
私が男の価値を下げた? ふざけるな。私じゃない、あの人のせいだ。お門違いの文句はぶつけるな。
「おーい、静かにしろ。授業始めるぞ」
こうしていつも通りの生活が幕を開けた。だが、もうすでに精神は…………限界であった。
「おい、篠ノ之」
午前の授業が終わり昼休みとなった今、先生が私のところへ来た。
「なんでしょうか?」
「君に用があると言う人が来ているようなんだ。あ、応接室にいるからすぐに来てくれ、とのことだそうだ」
私は短く返事をし、来客の来ている応接室へと向かった。ちなみに、朝は上履きを履いていなかったが、現在は来客用のスリッパを借りている事を記そう。…………なんとなくそんな需要を感じたのでな。
職員室の隣にある応接室に着くまで結構な嫌がらせにあった。具体的には『暴言をかけられる』『消しカスを投げつけられる』『足を引っ掛けられる』そして『転んだところを笑う』、といったことだ。
「失礼します」
扉をノックして、入る。
「突然呼び出してすまないな。ああ、そこに座ってくれ。楽にしていい」
そこにいたのは、スーツにサングラスといった、ヤクザとかにいそうな姿のーー中学生?だった。
いや、身長的な意味で。彼は、大人というには、身長が低い。というか、右目の辺りから眼帯の紐のようなものが見えているのだが、本当に
「篠ノ之箒、で間違いはないな?」
「は、はい」
彼は、突然口を開いた。その声は、まだ声変わりをしている様子はなく、そのまま中学生のような雰囲気の声だった。
私は、少し戸惑い、声が一瞬詰まってしまった。
「ま、そうそう硬くなりなさんな。俺は、お前の登録されている要人保護プログラムに雇われた、所謂傭兵だ、ただし名前は言えんがな。まぁ、いつも通りのしゃべり方で構わん。俺も、そうしたい」
見た目とは裏腹に、意外と親しみやすそうな感じの人だった。私もその言葉に甘えさせてもらうことにした。
「それで。その傭兵さんが、私に何の用で?」
「そうだ、これ渡しとけと言われたんだっけ。ほれ」
私は彼から袋を受け取った。特になんも変哲もない、普通の白いビニール袋だ。
「開けてもいいーーですか?」
少々、不躾だが開けたいという思いがあった。そのことを彼に問うと、
「まだ口調は硬いな。いいぞ、問題なし」
と返答された。
袋の中を確認すると、中に入っていたのは箱。それを出し、『これも開けていいですか』と目線で言う。すると彼もまた、『問題なし』と目線で返された、そんな気がした。
箱を開けると、中に上履きが一足、入っていた。それも私の足のサイズにあった23.5センチの、まだ白い上履きが。
「いやー、学校の教師からね、こっちに『篠ノ之の上履きがなくなった』と連絡されてな。あくまで保護するのが俺らの役目やし。他は目に付くといろいろとまずいからね。傭兵の俺が届けにきたってわけだ」
すみません、要人保護プログラムのみなさん。私のために、ここまでしてくださって。自分は恵まれてないなと思っていたが、今はちょっと嬉しい気分になった。
「あと、本日1730には引っ越す予定でいますので、そのところよろしくお願いします」
今日は、引っ越す予定の日だったな。荷物は纏めてあるし、問題はないな。
「…………わかりました」
「あまり力になれなくてすみませんね」
彼は、本当に傭兵なのだろうか? そう思いたくはなる。私の中で傭兵と言うと、『汚く、金さえあれば、同業者でも手にかける』といったものだが、彼はそのどれにも当てはまらない。彼は、一体ーー
「それでは、俺はこの辺で帰ります」
「いえ、こちらこそありがとうございます。あと一ついいですか?」
彼には世話になった。だが傭兵である以上、名前は言えない。ならば
「ーーあなたのコードネームを教えてくださいませんか?」
せめてそれくらいなら、と思って質問して見た。彼からの返答は
「いいだろう。俺のコードネームは『バレットドラゴン』だ」
彼はそう言うなり、退室して行った。バレットドラゴンーー龍之介なら名乗りそうな名前だな、そう思った。
私は、今まで履いていたスリッパを脱いだ。その時、靴下の裏を見たが、かなり黒く汚れていた。
「あぅっ…………うぅっ…………」
突然、嗚咽と共に涙が出てきた。何故だろう、慣れていたはずなのに、こんなに辛いなんて。…………やっぱり、苦しかったんだ。もう、限界だったんだ。私はきっと、誰かに甘えたかったんだ。まだまだだな、私も。
私は、涙を拭き、彼が持ってきた箱から上履きを取り出し、それに足を入れる。まだ履いたばかりだから少しきつい感じもするが、ほんの少しだけ、暖かい気持ちを感じたのは気のせいではないはずだ。
(ふう、やっぱり知ってるやつの前で他人を演じるのはきついねぇ)
「『バレットドラゴン』、例の物はうまく渡せたか?」
「ああ、無事渡せたわ。てかひどいもんだよね、なんも罪がないのにイジメを受けるとか。半殺しにしてきていい?」
「やめとけって、お前が言うと本当にしかねないからな」
「へいへい、了解。引き続き、護衛任務にうつる」
「了解。交信終了」
さて、ちょっくら仕事をしますか。
「榴雷、展開」
『機体展開完了。システム選択をねがいます』
「システム、不可視モード」
『受諾、システム不可視モードを起動します』
俺は、再び誰にも見えなくなった。インテリオルが開発した『完全ステルス・不可視モード』。光学迷彩の中でもトップクラスであろう。目視できないから。
俺は茂みの方へ行き、潜伏する事にした。
なお、箒を虐めた人達が、ボコボコにされて木に吊るされている事件が起きたらしいが、オレハマッタクシラナイヨ‼(大汗)
『ギャアアアアアアアアアアア‼』
『イヤァアアアアアアアアアア‼』
『待ってくれ、ノーカウントだ、ノーカウント‼ なぁわかるだろ、同じ人g(ry アアアアアアアアアア‼』
何故だろう、幻聴かな。外から断末魔が聞こえてきた昼休みもあと十分というときだった。
「ちょっといいかしら?」
三人組の女子が私に声をかけてきた。話を聞くと、ついてきてもらいたいところがあるらしい。
そうして私が連れていかれたのは、空き教室。何の用で連れてこられたのかわからない私は、戸惑いを隠せていなかった。
「い、一体何の用でこんーーあっ‼」
いきなりだ、いきなり足払いをまともにくらい倒れる私。
「ふう…………やっとこれでストレス発散出来るわね」
「全く、総長は考えることがエグいっす」
「まぁ、だから比較的大人しそうなのを拉致ってきたわけね」
現在、私はうつ伏せに床へ倒され、腕を捻られている状態だ。
「まぁ、時間はあまりないけど、楽しもうか。そうだよ、なっ‼」
「がはっ‼」
今度は、背中を思いっきり踏まれた。急に空気が吐き出され、息が詰まる。
「総長、仲間外れは良くないっす。うちらも混ぜてくれなきゃ」
「ぐふっ‼」
「そうそう、私達もちょっとスッキリしたいからね」
「あゔっ‼」
他の二人も私の体へ蹴りをいれたりしてきた。わき腹を主に蹴られる。断続して、衝撃が伝わる。
お前剣道やってるんだから、武術でなんとか出来るだろ、などと言うやつもいるだろう。だが、私はそんなに簡単には力を振るえない。
『力を持つと言う事は、責任を対価として支払う事も考えること。そうしなければ、誰かが傷つくぞ』
かつて、父上に教わった事。彼女達を傷つけてしまえば、私にも罪が来るだろう。結局は耐えるしかない。
「い、痛い…………痛い…………‼」
「ああ? ちょっとはなんか喋れや‼」
今度は髪を引っ張られている。痛い、もの凄く痛い。
「…………やめて下さい」
再び蹴られる。次は、何をされる。
「…………やめて」
踏まれる。肩と足に痛みが走る。
「そういえばさ、私思い出した」
「どうした、由佳」
「こいつってさ、確か朝は上履き履いてなかったような気がするんだよね」
「そうだな、じゃなんで履いてるんだ?」
「知らないっすよ。とりあえず、ぬがせちゃいましょか」
「やるんなら、徹底的にやろうか。そのほうが楽しいしさ‼」
今度は足を掴まれた。すると、急に右足の窮屈感が消えた。そして目の前に何かが投げ捨てられる。
(あ、私の上履きだ…………)
どうやら、上履きを脱がされてしまったらしい。勢いよく落ちたのか、結構弾んで私の手に届かない位置へ転がった。
まずい、次は絶対リボンを狙われる‼ 本能的にそう感じ取り、リボンを手で守る。
「ちょっと‼ 手をどけなさい‼」
手を踏まれるが、そんな事はどうだっていい。このリボンさえ、無事であればそれでいい。
かなり踏みつけられ、痛みも尋常ではないが、それでも離しはしない。
「全く、しつこいわね‼」
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼」
思いっきり髪を引っ張られ、あまりの痛みに声をあげてしまった。多分、何本かは抜けてしまっているだろう。痛みのあまり、気が遠くなってきた。
そんな時、昼休みの終わりを告げる鐘がなった。
「どうやら、時間切れね」
「そっすね。でも、スカッとしたんじゃないすか、総長」
「ああ、そうだな。ま、お前も早く教室へもどれよ」
どうやら、あの三人組は教室へ戻ったらしい。これで、一難は去った。とりあえず、教室へ戻ろうとしたが、体にうまく力が入らない。
次第に視界も悪くなってきた。
(これ…………午後の授業…………欠席、だ…………な…………)
私の意識は、そこで途絶えた。
午後の授業で彼女を見たものは誰一人としていない。
放課後
殆どの生徒は帰宅するか、部活へ行くかのどちらかしかないが、この学校の殆どの生徒は帰宅していた。
そんな中、一人の女子生徒が普段は使われない空き教室へ向かっていた。
彼女の名は、更識簪。
この空き教室で、一人ゆっくりと読書するのが彼女の楽しみである。今日も、新刊のラノベを持って向かっているところだった。
「かんざ〜しちゃ〜ん♪」
「ひゃぅっ⁉ お、驚かさないで下さい、静寐」
いましかた簪を驚かさせたのは、鷹月静寐。簪と同じクラスだ。彼女もまた、読書好きなのか、同じ読書好きである簪とよく空き教室を訪れている。
「ところで、静寐は何を読むの?」
「今日は、そうね。また、アメリカンジョークのやつでいいわ」
「…………この間もそれだったよね」
「いいの、いいの。面白かったら何回読んでもいいの。簪ちゃんは、名に読む?」
「私は、これかな?」
「『機○戦士ガン○ム シ○アの逆襲』…………また、マニアックな」
「これ、映画化されたよ」
「マジで⁉」
などと、他愛もない会話をしつつ、今日も空き教室へ入った。
「え…………」
「どうしたの? 何が…………」
空き教室へ入った瞬間、二人は声が出せなかった。
目の前には、うつ伏せに倒れた女子生徒。
よくみれば、体のいたるところにアザが見て取れる。
簪は、急いで彼女の元へ駆け寄った。
「静寐…………」
「ちょ、ちょっと⁉ その人大丈夫なの⁉」
「この人…………気絶してる」
「非常に、まずいってそれ‼」
冷静な簪とは逆に、静寐は思いっきり慌てていた。確かに、慌てるだろう。目の前に、意識がない人が倒れていたら。
「は、早く、保健室へ連れて行こう‼」
「…………担架ならある」
「どこから出したの⁉」
「そこから、とってきた」
「ま、まぁ、とりあえず…………急いで運ぶよ‼」
二人は、倒れていた女子生徒を担架に載せ、保健室へ連れて行った。
「ううっ…………‼」
体を動かそうにも痛みが走る。ダメだ、一人で起きる事すらできない。
よくよく考えて見たら、私はベットに寝かされていた。ここは保健室のようだ。ちょうど近くに鏡があったので、ちょっと見てみた。
絆創膏が額と左頬に貼ってあった。大した怪我じゃなくてよかった。それにリボンも取られてはいない。少し、ホッとした。
扉が開く音がした。多分、誰かが来たのだろう。
「あ、気がついたんだ。よかった〜」
「よかった、意識は取り戻したみたい」
見知らぬ女子生徒達が私を見て、安堵の声を漏らす。
「そうか…………あなた達が私をここへ連れて来てくれたわけですね。ありがとーーっ⁉」
「あ、あまり無理はしないで。かなり酷い打撲だから」
打撲か…………ま、骨折とかしなくてよかったな。
「あ、まだ名前言ってなかったね。私は、鷹月静寐。それで、こっちが」
「…………更識簪」
「鷹月さん、更識さん、なんかありがとうございます」
お礼はちゃんと言わないと。私は、この人達に助けられたんだから。
「いやいや、人として当然だから、ね?そういや、あなたの名前は?」
「篠ノ之箒、です」
「そう。あと、私達の事は名前で呼んで」
「じゃあ、静寐さん、簪さん?」
「堅っ苦しいな、呼び捨てでいいよ」
「そう、だって友達でしょ?」
『だって、俺達友達だろ?』
「っ⁉」
あの時、始めて友達が出来た時に言われた、その言葉をまんまかけられた。その瞬間、体が固まった。
「ちょ、ちょっと、箒⁉ なんで泣いてるの⁉ 」
「えっ…………」
静寐さんにそう指摘されたので、目尻を拭うと少し濡れていた。
「だって…………私は、友達と呼べる人がまだ二人しかいないんだ。だから、そう言ってくれるのが、嬉しかったんだ…………」
「そう、だったんだ…………」
「でも、大丈夫。また、二人増えたから」
そう言って簪さんは、微笑む。そして、手を伸ばして来るが、その手を握る事は、私にできない。
「…………本当にいいのか?」
私は、少し震えた声で問いかける。
「だ、だって、私は、今日転校してしまうんだ。せっかく友達になれたのに、すぐに別れてしまうんだ。…………それでもいいのか?」
気がついたら、涙が溢れ出ていた。無意識のうちに、自分は別れる事を恐れていたのかもしれない。そうして、かえってきたのはは、某青狸の『仕方ないなぁ〜』と言った感じの吐息だった。…………私は、あの駄目男か、全く。
「じゃ、メアド交換しようよ。それならいつでも話せるよ」
「私も賛成。ほら、携帯出して」
私は、何に怯えていたんだ。この人達は、離れていても友達になった人は忘れない、そんな感じのする人だ。私は、携帯を出そうとして思い出した。
「すまない。携帯は教室に置きっ放しだ。というか、今って何時なんだ?」
「え?もう四時半だけど?」
午後の授業は欠席だな、これは。約三時間近くあそこにいたわけか。
「どうやら、午後の授業すべて欠席扱いのようだ」
「え⁉ と言う事は…………」
「昼休みからずっとあの状態…………」
二人の顔がどんどん青ざめていく。少しそれが可笑しかった。
「…………ぷっ」
「あ‼ 今笑ったでしょ‼」
「すまない、あまりにもおかしかったもので、つい」
「でも、今初めて笑ったよね」
「えっ?」
「いつも、なんか落ち込んでいるような感じがした。いつも悲しそうな感じだった。でも、さっきは初めて笑った。それも心から楽しそうに」
どうやら、簪さんはすごく人を観察するような人間のようだ。
「そんな感じに見えていたか…………」
「ま、まぁ、前の事はいいんじゃない。今が良かったらさ。ほら携帯取りにいくんでしょ?」
「あ、ああ、そうだ」
「そういえば、あの教室に転がっていた上履きって、名前なかったけど箒のだよね?」
「そうだが…………」
「なら、持ってきて正解だった」
そういうと、簪さんはベットの下から片っぽだけの上履きを取り出した。紛れもない、私の物だ。ちなみに、もう片方は? と聞くと、床を指差した。そこには綺麗に揃えられている私の上履きがあった。
「何から何までありがとう、静寐さん、簪さん」
「う〜ん、まだ堅いなぁ」
「そ、それじゃ、静寐、簪」
「なに?」
「ん?」
「わ、私の友達になってくれますか?」
返ってきた答えは
「「もちろん‼ よろしく、箒‼」」
期待した以上の物だった。
「んじゃ、気を取り直して、行きますか〜‼」
「そうだな」
「うん。でもその前に、箒立てる?」
正直に言おう。立てそうではある。
「多分、大丈夫だ、ぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」
すまない、前言撤回だ。立てなかった。前のめりに倒れてしまった。静寐を巻き添えにしてだ。静寐はちょうど顔を私の胸に押しつぶされるような形となり、
「ちょっ、箒‼ 一旦どけて‼ 窒息する‼」
「す、すまない‼」
見事、怒られました。
「…………でも、箒って胸大きいよね」
「ちょっと、羨ましい」
「あのー、すいませーん、起きるの手伝って下さ〜い」
静寐と簪に助けてもらい、なんとか立てた。
「箒、やっぱ肩かすよ」
「すまないな」
「無理はしないほうがいい」
結局、二人に支えてもらいながら、教室へと向かった。
「ところでさ、箒って何組?」
「私は二組だ」
「じゃ、ちょうど隣だったわけか」
「二人は?」
「私達は一組だよ」
「以外と近かったんだな」
二組の教室についた私達は、メアドの交換する事にした。
「はい、完了」
「うん、これでいつでもやり取りできる」
「ありがとう、二人とも」
携帯を鞄にしまおうとしたとき、簪の目が光った、本当に。
「箒、鞄見せて」
「あ、ああ」
簪は、何を見つけたのだろうか?
「箒、これってどういう事?」
簪が取り出したのは、片っぽだけの上履き。朝のやつだ。
全体に『バカ』『死ね』『消えろ』と書かれ、中に『ネクラ』と大きく書かれていた。
簪は、それを見つけてしまったのだ。
「いや、気にしないでくれ。もういいんだ」
「でも、これは明らかにイジメだよ?」
「すぎた事はいいんだ、もう。慣れてしまったんだ」
「「…………」」
ちょっと、話が重かったかな。私が原因だからな、なんとかしてみよう。
「なあ、一緒に帰らないか?」
「私達はいいよ。ね、簪?」
「うん、せっかくだからもう少し話がしたい」
二人と話をしていると、私の家に結構近いところに住んでいる事がわかった。
私は、下駄箱の前に立つ。やはり躊躇いが出るが、思い切って開けた。そこには、ちゃんとローファーが入っていた。その事に少し安心感を覚えた。前は、ローファーが無くて上履きで泣く泣く帰ったことがあるからな。そして、上履きも途中で片方脱げて無くなったんだっけ。なんか、悲しいな。
上履きを鞄にしまい、ローファーへと履き替える。何もされてなくてよかった。
「箒ー、はやくー」
「遅いよー、はやくはやくー」
「待ってー、今行くー」
それに、今の私には友達がいる。こんなに嬉しいことはない。
私達は、それぞれが帰るまで楽しく話をしていた。
「静寐、また箒に会えると思う?」
「会えるでしょう、きっと」
「できれば、またいつか会いたいな。今日で二人ともお別れだ。短かったけどありがとう、静寐、簪。そして、さようなrーーむぐっ⁉」
「そっから先は言わない。こういうときは」
「『また今度』でしょ?」
「ああ、じゃ、また今度」
「うん、またね」
「また今度ね」
そう言って、二人と別れた。ここまで優しかった友達は、やはり一夏と静寐と簪だな。龍之介? ああ、龍之介は違う。龍之介は私の婿だ‼
その頃
「イヤァぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
「キュイー‼」
AMIDAに襲われている女子生徒がいたとかいなかったとか。
またその頃
「へっくしょい‼ なんだぁ、風邪でも引いたか?」
箒の頭上を不可視モードで飛行していた龍之介がくしゃみをしていた事に、彼女は気づかなかった。
その夜
一通の電話がかかってきた。
「はい、篠ノ之ですが」
『こちら、要人保護プログラム担当の者ですが、引っ越しは明日の午前中へと変更になりました事を伝えておきます。それでは』
引っ越しは明日か。
何か嫌な予感がするが、気のせいである事を願いたい。
アカンアカンアカン‼
ファース党の皆さんに殺される‼(精神が)
ちなみに、箒達の制服イメージは、『デート・ア・ライブ』の来禅高校の制服でお願いします。あ、よく出てくる上履きも同じです。
箒は、十香の制服で、ニーソの部分が白です。(設定変更不可)
他は、皆さんのフロム脳にお任せします。