スーパーメタルクウラ伝【本編完結】   作:走れ軟骨

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フロスト戦・マゲッタ戦

ペーパーテストは50点以上が合格ライン。

双方の宇宙の代表選手全員が見事合格できた。

試験は悟空とブロリーが70点を獲得。

第6宇宙のオッタ・マゲッタ選手の点数を上回る健闘を見せた。

ちなみにクウラと悟飯はダブルトップで通過である。

 

「…カカロットはブロリーと同点…しかもビリではない…ふん…まぁ良しとするか」

 

ベジータは一人ほくそ笑み、ひっそりとクウラへの対抗心を満足させていたとかいないとか。

とにかくこうして前座が片付いてようやく本番だ。

天使ヴァドスが本格的な開始を宣言した。

が、そこでクウラが質問、というよりも確認をとる。

 

「ヴァドス。もう一度ルールを説明しろ」

 

「おや、忘れてしまったのですか。電子頭脳が錆びついてしまったのかしら」

 

ほほほ、と笑うヴァドスだがクウラは歯牙にも掛けず改めてもう一度言った。

 

「ルールを明言しろ」

 

「あら、つまらない。はいはい、分かりました。

 では折角ですので皆さんも、もう一度確認して下さいね。

 ①降参するか場外に落ちたら負け

 ②殺すのは反則

 ③武器の使用は禁止

 ④ドーピングも禁止

 以上の4つです。なにかご質問は?」

 

一同を見渡すヴァドス。

そこに質問を飛ばす者がいた。またまたクウラだった。

 

「ルールさえ守れば、それ以外なら何をやっても良い…

 暗黙の了解など無い…それでいいのだな?」

 

「そうですよ。ですがルールに抵触すると私かシャンパ様が判断した場合、即座に失格です」

 

「武器の定義とは、外部から持ち込んだ自分の肉体以外の物ということでいいな。

 肉体を変化させたものは武器に該当しない…。

 自身の能力によるものならば何でも使用でき、

 そして殺さない限り反則とはならない。

 変身の類もドーピングではない…。俺はそう解釈した。構わんな?」

 

「…それでいいですか?シャンパ様」

 

ヴァドスは少し考え込んだ後、主に判断を仰ぐ。

 

「あ?ああ、それでいいんじゃね」

 

よく考えもせず返事をし了承したシャンパだが、

これが後々ちょっとした波紋を呼ぶことになるとは、

この時点では誰も(ヴァドスはクウラの質問の意図を見抜いた節があるが)知らない。

 

「…だ、そうです。その解釈で結構です」

 

「そうか…それだけ分かればいい」

 

無表情のまま、クウラはそれきり口を噤み、それからはまた寡黙となった。

 

 

 

こうして試合は始まった。

試合は悟空が先発を熱望し、ベジータとじゃんけんの末に悟空が勝ち取る。

悟空は相手方の先発・ポタモの柔軟な肉体に僅かに戸惑ったものの、

すぐに場外狙いに切り替えてあっさり勝利。

試合は早々に第2試合となる。

次の相手はクウラと同族のフロストだ。

フロストを相手に悟空は遊んでいると言って過言でない程の試合運び。

フロストも最終形態になって挑むが力量差は圧倒的だった。

が、フロストの拳を余裕綽々で受けた悟空が急に動きを鈍らせて、

そしてフロストの蹴りをまともに受けてあっさりと場外となってしまった。

ベジータや悟飯は衝撃を受けていたが、

クウラは勿論そのカラクリを知っている為驚きはしない。

ブロリーは最初から我関せず…今も胡座をかいてウトウトと眠たそうにしている。

 

「…孫悟空め…やはり命が掛かっていない試合で気が抜けているな。

 まったく、愚かな猿だ…」

 

毒針すら見抜けず、そしてあの程度の毒で気を失い吹っ飛ばされる様は、

かつて二度まで土をつけられたクウラからしてみれば大変面白くない。

では〝悟空の無様な様を見たくないから〟とクウラが事前に悟空達に毒針を教えるか、

と言われればそんな事はありえない。

クウラにとってあんな小細工は見抜いて当たり前、

食らったとしても無効化して当たり前なのだ。

そして、クウラは命懸けの勝負の時の孫悟空ならばそれが出来る筈だとも確信している。

なのにそれを食らい、そして一瞬とはいえ毒で意識が遠ざかり場外K.O.など論外でしかない。

サイヤ人を腑抜けにする…クウラはこのフザけた大会が更に嫌になっていた。

 

(命をかけた中でなければ…サイヤ人、貴様らは輝けないようだな…)

 

クウラの握り拳がギリギリと鳴っていた。

 

クウラのそんな心を知らず、試合は粛々と進んでいく。

どこか穏やかな空気すら流れる試合のせいか、

悟飯も、そしてベジータもフロストの小細工を見抜けず同じ手で場外負けをするという醜態。

クウラの不満と怒りはどんどんと肥大化していき、

審判から次の選手の出場を求められた時、痺れを切らして己が手を挙げるのだった。

 

「俺が行こう…」

 

「あれ?ブロリー選手が次では?」

 

「俺が行くと言ったぞ」

 

「え…あぁ、はい。分かりました。OKです…では始め!」

 

審判はヴァドスにアイコンタクトをし、そして了承する。

クウラの言葉は静かだった。

動きも緩やかだった。

しかし彼の全身からは禍々しい感情が確かに噴出していた。

 

「おや…次は――あ、あなた、ですか…?」

 

闘技場へゆっくり昇ってくるクウラの姿を見て、

フロストは思わず声が震えたのを自覚した。

一歩一歩近寄ってくるクウラはまるで威圧感の塊だ。

初めて破壊神と相対した時、フロストは圧倒的な実力差と圧力に身震いしたものだったが、

クウラからのプレッシャーはその時以上と感じられた。

 

(ま、まさか…ね。破壊神シャンパ以上の実力なわけはないし…)

 

そう思って辛うじて舞台上に踏みとどまってクウラに対し、

そして思っていたある疑問を彼にぶつけた。

 

「…貴方、何故()()()を黙っているのですか…?

 てっきり対策はされていると思ったのに…皆面白いように術中にはまりましたよ」

 

クウラは相も変わらず無表情で答える。

 

「あの程度、見抜けぬほうが悪い…ということだ」

 

「なるほど」

 

フロストは声を押し殺して笑う。

舞台外で見ている双方の選手達はまだ何の話か分かっていなさそうだ。

ヴァドスは見抜いていたが、有ろう事か破壊神のシャンパですらまだ気付いていない。

 

(あぁやはり気が合いそうだ…この御仁とは)

 

フロストがそう思ったその時だった。

 

「だが、貴様の仕込みも芸がない」

 

「え?」

 

「つまらん」

 

クウラが言うと同時に、気をぶつけられたのでもない。

ただ一点を鋭く貫くような殺気がフロストの脳を通っていった。

一瞬、フロストは硬直し…

 

「っ!?ぐ、ほ…あッ!!」

 

次の瞬間にはクウラの拳が深々とフロストの腹を抉っていた。

曲がってはいけない角度でフロストの背骨が軋む。砕けただろう。

彼の口からはおびただしい量の血が吐かれていた。

 

「くだらんその腕は、もう二度と使うな。宇宙が違えども我ら一族の恥だ」

 

そして、

 

「っ!!ぎゃあああああ!!」

 

クウラは花でも摘むように優しくフロストの右腕を捩じ切って放り投げた。

 

「お、おい!クウラ!!ヤリ過ぎだぞ!!この試合は殺し合いじゃねぇ!」

 

そこまでの流血沙汰は、今大会のコンセプトに反している。

悟空はクウラに自制を求めたが、

 

「何を言っている…俺は散々ルールを確認した。

 俺の行いは何も規則に反していない…そうだなヴァドス」

 

逆に悟空を睨みつけて、あぁやはりこうなったか…という顔をしていた天使をも睨む。

 

「えぇ、問題ありませんよ。

 でもフロスト選手が降参した後にまで攻撃したり、そのまま殺したら貴方の負けです」

 

「お、おい!ヴァドス!クウラの野郎、明らかにやり過ぎだろう!」

 

己の付き人たる天使にシャンパは思わず物言いをつけた。

 

「あら?でも、さっきシャンパ様がそのルールで良いと仰ったのですよ?」

 

「むぐ…!で、でもありゃやり過ぎだ!フロストが死んでしまうぞ!」

 

「そうなればクウラのルール違反。彼の負けです。

 それに…クウラは簡単にフロストを殺しはしないでしょう」

 

「それの方がかえって悪趣味だろうが!く…えぇい、もういい!

 確かにルール違反じゃない!勝手にしろ!」

 

運営側が認めてしまった。

こうなれば、もう試合中にフロストを救う者はいない。

クウラは笑ってフロストを見ている。

 

「どうした?立て、フロスト。誇り高き我が一族だと言うならば…貴様も意地を見せろ。

 気を高めろ…肉体を充実させろ…お前はまだ戦えるはずだ」

 

「はぁー、はぁー!う、ぐ…あ、あぁ…ゴボッ、ぐ、お…ゲホッ、ゴボッ!」

 

背骨が砕け、臓器が損傷し、右腕は肩から捻り切られて流血が止まらない。

コルドの一族は、もともと宇宙に完全適応するまでに進化した宇宙生物で、

他の多くの知的生命体と異なり宇宙空間での自力生存ができる程の生命力を持っている。

胴切りにされた挙げ句惑星の爆発に巻き込まれたり、

太陽に焼かれ顔面半分だけで宇宙を彷徨ったり、

細切れにされていても肉片だけになったり…それでも一定期間は生存できる超生命体だ。

だが、それでも重傷はやはり重傷で激痛があるし苦しい。

脳や心臓、重要臓器に決定的なダメージを負って放置すればやがて死に至る。

今、フロストの肉体はクウラの放った一発の拳から

攻撃的な気と衝撃を送り込まれ体内をズタズタにされていた。

このまま治療をせねば死ぬだろう。

外野で見ている者達の方が戦々恐々としだしていた。

 

「やめろクウラ!フロストが死んじまう!」

 

「おい、クウラ!フロストを殺したら貴様は反則負けだぞ!

 そしたら後はブロリーだけなんだぞ!超ドラゴンボールはどうなる!」

 

「クウラさん、それ以上はだめです!フロストさん、早く降参を!!」

 

悟空もベジータも悟飯も必死に止める。

理由はそれぞれだが、これ以上は双方が得をしない結末になると思ったからだった。

 

「ご、ごぅ…ごう、ざん…でず…ゴボッ」

 

紫の血反吐を吐きながら、

どうにか言葉を喉奥から絞り出しフロストは念願の降参宣言を辛うじて遂げた。

それを聞いた瞬間、クウラは一瞬怒りの形相を見せ、

そして直ぐにいつもの無表情となり冷たい目に戻った。

だが、その目は冷たいという以上に、もはや無関心だった。

完全にフロストに失望し、そして興味を失っていた。

 

「…無様な虫けらめ」

 

そう言ったきり、クウラは二度とフロストをまともに見ることはなかった。

フロストはルールに守られたと言える。

そもそもルールがなければ悟空らサイヤ人にも勝ててはいないのだ。

これがフロストの現段階での実力の全てだった。

 

自力で退場もならず、ボタモに担がれてどうにか彼は運び出されていった。

このままなら死ぬだろう傷だが、

天使ヴァドスが杖を一振りするだけで彼は全快されたようだ。

破壊神シャンパが怒りの声をあげる。

 

「…やり過ぎだったぞ、星喰い!

 第6宇宙の英雄・誇り高い拳闘士によくもこんな仕打ちを!」

 

声を荒らげるシャンパに、クウラは彼の顔を見返すこともせずこう返した。

 

「誇り高い?笑わせるな。

 勝利への執念もなく、力への渇望もなく、腕に仕込んだ毒針で勝ちを掠め取る男を

 貴様の宇宙では誇り高いと評するのか?」

 

「なんだと!?毒針!?イチャモンつけるな!

 フロストは高潔な男だぞ!」

 

「ならば、貴様自身の節穴でよく見て見るんだな」

 

そう言ってクウラは千切ったフロストの腕を拾ってシャンパに投げて寄越した。

高速回転しながらシャンパへ突っ込んでくる腕の残骸をキャッチしたヴァドスが、

血を拭った後に仕えるべき破壊神へ差し出した。

 

「俺様の目を節穴だと…?き、貴様…!

 毒針が無かったら直ぐにでも破壊してやるからな…!!」

 

が、シャンパが間近で腕をチェックすれば手首付近に小さな穴は確かにあった。

そしてその穴付近を指先でつっつけばしゃきんっ!と針は飛び出した…。

 

「あいてっ」

 

シャンパの指に刺さる。

破壊神の地位に至る程の彼には効きはしなかったが、

シャンパは直ぐにそれを神経毒と見抜いた。

彼は唸りながら納得するしかなかった。

 

「……フロスト…!お、お前…信じていたのに…!」

 

シャンパの肩がわなわなと震えだす。

 

「ヴァドス…お前、知っていたんだな?」

 

「はい。毒も彼の本性も、ばっちり存じておりますよ」

 

しれっとヴァドスは言った。

 

「なんで黙ってた!お陰で赤っ恥かいたろ!

 よりによってクウラなんかに言い負けちまったじゃないか!」

 

「シャンパ様が、何でも良いから勝てる奴を連れてこい、と仰っていたので…」

 

「むぐぐ」

 

ヴァドスにもまた言い負けた。

シャンパは口喧嘩がとても弱いのかもしれない。

破壊神は気を取り直して次の試合を観戦することにしたのだった。

 

次の試合が始まろうとしていた。

舞台上に佇むクウラの前に出てきたのは、どう見てもロボットに見える選手。

メタルマン族のオッタ・マゲッタだ。

 

「プシューッ!シュー!ブシューーーッ!!」

 

頭頂部から蒸気らしき何かを吹き出しながら、

けたたましい足音を鳴らし舞台の石材を踏み砕いて歩いてくる金属生命体。

目らしき二つのモニターアイは怒りの形。

恐らく、卑怯なやつだったとはいえ過剰に痛めつけられたフロストの仇討ちに燃えている。

彼の心は繊細で、そして仲間思いでもあった。

 

「…メタルマン族か…やめておけ。貴様では絶対に俺に勝てない」

 

「ポ~~ッ!!!」

 

マゲッタはエナジードリンクを飲み干すと、

吹き上げる蒸気を更に増してドスドスと一直線にクウラへ駆けて行った。

迫るマゲッタに向け、クウラはそっと右手をかざす。

だがそれだけで気弾を撃ち出すわけでもない。

 

「むっ?」

 

「あれは…」

 

「クウラのやつ、何をする気だ?」

 

シャンパ、ヴァドス、そしてベジータが疑念を露わにする。

恐らくヴァドスだけはクウラが何をしているか視えている筈だ。

 

「ポーーーッ!ポーーー…、ポッ、ポ……シュー………」

 

突然、マゲッタが歩みを止めてガクンと項垂れる。

汽笛のような声も止まり、拭き上げていた煙も止まり、マゲッタの全てが停止した。

 

「…舞台から降りるんだ」

 

一言、クウラがそう言うと

 

「ポー…」

 

なんとマゲッタは大人しくそれに従って自分から舞台から飛び降りたのだった。

ヴァドスを除く全員がキョトンとその光景を見ている。

クウラ当人とヴァドス以外、誰もが何が起きたのか理解していなかった。

 

「な、何が起きた…!?」

 

「あいつ、自分から降りちまったぞ!?」

 

「…催眠系…でしょうか。クウラさんは一体何をしたんだ?」

 

サイヤ人3人にも理由は分からない。

だが、状況はわかる。

クウラの勝ちだった。

戸惑いながらも審判はクウラの勝利を宣言した。

 

「…そうか。クウラめ…!マゲッタを洗脳したな?」

 

観客席からシャンパが言った。

ヴァドスも相槌を打つ。

両宇宙の選手も観客も彼らの会話に聞き耳を立てる。

 

「ええ、そのようですね。

 メタルマン族はもともと心が弱く精神が脆弱…。

 そこに加えて金属生命体ですからね。

 機械を操るクウラとの相性は最悪と懸念されていましたが、やはりそうだったようで。

 クウラは掌から無数のナノマシンを放出していました。

 それらがマゲッタに取り付き金属の外皮から同化、侵食し、彼の思考中枢まで辿り着き…

 心の弱さもあって簡単に洗脳されちゃいましたね…」

 

自分の小手先の技が見透かされていたが、クウラは取り立てて騒ぎも慌てもしない。

こんなものは技ともいえない火の粉払い程度の〝振るい〟でしかないからだ。

不敵に笑ってヴァドスへ正解を告げてやった。

 

「そうだ。さすがに貴様は視えていたか。

 有機生命体よりも金属生命体は侵食が容易い。

 メタルマンの精神の脆弱性は既に俺の知る所…説得が楽でいい」

 

驚異的な装甲と厄介な攻撃能力を持つマゲッタだったが、

その真価を見せることなく彼の自我は失われた。

オッタ・マゲッタが彼の自意識を取り戻せるかどうかはクウラのその後の対応次第だろう。

 

「おい、後でマゲッタを返せよ!」

 

「フン…こんな雑魚は俺もいらん。我が機甲戦隊の方が遥かに柔軟性に富む」

 

シャンパへそう返したクウラだが、その言葉に誰よりも喜んだ者達が観客席にはいた。

 

「おお!ク、クウラ様…!!我らクウラ機甲戦隊をそこまで買ってくれていたなんて!!」

 

「俺たちのこと、お忘れになっていねぇ…!クウラ様ぁ…ありがてぇ!ありがてぇ!」

 

「くぅ~~~~、すっかり第一線から退いて戦力外通告かと思ってたが…!」

 

観客相手に様々な飲料や食料を売り歩いていたクウラ機甲戦隊達だ。

売り子姿も様になっている。

 

試合は早くも第4試合へと移行していった。

 

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