スーパーメタルクウラ伝【本編完結】 作:走れ軟骨
オマケ要素ということで大目に見て下さい。
「――――クウラぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
ハッ、とクウラが我に帰る。
(そうだ、孫悟空は――)
最も警戒すべき相手から、一瞬とはいえ完全に意識を逸らしていた。
ブロリーの最高のタイミングでの横槍がなければ有り得ない出来事である。
自分の名を叫び呼ぶその声の方を振り向けば、
「っ!!」
やや下方、正面から超高速で迫る悟空の姿。
右腕だけを突き出し、防御を完全に捨てて特攻してきていた。
(ゴッドの力を全てあの拳に…!?
あの大猿と同じような真似をしようというのか!)
今の自分では受けるのはマズイ。
そう判断し、クウラは悟空の軌道軸上からの離脱を試みたが――
(っ!? か、体が!!)
一瞬…ほんの僅かな間、彼の体が硬直した。
ナノマシンによる自己修復時に生じる刹那の隙が、
避けられるはずの攻撃を回避不能へと変えてしまった。
(修復が遅い!!あの金の大猿の一撃が予想以上に重かった!!)
「くっ!!!!」
咄嗟に体勢を修正し防御へ切り替えたのは、さすがにクウラであった。
しかし、
「オラの全てを、ゴッドのパワーを…この拳にかける……!!!
龍拳だぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
「ぬぅッ!!?」
「つらぬけーーーーーっ!!!!」
ズンッ、というどこまでも分厚く硬い大木を殴りつけたかのような重低音が
悟空の右拳にビリビリと伝わる。
(なんて…かてぇんだ…!!)
腕を交差させ、完全な防御を形成していたクウラの銀の腕。
左右のそれらが、ひしゃげながら宙を舞い、
クウラの頭部プロテクターを粉砕し、悟空の拳が側頭部をモロに捉えていたが、
それは大ダメージであろうが決して悟空の狙った致命の一打とならかった。
全精力を込めてクウラの体を貫くつもりだったが、
クウラの防御テクニックと純粋な肉体強度が悟空の執念を上回った。
しかし、
「…ぐッ、が…っ!!」
ぐるりとクウラの世界が回って歪む。
白銀の悪鬼はそのままゆっくりと態勢を崩して墜落していった。
クウラの脳は意識を刈り取られて、
ビッグゲテスターのコンピュータはシステムダウンを起こしたのだった。
つまりは、クウラの敗北だ。
悟空の執念は、クウラを葬ることは出来なかったが彼の戦闘続行を不能とした。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…!」
体中の全ての力を使い切った。
まさに悟空は満身創痍で、クウラを倒したはいいが自分もバタリと倒れそうだ。
「とんでもねぇ…野郎だった…っ、オ、オラ…もう、ヘトヘト、だ…へへっ」
舞空術を維持することも出来ず、
悟空は気を失ったクウラ共々フラリと態勢を崩して地に落下していった。
ドゥッ!と重々しい金属音を響かせてと共に仰向けに地に落ちたクウラ。
そしてそれの落着の後にサイヤ人が落ちる。
もう二人共に、ピクリとも動かなかった。
「…お見事。中々の戦いぶりだったわね、孫悟空」
死んだようにただ静かに目を閉じて倒れていた悟空にそう声をかける者がいる。
いつの間にか彼女はそこにいた。
「…誰、だ」
もう目を開けるのも重い。
だが悟空はギギギと錆びついた門をこじ開けるな心持ちで瞼を開けて声の主を見た。
「……ウイス、さん?ありゃ?…女?」
「私はヴァドス。ウイスの姉よ」
そう答える彼女の目はどこか冷たい。
そしてウイスのように張り付いた笑顔すらないのでより冷たい印象がある。
「へぇー…そりゃ、似てる…わけだ…へ、へへ…わ、わりぃな…こんな格好でよ。
ちっと立てそうになくてよ。おら孫悟空…ってんだ…よ、よろしく、な」
愛想笑いも引きつる。正直、今はそっとしておいて欲しい悟空だった。
その時、
「悟空ぅ~~~っ!!!」
「悟空っ!!!」
「孫!勝ったのか!」
悟空にとって聞き慣れた、安心できる仲間達の声が彼の耳に届く。
そのまま、また目を閉じてもう寝てしまおうか。
全力を出し尽くした戦いの後の疲労に身を任せて眠るのは、戦士の特権だ。
悟空が意識を手放そうとしたその時、
「…そのままお眠りなさい。後始末は私がしましょう。クウラは責任を持って殺しておきます」
戦いに
地球育ちのサイヤ人ががばりと身を起こした。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!何も殺さなくてもいいじゃねぇか!」
そのダメージで立ち上がるのは大したものだと、
ウイスの姉たる天使は満身創痍のサイヤ人を見る。
だがその瞳はやはり冷たい。そして見下すような、不可解な者を見る視線を悟空へと送る。
「え゛え゛っ!?お、おい悟空何いってんだよ!
この…ウイスさんにそっくりの美人なおねえさまの言う通り
トドメをさしちまったほうがイイって!」
当然、クリリンもヴァドスと同じ様に思っている。
他の仲間も同様だ。
「孫、こいつはフリーザの兄貴だ。
こいつの一族は、ちょっとぐらい優しくしてやったとこで反省なんてせんぞ。
トランクスにばらばらにされたコルドのことも思い出せ。
俺たちはもうこいつの一族とは相容れない宿敵なんだ」
「そうだぜ悟空!こんな奴生かしておいたって絶対また襲ってくる!
そしたら今度こそ地球も終わりだぞ!」
口々に同じようなことを言ってくるのだった。
しかし悟空は薄く笑ってこう言い返した。
「でもピッコロとは仲間になれた」
「む…」
そう言われるとピッコロは弱い。
彼はかつてピッコロ大魔王として悟空の大切な人達を傷つけ殺め、
無関係の都市の人々を虐殺した。
マジュニアである現ピッコロとは完全に無関係とは言い切れない。
今のピッコロは、かつての大魔王の人格と精神も…
完全ではないとはいえ引き継いでいて同一人物に極めて近い存在なのだから。
「そのナメック星人とは関係が改善できても、クウラも同じようにいくとは限らない」
ヴァドスは冷たく言った。
ヴァドスは当たり前のようにクウラを殺すべきと、そう思っている。
「もう一度確認するけれど…何を言っているの?殺さなくてもいい…とは、このクウラのこと?」
ヴァドスは首を傾げた。
「ああ…そいつはもう戦えねぇ。トドメなんて刺す必要はねぇさ」
「…ちょっと理解に苦しむのだけれど…クウラが戦えない程ダメージを負ったから、
今殺すのは可愛そう…情けをかけて見逃してやれ、と?そういうこと?」
「…ちょっと違ぇけど…まぁそういうことになんのかな?」
悟空自身、首を傾げながら答えた。
ヴァドスは話にならないとばかりに深く溜息をついて、
やれやれとばかりに視線だけで空を見る。
「あなた、もしかしなくてもバカなの?
クウラが今まで殺し、吸い上げてきた命の数をご存知?
教えてあげましょうか?空前絶後の史上最大の殺戮者…それが〝星喰い〟クウラ。
情けなどかける必要もなく、それを望む者もこの世にいない。勿論、あの世にも」
あらゆる生命が彼の死と破滅を望んでいる。
ヴァドスは悟空にまで酷く冷徹な視線を浴びせかけた。
だが、悟空はボロボロの状態でありながらそれを笑って流した。
「へへ、へ…オラだって分かってるさ、そんなことは。
でもよ…死んだ人達は可哀想だけど、ドラゴンボールで生き返らせりゃいい。
それに分かんねぇじゃねぇか…オラに負けたことでクウラだって、
こう…何かさ…心がちぃ~っと変わったり…少しくらい良い奴になっかもよ?」
「……孫悟空。あなたは、かつてナメック星において…
そのクウラの弟フリーザに対しても、情けをかけようとしましたね。
そう…確か『フリーザのプライドは既にズタズタだ…
この世で誰も超えるはずのない
しかもそいつは
今の怯え始めた貴様を倒しても意味はない。
ショックを受けたまま生き続けるがいい。ひっそりとな…』でしたか」
まるで見てきたかのように正確に言い当てるヴァドスに悟空は目を丸くした。
「うひゃ~、よく知ってんなぁーヴァドスさん。
オラでもそんな細かく覚えてねぇのに…見てたんか?」
「今、少し過去を調べただけですよ…。
貴方は、かつてフリーザを見逃そうとした。
同胞を殺し、友を殺し、目の前で罪なき人々を殺める様を見ておきながら…。
そして今またフリーザの兄をも同じ様に見逃そうという。
貴方の友を痛めつけ、貴方自身を殺そうと執念を燃やし…
そのために罪なき人々、動植物、惑星、それら幾つもの命を喰らったクウラを。
正直、貴方は少しおかしいです。どういう神経をしているのかしら」
貴方もまた破壊したほうが良いのかしら。
ヴァドスは物騒にそう締めくくって、またより一段と冷え込んだ目でサイヤ人を見つめた。
「えぇ!?オラも?いやぁ~、そいつはちょっと…止めてほしいとこだなぁ。
今はオラもボロボロだしよ。どうせやるならオラが全快してる時にしてくれよ。
その方が、同じ破壊されるのでもちったぁ楽しめる」
へらへら笑いながら頬を指で掻くサイヤ人を見て、ヴァドスは心底呆れた。
そして悟空の心底を見極めたようだった。
「…呆れた。貴方、本当に戦うことしか考えてないようね。
フリーザの時も、そして今回も…貴方…
『倒した敵がより強くなって自分に挑んでくる』のが真の望みだったのね?」
「へへ…まぁな。
クウラはオラに勝つために他の無関係の人を殺しまくって力を吸収したわけだろ?
そんな効率のわりぃことしてるからオラに負けたんだ…。
それは今回の敗北でクウラも理解したと思う。
だから、コイツが目覚めたらオラがもっと早く強くなれる方法をコイツに教えてやるさ」
禿頭の親友がハラハラした表情で悟空を見ている。
「おいまさか悟空…おまえ――」
親友の心配は大当たりだ。
「ああ、オラがクウラにちっと修行つけてやんだ」
大当たりした悪い予感に、クリリンはあんぐりと大口を開ける。
ピッコロも額を抑えて空を見上げ、ヤムチャは目玉を飛び出させて驚いていた。
「はぁ?」
さすがの美人天使もやや素っ頓狂な声が出た。
「亀仙流はめちゃくちゃ強くなれる。
誰が修行しても強くなれるんだ。
オラもクリリンも、ヤムチャも…全員じっちゃんに基礎を作ってもらった。
今だって、ビルス様やウィスさんに修行つけてもらってるけど、
オラ達の底にはじっちゃんの亀仙流が根付いてて、
そのお陰で今もグングン強くなれてると思うんだ」
亀仙流を語る悟空の顔は、いつにも増して童子のように屈託がない。
「しかもさぁ、なんつぅか…
修行してるうちにそういう悪い心とか薄くなってくようなとこがある気がすんだよな。
これはそんな気がするってだけなんだけど。ははは」
そんな悟空の様子を見ていて、クリリンは呆れを通り越して笑ってしまった。
「…はぁ~~~~、ったくおまえって奴は…。
…………ぷっ、はははははっ!まぁ悟空らしいっちゃらしいな。
ほんとに大した奴だよ!」
空気が弛緩する。
先程までヴァドスが発していた冷たい空気も何故かどこかに行ってしまっていた。
そのさらに前までクウラと死闘を繰り広げていたのも嘘のようだ。
「……なるほど。ウイスが言っていた通り…面白いわね。
イカれている、という意味でだけど。
私が思っていたよりも余程狂っていて、なかなか面白い」
今までクウラにかざしていた杖を引っ込めて、
ヴァドスはちらりと倒れて続けているクウラを見る。
「…ならば孫悟空。今度、クウラが目覚めてまた無差別破壊行為を再開したら…」
「その時はオラが責任もってクウラを倒すさ」
「大した自信だこと。
でもそれだけでは足りないわ。
次にクウラが暴走を開始したら、クウラは当然…
孫悟空、貴方にも責任をとってもらうこととしましょう。
私が貴方と地球を破壊する」
「ひゃー、まずいなぁそりゃ」
後ろで、「そら見ろ言わんこっちゃない!」「わぁー地球がまた巻き込まれた!」
とかの悲鳴が飛んでくる。だが悟空は何時も通り笑っていた。
ヴァドスは軽く溜息をついて悟空を見、そしてクウラをまた見る。
「…そういうわけで、貴方は助命されることになりましたよクウラ。
プライドの高い貴方が、サイヤ人に命を助けられ修行までつけて貰えるなんて…
歓喜のあまり涙でも流しそうね。
フフッ、まぁこれはこれで面白い見世物…見ものだわ」
ヴァドスはサディスティックに笑った。
「え?」
ヴァドスの指摘で恐る恐る頭を倒れ伏すクウラへ向けるクリリン。
バイザーから除く薄暗い眼部で煌々と灯っていた赤い瞳光が悟空や地球人らを見ていた。
「げぇ!?クウラ…!め、目が覚めて…!?」
クリリンが一気に数十歩後ずさり、それに倣ってピッコロらも飛び退いた。
銀色の巨漢戦士がムクリと上半を起こして赤い目でヴァドスを睨む。
「……ヴァドス。第6宇宙の天使、か。第7宇宙くんだりまでご苦労なことだな。
貴様も弟の
ヴァドスがぴくりと片眉を動かした。
美貌の天使と銀色の戦鬼の冷たい視線が交差する。
「フン…今はいいさ。死よりも屈辱的なその提案を受けようではないか。
俺は敗者だ…負け犬は何も主張することなど出来ん…。
この屈辱が…今の俺には糧となる」
憎しみで燃え上がる瞳で悟空を見るクウラだが、
目に宿った強い憎悪は寧ろ〝消えてくれるな〟と
必死に薪を焚べて憎しみの炎を消さないようにしていようだった。
クウラという男は、勝つために手段を選ばない男だが、
その一方でどこかストイックであり実直でもあった。
敵を殺し倒すために手段を選ばないのと同様に、
自分をより高みに至らせる手段は問わずどんな苦しい手法を用いることも厭わない。
そんなクウラにとって孫悟空の提案はまさに臥薪嘗胆の思いだったが、
それで悟空の強さの秘密を垣間見ることができるというなら吝かではない。
それに、憎しみと怒りを奮い立たせているということは、
悟空を狙い続け拳を交えてきたクウラには、
悟空に対して憎しみ以外の何かがうっすらと生まれてもいるということだ。
それは極めて小さな芽吹で歪なものだったが、
サイヤ人とコルド一族との関係性を新たなステージに至らせる取っ掛かり足り得る。
「おっ、クウラ起きてたんか。
オラの言うこと聞いてくれるってことは、もう他の人達は襲わねぇんだな?」
「………ッ!」
ヴァドスを睨んでいた赤い眼光が、今度はわざとか天然か…トボけたサイヤ人へと注がれた。
「…貴様を殺すに、貴様の戦闘データを直接集めるのは悪くない手だ。
だから…しばらくは貴様との修行とやらに付き合ってやる。
これは貴様に敗北し、おめおめと助命された俺自身への罰でもある…!
だが…修行よりも吸収が手っ取り早いと判断すれば、俺はまた他の奴らを殺し…喰う!
その時、貴様がどれほど後悔するのかが楽しみだな…」
ドスをきかせたクウラの声。
「へへ!そうか。じゃあこれからいっちょよろしくな!」
だが悟空はそれにもあっけらかんと返すだけだ。
クウラは小さく舌打ちし、狂う調子を何とか立て直す。
そして、黙って悟空の手を見た。
悟空はクウラへ右手を突き出している。
手のひらは緩く開いて、クウラの胸元のやや下の位置。
握手だ。
悟空はクウラへ握手を求めていた。
「…」
「明日からオラと組み手やってみよう!へへぇ~ワクワクすんなぁ!」
サイヤ人が差し出した手を、クウラは乱暴に叩いて握手代わりとした。
そんな二人を見ていた女天使が、あぁそういえば、とわざとらしく両手をポンッと叩く。
「先程、悟空さんはクウラに殺された人達をドラゴンボールで生き返らせようと言いましたが…
無理ですよ」
さらりと放たれた衝撃発言に悟空や彼の仲間たちが素っ頓狂な声を上げた。
「いっ!?なんでだ!?」
「破壊規模が大きすぎて神の力を…勿論、破壊神や全王様ではありませんよ?
ドラゴンボールを作り出した神の力を超えているからです。
それにこの宇宙はエネルギーを失い過ぎている…保って後1ヶ月といった所でしょうね。
この宇宙にあるドラゴンボールは、すでに界王神が使ってしまって再使用は約1年後。
色々と無理でしょう?」
「あちゃー…そうなんか、しまったなぁ…どうすっか」
癖のある黒々とした頭を困ったように掻く悟空。
実際困っている彼なのであった。
「…フン」
困り顔の悟空の横ではクウラがそっぽを向く。
その時、突然彼らの背後上空から
「そこでこの俺様の出番ってわけだぁ!!」
大音声が響いた。
「うわっ!?」
「どひぇー!?」
「な、なんだ!?」
「…あら、シャンパ様。もう来たんですか」
「チッ、…第6宇宙の破壊神まで来たか」
反応は三者三様。
先程の声の主を探せば、そこにはビルスそっくりの…
だがころころと太ったネコ科っぽい者が宙に浮いていた。
「ビルス様!?」
「違いますよ。お腹を見れば分かるでしょう」
天使ヴァドスが努めて冷静に己の主の
「おぉい!?主に何言ってくれちゃってるわけ!?」
「あぁすいません。つい。…コホン。
貴方、失礼ですよ。こちらは第6宇宙の破壊神シャンパ様。
この第7宇宙の破壊神ビルス様とは双子の兄弟なのです」
「いや失礼なのお前じゃね?」
シャンパの冷静な突っ込みも華麗にスルー。
ヴァドスはシャンパを遮って主の急な来訪の真意を説明しだした。
「実は…シャンパ様はこの第7宇宙の窮状を救うためにわざわざお越しになったのですよ。
シャンパ様の第6宇宙と、ここ第7宇宙は破壊神同様に双子関係にある宇宙。
どちらかが著しくバランスを崩せば連宇宙であるもう片方も無事では済まない…。
だからシャンパ様は第7宇宙を、
何十年も苦労して集めた『願い玉』で元通りにしようと来たのです。
そうすればビルス様も復活しますし…何だかんだで兄弟思いの――」
「余計なこと言わんで良い!!!
俺はビルスなんて知ったこっちゃないの!
あいつが死んでよーが生きてよーがどうでもいいんだよ!!
でもまだあいつと決着つけてないしな!?
それに第7宇宙元通りにしないと俺の宇宙もおかしくなるし!
願い玉で元通りにしてくれーっ!って
お願いしたらビルスもついでに生き返っちゃうだけだよ!!」
つまりはそういうことだった。
兄弟思いらしい。
ラディッツ、カカロット兄弟…
クウラ、フリーザ兄弟…
ヴァドス、ウイス姉弟…
彼らに比べれば一番兄弟らしい兄弟と言えるだろう。
シャンパは不機嫌そうに腕を組み、そしてクウラを睨む。
「おい、星喰い!お前のせいで俺の宇宙までガタガタだ!
…あとついでに、ホントについでだがビルスをやってくれた礼もしなきゃならん!
俺が直接やってやりたいところだが、
貴様は今は未だ第7宇宙の管轄で俺が出しゃばると越権行為になる。
越権行為となったら全王様の不興を買いかねないからな。
だからお前は来月俺が主催する大会にでろ!
第6宇宙と第7宇宙から最強の戦士5人を選んで戦う格闘大会だ!!
そこで正式にボコす!
そこで俺の選びぬいた第6宇宙最精鋭の超戦士が
おまえをギッタンギッタンのボッコボコにするのだ!
もし万が一第7宇宙代表の貴様らが
大会に勝ったら願い玉を使用する権利をやろうじゃないか。
星喰い…お前の大罪をついでに許してやってもいいぞ?(俺は許してもビルスは知らんが)」
色々と穴だらけの理論を披露する第6破壊神は胸を張って居丈高だ。
最初にヴァドスが言ったことが真実ならその大会に勝っても負けても大差ない。
シャンパ組が勝てばシャンパが第7宇宙を元に戻すし、
ビルス組が勝てば悟空が第7宇宙復活を願うだろうから。
偉そうに嫌味そうにしているが、シャンパの根っこはかなり甘い。
やる意味などないだろう。
クウラはそう思って、下らぬ対決大会など断ろうとしたが
「おっしゃ!きたきたきた!!こういうのだよ!!
オメェも…なんつったっけ?その、願い玉?ってやつでこの宇宙直せば無罪放免だろ?
そうなりゃオメェも安心じゃねぇか!
しかも違う宇宙の強ぇ奴らと戦えりゃオメェももっと強くなるコツを掴めるかもしんねーぞ!
オラに復讐できる日も近ぇな!」
いい事ずくめだなぁ!と騒ぐサイヤ人がクウラの横にはいて
勝手に了承の方向で話を進めていく。
自分が傷だらけの疲労困憊である事を
もう忘れているんじゃないかという様子の悟空が俄然やる気を見せていた。
クウラをそんなサイヤ人を、まるで珍獣を見るような視線で見つめる。
「くだらん。勝手に貴様らだけでやっていろ…俺は宇宙が崩壊しようがどうでもいいのだ」
そして吐き捨てた。
「えぇ?お、おいクウラ…んなこと言わねぇで出てくれよ。
オメェがでねぇとシャンパ様も多分納得しねぇ」
「そうだぞ!!俺はクウラが大会でボッコボコにされるとこを観戦したいんだ!
お前が大会を棄権するなら願い玉はなしだし、
当然大会も開かん!
ヴァドスに怒られても俺が直接お前を破壊してやるぞ!」
「ほらぁ~、シャンパ様もこう言ってるぞクウラ!
な!頼む!大会出てくれよ!オラ大会出てぇんだ!」
懇願する悟空と居丈高なシャンパに背を向けて立ち上がったクウラは
付き合いきれん、という態度をありありと見せてそのまま立ち去る…
かと思われたその時、
「…おい、クウラ」
そこに体を引きずりながらもう一人のサイヤ人がやってきた。
「…ベジータか。貴様も生きていたか。サイヤ人はゴキブリのような生命力だな」
悟空以上にボロボロのベジータが意識を取り戻して干上がった海底を歩いてきた。
「余計なお世話だぜ…。
そんなことより、テメェがさっき自分で言ったこと…俺は聞いていたぞ。
勝者の提案を屈辱に甘んじて受ける…そう言ったな」
「…」
クウラの片方の眉根が釣り上がる。
「ならば、カカロットの決定に従うんだな。
宇宙の帝王の一族が自分が言ったことを反故しちゃあ格好がつかないぜ。
フリーザはまだ約束は守る奴だったが、その兄は約束も守れない軽薄者だった
…そんな噂は貴様の恥になるんじゃないのか?」
ベジータの言葉は子供の児戯染みた浅い挑発ではある。
しかしそれは恐らくベジータ当人も分かって言っているのだろう。
「チッ…小賢しいこと言いやがる。
………良いだろう。安い挑発だが乗ってやろう。
破壊神シャンパ…その大会とやらが貴様の望む通りになるよう…
精々神にでも祈っておけ」
シャンパを鋭く睨みあげながら、
クウラはまたも彼らに背を向けて干からびた海底を独り歩き去ろうとした。
だがまたまたそれを止める奴がいた。
「お~い、クウラ!どこ行くんだよ!
オラと修行すんじゃねぇのか!?」
またか、とクウラは気怠そうに天を仰いだ。
そして振り返りもせずこう言った。
「俺も貴様もしばしの休息が必要だろう。
俺のボディも修復機能が不調なのでな…貴様も今のうちに存分に休んでおけ、サイヤ人。
慌てなくても1週間後には貴様に地獄を見せてやるさ」
そして気配の残り香も僅かにその場から瞬間移動で姿を消してしまったのだった。
その見事な消えっぷりにはシャンパもヴァドスもやや感嘆する。
「…あいつ、なかなか空間移動がうまいな。気の残り香がない」
「そうですね。さすがはビルス様とウィスと競り合っただけはあるようで」
だが自分が上だ。
そういう自信を存分に感じさせる態度でクウラを評する破壊神と天使。
しかしその場に居合わせた地球人とナメック星人はそこまで余裕を保っていられない。
「な、なんか…スゴイ展開になって来たなぁ…」
震える声でクリリンが言う。
彼の禿げ上がったおでこでは幾筋も冷や汗が流れていく。
「おい悟空…ほんとに大丈夫なんだな?
あのフリーザの兄貴と、うまく付き合えるんだよな!?」
念を押すが、当の悟空はケロッと笑っているだけだ。
「ははは!まぁ何とかなるだろ。
あいつ、かなり頑固そうだし多分一度口に出したことは守るんじゃねぇかな。
ベジータだって最初はあんな感じだったけど今じゃこうだしよ」
「…どういう意味だ、カカロット。…ちっ、呑気な野郎だぜ…」
ベジータも舌打ちする程の悟空の楽観が当たるか、
クリリンらの悲観が当たるか…それは今の段階では誰にも分からない。
その後…。
もはや立ち上がる力すら残っていないサイヤ人3人組。
(悟空は「何か元気になってきた」と主張し割とケロッとしている)
そんな彼らの元に急ぎ仲間達が馳せ参じる。
特にピッコロは、デンデを拾いに戻り皆を回復。
ブロリーは、治療が後少し遅ければ死んでいたであろう重度の火傷で間一髪であった。
泣いて抱きついてくるココに、珍しくブロリーが照れているように見えた。
クウラは自分の敗北を認めたようで、宇宙中を覆っていた妨害電波を消した。
それによって悟空の元に界王を通して界王神らから次々に祝電が送られてきた。
勿論、皆頭に輪っかが乗っていたが。
なにせ皆クウラに殺されていたのだから。
今回の顛末を悟空が知らせると皆驚きを隠せず、また困惑した。
「ええ!?クウラに悟空さんの修行の仕方を教える!?
そ、それでもしクウラがもっと強くなったらどうするんですか!?
すでに破壊神級の強さを持っていて悟空さん達も協力してようやく倒したんでしょう!?
え?修行できっとまっとうな心になるかもしれないし生かしておいた方が面白そうって!?
オラだけを狙うよう念を押しておいたから大丈夫って…、
うそですよね!?そんな理屈で命を助けたんですか!?」
「これだからバトル馬鹿のサイヤ人っちゅーのは!どうなってもしらんぞい!
…え?大会で優勝したら無罪放免は第6宇宙の破壊神シャンパ様の発案!?
くぁー!シャンパ様も同じ穴の狢じゃ!」
そんな感じで老界王神達も頭を抱えたという。
破壊神ビルスは界王の元に顔を出していない。
殺されたことを恥じているのか、
それとも破壊神の魂は別の所へ流れ行くのかは分からないが、
とりあえず今は界王様が破壊神の魂を探しているみたいだ。
クウラが宇宙中のメタルクウラやビッグゲテスターを停止させた、
と界王様はホクホク顔で言うが問題は山積みだ。
なにせこの宇宙からは地球以外の殆どの命と惑星が失われたし、
なにより神様が全滅している。
地球もボロボロだ。
デンデに確認した所、クウラの邪悪な気によって総人口が10分の1になってしまったらしい。
デンデや界王が言うには格闘大会が控えている約1ヶ月後…
それまでに第7宇宙を修復せねばバランスが完全に崩れて
第6、第7の宇宙は崩壊し消滅してしまうらしいが、
その危機も悟空を奮起させるスパイスにしかならない。
「よっしゃ!来月の大会に向けて修行しなきゃな!
2つの宇宙が消えちまうかもしれないしいっちょ気合いれっぞ!
来週からはクウラも顔出すと思うからよろしくな、みんな!」
という悟空の言葉に色々と寝耳に水だったブロリーや御飯は怪訝な目で悟空を見ていた。
兎にも角にも、悟空達とクウラの奇縁が始まるのだった。
―完―
エンディングNo3・戦いはまだまだ続く…?