スーパーメタルクウラ伝【本編完結】   作:走れ軟骨

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一応、これにて最終話です。
クウラが(最終的に)勝つのを読みたい方はこれを飛ばして次へどうぞ。

これまで拙作にお付き合い下さりありがとうございました。


最終話 悟空がやらねば誰がやる

宇宙が静まり返る。

つい数秒前までは宇宙全体が震え、崩壊する寸前と言っても過言ではなかったのに、

宇宙を駆け巡った気の嵐もピタリと止んで静謐を取り戻していた。

 

「……戦いは終わったみてぇだな」

 

息荒く、肩を上下に揺らして悟空が気を抜きながら独り呟いた。

 

(ハァ……なんとか地球を守りきったか……とんでもねぇ気のぶつかり合いだったぜ)

 

今に、あの破壊神と付き人がのほほんとした顔で目の前に戻ってくる。

悟空はそう信じ切っていたのだが、

 

「そうだ。戦いは終わった。これからは一方的な展開だ……戦いとは言えん」

 

「っ!?」

 

突如、悟空の背後から耳へと飛び込んできたその冷たい声。

ナメック星で聞いた、あの宿命の大敵・フリーザと似た、その声。

 

「ク、クウラ……!」

 

振り返った悟空の顔が強張り、声が驚愕に震えた。

瞬間移動によって気配も感じさせずに自分の背後に仁王立つクウラの姿は、

彼の声と同じように冷たい…機械めいたフルメタルボディ。

ウイスの水晶に映る映像内で大暴れしていた白銀の悪鬼が目の前にいた。

 

「………おめぇ……ウイスさんを……!」

 

「奴らはもう、死体も残さず消え失せた。

 俺は破壊神よりも強い……強くなった!

 残る障害はあと二つ……全王と…………………そして貴様らサイヤ人だァ!!!」

 

クウラが叫び、一瞬にしてドス黒い気を台風の様に噴き上げると

 

「っ!!!」

 

(は、速―――)

 

次の瞬間には紅く光るクウラの目が悟空の顔面スレスレにまで迫っていて、

そして、大木に豪速の鉄球がめり込むような鈍い音が悟空の腹から響くのだった。

 

「―――っっっっ!! が…あ、あ゛っ、あ゛っっっ!!!!」

 

クウラの輝く白銀の拳が深々と悟空の腹にめり込み、

そのまま軽々と悟空を持ち上げると、彼を眼下の地球へ投げ捨てる様に拳を振り下ろす。

 

「うあああああああああああああああっ!!!!」

 

成層圏へと超速で叩き落され、叫ぶ悟空は赤熱化しながら吹っ飛んでいく。

超高速の弾丸と化した悟空は大海を割って地球を穿ち、

母なる星を轟音と激震が包み込むと、

 

「今の音は……! まさかビルスがまた何か地球にしようとしてやがるのか!!」

 

「ベジータ、あれを見ろよ! お、大津波だぜ!!」

 

揺れる大型客船の上で、

ブルマとトランクスを庇うようにしていたベジータへヤムチャが言いながら指差す。

彼の言うとおり、指が指し示す先には地鳴りと共に迫りくる、

海の壁としか形容の出来ぬ大津波があった。

悟空が巻き上げた大量の海水が雨となって空からも降り注ぎ、

場はちょっとした暴風雨である。

 

「チッ、おいピッコロ! お前達はここで船とこいつらを守っていろ!

 後に続け、ブロリー、悟飯! 遅れるんじゃないぞ!」

 

もし、本当にビルスが何かをしたのなら、

何とか対抗できるのはサイヤ人である自分とブロリー、

そして抜群の潜在能力を持つ悟飯だけであろう。

トランクスと悟天では例えフュージョンしても、またお尻ペンペンをされるだけだ。

そう判断したベジータは正しい。

サイヤの王子の命令口調に忌々しげに顔を歪めたブロリーだが、

飛び去るベジータの後を追って悟飯と共に空を駆ける。

 

轟音と振動の発生源……隕石が落下したかのようなそこは、

そこだけ海水がポッカリと無くなっていて、

周りから徐々に海水が流れ込み始めて渦を形成しつつある。

水が流れ行く中心点……そこには、

 

「カカロット!? ゴ、ゴッドでもビルスを満足させられなかったというのか!」

 

「父さん!!」

 

苦悶も顕に呻く悟空が片目を辛うじて開けて倒れていた。

 

「ベ、ベジータ……! う、後ろ、だ!!!」

 

掠れる声で悟空が叫ぶ。

咄嗟に振り向いたベジータとブロリーの視界に飛び込んできたもの。

それは…、

 

「な……!!? クウラ!?」

 

「…っ!!」

 

無言のままにサイヤ人達へ鋭い視線を飛ばすクウラの姿である。

ベジータとブロリーが目を見開く。

海の渦に埋没しつつあった父へ肩を貸し、海中から引き揚げてきた悟飯もまた、

ベジータらと同様に”信じられぬ”といった様子でクウラの厳つい巨体に視線を奪われていた。

クウラはサイヤ人4人をゆっくりと赤い目で見渡すと、

 

「フッフッフッ……いつぞや見た顔もいるな。

 フリーザはつくづく甘い……こんなにも多くの猿を生かしていたとは……。

 だが、今は弟の甘さに感謝しなくてはならん。

 貴様らサイヤ人のお陰で、俺はこれ程のパワーを手に入れたのだからな!」

 

マスク越しに響く声そのものが力を持っているかのように大気を揺らす。

クウラが僅かな気をその声に溢れさせただけで、天が震え大海が波打つのだ。

破格のパワーであった。

ベジータと悟飯、そして…然しものブロリーですら戦慄するクウラの威圧。

ビルスと闘い、

休むこと無くビルスとクウラの激闘の余波から地球を守り続けた悟空は疲れ切っているし、

ベジータ達とてビルスに一蹴されたとはいえ破壊神と闘った直後だ。

オマケに、サイヤパワーなる物を悟空へと提供してからサイヤ人達は調子がいまいちだ。

未だに回復しきっておらず、ブロリーでさえ体が重い。

しかし、例え彼ら全員が万全の調子だったとしても、

 

(か、勝てない………! なんなんだコイツの気は…!! ば、化け物だ!!!)

 

そう結論付けるベジータの思考は覆りはしないだろう。

クリアな神の気の対極にあるドス黒い邪悪な気を放つクウラ。

その気からは、神達が表面化しなかった強さをストレートに読み取れた。

遥か離れた船上のクリリン達ですら、

 

「な、なんなんだよ…この気は!

 信じられない……お、俺…震えが止まらねぇ…ち、ちくしょう…!」

 

「こ、この気は…ク、クウラと似ている! あいつが生きていたのか!

 だが……なんて不気味な気なんだ…!!」

 

震え上がる程であった。

やがて、ブルマやチチ…非戦闘員組達が、

 

「う……き、気持ち…悪い。さ、寒い…とんでもなく、寒いわ…」

 

「な、なんだか……気分が悪くて…立ってらんねぇべ…」

 

次々と膝から力が抜け、真っ青な顔で床に倒れ伏す。

 

「こんな強大な、邪悪な気を一般人が浴びたらひとたまりもないぞ!

 せめてこの船だけでも俺達の気で守るんだ!」

 

天津飯が何やら手印を組みながら気合を発すると、

ピッコロ達もそれに続いて各々が気を放出。 

船を覆うバリアのような防護膜を展開し、皆を邪悪な気から護るのであった。

皆の顔色が幾らか血色の良さを取り戻し、クリリン達はホッと胸を撫で下ろしたが、

 

「クウラの野郎…生きてやがったのか……!

 しかも…破壊神ビルスと同じタイミングで来るなんてな…。

 なんてツイてないんだ、俺達」

 

ヤムチャは気を振り絞って踏ん張りながらもゲンナリした顔でそう愚痴る。

 

「考えようによっては、今で良かったかもしれんぞ。

 これ程に邪悪で強い……恐らくビルス様も、クウラを放ってはおかんだろう。

 ビルス様と悟空達が協力すれば、クウラでもひとたまりもないだろうからな。

 だが…どの道、もう俺達がどうこうできる次元の強さじゃない…」

 

そう呟いたピッコロの顔は、どこか悲しげである。

かつて己の無力を嘆いた地球の神様の心情を、今彼は正しく理解したのかもしれない。

 

(死ぬなよ…孫、そして悟飯!)

 

ピッコロが見つめる遥か水平の彼方では、

不気味にうねる気の奔流が天候さえも狂わたのか、空さえもドス黒く染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クウラと4人のサイヤ人が戦いを開始してから早、20秒。

悟飯はアルティメットに、ベジータは超サイヤ人2のフルパワー。

ブロリーは3mを超そうかという隆々とした伝説の超サイヤ人、

そして悟空はなけなしのパワーを振り絞って超化しクウラに立ち向かった。

ただの超化とはいえ、ゴッドの力をその身に取り込んでのことだ。 弱いはずがない。

だが、この20秒足らずで4人全員、既にボロボロなのだ。

そして今また…、

ドッ、と空気が振動し、次の瞬間には悟飯が海底まで殴り飛ばされる。

そして、それともはや同時と言える時間差でベジータもまた地平の彼方へ蹴り飛ばされて、

ブロリーはしなる尻尾の一撃を受けて遠方に霞む山まで吹っ飛び、

そして悟空はクウラの鋼鉄のヘッドバットを脳天に叩き込まれ数m後退。

悟空は、くわんくわんと揺れる世界を(かぶり)を振って無理矢理正常に戻すと、

 

「こ、このヤロ…! かめはめ…波ぁーーー!!!」

 

得意の気功波を面前の敵に向けて放つのだった。

しかし、クウラはそれを見ても回避をするでもない。

無表情のままに、迫るエネルギー流へ自ら突進していきかめはめ波を掻き分ける。

 

「な、なにっ!?」

 

まるでかめはめ波を泳ぐかのようにして軽やかに突き進み、

悟空の手元すぐから飛び出したクウラ。

愕然とする悟空の腹に重量感溢れるボディブローを食らわし、

 

「うごあぁぁっ!!?」

 

くの字に曲がった悟空の頭へと手を伸ばし、そのまま締め上げにかかる。

 

「ぐあ…! あ、ああ…!」

 

頭を鷲掴みにされ、ギリギリと万力のように締め付けてくる白銀の手。

クウラの鋭い赤い目が、己の手の内で悶える悟空を冷徹に見据える。

 

「超サイヤ人はこんなものではあるまい…!

 ビルスとの闘いで消耗しているとはいえ…なんだその体たらくは」

 

更に手に力を込めれば、悟空の叫び声が黒い空に吸い込まれていく。

 

「う、あ゛っ、あ゛あ゛っ……! ち、く…しょう…!!」

 

骨が軋む程に頭を掴まれながらも、悟空がクウラの様々な部位へキックを叩き込むが、

金属的な音が響くだけでクウラの体は微動だにしない。

 

(か、硬ぇ~!)

 

無論、ダメージもゼロのようだ。

逆に悟空の足が痛む始末である。

内心で、どこかトボけた感想を漏らす悟空だが実情は逼迫している。

そのまま頭蓋を砕いてやろうかとクウラが力を徐々に込め始めた次の瞬間、

下方で、水が爆裂したかのように水柱が立ち上がる。

 

「父さんを放せえええええ!!!」

 

弾けるように海から飛び出してきた悟飯が、怒号をあげながら空のクウラ目掛け突進。

クウラは超高速で迫る悟飯を一瞥し、

 

「フッ…ならば返してやる!」

 

腕を振り抜いて悟空を悟飯目掛けて投げ飛ばした。

咄嗟に悟飯は父を受け止めてしまったが、それと同時に、

 

「父さん! しっか――」

 

「やべぇ悟飯、逃げ、うわあああああああああああ!!!?」

 

けたたましい大爆発が突如起こって悟空親子を爆炎が包む。

広がる炎と熱が大海を瞬間的に沸騰させ蒸発させていき、

地平と水平の彼方からも見えるだろう規模の巨大なキノコ雲が立ち昇る。

破壊神でさえ軌道を読むことのできなかったロックオンバスター。

起動モーションもなく、牽制にも必殺にもなる使い勝手抜群の恐るべき技であった。

炎に塗れて落下していく悟空親子を無表情で見つめるクウラの耳に、

 

「でゃああああああああああっ!!!」

 

「ぬぅぅうううううううっ!!」

 

悟飯に負けじと高速で戦場へと舞い戻ったベジータとブロリーの雄叫びが聞こえてくる。

両雄並び立ち、気を全開にして突っ込んでくる様をクウラは愉快そうに見、

 

「そのタフさだけは褒めてやろう。 だが…!!」

 

2人に対して、彼らと同じように真正面から突っ込みだす。

超高速で互いに迫る両陣営。

ベジータとブロリーが、迫るクウラに対し腕を引き、いざ殴り抜こうとした正にその時。

フッ、とクウラの姿が彼らの目の前で掻き消え、

 

「なっ!?」

 

「っ!!」

 

彼らの首筋に背後から重々しい衝撃が走り煮えたぎる海へと叩き落されるのだった。

風を切って落下していくベジータは、

 

(しょ、正面から来やがったのに……一瞬にして、う…後ろから攻撃してくるだとォ!)

 

クウラの余りの強さに恐怖が頭をよぎる。

共に落下するブロリーと初めて相対した時とフリーザの全力と戦った時…、

それ以上の絶望が彼を襲っているのだ。

以前のクウラと出会った時もそうであったが、今はそれを超える。

 

2人が墜落したことで、轟音と共に浅くなった海が割れ露出した海底が深く陥没してしまう。

クウラはそこへ容赦なく大量のエネルギー弾を雨霰と浴びせ、

海からは更に水分が消えていくのだった。

もはや大洋の面影もない程の浅瀬と化し、

一帯が大きく抉れ地形が様変わりしている。

クウラの放つエネルギー弾の一発一発が恐ろしい熱と破壊力を持っている証であった。

 

蒸発した海から立ち昇る多量の蒸気が曇天に吸い込まれ、

クウラの邪悪な気によって乱れた気象が濃密な雷雨を引き起こす。

エネルギー弾が巻き上げた戦塵が豪雨に洗い流され、

露わとなったそこには浅瀬に突っ伏す4人のサイヤ人の姿があった。

 

「ハァ、ハァ、ハァっ! と、とんでもねぇ強さだ…!

 ビルス様にも負けちゃいねぇ、な…!」

 

「ぐ……く……カ、カカロット…! そ、その破壊神様はどこに行きやがった!

 もう…クウラは、はぁ、はぁ…、お、俺達の手に負えるレベルじゃないぞ…!」

 

血だらけの体を引きずるようにしながら、ベジータが言う。

もうこれは破壊神の案件だろう、という思いが言外から伝わってくるが、

 

「へ、へへ……オラも、ビルス様に助けてもらいてぇとこだけどよ……。

 どうも、クウラの野郎……ビルス様に勝っちまったみてぇだぜ」

 

片目の瞼が腫れ上がった悟空が、かすれる目でクウラを睨みながらそう答えた。

 

「バ…バカなっ!!! ビ、ビルス様がやられた、だと!!?

 ………ク、クソッタレェ~~…、お、おしまい、か…!」

 

ビルスの力に震え上がり、プライドを捨てて頭を下げていたベジータである。

ビルスの助勢を願えないばかりか、

その恐るべき破壊神までをも倒していたクウラの存在に愕然とし、

力無くその場に座り込んでしまった。

 

「破壊神ビルスは圧倒的な存在だった…!

 それを上回ったクウラに、一体どうやって勝てというんだ……! ち、ちくしょう…!」

 

「あ、あのビルス、様を…倒してしまったなんて…、ほ、本当なんですか、父さん」

 

悟飯も、もはや動かなくなった左腕を庇いながら立ち上がり父を見るが、

悟空は黙って頷くだけであった。

それを見て、思わず悟飯も膝から力が抜けてしまう。

もはや全員の超化は解けてしまっていて満身創痍。

彼らの絶望的な状況を象徴するかのように空は陽が沈み…

どんよりとした夜の帳が下り始めていた。

後は座して死を待つばかり。

そう思われた、その時……。

 

ドクンッ。

 

大きく脈打つ鼓動の音が彼らの耳に届く。

 

ドクンッ、ドクンッ。

 

彼らサイヤ人にとって、聞き慣れた音であり、現象。

音を発生させる人物へ一同が視線を集め、

 

「ブ、ブロリー?」

 

悟空が怪訝な目で彼の顔を覗き込むようにして、見た。

分厚い雲の隙間から覗く一条の月光を呆けたように見つめるブロリーがそこにいるのであった。

本日の月齢…それは。

 

「あっ! そ、そうか…きょ、今日は…満月ですよ、父さん、ベジータさん!」

 

「な、なに! そうか! ブロリーの奴…尻尾をまだ生やしていやがったのか!!

 月が真円を描く時こそが、俺達サイヤ人の本領を発揮できる時!!」

 

月に照り返された時のみ、その太陽光にはブルーツ波が含まれる。

そのブルーツ波が満月になると1700万ゼノを超え…、

それはサイヤ人の目から吸収され尾に反応し、変身が始まる。

即ち大猿化である。

 

「うう、ううううっ!! う…、おお、オオオオオオオオオオオッ!!!」

 

ブロリーの傷だらけの肉体が、超化以上に膨れ上がるとみるみるうちに巨大化していくが、

その変身を空から見下ろすクウラは別段慌てるでもなしに、

 

「フンッ、くだらん!

 大猿化か……今更、戦闘力を10倍にした所で焼け石に水だ!」

 

巨大な獣と化していくブロリーを眺めていた。

だが、結果論になるが、

クウラはここでサイヤ人の変身を止めておくべきであった。

サイヤ人という種を良く理解していたからこその思い込み。

大猿化は通常の10倍の戦闘力を持ち超化とは併用できない、

というサイヤ人の特性を良く理解していたクウラだからこその失態であった。

剛健な体毛に覆われ、悠に6mは超そうかという大猿に変じたブロリーは、

誰の目から見ても明らかに異質な輝きを持っていた。

 

「ブ、ブロリーの大猿は…な、なんだあれは!?

 き、金に輝いてやがる!!」

 

「どひゃーー! なんだありゃ!? 黄金の大猿だぁ!」

 

「す、すごい…あんな変身……初めて見たぞ!

 気が有り得ないぐらい膨れ上がった!

 老界王神様に引き出してもらった僕のアルティメット並だ!」

 

同族であり、大猿への変身経験がある彼らでも初めて見る黄金の大猿。

尻尾を長らく失っていた彼らでは知る由もなかったが、

超サイヤ人3へと到達したサイヤ人が満月によって大猿化すれば、この黄金の大猿となる。

超サイヤ人3に変身しないブロリーが、一体何故この黄金大猿となれたのか。

可能性としては、

彼独自の超化だけで超サイヤ人3の400倍に匹敵するまでに倍率を伸ばしていたか…、

或いは超サイヤ人3に()()()()変身可能になったのか。

そのどちらかであろうが、ブロリーならば前者の理由であろうと可笑しくはない。

恐るべき麒麟児である。

そんな超異常事態といえる黄金大猿を前にして、

先程まで機械のように冷静であったクウラが、

 

「な…なんだあれは!?」

 

今回の戦いで初めて動揺を見せた。

 

「グオオーーーーーーーーーーーー!!!」

 

地を揺する黄金大猿の咆哮。

理性を感じさせぬ獣の威嚇は、己以外の全てに向けられているようだった。

手近にいたベジータ、悟飯らを一睨みした大猿ブロリーは、

グルルル、と低音で唸ると真っ先に彼らを、

 

「っ! ブロリーの野郎、理性を失ってやがる!

 所詮下級戦――ぐわああああああ!!!?」

 

「えっ!? ちょ、ちょっとブロリーさん!? う、うわああああああああああ!!!!?」

 

殴り飛ばし、そして蹴飛ばした。

そして次の瞬間には悟空を無視し、首を持ち上げ空を見る。

ベジータ、悟飯に続いて視界に入ったのがクウラであったから、

ブロリーはそのままクウラを獲物と狙い定め……、

大猿は地を蹴って跳躍。 

闇夜に浮かぶクウラを追い越すと巨大な両腕を真上から振り下ろす。

クウラは大猿の豪腕を片手一本で受け止めきってしまうが、

それでも彼は予想を遥かに超える大猿の力に驚嘆を隠せない。

 

「ガアアアアアアッ!!!」

 

「このパワー、ただの大猿ではない…! バカな…なんだこの戦闘力は…!」

 

唸る獣の腕を掴むとそのまま無造作に捻り、大猿の巨体を横に高速回転。

そのまま頭上からキックを見舞って大猿を叩き落とし地中深くへと突き刺す。

 

クウラの電子頭脳が弾き出した強化倍率は10倍どころの騒ぎではない。

先程悟飯が独白していた通り、

彼のアルティメット化に等しい4万倍という恐ろしい数値を叩き出していた。

瀕死再生と少しの悟空との喧嘩によってブロリーの通常戦闘力、60億。

黄金大猿となって240兆という急成長っぷりである。

だが、

 

「驚かせやがる……下等な猿のコケオドシか!

 俺どころか…まだ孫悟空のパワーの3%程度の雑魚に過ぎん!!」

 

そう。『だが』なのである。

クウラの言うとおり、ゴッドの力を吸収した悟空はおろか、

修行を怠らずにアルティメット化を極めた悟飯にすら、未だ及ばない。

超メタルクウラと比べてしまうと100分の1程度でしかないのだ。

しかしクウラは、

 

(俺の変身は最大で3倍……

 それをサイヤ人共は、桁外れの倍率で自己強化を繰り返す!!)

 

サイヤ人に対する危機感を改めて実感し、決意する。

 

「俺から見ればまだ虫ケラ同様……。

 だが、サイヤ人は追い詰められれば追い詰められるほど可笑しなパワーを発揮しやがる!

 遊びはもうお終いだ! 地球ごと砕け散れ!!」

 

クウラが銀の腕を地球にかざし、その念動力で引き裂こうとする。

彼の腕の一振りで宇宙に浮かぶ数百の小惑星が砕ける……、

そのレベルの念動力であったが、

 

「なに? 砕けん、だと! これほどの硬度が地球にあるわけが…、

 む……そうか、貴様か孫悟空! 小賢しいことを!

 地球を守っているな!?」

 

ボロボロの肉体から神の気を絞り出し地球を守る悟空によってそれは阻まれ、

 

「……ならば、貴様から先に八つ裂きにしてやるまでだァァァァッ!!!」

 

当然ながらクウラの矛先は悟空へ向く。

悟空の見立てでは、今のクウラは己の倍以上強い。

そんな男が猛然と自分にかっ飛んで来る様は中々にゾッとする光景だ。

曲がりなりにもクウラに対抗できるのは悟空だけ。

クウラも悟空もそう認識し、

そして悟空以外とクウラとでは『恐竜とアリぐらい違う』力量差があった。

だからクウラにはある種の油断があった。

絶対的に揺るがぬ戦力差がある、と。

自分は破壊神を倒し、天使を策謀でもって殺してもはや最強だ。

サイヤ人如きに出来ることはもはや何も無い。

部下達もメタルクウラも要らぬ。

自分だけの手でサイヤの猿を皆殺しにしてやる。

そういう、傲慢という名の油断があった。

 

甘さを捨て、殺せるべき時に殺すことを心掛けてきた筈のクウラであったが、

やはり生来から持つ傲岸不遜な性分は奥深くに根付いていたようだ。

ひょっとしたら、『かつて自分を二度までも破った孫悟空への復讐が後一歩で成る』

という歓喜も油断を大きくするのを手伝っていたのかもしれない。

それらがクウラの視野を狭め、

 

「グオオオオーーーーーーッ!!!!!」

 

「っ!!!?」

 

悟空へと集中していたクウラの横っ面に、

既に態勢を立て直していた大猿の最高の一撃が突き刺さりクウラの巨体を押し潰した。

黄金大猿の240兆というパワーを気を爆発させ高め、

その全てを巨大な拳に込めた渾身の一撃であった。

黄金に輝く大猿ブロリーのそのパンチは速度もさっきとはまるで違う。

速度、威力は100倍の2京4000兆相当。

メタルクウラ最終形態の2京0625兆を相手取って致命傷を与えられる一瞬の爆発力だった。

 

(バ、バカな…! バカなァーーーーーーーー!!!!!?)

 

吹き飛びつつあるクウラの銀の装甲がどんどんとヒビ割れ、

そしてパラパラと砕け、剥離していく。

フルパワーとなって更に1.25倍の戦闘力に己を高めていれば防げたであろう会心の一撃。

だが、

 

「ぐ、く…!! な、舐めるなよ…さ、猿がァーーーーーーーーッッ!!!!」

 

フルパワーでなかったからこそ、どのような傷も即座にナノマシンが治療を開始する。

ビッグゲテスターが弱点を解析し、更に強化しながら。

混濁した意識も脳内のマシーン達の助力によって一瞬で取り戻し、

空中で即座にブレーキをかけたクウラは直ぐ様、金色の大猿へと向き直ると、

 

「下等生物如きが!!」

 

右手に集束したエネルギーを無造作に放つ。

拡散するように広がって相手を焼き尽くすデスフラッシャーである。

かつて、以前の世界で孫悟空に使用した時には目眩まし程度にしかならなかったが、

今のクウラがブロリーに放てば、

 

「ギャオオオオオオオオオ!!!!」

 

一撃で大猿の全身を焼け爛れさせ戦闘不能に追い込む威力となるのだ。

断末魔をあげて黒焦げとなった大猿が倒れゆく様を見、クウラが笑う。

 

「ははははははっ! バカめっ!

 まともに戦えばこの俺に敵うわけが――――」

 

「――――クウラぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

ハッ、とクウラが我に帰る。

 

(そうだ、孫悟空は――)

 

最も警戒すべき相手から、一瞬とはいえ完全に意識を逸らしていた。

ブロリーの最高のタイミングでの横槍がなければ有り得ない出来事である。

自分の名を叫び呼ぶその声の方を振り向けば、

 

「っ!!」

 

やや下方、正面から超高速で迫る悟空の姿。

右腕だけを突き出し、防御を完全に捨てて特攻してきていた。

 

(ゴッドの力を全てあの拳に…!?

 あの大猿と同じような真似をしようというのか!)

 

今の自分では、受けるのはマズイ。

そう判断し、クウラは悟空の軌道軸上からの離脱を試みたが――

 

(っ!? か、体が!!)

 

一瞬…ほんの僅かな間、彼の体が硬直した。

ナノマシンによる自己修復時に生じる刹那の隙が、

避けられるはずの攻撃を命中へと導いてしまっていた。

 

(修復が遅い!! あの金の大猿の一撃が予想以上に重かった!!)

 

「くっ!!!!」

 

咄嗟に体勢を修正し防御へ切り替えたのは、さすがにクウラであった。

しかし、

 

「オラの全てを、ゴッドのパワーを…この拳にかける……!!!

 龍拳だぁぁぁぁーーーーーー!!!!」

 

「ぬっ!!?」

 

「つらぬけーーーーーっ!!!!」

 

ズンッ。

 

 

 

 

 

轟音が響いた。

 

 

 

 

 

腕を交差させ、完全な防御を形成していたクウラの銀の腕。

左右のそれらが、ひしゃげながら宙を舞う。

幅広く、分厚いクウラの胸板に、人一人が通れそうな大穴がポッカリと空いていた。

 

「勝った…! 勝ったぞーーーーーっ!!!」

 

暗黒の空に染み入る、悟空の勝鬨。

大きく見開かれたクウラの紅い眼が彼の驚愕の大きさを物語る。

 

「っ!! ぐ…あ、ああ……!? バ、バカ、な…!!

 だ、だが……この程度のダメージなぞォォォォォォ!」

 

自分の背後へ突き抜けた悟空へ振り返り、

羅刹の如き凶相で憎きサイヤ人を睨みつける。

大ダメージを負えば、確かに先の一瞬のようにクウラに隙が生じる。

だがもはや、自分を超え得る可能性を持つ戦士2人に継戦能力はない。

悟空は全ての力を使い果たしたのは明白だし、大猿は焼け死ぬ寸前だ。

クウラは悠々と自分を強化修復し、力尽きた彼らを殺すだけ。

そのはずであったが、

 

「っ!? な、なに!!」

 

悟空の拳から送り込まれた彼の気が、

クウラの全身を覆い尽くし肉体の隅々にまで伝搬する。

 

「うおおおおおおおおっ!! こ、これは!!!」

 

それはまるで黄金の龍がクウラを締め上げようとしているようであった。

悟空の気がクウラを内外から破壊していき、

そしてクウラのメタルボディに次々と深い亀裂を生じさせると、

そこから金の閃光が激しく漏れ出初めて…

 

「バカな…! バカなァァァァァ!!

 ま、負けたのか!! こ、この俺が…!

 は、はははは…! はははははっ!! ハッハッハッハッハッハッ!!!」

 

金色の雷光をまとう大爆発がクウラの全てを飲み込んでいく。

黄金の龍に喰われて消えゆくクウラは、

 

(そ、そうか…超サイヤ人とは………戦いの中で進化し続ける者…!

 自分の殻を破り続け、無限に進化を繰り返すサイヤ人…!! そ、それ、こそ、が……!)

 

千切れた腕を、力尽き無防備な背を晒す悟空へと無意識に伸ばす。

遥か遠く、自分では決して手に入らない何かを持っているサイヤ人に、羨望を込めて。

 

クウラは最期の最期まで笑い続けた。

空の四方まで響き渡るその笑い声は、妙に、どこか清々しく聞こえる。

 

何故、敗れ、滅びゆく自分がこうも心底愉快に笑うのか。

それはクウラ自身ですら分からないことだった。

そうして彼は閃光の中に消え去って、後には何も残らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後…。

もはや立ち上がる力すら残っていないサイヤ人4人組。

そんな彼らの元に急ぎ仲間達が馳せ参じる。

特にピッコロは、デンデを肩に担いで真っ先にやって来て皆を回復。

ブロリーは、治療が後1分遅ければ死んでいたであろう重度の火傷で、

正に間一髪であった。

泣いて抱きついてくるココに、珍しくブロリーが照れているようであった。

 

クウラが死んだことで、宇宙中を覆っていた妨害電波が消え去って、

悟空の元に界王を通して界王神らから次々に祝電が送られてきた。

勿論、皆頭に輪っかが乗っていたが。

 

なにせ皆クウラに殺されていたのだから。

 

破壊神ビルスは界王の元に顔を出していない。

殺されたことを恥じているのか、

それとも破壊神の魂は別の所へ流れ行くのかは分からないが、

とりあえず今は界王様が破壊神の魂を探しているみたいだ。

 

クウラを倒し、彼の死とともに宇宙中のメタルクウラやビッグゲテスターが爆発した…、

と界王様はホクホク顔で言うが問題は山積みだ。

なにせこの宇宙からは地球以外の殆どの命と惑星が失われたし、

なにより神様が全滅している。

地球もボロボロだ。

デンデに確認した所、クウラの邪悪な気によって総人口が10分の1になってしまったらしい。

 

どうしたものか、と皆が頭を悩ましていた所に、

 

「いいっ!? ビ、ビルス様!? 太って生き返ったんか!?」

 

「こら。失礼ですよ……この御方は第6宇宙の破壊神シャンパ様です。

 こちらの宇宙の破壊神ビルス様とは双子の御兄弟なのです」

 

ふんぞり返るデブの破壊神が来訪したのだった。

彼が言うには、

 

「情けないビルスと第7宇宙の為に、一ついい提案をしてやろう!

 どんな願いでも叶う願い玉をかけて勝負といこうじゃないか」

 

ということらしくて、

地球のドラゴンボールを使用してしまっていた悟空たちにとっては渡りに舟である。

デンデも、

 

「地球のドラゴンボールでは、

 クウラによって起きた被害を全部復活させるのは無理かもしれません」

 

被害が桁違い過ぎて『元通り』とはいかないかも…と言っていたことだし都合が良かった。

一も二もなく勝負に乗る悟空達である。

 

そしてそのまま第6宇宙・第7宇宙破壊神選抜格闘試合が始まるのであったが、

結局、もともと最後にはシャンパは負けてやるつもりだったらしく、

超ドラゴンボールによって見事に第7宇宙は元通り。

復活したビルスは、

 

「いやぁーー、破壊神のくせに殺されるなんてなぁーーーー!

 は・ず・か・しーーーーーーーっ!!」

 

「お、おまえなぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」

 

双子のシャンパに散々バカにされからかわれることになった。

双子の兄弟にドデカイ借りを作ってしまったビルスは今後大変だろう。

 

こうして世界に平穏な日常が戻ってきた。

ドラゴンボールと悟空によって、明日も平和な日常はギリギリ守られ続けるに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

―完―

 

エンディングNo1・やっぱり最後は僕らのヒーロー孫悟空




ビルスが来た日が満月なのは当SSの独自設定(ご都合主義とも言う)です。
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