スーパーメタルクウラ伝【本編完結】   作:走れ軟骨

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追い詰められた孫悟空 史上最強の敵(ペーパーテスト)

第6宇宙と第7宇宙の狭間…

中立空間に浮かぶ『名前のない星』。

クウラとビルスの戦いの時点から8番太陽暦の5週間後…午前10時。

そこで破壊神選抜格闘試合が開催される。

 

その日に向けて第6宇宙、第7宇宙、双方の選手は準備に余念がない。

破壊神不在となっている第7宇宙では悟空が代表でメンバーを選出したが、

実にスムーズに選手は決まった。

 

「まずクウラは外せねぇだろ。で、オラだろ。ベジータ…ブロリー、最後に悟飯。

 これ以上のメンバーはいねぇな」

 

「…だが問題が一つある」

 

メンバーは当然これで決定。考えるまでもないし異論も当然あがらない。

カカロットこと孫悟空はそう思っていたがベジータが異を唱える。

 

「問題ぃ?んなもんあるか?」

 

「オレも今気付いた。

 ……シャンパって破壊神が帰る時、

 オレが選手の選出条件を一つ足すよう提案したのは覚えているか?」

 

「あぁペーパーテストだろ?」

 

「そうだ。知性のないバケモンを連れてこられちゃ敵わんからな…。

 だがカカロット…ブロリーがそれを突破できると思うか?」

 

ベジータが珍しく不安気な表情で悟空に尋ねる。

悟空も一瞬言葉に詰まった。

そして頭を捻る。

 

「ど、どうかな…いけんじゃねぇか?

 ココが、結構色んな事ブロリーに教えてるみてぇだし」

 

「……………………試合まで後1週間ある。残りの時間は筆記対策に回すぞ。

 考えてみれば、カカロット…お前も危ない」

 

「オラが?んなまさか!」

 

はっはっはっと笑う悟空。彼はベジータが冗談でも言っているんだと思ったが、

 

「…えっ?マジでやんのか?」

 

ベジータの顔は真剣そのものだった。

サイヤ人の王子はゆっくり頷いた。

 

「やるぞ。今直ぐに悟飯とブルマに頼んで対策勉強会を開く」

 

「げぇ!嘘だろベジータ!オラ勉強すんのか!?」

 

「当たり前だ!下級戦士の貴様に教養は期待できん!

 今までお前を見てきて、大した奴と思ったことはあるが頭が良いと思ったことはない!

 戦いの時以外、お前は余りに非常識で馬鹿だ…気付いてよかったぜ…」

 

渋る悟空を引きずっていくベジータ。

急遽神の宮殿は受験直前の塾のような雰囲気に様変わりしたのだった。

講師役は、この主力メンバーの中でも最も勉学に力を入れた人生を送ってきた悟飯。

天才発明家、天才物理学者、天才数学者、でもある才女ブルマ。

その夫であり、王族として確かな教育を受けてきたベジータ。

常識人であり先代神様でもあるピッコロ。

そして、ビッグゲテスターの電子頭脳と融合し、

宇宙一の知識を持つズノーの脳みそを吸収したクウラだ。

 

「…くだらん。なんだこれは。

 俺は馴れ合いをする為にここにいるのではない。

 ましてや座学を教えろだと…?

 孫悟空…所詮、貴様は未開の猿に過ぎん…というわけか?」

 

だがクウラは終始不愉快そうだ。

しかし意外なことに、文句を言いながらもクウラは大人しく講師役をこなしてみせた。

敗者は勝者に従うしか無い、というクウラの価値観故の頑固さが出ていた。

 

「えぇ~と…Aくんが時速7kmで歩いていて…その後にBくんが時速15kmで追いかけて…

 で、30分後に追いつきました…?えらい遅ぇなこいつら。もっと鍛えねぇと」

 

「…ふざけているのかカカロット!これは貴様の感想を聞いている問題か!?」

 

「父さん、問題文をよく読んで下さい!」

 

「あのね孫くん、相手が…出題者が何を答えて欲しいのか読み取って?

 この問題はAくんがどれだけの時間歩いていたかって聞いているの」

 

「舞空術ありきや、サイヤ人の身体能力で物を考えるな。

 あくまで一般の知的生命体の身体能力で考えろ!」

 

ベジータ、悟飯、ブルマ、ピッコロらがヒートアップしている横で、

 

「…そうか、Cくんは途中で3個、りんごを買っていたな。…20個だ」

 

「正解だ。思ったよりも脳みそも使えているな。これならば問題あるまい」

 

思ったよりもスムーズにブロリーの勉強は進んでいた。

問題があったのは悟空の方だったらしい。

 

「くそったれぇ…!カカロット!貴様の方が問題児じゃないか!

 肝心の貴様が不合格で出場できませんでしたでは笑い話にもならんぞ!」

 

焦るベジータ。

だが、フォローするわけではないだろうが意外にクウラが悟空を庇うような発言をした。

 

「いや、ブロリーの方も俺が教えてやらねば危うかったろう。

 これは講師役の力量差だ。

 ベジータ…教師が焦っていては生徒は伸びん」

 

誇るわけでも嫌味を言ったわけでもない。

クウラは唯単に事実を指摘しただけだが、

それでも現状ではベジータにとって十分嫌味に聞こえる。

 

「く…!おい、カカロット!この俺様が直々に教えてやっているんだ!

 もしペーパーテストでブロリーの野郎に点数負けやがったら承知せんぞ!」

 

「お、おい…そうかっかすんなって。別に仲間内で点数競うわけじゃねぇんだから」

 

宥めようとする悟空だが、

 

「父さん!いつもの戦いに対する負けん気と情熱を勉強にも持って下さい!

 いつも僕にもっと集中して修行しろって言うでしょ?

 勉強も集中です!もっと頭にも(りき)を入れるんです!」

 

息子の悟飯がかつてない情熱でもって父に語ってくる。

 

(…悟飯のやつ…こんなに勉強好きだったんか…うへぇ)

「ちょ、ちょっと落ち着けって悟飯!わかった!わかったから、なっ!?」

 

久しぶりに息子を大した奴だと悟空は思う。

だが、悟空からしてみればこの情熱を少しでも修行に向けてくれれば、

今頃、悟飯は悟空も敵わぬレベルになってクウラやビルスの破壊神級…

ひょっとしたら天使級にまで登りつめていたかもしれない。

それだけの抜群の潜在能力が悟飯にはあったと思うだけに残念がる悟空だった。

どこの世も、いつの時代も親の心子知らず。

子は親の思い通りにならないものらしい。

 

「…悟飯!オラがおめぇに修行をさせてたのは、

 今オラが無理やり勉強させられてるみてぇなもんだったのかもしれねぇ…。

 …おめぇこんなに辛ぇ思いしてたんだな…悪かった…悟飯!

 だからもう勘弁してくれぇ~…!」

 

「ダメですよお父さん!今は泣き言を言ってる場合じゃないんですから!

 ぼくだってあの時父さんに修行をつけてもらって良かったって今では思ってます。

 だから父さんも今回の勉強は頑張ってもらいますよ…。

 今度の大会で勝たないとこの宇宙が壊れるかもしれないんだから!

 さっ、鉛筆をもって」

 

悟飯が優しく笑って悟空に鉛筆を握らせた。

悟空には息子の笑みが悪魔の微笑みに見えたという。

向こうの方ではチチが

 

「まさか悟空さが悟飯ちゃんに勉強を教わる日が来るなんて…おら生きててよかっただ!

 悟飯ちゃん、立派になったなぁ…老いては子に従え…子に教えられる日が来たんだなぁ」

 

などと言って涙を流しながら御婦人連中で茶菓子を食らっている。

夫の心、妻知らず。

 

「くそぉ~…あぁ勉強なんてでぇきれぇだ!!」

 

悟空の悲痛な叫びが神様の宮殿に虚しく木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして選抜大会当日。

迎えに来てくれたヴァドスの宇宙船(透明な四角い箱)に乗せられて2時間と少し…。

一同は試合会場に到着した。

だがクウラだけは同席を拒否したために後からワープで来る予定と―

 

「遅かったな。チンタラしおって」

 

もう来ていた。

腕を組み、ヴァドスらを睨んで会場の片隅に立っていた。

彼の隣にはザンギャも控えている。

それを見た女性陣が後ろの方で何やらキャッキャと騒いでいたが、

試合を前にウズウズしている選手らはそれどころではない。

そして悟空もそれどころではない。

目の下に隈ができている悟空など、今後二度と見られないかもしれないレアものだ。

それを見てクウラが眉をひそめた。

 

「…孫悟空。貴様、大丈夫なのか」

 

「へ、へへ…大丈夫!オラもうばっちりだぞ…!

 今ならどんな試験も受かってみせるぜ…」

 

悟空の笑いは乾いている。

これも珍しい。

 

「やれるだけはやった。後は覚悟を決めて試験を受けるだけだ」

 

ベジータの顔も、いつもとは微妙に毛色の違う緊張が見て取れる。

悟飯もだ。

 

「ええ…後は野となれ山となれ。一週間で父さんの偏差値を20は上げたと思います。

 一般教養試験の模試集で10回中7回は7割を超えました。

 どんなレベルの試験問題かは分かりませんが、大抵のものなら合格点に届くと思いますよ」

 

悟飯は自信を感じさせるコメント。

大分、父に鞭を振るったらしい。悟空の表情がそれを物語っている。

 

「孫にしては頑張った。

 あいつが戦い以外であれ程頑張っている姿を俺は初めて見た…きっと大丈夫さ、悟飯」

 

ピッコロが悟飯の肩に右手を置き、左手でサムズアップする。

彼もまた戦闘馬鹿のサイヤ人相手に四苦八苦した講師陣の一人だ。

ピッコロもまたやり遂げたいい笑顔で悟飯と笑い合う。

 

クウラはちらりとブロリーを一瞥し、

 

「…ヴァドスが用意した問題は子供でも解けそうな一般教養だ。

 今の貴様なら問題はないレベルのはず…不合格だったら俺の知性にまでケチがつくのだ。

 落ちたら殺す。わかったなブロリー」

 

冷笑しつつ励まし?の言葉を贈るのだった。

ブロリーは鼻を鳴らして返事代わりとするのみだったが、

代わりにベジータがクウラの言葉に反応する。

 

「なに!?クウラ…貴様、ヴァドスの用意した試験問題をなぜ知っている!

 まさか…お前、盗み見たのか!」

 

「俺は貴様らよりも戦闘力は上…すでに破壊神級だ。

 俺レベルならば天使共の目を盗んで探ることも不可能ではない。

 ミクロサイズの偵察マシンを自在に操れる俺ならば尚更だ」

 

クウラが片手を胸の前あたりにかざすと、

クウラの掌から目に見えないレベル…埃よりも更に細かい粒子状マシンが飛散する。

そしてクウラの思念に応じて集合離散を繰り返し、

集まれば煙のようになってようやく視認が可能となる。

 

「き、汚ねぇぞクウラ!ブロリーに本番の問題と答えを教えたのか!?

 そこまでしてカカロットより良い点をとろうとは…見損なったぜ!」

 

「くだらん…俺がそんな低レベルでふざけた争いに首を突っ込むわけがなかろう。

 そもそも孫悟空とブロリーのどちらが良い点をとろうとも関係はないだろう?

 俺は…大体この大会すら不愉快なんだ…。

 戦闘力で上回るこの俺を破った孫悟空の強さ…その秘密を俺は知りたいだけだ。

 だからこそ孫悟空の提案を受け入れて、奴の修行に付き合ってやっているというのに…

 気付けばこんな下らぬ大会にまで…チッ、忌々しい」

 

言葉通り、まさにクウラの表情は忌々しさに溢れている。

純粋なパワーでは今でもクウラが上だ。

しかし、現実としてクウラは悟空に一度も勝てていない。

純粋な力を超えた何かが孫悟空にはある…そう思い至ったからこそ

クウラはそれを知るために悟空と一時休戦しているのだし、

敗残者であるという自分への戒めもあってクウラは大人しく悟空に付き合っているのだ。

 

「くだらん大会だと?だいたい貴様が俺たちの宇宙をメチャクチャにしやがるから、

 (スーパー)ドラゴンボールで第7宇宙を直さなきゃならんのだろう!

 まったく…フリーザ共々ろくな事をしやがらねぇ!」

 

クウラの冷たい物言いにベジータは怒りを顕にするが、

 

「フッ…我ら兄弟に常に良いようにあしらわれ続けてムシャクシャが溜まっているのか…?

 それは悪いことをしたな…サイヤ人」

 

クウラも穏便に事を済まそうだなんてするタイプではない。

真っ向から売り言葉に買い言葉を重ねるタイプだ。

 

「…貴様ッ!」

 

「おいよせってベジータ。大会前に仲間同士で体力の無駄使いすんな。

 クウラも、気持ちはわかるけどよぉ…きっと大会本番始まったらそんな不満消えちまうって!

 すんげぇ強ぇ奴と、きっと会えっぞ!!」

 

悟空が隈ある笑顔で間に割って入る。

「ワクワクしてこねぇか!?」と言いつつ二人の肩を無理やり抱いて、

クウラとベジータの背中をバンバンと叩いて己の高揚を分かち合う事を強制した。

 

「ク…!おいカカロット離せ!暑苦しい!」

 

「………」

 

ある意味慣れっこのベジータは全力で悟空を引き剥がそうとし、

クウラはうんざりとした顔で敢えてなすがままだった。

少しずつ孫悟空という男のことが分かってきたようだ。

 

そうこうしている内、とうとう刻限が来る。

 

第6宇宙と第7宇宙の狭間…

中立空間に浮かぶ『名前のない星』。

クウラとビルスの戦い時点から8番太陽暦の5週間後…午前10時。

つまり今。

破壊神選抜格闘試合が開始される。

 

「さて、では破壊神選抜格闘試合開始です。

 みなさ~ん、まずはペーパーテストが始まりますよ。

 早く席について下さい」

 

選抜大会の開始は、ヴァドスのやけにのんびりした声で宣言された。

第6、第7、双方の宇宙の代表選手らが各々軽く挨拶した後に、

彼らは席につこうとした…のだが悟空とベジータと悟飯とブロリーが第6宇宙のサイヤ人、

キャベを見つけてやや話し込んだ。

そして…クウラはフリーザの面影を持つ男、フロストに思わず目を奪われた。

だがそれも一瞬。

すぐに自分の席についた。

しかし、

 

「はじめまして」

 

「…」

 

あちらから話しかけてきた。

 

「私はフロストといいます。

 見れば、私と同族のようですね。貴方は第7宇宙の私なのですか?」

 

弟、フリーザに似た男はにこやかだ。

だがクウラはその張り付いた笑顔が気に食わなかった。

 

「…さあな。さっさと席についたらどうだ。俺はこの大会をさっさと終わらせたいんだ」

 

差し出された手を見もせずにクウラは軽く流してしまった。

上っ面だけの礼儀者であるフロストも、

これには思わず素がでそうになったが彼もグッと我慢する。

それは本性がバレるというボロがでぬよう取り繕ったのもあるが、

眼前の、同族と思しき男(クウラ)がただならぬ強者であると感じられたからだ。

同族びいきかもしれないが、フロストの見立てではクウラは第7宇宙最強と思えた。

 

「…そうですか。もし試合であたったらお互いにベストを尽くしましょう」

 

やや引きつった笑顔で何とか大人な対応で済ます。

そっけなくあしらわれたが、

何とか情報を引き出せないかとフロストは尚も会話を続けようと取っ掛かりを模索する。

出来れば何か弱点を掴んでおきたい。それぐらいにクウラは強いとフロストは考える。

そしてクウラの隣に今も立っている美女に目をつけた。

 

「隣の美しい方は貴方の恋人か奥様ですか?

 はじめまして、私はフロスト。どうかお見知りおきを」

 

そしてクウラにしたのと同じ様に手を差し出してくる。

ザンギャは、主が受け入れなかったモノを受け入れるつもりはない。

鼻で笑い、そして手を払いのけようとしたその時…

なんとクウラが手の甲で緩くザンギャを押し退けて自分の後方へ下がらせた。

 

「え…?クウラ様?」

 

それはまるで、ザンギャをフロストに触らせない、という意思を示したようだった。

その様子を遠目で見ていた観客席のZ戦士の奥様連中…

彼女らからきゃあきゃあという黄色い声が聞こえてくる。

 

「ザンギャ…もう下がって構わん。あの女共の所にお前も座っていろ」

 

クウラはフロストの目をジッと見ながら、背後に追いやったザンギャにそう命じた。

臣下の立場にある者は主の命が下ったならば直ぐ様従わねばならない。

そう分かっていてもザンギャは思わず目が泳いでしまって、

言われたことが頭の中で繰り返しリピートされる。

(そんなわけがない…!そういう意味で言ったんじゃない…!)そう思いつつも、

クウラが自分を他の男から庇ったように感じられてしまう。

さっきまで全く普通で冷静そのものだったのに、

一気に鼓動が跳ね上がって体が熱くなってくる。

汗までかいてしまいそうな程熱い。

頬があからさまに赤くなっていはしまいか。

クウラにこんな様を覚られては恥も恥。

自分の中で育ってきていた主への恋心が見透かされそうでザンギャは怖かった。

 

「あ、あの…」

 

「どうした?さっさと行け」

 

「あ…は、ははっ」

 

女としての感情と思考を直ぐに追い出して、

ザンギャは部下たる己を前面に押し出して頭を下げた。

(そうだ、そんなはずないんだ)と己に言い聞かせる。

 

「(最近のあたしは特におかしい。余りに思考が浮ついている…。

 ったく…!あいつらが…ビーデルとかチチとかココが色々言うからだ!クソ!)」

 

ヘラー一族の少女は海賊所帯で周りはむさ苦しい男どもの中で育ち、

そしてそのボージャック一味が壊滅した後はクウラに拾われた。

なのでザンギャにとって女友達という存在が出来た人生で初のこと。

そんな連中に「それは恋よ!」とか「既成事実を作れば勝てるわ」とか、

これまた人生で初のガールズトークをしたものだから

ザンギャの脳内はすっかり恋愛に汚染されていた。

立ち去る歩き姿もいつものように優雅ではなく、ギコギコとどこかぎこちない。

 

そんな一連の光景を見て、フロストはにやりと笑って言う。

 

「おやおや、そういうことですか……大切な人だったのですね。

 掌中の珠らしい…これは無礼をしました」

 

「…」

 

クウラはただ寡黙にフロストが喋る様を見ている。

 

「それにしても第7宇宙の方々は試合会場に家族や恋人を同伴している者が多いのですね。

 私にはそういう存在がいないのでなんとも言えませんが…羨ましいと感じますよ」

 

フロストは一人でずっと喋り続けている。

 

「しかし、戦いの場では何が起こるとも限らない…

 家族の無事を思うなら余り連れてくるべきではありません。

 貴方はどう思います?」

 

「…随分とお喋りな奴だ。俺は別に他人がどうこうなろうが気にはせん。

 奴らの家族がどうなろうが知ったことではない」

 

クウラがようやく本格的に返事をする。

そのことに純粋にフロストは喜びを覚えているように見えるし、

クウラの返答内容はフロストの価値観に合致するものだ。

 

「おお、そうですか。やはり貴方もそう思いますか。

 やはり同族はいいものですね。宇宙が違えども気が合いますね…私達は」

 

彼は一見紳士に見えるがその本性はフリーザと同質のものがある。

フリーザ・クウラ兄弟程悪辣冷酷非情ではないが、やはり非情さを心に宿していた。

相手の弱点をつくのに何の躊躇いも抱かぬ男だった。

 

「そうかもしれんな。俺も勝つ為なら手段は選ばん。

 そして俺をコケにしてくれた奴にはどれだけ時間がかかろうと必ず礼をする。

 だから貴様も()()()を使う相手を見誤らんことだ」

 

「っ!」

 

「そんなくだらん小細工…見抜けない方が悪い。

 が、もし俺や俺の物(ザンギャ)に使えば…相応の返礼をしてやろう」

 

「な、なんのことか…」

 

フロストの頬を冷や汗が伝う。

無意識に彼は右手首を左手で覆い隠した。

それを見るクウラの目はどこまでも冷たい。

 

「…貴様はザンギャにそれ(毒針)を使おうとした。

 試合外であろうと、相手の弱点を探りそれをつき利用する。

 …その姿勢は評価するが、相手を見ることだ。

 それにザンギャに使い、毒を盛った所で俺が動揺するはずもなかろう。

 解毒薬で俺と取引でもするつもりだったか?

 フン…だがその程度の毒、俺のナノマシンを体内に持つザンギャには効かん。

 勿論この俺にもな」

 

馬鹿め、とクウラは吐き捨てた。

フロストの頬が引きつる。

 

「…な、なるほど…本当に私達は似ていますね。

 そして勉強になりますよ…分かりました。

 相手をよく見て使いますよ…()()はね」

 

腕を背に隠して震える声で弁明する。

丁度その時、ヴァドスの「そこの方、早く席につきなさい」という声が再び聞こえてきた。

慌ててフロストは自分の席へ戻っていく。

その頃にはサイヤ人達も雑談に一区切りつけたようだ。

 

(あんな低レベルの神経毒が隠し玉とは…第6宇宙のフリーザもまだまだ甘い…)

 

クウラは頬杖をついて、まだフロストをじっくり見ている。

その視線はあからさまで、

それに気付いているフロストは身を固くして背筋を伸ばし

いかにも優等生でございといった姿勢で座っているのだった。

チラリと、フロストがクウラを見る。

視線が合うと、フロストはまた引きつった笑みを浮かべそしてすぐに目を逸らした。

 

「チッ…、フリーザよりも腑抜けてやがる」

 

同族の情けない姿にクウラもまた溜息をついた。

 

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