スーパーメタルクウラ伝【本編完結】 作:走れ軟骨
「ビッグゲテスターは後ほどゆっくり直せばいい……今の貴様如きこれで十分だ…!」
「…やっぱ…二度と悪さ出来ねぇようにするしかねぇようだな…!」
悟空が最後の力を振り絞って超化し、掲げた右手に気を収束させる。
「…! ム、ムカつく野郎だァーーーーーッ!!」
叫ぶクウラにかつての面影は殆ど無い。
無数の機械ケーブルが触手のようにクウラの残骸に巻き付いて瞬時に巨大な人型となると、
巨大な鉄塊となった右手で悟空を殴り抜く。
「うあああぁぁぁぁぁ!!」
と同時に鉄塊から無数の触手状のコードやケーブルが生えてきて、
悟空を雁字搦めに締め上げ彼の身体をバラバラに引き裂こうと試みる。
異形の機械生物と化したクウラが憤怒の形相で再度叫ぶ。
「お前にこの俺を倒すことなど…無理なのだ!!!」
だが、何が起きようと何を言われようと孫悟空は戦いを投げ出すことはないのであった。
「む、無理とわかっていても、やんなきゃなんねぇ時だって…あ、あるんだぁぁぁ!!」
尚も強く締め付けるケーブル達に、悟空の皮膚は裂け骨が軋む。
血が吹き出し、機械の触手を赤い鮮血が伝い冷たい金属の床に流れ、
それでも悟空は呻き抗い続ける。
そして、
「だぁぁ!!」
満身創痍のベジータが放った最後の気円斬がクウラの右腕を肩から切り裂く。
「ぐ……!!! ぐあああああああ……!!!!」
今のクウラは全てが機械で構成されているメタルクウラではない。
僅かな脳と右目をコアとしていて、優れ
痛覚という信号をモロに脳に響かせてしまうのだ。
僅かな脳をフルに使い続けていたクウラには、この僅かな電気信号もかなり応える。
この気円斬がベジータの最後のパワーだったらしい。
彼は、
「俺達に…不可能など、ある…ものか…!」
振り絞るように言うとそのまま意識を手放した。
だがその一撃で十分だったのだ。
切り離された触手に悟空を抑える力は無く、
「うあああああああああああっ!!!
どりゃあああああああああ!!!!」
気合と共に放たれた悟空の最後のエネルギー弾がクウラ・コアの肉体に吸い込まれていき…
そして、
「う…!? うおおおお!?」
彼の体内から炸裂し、大爆発を起こした。
耳をつんざくクウラの断末魔がビッグゲテスター中枢に響き渡る。
その爆発が最後の引き金となって、
超サイヤ人のエネルギーを吸いすぎて
オーバーフローに陥っていたビッグゲテスターの各所が誘爆した。
機械星が砕け、四散し、炎に包まれて消えていく。
悟空とベジータは辛うじて助かり、
空から振ってくる二人を悟飯やクリリン、ピッコロ…多くのナメック星人が出迎えて、
新ナメック星はビッグゲテスターという弩級の災害から解放されたのだった。
本来ならば、独りその場から立ち去ったベジータによって
ビッグゲテスターのコアチップは回収されて人知れず握り潰される………筈であった。
だが、何という運命のイタズラだろうか。
コアチップは見逃されてしまったのだ。
そして、変転した運命はそれを切っ掛けとして更に波紋を広げさざなみを大きくさせていくのだ。
眼球と僅かな脳細胞だけになったクウラの生体パーツの残骸を、
再度ビッグゲテスター・コアは取得し融合。
損なわれたクウラの脳を補って彼の思考を幾らかクリアにしていく。
ギョロリ。
焦点を失って虚ろだったクウラの瞳が明確な意思を持って動く。
その視線の先にあるのは新ナメック星………そしてその惑星にいるであろう超サイヤ人。
孫悟空とベジータだ。
(ぐ……ぐ、ぐ……こ、この俺が、また敗けた、のか……宇宙一である筈の、この…俺が)
このまま宇宙を彷徨って残骸を集め、再度ビッグゲテスターを立て直し自分を再生させる…。
それは可能だ。
可能だが、そんな悠長な方法では、たとえ蘇ってもサイヤ人には勝てないだろう。
自分が再生する間にサイヤ人達は修行と戦いを繰り返して
更に強大になっていくことは容易に想像できた。
――このままでは、いつまで経っても勝てない――
それは大いにクウラの誇りを傷つける現実であった。
全宇宙で一番強い。
それだけを求めてきた。
そんなシンプルな、男ならば誰もが一度は夢見る真の最強に、彼はなりたかった。
ある意味でクウラという男は純粋なのだ。
(俺…は…最強に、なるのだ。 誰よりも…強く……!)
クウラの執念と、コアチップの自己保全機能が結びつき、
生物の執念と超テクノロジーが奇跡を呼びせる。
バチ、バチバチバチ!
激しいスパークがクウラ・コアを包み、
(負けん……俺は負けん! 負けても必ず、這い上がってみせる…!!)
更に激しく巻き起こるそれはやがて目も眩む程の光となって、
一瞬、恒星の爆発にも似た閃光を放つとそこにはもう何もなかった。
クウラとビッグゲテスターであった物はこの世界から消えていた。
▽
そして。
「……ラ様」
クウラの淀む意識に、聞き慣れた男の声が飛び込んでくる。
「…ウラ様………ク…ラ様」
朦朧としていた意識が定まってくるにつれ、視覚と聴覚が鮮明になってくると、
バッ!とクウラの項垂れていた頭が持ち上がり、
再三己に声を掛けていた男へと視線が注がれた。
「も、申し訳ありません。 ひょっとして、お休みだったでしょうか。
目を開けたまま、何やら心ここにあらず…といった様子でしたので…」
クウラの様子に少々怯えを見せた眼の前の男……。
青い肌に淡麗な容姿の彼はクウラ機甲戦隊の隊長であるサウザー。
「サウザー…? バカな……貴様は超サイヤ人共に………」
「スーパーサイヤ人? 弟君、フリーザ様の元で働いているサイヤ人と関係が?」
主からの言葉にやや首をかしげるサウザー。
彼からの返答はクウラに少なからずの衝撃を与えた。
(……フリーザの元で、だと? サイヤ人が…生き残っている……。
いや、それだけではない……これは……)
少しの沈黙の後、
「サウザー!」
「はっ!」
「現状を報告しろ」
「ははっ。 現在、我らはコルド様の命でx4507、y8001、z0045、
第8区の惑星群の徴収に動いています。
攻略は極めて順調であり、
このままのペースでいけば2日以内に全惑星は我らが軍門に下ると思われます」
「………!」
サウザーの一連の言葉にクウラの目が僅かに見開かれた。
「な、なにかお気に障りましたでしょうか?」
普段、全くの表情の変化を見せぬ主人の珍しい変化を見、サウザーの声に緊張が走る。
が、クウラはそれどころではない。
ポーカーフェイスを崩してはいないが、内心では混乱し動揺しているのだ。
現状把握に努め脳をフル回転させる。
「…………そうか、時間移動…!」
生きているかつての親衛隊長の話を聞く間、辺りを見回し、
自身が搭乗している浮遊ポッドのコンソールを手早く操作しデータを見ていた。
現在の日時はフリーザがサイヤ人と手を結んだ頃であったと彼は記憶していて、
先のサウザーの発言にも合致している。
そして己の内側から何処からともなく聞こえてくる声。
それらを合わせるに、つまり…
今、クウラは過去へと戻っていた。彼はそう結論付けた。
己の内側から聞こえる声……のようなモノは
ビッグゲテスターのコアチップから送られてくるデータだ。
(時間移動……確かに、不可能ではない。
メタル化した俺は超テクノロジーによって瞬間移動が可能だった。
瞬間移動とは異次元潜行と通常空間への復帰を繰り返すものだ。
日々進化を続けるビッグゲテスターの科学力ならば可能なのだ)
「……報告ご苦労。 他には?」
「はい、ドーレが現住生物の反撃にあって三針を縫う怪我を――」
「――他にないのならば下がれ。 俺は少し休む」
(ウ…余計な報告だった!
やっぱりクウラ様はお疲れだったのだ。 声をかけるべきではなかったか…)
やや緊張していたサウザーはうっかり出てしまった己の迂闊を軽く呪い、
短く返事をするとそのまま退出していった。
クウラは再度、辺りを見る。
懐かしい母船の、己の部屋。
超サイヤ人、孫悟空に巨大エネルギー弾・スーパーノヴァを押し返され、
背にした太陽と自分の技に挟まれ焼かれるという一度目の最期以来、
彼は部下も母船も目にしてはいなかった。
やや懐かしさに思いを馳せるも、それは本当に僅かな時間。
すぐに、
「……ビッグゲテスター、いるのだろう?」
自分の脳内に潜んでいる機械惑星のコアチップへと話しかけた。
「ワザワザ声を出さずとも、私達は脳内で直接信号ヲ送受信し会話は可能デス」
「それは俺の脳をかき乱すようなあの雑念のことか。気に入らん。
データは貴様が処理し、重要なものだけを俺に口頭で知らせろ」
「ソレハ非効率的デスガ、貴方ガそう言うナラ」
「俺達は時間移動をした。 そういう事だな」
「ハイ。 私の超テクノロジーと貴方の執念の賜物デス。
貴方が先程思考シテイタ通り…瞬間移動の応用デ我々は過去ニ戻りました。
超コンピューターである私でスラ躊躇する危険な賭けデシタガ、
我々は賭けに勝ったノデス」
「危険……?」
「ソウデス。時間移動ハ世界崩壊すら招きかねない高度な技術デス。
シカモ、時間移動ヲ実行して初めて私も観測シタノデスガ、
この世界は我々のかつていた時空とは異ナル。
時間移動トハ、世界を分割させ新たな可能性を含む新世界を創造する行為に等シイノデス。
今後、我々が窮地に陥ったとして再度の時間移動はオススメしません。
今回は上手くいきましたが、次も上手くイクトハ限リマセン」
ビッグゲテスターの機械音声に、クウラは鼻を鳴らして答える。
「フンッ、ようは誰にも負けぬ程に俺が強くなれば問題はないのだろう」
「デスガ、ソレハ困難カト」
ビッグゲテスターは淡々とクウラが激昂しかねない事実を述べようとし、
「なに! 貴様は俺が猿如きに三度遅れをとる、とでも言いたいのか!」
クウラは浮遊ポッドから思わず腰を浮かせ眉間に皺を寄せる。
「二度あることは三度アル、トモ言イマス。
ソレニ、この世界を観測した時に私が知った事実を貴方に転送してあげまショウ」
甲高い高周波に似た雑音染みた雑念がクウラの脳内を走り抜けて、
その不快な感覚にクウラの眉間の皺が更に深くなる。
だが、
「な、なんだと………破壊神ビルス……? なんだコイツは!」
鋭い彼の目が驚愕に見開かれ、
ビッグゲテスターが提示してくるデータ群に目が泳ぐのを隠せない。
「カツテの我々の世界には存在しなかった神。
創造の界王神と対をなす破壊の神デス。
そしてその上には全王なる存在モ観測サレテイマス」
「宇宙が、12個……それぞれの宇宙に破壊神、だと?
ふ、ふざけるなぁ…! 推定戦闘力、1京5000兆とは……こ、こんな!!」
「破壊神の推定戦闘力はあくまで最低値デアッテ、それ以上の可能性も十分にアリマス。
サイヤ人や地球人の様に戦闘力が上下するか、或イハ我々ノ様ナ変身型カモシレマセン。
最強を目指すよりも、自己保存ヲ目的トスル事をオススメします。
せっかく生き延びたのデス。
大人しくシテイレバ我々ハほぼ永遠に生きてイラレルノデスカラ」
淡々と、冷静に告げられた絶望的な戦力差。
「因みに、今の我々ハ過去のクウラと同座標上に転移し融合しています。
お気づきデシタカ?」
「…………確かに、俺の身体はもとの……生きたボディだ」
「ソウデス。 9割以上が機械であった我々が10割生物である過去の貴方と融合シタノデス。
過去の貴方と同座標軸上に時空転移し、不調無く完全に融合スル……。
非科学的な物言いにナリマスガ、まさに“奇跡”の変異デス。
現在、機械部分である私達はナノマシンとなって生きたボディの中に散ってイマス。
ナノマシンの一つ一つが私…コアチップと言っても過言ではありません。
今の貴方は、メタルクウラの力を吸収したクウラです。
現在戦闘力、約12億。
体内のメディカルチェックを停止し、ナノマシンを展開、戦闘特化のメタル状態化シ…
推定、15億。 ソシテ、モウ一段階の変身によって3倍の45億。
”奇跡”の末に、これが我々ノMAXパワーなのデス」
一瞬、クウラの目の前が暗くなり…まるで貧血になったかのような錯覚に陥る。
絶望的過ぎる強さの差が、嘘を言わない機械の口から数値として告げられたのだ。
「現在の私達の、約333万3333.33333………倍の強さ。 それが破壊神デス」
クウラは僅かに浮いていた腰を力なく落として背を浮遊ポッドの背もたれに預けると、
そのまま項垂れ静かに目を閉じた。
そのまま一分程だろうか。
静寂が彼の部屋を支配し、ただ静かに母船の機械類が電子音を響かせていた。
しかし、
「………ビッグゲテスター。貴様は俺と融合した一心同体の超マシーンだ。
俺が何を考えているか……理解しているだろう」
再び開いたクウラの口から聞こえる声は、少しの力も失ってはいない。
「……理解は出来ますが賛成デキカネマス。
シカシ、私達の本体はあくまで貴方であると認識シテイマス。
ビッグゲテスターのAIは貴方を全面的にサポートすることをお約束シマス」
「く、くくくく……俺の目指す高みは遥か遠い。
今、俺が弱いのならばただ強くなればいいだけの話だ!
最近は通常形態に慣らすことぐらいしかしていなかったからな……。
トレーニングなぞ何時以来か」
(退屈せずに済みそうだ……!)
己の自負する宇宙最強がいかにちっぽけであったか。
真の宇宙最強がいかに大きく遠いものであったか。
井の中の蛙大海を知らず………世界を知ったクウラは、今その精神を大きく飛躍させた。
クウラの瞳には挑戦者としての炎が熱く滾りギラついているのだった。