スーパーメタルクウラ伝【本編完結】   作:走れ軟骨

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極限バトル!ニ大第5形態

「フッ」

 

10年か、20年か、とにかく久方ぶりの弟との再会に、だがクウラは嘲笑でもって出迎えた。

フリーザの片眼がピクリと痙攣したように僅かに瞬く。

 

「何がおかしいんだい、兄さん」

 

弟が極めて抑揚を抑えた口調で言うが、そこに怒りが滲んでいるのは誰の目にも明らかだった。

静かな怒気が空気を伝わっていき、フリーザの部下達も、そしてピッコロ達もがその兄弟のやり取りに息を飲んで見守る。

 

クスクスと笑いながらクウラは応えた。

 

「暫く見ないうちに随分と派手になったな、フリーザ」

 

ホホホという乾いた笑いを浮かべながら兄の戯言を受け取ったフリーザは、まるで兄に自慢するかのように己の黄金色のボディを見せびらかす。

 

「美しいでしょう?この黄金に輝くボクの体、そして迸るエネルギーを見てどう思ったかな?兄さん。

ボクは…次なる変身を手に入れたのですよ。

一族の誰も到達出来なかった…〝進化〟をね!」

 

ゴールデンとなった時のフリーザは、昂ぶる気に反して精神性には落ち着きが戻る。

故に本当ならば、一人称も私であるし、慇懃無礼なですます調な語り口となるが、こうして実の兄と話していると、本来の〝素〟である最終形態時の口調になりがちらしい。

 

「進化…?クッ、ククククククッ、笑わせるなフリーザ。

どうやら暫く会わないうちにユーモアのセンスは磨いたようだ」

 

兄の再びの戯言に、今度はフリーザの頬がピクリと動いた。

 

「ふ、ふふふ…兄さん、いい加減強がりはよしたらどうだい」

 

「強がり…?」

 

「そうだよ。まさか、未だ気も読めない雑魚ってことはないでしょう?

だったら、ボクの…このゴールデンフリーザ様の力…分かるだろう?」

 

自分の力を誇示するように、フリーザは両腕をゆっくりと左右に開きひけらかすも、やはりクウラの反応は冷然としたものである。

 

「確かに…多少は力をつけたようだが、な。

その程度を我ら一族の進化と呼んでもらっては困るぞ、弟よ。

栄光ある我が一族の進化は、貴様が思うほど温くはない。

貴様がたかだが1年やそこら、生温い訓練をした所で進化に辿り着けるものか」

 

兄のその指摘に、とうとうフリーザは不快以外の表情を浮かべた。

 

「…ボクの1年の特訓…ご存知でしたか」

 

まさか地球にいた筈のクウラが、己の秘密特訓を把握しているとは露知らぬフリーザである。

少々驚いたようであった。

 

「間抜けめ。貴様のやることなど手に取るようにわかる…この俺にはな」

 

「……で、こうしてずっとお喋りをしているわけだけどさ。

一体何時まで私は待てばいいのですか?兄さん」

 

「何を待っているのだ、愚弟よ」

 

「決まっているでしょう。命乞いですよ。

ボクの戦闘力はお分かりでしょう?

今の兄さんでは決してボクには勝てない…わからないのか?」

 

ニコリと笑いながらそう言うフリーザに、クウラは溜息を返してやる。

 

「愚かな奴だ。我ら兄弟の優劣を言葉だけで決めようというのか?

貴様こそ一体何時までこの兄を待たせるつもりだ。

さっさとかかって来るがいい…フリーザ」

 

そう言い切ったクウラは僅かに腕を上げて軽く構え、そして弟をケモノのように恐ろしい目で見つめた。

フリーザの顔からは、今度こそ笑みも余裕も消え失せて、そこにはただ怒りがある。

 

「…っ、もういいや。

この後、どれだけ泣いて許しを請おうがボクは許さないよ、兄さん。

パワーアップしたこのゴールデンフリーザ様の力を正しく見抜けないお馬鹿さんに、少し道理という奴を教えてあげるとしようか」

 

兄弟はそれきり口を閉ざし、沈黙の中で互いを睨む。

良く似た兄弟の良く似た鋭き目。見ただけで相手を切り裂いてしまいそうな刃の如き視線が交わる。

高まる兄弟の気が地球を揺らし、倒れていた悟飯はその気に当てられただけで苦悶の声を上げる程で、そして見守る他の者達も戦う手を止めて怯えてしまうレベルだ。

 

 

 

 

 

そしてそんな隙だらけの連中を見逃さない者達が、この戦場に増援としてやって来ていた。

クウラある所に彼らあり。

 

「我らッ!」

 

「クウラ機甲戦隊!!」

 

「とう!」

 

「…」

(このノリだけはずっと慣れないね…慣れたくもないけど)

 

サウザーとドーレ、ネイズが長年の息のあったファイティングポーズを披露し、前口上を述べて一目散にフリーザ軍目掛けて突っ込んだ。

 

「あ、あぁ!?クウラ機甲戦隊だ!!」

 

「あれが…ギニュー特戦隊以上って言われる、ク、クウラ機甲戦隊…!!」

 

「や、やべぇぞ…なんであんなエリート部隊が地球人の味方しやがるんだよ!」

 

「く、くそぉ…クウラ様の戦闘力もどんどん高まって、スカウターなんざとっくに壊れちまった!

やっぱり、クウラ様に楯突くべきじゃなかったんだ!」

 

「し、仕方ねぇだろうが!もともと、俺達を捨てたのはクウラ様なんだ!」

 

「ひ、ひぃ!来る!!」

 

口々に喚き、中には既に怯えて心折れる者まで出てきたフリーザ軍。

折角フリーザが士気を立て直したというのに、クウラ軍の登場でその士気はまたもだだ下がりであった。

 

「はぁっはっはっはっ!怯えてやがるぜ!フリーザ軍も落ちたもんだ!」

 

「まったくだな。こんなみすぼらしい軍団など、クウラ様の一族たるフリーザ様が率いるに相応しくない。皆殺しだ」

 

「けぇっけっけっ!そうこなくちゃな!」

 

ドーレが自慢のタフネスを活かして切り込み、サウザーがエネルギー弾を乱射しながらそれに続き、ネイズもケタケタ笑いながら電撃をやたらめったら撃ちまくる。

ただ一人、ザンギャだけが前口上もファイティングポーズもせずに、ただ静かに敵のハンティングを開始していた。

しかし、戦闘におけるコンビネーションにはザンギャも参加し、そして見事に連携する。

 

「くすっ、雑魚どもがこんなに群れちゃってさ」

 

兵士の一人をキックで胴切りにしてやり、直後に風のように飛び上がって兵の集団の上に陣取り、手をかざす。

女戦士の指先から練られた見えない気の糸が怪しく陽光を反射し、総数のおよそ半分近くの集団全員を金縛りに陥らせてしまったのだ。

 

「が、がぁぁ!?体が、う、動かねぇ!」

 

「な、なんだこの技は!」

 

「う、うわぁぁぁ、フ、フリーザ様ぁ!お、お助けをぉ!!」

 

ザンギャの魔糸(サイコスレッド)からは何者も逃れられない。

完全に捕らえられた獲物を見、機甲戦隊の面々は舌舐めずりをしそうな笑顔で糸に絡まる獲物へ殺到。

 

「クウラ様の敵には死あるのみ」

 

妖しく微笑むザンギャの美しい笑顔が、フリーザ軍兵士達の冥土の土産となるだろう。

素早く散って包囲網を完成させた残る三名の機甲戦隊員が、三方向から凄まじいまでエネルギー弾の嵐を降らし一網打尽とした。

圧倒的かつ、一方的。

それはおよそ戦いではなく、虐殺だ。

見ていたクリリンがその凄惨な場面に喉を鳴らす。

 

「あいつらの自業自得とはいえ……な、なんて奴らだ…み、味方でよかったぜ」

 

ピッコロに肩を貸されながらヨロヨロと歩いてきた悟飯もそれに同意せざるを得ない。

 

「ええ…本当に…」

 

悟飯は、ピッコロが持ってきていた仙豆の最後の一粒を受け取っていないのだ。

それは、今すぐに治療をせねば死んでしまう程の重傷を負っているヤムチャに食わせて欲しいと、そう悟飯は願い出ていたからだ。

悟飯がその決断をしたのも、恐ろしいとはいえ今は味方をしてくれているクウラ達の登場故だ。

 

「もう、僕が出なくても…大丈夫そうですから」

 

たはは、と笑う悟飯にクリリンは頷いて、そして頬を書きながら観戦の感想を言うぐらいには安心感と余裕が彼らの間に戻っている。

それはつまり、それだけこの増援が頼もしいという証左でもあった。

 

「だな。……それにしても、あのザンギャって子…。ちょっと可愛いよな。

18号よりもお尻が―――」

 

「…クリリンさん?」

 

悟飯の、クリリンを見る目が少し冷たい。

クリリンは慌てた。

 

「ち、違うぞ悟飯!その、あれだ…ちょっと18号と似てるなって思ってさ」

 

「…まぁ…………そうですけど」

 

やはり悟飯の反応は少し冷たい。

ピッコロも、

 

「クリリン…俺は恋愛というやつはよく分からんが…浮気というのは最低の行為だとブルマから聞いている」

 

そう言って責めるような瞳でクリリンを見る。

仙豆を食べて危篤状態から脱し、寝ていたヤムチャの肩がビクリと揺れたのは気の所為だろう。

 

「ねぇねぇクリリンさん」

 

「うわきってなにー?」

 

チャオズと天津飯を介抱していたトランクスと悟天がつぶらな瞳でクリリンに問うてくれば、クリリンの背に、強敵と相対した時とも違うイヤな汗がじくじくと滲む。

 

「………あは、ははは、ははっ……あの…今の失言は…18号には黙ってて欲しいなぁって」

 

理不尽に思いつつもクリリンの声はどこか滑稽に震えていた。

が…もちろん、誰も本気で責めているわけもなく、仲間同士のただのじゃれ合いだ。

そんな戦場に似つかわしくない長閑とも言えるZ戦士達。

だがしかし、次の瞬間に皆の顔つきが変わる。

お遊びは終わりという事らしい。

 

「っ!」

 

「い、いよいよ奴らが…動く!」

 

「なんて気だ……しょ、正直言うと…俺は、こ、怖いぜ…!震えが止まらないんだ!

ちくしょう…強さだけは頼もしいけど……、ほ、本当に、あの気は…味方でもおっかない…!」

 

今にも地球が砕けそうな振動。

宇宙最強の兄弟が高める気の圧が、地球そのものを…そして太陽系全土すら揺らす。

黄金の闘気が暴風のように吹き抜け、フリーザが大地を刳りながら駆け出した。

 

「キェェェェェェイ!!!」

 

「っ!」

 

コンマ以下にどれだけ0をつければいいのか分からぬほどの速さ。

Z戦士達には目で追えず、負傷し消耗している悟飯にさえ追えぬスピード。

その速度の拳がクウラの頬に突き刺さる。

 

――メギ、メギメキメキィ

 

クウラの骨が不快な音をたてて軋めば、フリーザがひどく愉快に、そして邪悪に笑う。

フリーザとクウラの世界がスローモーのように時が圧縮され、殴り抜かれる拳の血管の脈動さえ二人には視えた。

そして仰け反るクウラ。

メギィ、という軋み音と共に、クウラの口から紫の血が数滴飛び散る。

 

(見ろぉ!ボクが!このボクが!!あのクウラに!兄さんにクリーンヒットを喰らわせたんだ!)

 

このまま殴り抜き、地球の大地に叩きつけて星ごと割ってやろうか。

そう意気込んだフリーザがさらに拳に力を漲らせたその時…確実に脳天を揺らしてやったと思ったクリティカルな一撃を受けた筈のクウラが、しっかりとフリーザの目を見据えていた。

 

「っ!?」

 

ゾクリ、とフリーザの背に寒いものが走る。

 

「っっ!!ぐっ、きぇぇぇぇぇぇやあああああ!!!」

 

まるで慌てるかのようにフリーザは叫び、二撃目を繰り出す。

お次は左拳のリバーブロー。

しかしそれは一撃目のようにはいかなかった。

 

「なっ…!」

 

「フン…思ったよりもいいパンチだ、フリーザ」

 

唇から一筋の血を垂らすクウラが、しっかりとフリーザの拳を受け止めている。

顔面に直撃した筈のパンチ。

だが、クウラは目眩一つせずにニヤリと笑って弟を見下すようにしている事が、フリーザには悔しさと恐ろしさが綯い交ぜになった屈辱を感じさせるのだ。

 

「っ…!上から見やがって…!ふざ、けるな!!」

 

フリーザの蹴り。

だが空を切る。

続いてまたも右拳の振り抜き。

クウラの手が拳に添えられ軌道を逸らされる。

尻尾の薙ぎ払い。

それをクウラは同じく尻尾で捌く。

ラッシュ。

ラッシュ、ラッシュ。

ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。

 

「ぐ…!く、う…!ぬぅぅぅぅ!!!」

 

一発が一発が致命傷レベル。

惑星さえ砕く重い一撃。

それを光さえ圧倒的に置き去りにする速度で連打している。

 

「…どうしたフリーザ。貴様の力はこんなものか?」

 

だが冷たく言い放つクウラによって全てが捌かれてしまう。

フリーザの鼻背に深い皺が無数に刻まれて、彼の怒りを存分に現していた。

 

(な、なぜだ!戦闘力ではボクが完全に上回っているはず!!なぜ当たらない!!!)

「くぅぅぅぅッ!!!」

 

怒れる弟に、クウラはせせら笑いながら告げる。

 

「疑問に思っているようだなフリーザ。フフフ…ならばこの兄が教えてやろう」

 

「ぐっ!だ、黙っていろ!!」

 

「貴様と俺では戦闘の経験値がまるで違う。

確かに戦闘力でも、才能でも貴様が上だ。だが、お前はその才能に胡座をかき、鍛錬を怠った」

 

「鍛錬ならばしたさ!この1年たっぷりとねっ!!!」

 

フリーザのラッシュをいなしながら、兄はこんこんと言葉を続ける。

 

「笑わせるな!甘ったれた貴様の鍛錬など、所詮は付け焼き刃…ただのメッキに過ぎん!

貴様はどれだけ己の命を賭けてきたのだ、フリーザ!

命を賭した戦いこそが最も己の力を成長させる!

貴様の付け焼き刃の戦闘力など……この俺の経験の前では取るに足りん!!」

 

兄の言葉がフリーザの心を抉る。

つい1年前、フリーザがしたり顔で()()()()()()部下に放ってやったありがたい至言。

それがそっくりそのまま己に跳ね返ってきたのは、フリーザにはただただ屈辱であり恥辱。

さらに頭に血がのぼっていくのがフリーザには分かるが、それでもどうしようもない。

兄弟だからか、フリーザはクウラの言葉にいつだって過剰反応が起きてしまうのだ。

歯が砕けそうな程の歯軋りを数秒披露した後、フリーザは激昂しつつ叫ぶ。

 

「ボ、ボクに劣る戦闘力の男がァァ…!いつまでも偉そうに兄貴面をするなんて不愉快だよッッ!!!なら!これならどうかなッ!!!!」

 

「むっ?」

 

フリーザの手から無造作に垂れ流れたエネルギー波が、閃光弾のように光り輝いて場を照らす。

 

「クク…気功波の目眩まし…付け焼き刃のお次は浅知恵か」

 

思わずクウラは微笑んだ。

かつて、孫悟空との戦いで自分も同じような愚行を選択した事があるからだ。

兄弟は無意識に似るという事か、とクウラは血の因果を思わずにはいられない。

 

「こっちだよ!!」

 

クウラの背後上空。

そこから弟の甲高い声が響いて、そして両の手の指先をクウラに向けて構えていた。

 

「…甘いな、フリーザ。わざわざ自分のいる場所を教えずとも、さっさと俺を撃てばよかったのだ」

 

「それじゃあ面白くない…ボクはね…兄さんが泣いて這いつくばって命乞いをする様を眺めたいんだ。

顔が見えなきゃ……お前の泣き顔が見えないからねぇぇぇぇ!!!ホホホホホホ!!」

 

10の指からデスビームの猛射が始まり、紫に妖しく煌めく光線が悟飯の時をさらに上回る密度と速度でクウラへ殺到した。

 

「あっはっはっはっ!さっきのサイヤ人の時とはわけがちがうぞ!!

これがボクの本当の力だよ兄さん!!」

 

「ふん…」

 

クウラもまた、先と同じようにして10の指からデスビームのマシンガンを放ちまくって迎撃。

全ての指で連続フィンガーブリッツの応用を効かせてとにかく撃って撃って撃ちまくるが、クウラの持つビッグゲテスターの演算能力と、そしてクウラ自身の技量の相乗効果がその全てを相殺し続ける。

凄まじいまで弾幕の応酬。

 

固唾を飲んで見守る地球の戦士達でさえ魅入ってしまう。

 

「な、なんという光景だ…!光の花が二人の間に咲いてるみたいだぜ…!」

 

ピッコロでさえ思わず詩的な感想が漏れてしまう程にそれは眩く美しい。

秒間に何千もの紫の光の花が瞬いて散る。

クウラ機甲戦隊も、

 

「お、おお!クウラ様…なんというお美しい技の応酬!さ、さすがは我らが主…そして弟君!!」

 

主にサウザーが、その手にソルベの頭を握りしめながら感動に震えていた。

 

「後はクウラ様とフリーザ様か。結果は見えているがよ…どうにもやるせねえな」

 

ドーレがシサミの脊髄を踏み抜きながらそう言った。

ネイズも神妙な面持ちで頷きながら、宙より滑り降りてサウザーの横へと着地。

そして黒焦げ死体となり果てたタゴマを雑に放り捨てた。

フリーザ軍残党はどうやら壊滅し、一段落といった様子であった。

ザンギャなどはとっくに割り当てられた獲物を狩り終えて、宙から主の戦う姿をただうっとりと眺め続けていた。

 

「見ろ!」

 

サウザーが驚いたように指を差せば、むぅ、とドーレとネイズも唸った。

 

「フリーザ様のデスビームが、クウラ様を押している…!」

 

「あの金ピカ形態は…あのお姿のクウラ様を上回るってぇのか!」

 

「なんてこった…!なんでクウラ様は変身なさらないんだ!」

 

サウザーらの評に、ザンギャは笑う。

聞く気は無かったが、同僚達の大声は嫌でも耳に入ってくる。

 

「はん…そんなことは分かりきっているだろう。

クウラ様は、フリーザと…楽しんでいるのさ」

 

少々ムスッとした様子でザンギャが言った。

それはほんの少しの嫉妬だろう。

無表情に見えて、クウラが楽しんで戦っているのがザンギャには分かった。

弟に合わせて戦っているのだ。

 

(あんな楽しそうな姿…久しぶりに見る)

 

自分では引き出せなかったクウラが()()()姿。それを引き出したフリーザに嫉妬してしまう。

フリーザがどう思っているかは分からぬが(十中八九、真剣に殺しに掛かっているだろうとザンギャは思う)楽しそうに兄弟が戯れる様子は、「あの間に私は入っていけない」という一抹の寂しさを感じさせた。

 

「あぁ!!ク、クウラ様!!!!」

 

ザンギャのセンチな思考を吹き飛ばすが如きサウザーの叫び声が響く。

フリーザのデスビームの雨が競り勝ちクウラを光の中に飲み込んで大爆発の連鎖を巻き起こす。

 

「っっ!!や、やった!!!ホホホ…、ホホホ、ホッホッホッホッッ!!!

やった…!やったぞ!!!!見たかクウラ!!!もはや兄さんはボクの敵じゃあない!!

宇宙最強は…………このボクだッ!!!!!

このフリーザ様こそが、宇宙一だ!!!!」

 

爆発につぐ爆発。

大地が大きく深く抉れて、遠く山々までが振動で砕けて崩落する。

当然、Z戦士達の足場も保ちはしない。

 

「わ、わわわっ!」

 

「なんという威力だ!悟飯、飛べるか!?」

 

「は、はい…!トランクス、悟天!ヤムチャさん達を頼む!」

 

「オッケー!まかせといてよ!」

 

慌てて皆が飛び去って、新たに安全地帯を探してそこへ着地。

 

「あのクウラって人…やられちゃったの?」

 

悟天が妙に心配そうに言えば悟飯は「見てごらん」と笑って指差した。

目を凝らす。

 

爆発が小康状態へと入り、立ち上った膨大な土煙が辺り全てをもうもうと隠していたが、悟天の良い目を凝らして見ればそこに人影があるのが分かる。

 

フリーザの頬が引きつった。

 

「き、さま…!」

 

「今のは効いた…」

 

フッ、と笑うクウラがそこ(爆心地)に佇んでいる。

体中は傷だらけになり痛々しい。

 

「粉々にしてやったと思ったけど…ず、随分タフだねぇ、兄さんは」

 

生き延びたタフさはさすがは己の血族だとフリーザも感心する。

だが、兄の傷だらけの様子を見て、いよいよ勝利を確信していた。

 

「さっ…どうする?もうその体じゃ戦えないだろ?

泣いて無様に謝るなら…許してやろうかな」

 

引きつっていた頬を何とか戻し、宇宙の帝王としての器を兄に示してやる。

もはや下剋上はなったと…クウラはこのフリーザの足元に堕ちたと…そう確信しているからこその余裕をフリーザは滲ませた。

だが…。

 

「クックックッ」

 

クウラは少しも狼狽する様子を見せず、少しも焦燥した様子を見せず、ただ静かに余裕綽々に目を瞑り肩で笑っていた。

 

「…何がおかしい」

 

弟の言葉に兄がその目を開けた。

 

「お前が良く言うサービス期間とやらだ」

 

「なに?」

 

キョトンとした顔でフリーザが思わず問い直した。

 

「サービス期間は終わった。

気は済んだだろう?弟よ……今からは俺の番ということだ」

 

クウラの大胆不敵な言葉。

フリーザの頬が再度引きつる。

 

「こ、この…野郎…!

このゴールデンフリーザ様を…ど、どこまでコケにする気だ…!

いい加減見苦しいぞ、クウラ!!素直に負けを認めたらどうだ…!

見て分かるだろう!今のボクと、お前の姿を見るがいい!

オレは無傷で貴様は傷だらけさ…それとも死ぬまでやろうというのか!」

 

「我ら兄弟の決着は中途半端には終わらん。

見せてやろう、フリーザ…貴様のハリボテとは違う…本当の〝進化〟という奴を!」

 

「な、なんだと!?」

 

傷ついたクウラの体。

脚をやや開き、大地に突き刺すように踏ん張る。

クウラの気が爆発的に高まっていくのがフリーザには理解できた。

 

「はァァァァァァ…!」

 

「ば、バカな…!?こ、こんな…!この気は…!」

 

クウラの声に星々が応えるように震え、フリーザは兄の肉体に起きる爆発的変化に目を奪われた。

兄の傷がみるみるうちに癒えていき、そして膨れ上がる。

気だけではない。

まさに肉体そのものが膨張していた。

フリーザが内心渇望してやまない高身長の大男へと化身し、筋肉は張り詰めた鋼鉄のよう。

一族特有のバイオアーマースキンは鎧のように猛々しい。

額の外骨格まで四股に伸長し、勇ましい兜のようだ。

瞳は血のように真っ赤に染まりきり、燃えるような眼でフリーザを睨みつけていた。

 

「あ、ぁぁ…!」

 

勝ち誇っていたフリーザの心が、その土台が、ぐらぐらと揺れていくのがフリーザには分かってしまったのだ。

兄の変貌を見届けて、弟はただ震えた声しか絞り出せないでいた。

 

「バカな…!こん、な…バカな…っ!ボクとは、違う変身を…!」

 

クウラは笑う。

笑って弟を見ていた。

 

「クックックッ…、さぁ…始めようか…!」

 

笑うクウラの顔を、機械的な音とともに白いフェイスガードが覆い隠し、完全戦闘形態へと移行。

第二ラウンドの幕が開く。

 

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