原作に関わらなかったけど悲惨なことになった(胸糞注意) 作:kaitolian
人はなぜ困難に立ち向かうのか
叶えたい夢があるから
困難に負けたくないから
戻りたい日常があるから
他にも言い出せば千差万別であるが結局の所、それぞれに譲れない何かがあるからだ
つまり個々人で自らを支える土台があるからこそ、言い換えれば各々に理由があるからこそ人は困難に立ち向かう
己の信念を曲げないように突き進む
この事実は土台の大きさや種類は変わるだろうが困難以外の他のことについても同様に言える
スポーツ然り
勉学然り
仕事然り
趣味然り
人生然り
復讐然り
ではもし土台が突然無くなったらどうなるか
例えば取り組む問題が己の信念と矛盾する場合
例えば問題を乗り越えた先に、己の願いが実現不可能だと分かった場合
通常ならば何も問題はない
何故なら人は生きていく中で自然と多くの土台を形成していくから
友情、親愛、恋慕、敵意、尊敬
様々な揺れ動く感情の中で気に掛ける事の一つや二つは自然と出来るものだろう
たくさんのしたいこと、目指すもの、譲れないライン、大切にしていること
多くの土台があれば仮に1番大きな土台が無くなろうと、多少は揺れて転げ落ちるかもしれない
だが他の土台でバランスを取って、じきに安定するだろう
人生という長い期間で妥協というものは必ず経験するから
真に一つの事だけを支えに生きていることなどありえない
未開の奥地にたった一人で暮らしているならともかく、人は時を重ねて生きるものだから
時を重ねて
想いを紡いで
絆を深めて
揺れ動きながら
ぶつかりながら
影響しあってされあって
そうやって人は生きていくのだから
しかし、何らかの理由で土台が正真正銘1つのみになってしまっていたら?
他の土台ができる間もなく、たった一つの土台のみになっていたら?
そのたった1つの土台が突然無くなってしまったら?
そもそもそんなもの無かったとしたら?
そのことに突然気が付いてしまったら?
結末はただ一つ
墜落だ
下へ
下へ
遥か下へ
一直線に
奈落の底へ
足場も助けも命綱も無く
底の底へ
地に堕ちる
最期にその身が地の底に叩き付けられる、その時まで
♦ ♦♦♦
あの1年は
監禁された1年は
なんと言えばいいのだろう
痛かった
何度も殴られ痛かった
無理やり犯され痛かった
奴らの想いのままに遊ばれ痛かった
苦しかった
逃げ出せない暴力が辛かった
訳が分からないまま
いつまで続くかさえ分からない苦痛で苦しかった
怖かった
身体と心、2つの痛みが怖かった
己がゴミか玩具のように扱われて怖かった
あっさりと殺されてしまうかと怖かった
そして、それらに慣れていく自分が嫌だった
痛みも苦しみも恐怖も
心を殺して総てを受け入れようとする己が嫌だった
こんな理不尽に心が折れそうになる己の弱さが嫌だった
暴虐者に必死に媚びて、少しでも許しを得たくなる己の醜さが嫌だった
逃げて逃げて逃げ続けて、必死に逃げ続けて少しでも痛みを少ない道を選びたくなる
そんな誘惑が日に日に己の中で大きくなっていくことが嫌だった
今までの選択を永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と 永遠と
永遠と後悔し続ける己自身が大嫌いだった
だがそれ以上に許せなかった
何よりも許せなかった
絶対に許せなかった
少女にこんな理不尽を振りまく犯罪者が許せなかった
無力な弱者を食い物にする強者が許せなかった
痛みも苦しみも恐怖も、何もかもを越えて憎かった
他者に苦しみを与え、自ら愉しむその精神性
そんな醜悪なものを許せなかった
想像でも伝聞でもなく、実体験として感じたからなお強く
奴らを許さない
だから復讐を
そんなことでしか愉しみを見出せない奴等に終焉を
死という形の終焉を
正しさも公平性も倫理観も何もかもがどうでもいい
他はどうでもいい
ただあいつ等だけはこの手で
己自身で決着をつけるのだ
死という決着を
そう想っていた
そう想っていたのに
その機会は永遠に消えていた
とっくのとうに消えていた
なぜ何度も壊すのだろう
悪意と善意
どちらも等しくおれを破壊する
やめて
やめてよ
やめてくれ
辛い
痛い
苦しい
そんなにおれをこわさないで
皆で寄って集って
虐めないで
周りが団結して潰しに来る
世界が壊しにかかっている
暴力という悪意に晒され身も心もボロボロにされた
魔法という善意で残った芯をそのまま抜き取られた
オレという存在を少しずつ削り取る
世界が嵐となって吹き付けて
己の外と内がゾリゾリと細かく砕かれていく
なぜ、総てが壊れないのだろう
いつも一番大事なものが壊される
はじめは命
つぎは日常
さいごは生きる目的
いつもとつぜんこわされる
なんの予兆も予感もなく取り上げられる
慈悲も情けも容赦もなく、こわされる
けれど決して総ては失わない
さいしょは来世
つぎは復讐
おわりは肉体
『次』が続く
その為に必要なものが手元に残る
それ以外のものは決して残さない
嬲るように
嗤うように
弄ぶように
とどめだけは決して刺さない
ゲラゲラと
まるで小さな子供が虫で遊ぶ時の様に
足をちぎられ
触覚をむしられ
羽をもがれて
痙攣するしかない虫のように
――なんて
なんて無様なんだろう
総て終われば、楽になるのに
♦ ♦♦♦
全てを聞いた
全てを理解した
全てを嘆いた
葵はもう狂乱しない
己に手を伸ばされても
大人に触れられても
抱きしめられようとも
暴れないし叫ばない
それはただ周囲を認識していない、という訳ではない
ましてや克服した訳でもない
手を伸ばされれば体は震える
大人に触れられ抱きしめられれば過呼吸に陥る
しかしどんな状態になっても決して悲鳴を上げることはなくなった
悲鳴とは自己防衛や救援信号等の役割を持った人間の防衛機能の1つである。
その悲鳴だけが欠けている
つまり、助けを求めなくなった
それはもう総てがどうでもいいと言っているかのようだった
何より、意志が感じられなくなってしまった
命の息吹は感じることが出来る
口元を見れば呼吸しているし、触れば暖かいし、胸に手を当てれば鼓動も聞こえる
だけどそこに意思は内在しない
ただ生理的な反応を返すだけ
ただそこに在るだけ
生きようとする意思がない
『死んでいない』だけ
葵の意思が感じられない
やっと戻ってきたのに
やっと
やっと元気になってきたのに
「―――」
葵の父親は言葉が出なかった
直接こんなにも長い時間を近くに見たのは誘拐前なのだ
1年ぶりなのに
大人の男性はトラウマを刺激してしまう可能性がある
そう医者に伝えられてそのままその指示に従った
「っく、うっく、ごめんなざいぃ」
車椅子に乗っている少女が泣いている
葵が入院以降に出来た友達の、はやてという少女だ
何度か話したこともあった
優しくほがらかに笑う子だった
その少女が涙を流し、静かに泣いている
悔いる様に泣いている
その様子から本当に葵の事を想ってくれる友達なんだということが分かる
そんな風に泣く姿を見てしまっては、何もいう事が出来なかった
「ありがとう、葵の為に泣いてくれて」
それに事情は聞いた
信じられない説明も多くあった
魔法などといった嘘か冗談かと思うような内容も多くあった
だがこんな光景をみたらきっと本当なんだと、理屈ではなく理解できた
だが多くの情報が与えられて、よりわからなくなる
『なぜ葵はこんな状態になっているのか』
………いや、本当はわかっている
ただ認めたくないだけだ
絶望した後にすがった希望さえ叩き潰されたのだと認めたくないだけ
正直に言えば思うことが無いわけではない
だがそれは違う
それはこの子に対してじゃあない
だってこの子は何一つ悪くはないのだから
この子は助けようとしてくれたのだから
悪いのは犯人なのだから
この子は葵を思って行動したのだから
そして許せないのは犯人だけ
ではない
許せないのは己自身も同様だ
葵の為の行動を起こせなかった己自身
父親でありながら我が子に近寄ることさえできなかった
トラウマを刺激するかもしれないからと接触を控えられていた
それは事実であったかもしれない
だがそれで我が子を抱きしめない理由になるのだろうか
安心させてやろうと思い行動しない理由にはならないのか
本来なら自分たちの言葉がきっかけになるはずだったのに
自分達だってそれらしい言葉は投げかけたのに
『安心していい』『大好きだよ』『ここは私達がいるから』
魔法の有無という力の違いがあっても、その差を埋めることが出来なかったのだ
自分たちの言葉は届いていなかった
自分達の言葉を届けることが出来なかった
復讐のみを考えていた
なら葵はまだ解放などされていなかったのだ
心はまだとらわれたままだったのだ
ならばその心を解放することが親の自分達の役割だったはずだ
他人と触れ合うのは傷付けられる痛みじゃない
互いに気持ちを通じ合わせる為の温かさなんだと
復讐ではなく、ぬくもりを
復讐よりも大きく心の支えになる程のぬくもりを
復讐がどうなろうが、たとえどのような形で決着しようが
終わった後の帰ってくる場所としてのぬくもりになるべきだった
はじめよう
もう遅いとしても
ここに葵が居て、生きている
深く大きく傷ついている
だがまだおわってはいないから
遅すぎたとして
進もう
娘の為に
♦ ♦♦♦
そこは静かな場所だった
音を出すものはなく、照らす灯りもない
雑多なものは何もなくベッドとそこに横たわっている少女がいるだけ
そんな静寂を破るように2つの人影が部屋に入ってくる
ゆっくりと歩いて、ベッドから動かない少女の前に並ぶ
「…なぁ、ホントにやんのかよ」
「ああ、そうだ。もう我らには時間が無いのだ」
犬の耳をはやした大男、ザフィーラの言葉を聞き、赤髪の少女、ヴィータは精神を落ち着けるように目を瞑り深くゆっくりと深呼吸をする
「……そうだよな、もう時間がねえんだ
もう気を配っている余裕はどこにもねえんだ」
ヴィータはゆっくりと目を開けて、覚悟を決めるようにしみじみと言葉を紡ぐ
ヴォルケンリッター達は限界に近付きつつあった
下半身の麻痺の範囲が大きくなり、はやてがとうとう入院したのだ
もう『意識が無い相手に』だとか、『はやての友人に』だとか、余分なことに構っている余裕はないのだ
闇の書の完成が遅くなれば成る程、はやては命の危険に晒される
管理局のマークが厳しくなってきている以上、無駄に魔法を使うことも蒐集することも出来ない
そんな中、結界もサーチもせずに他の魔法も全く使わずに済む
そんな都合のいいリンカーコアを無視などできない
それに魔法を全く使わずに蒐集できるという事は、闇の書を完成に近づけるだけでない
闇の書を完成させることに協力している仮面の魔導士、奴を出し抜くことが出来る
奴がどのような目的なのかは不明だが、今の主はやてが喜ぶようなことではない事だけは確かだ
奴に秘密裏に蒐集できることは、闇の書の完成タイミングを奴の想定より早く完成させること、ひいては奴の目的を妨害させることにも繋がるだろう
管理局と仮面の魔導士、これらを欺き一刻でも早く闇の書を完成させるのだ
「それにきっと話を聞いてくれたのなら、リンカーコアを蒐集させてくれただろう。
葵は主はやての友達なのだろう?」
ザフィーラの言葉にヴィータはくつくつと笑う
「フッ、そうかもしんねぇ」
「蒐集」
リンカーンコアがむき出しにされ、赤い魔力光が部屋中を包み込む
「ぁ、ぁぁっ」
「蒐集完了、20ページ埋まったな」
2つの影は振り返ることなく去っていく
病室に残ったのは何も喋らない少女だけ
「………」
少女は何も語らない
少女は何にも反応しない
だが時間だけは誰にでも平等に流れ続ける
やっとここまで書きました
終わりが見えてきましたね…
永劫未完にだけは気を付けないと(飲み込まれかけた人