スーパーメタルクウラ伝【本編完結】 作:走れ軟骨
「出来るものなら…やってみろ」
不敵に笑ったメタルクウラが、次の瞬間には二柱の神々の懐へと出現する。
「な!?」
「っっ!!?瞬間移動!!?」
紫のオーラで身を固めるブラックに、鋼鉄の拳が突き刺さりくの字に曲げ、そしてザマスには最初から全力の蹴りが頚椎に叩き込まれて、首があらぬ方向に曲がってすっ飛んだ。
そして返す刃でブラックの顎を蹴り飛ばし、蹴り上げた足を振り抜く事無く、そのまま一気に踵落としの形へと変える。
「っっぎ!!?」
そのまま頭蓋を蹴り砕いてくれようという、一切の容赦無い鋼鉄の踵が、ブラックの脳天に突き刺さる。
再度倒れたブラックの顔面を、メタルクウラはサッカーボールを蹴飛ばすような気軽さで、躊躇無く蹴りぬいて飛ばす。
「さすがは孫悟空の肉体だ。丈夫だな」
「っ、き、きさ、ま…!」
すっ飛ばされ転がりながらも、踏ん張って立て直すブラック。
そして間髪入れず全速力で突っ込む。
手には気のブレード。先程と同じ、ロゼのパワーならば頑強な装甲を貫けると踏んでの事。
だが、
「なっ!?」
同じ条件で砕いた筈のメタルクウラは、装甲に僅かに傷がついただけで、その勢いを完全に受け止める。
僅かにノックバックこそしたものの、攻撃としては完全に失敗だった。
ニヤリとメタルクウラが笑う。
「そんなはずは…そんなはずはないっっ!!!」
凶相で叫ぶブラックの蹴りがメタルクウラの側頭部にキマる。だが、僅かに頭を揺らすだけで、機械の目は冷たくブラックを見据えていた。
拳が何発もメタルクウラの胸を殴る。腹を殴る。だが、殴ったブラックの拳の方が痛みそうな程に、ただひたすらにメタルクウラは硬い。
「う、うおおおおおおお!!!!」
拳も蹴りも、得意の手刀も、何度も何度もメタルクウラへと叩き込んだ。
だが、機械の魔人は、もはや回避も防御もせずにそれらを受けきり、そして一発のカウンターをブラックの顔面目掛けて打ち出し、ブラックの猛攻は終わった。
たった一発で黙らせられる。
「…っ!」
鼻血がツゥーっとブラックの顔を汚していた。
眼輪筋をひくつかせながら、メタルクウラを憎悪の目で睨むと、腰を落とし、両手を引いて脇腹で気を収束させ始める。
「…技まで借り物か。ザマス…やはり貴様はつまらん神だ」
メタルクウラの言葉は、ブラックの正体も…そして二人のザマスの狙いも知っているという事なのだろうが、今更そんな事には驚けない。
ブラックも、気に食わないといえど、忌々しき人間の知と業の結晶たる眼前の機械人形の凄まじさは認めねばならなかった。
「く、くくくく…借り物ではない。俺が、この罪深い肉体の真価を引き出し、そして神の尊き所業によって誠に価値在るモノへと昇華させたのだ!」
「御託はいい。撃ってみろ…貴様のかめはめ波を」
俺の気高さを理解しようともしない、耳も貸さない、この愚劣な下等生物め!
ロゼに変身した事で気も高ぶっているのであろう…一人称も俺へと変わったブラックの額に浮き出る血管がより盛り上がって、その怒りを表していた。
「っ…いいだろう。ならば食らうがいい!これが…神のォォォォ―――」
口からも気を取り込むかのように、全身にパワーを満たし、そして両掌に集める。
「―――かー…めーー…はァーーー…めェェェ…波っっっ!!!」
悟空とはイントネーションの違うかめはめ波は、構えも本家悟空と比べてやや前傾であり、そして魂の違いが気の違いとなって、その気功波の色も大いに変える。
ブラックの両掌から放たれた紫紺の気功波は、まさに超サイヤ人ロゼの名に相応しい色。
それをメタルクウラは、ただつまらなそうに眺め、防御も回避もとることなく、その金属の肉体で黙って受け止めた。
ダークパープルの気功波にメタルクウラの一切は包まれ、そして気の渦に飲まれていく。
「ハハハハハハッ!馬鹿め!貴様の防御力に自惚れたな!防御もせずに俺のかめはめ波を食らえば唯ではすまんぞ!!」
「おお…もう一人の私のパワーはさらに上がっている!いいぞ!これならば…人間0計画は何の問題もなく進むぅ!ふはははははは!」
観戦者であるザマスも高笑いし、圧倒的な気の光線をうっとりと眺めていた。
しかし…。
「ハハハハハハ!ハハハハハハッ!!ハハハハ――――ハッ!?」
馬鹿笑いは、絶望にも近い驚愕によって止められた。
大口を開けて眺めるザマスの視線の先…そこには全くの無傷で立つメタルクウラの姿。
「馬鹿な!!!?」
初戦時に重傷を負い、そこから自分の回復力とザマスの復活パワーの合せ技によって、一気に強化回復したブラックは、2倍以上の戦闘力を手に入れている。
そこに、神によるサイヤ人の超化…つまりロゼ化がなされて戦闘力はもっと跳ね上がる。
ザマスの見立てでは、今の自分の力は、間違いなく破壊神級のはずで、彼自身の計算によると平時のビルスすらを凌駕する。
つまり、油断している時ならば、破壊神最強と噂されるビルスですら殺せるのだ。
もっとも、そもそもそれは大いに希望的観測であり、都合の良い状況が重ならねば起こるはずも無い状況ではある。
だがそれでも間違いなく、最強の神となった。ザマスはそう思っていた。
メタルクウラが、ゆっくりとこれ見よがしに右腕を持ち上げ、指先をブラックへと向ける。
連続フィンガーブリッツ ――惑星破壊級の収束エネルギーを、秒間数百万発放つ―― がブラックを襲った。
「っっ!!?ぐっ、ぅ、お!?ぬおおおおっ!!?お、おのれぇぇぇ!!」
ヒヤリとした。
ブラックとなって以来、これ程の危機感は抱いたことがない。
一発一発がとてつもなく重く、鋭い。
気を漲らせ、迫る光弾を全力で目で追う。
両の手を必死に動かし、呼吸さえ忘れてブラックは全身全霊で防御に回っていた。
「ほぅ?捌けるか。ならばもう少しギアを上げてやる」
「な、に!?」
メタルクウラの指が、もはや常人では残像でろくに見えないスピードでピストンする。
そのワンストロークには惑星が消し飛ぶような破壊エネルギーが込められているから、もしも捌きそこねて地上にでも流れ弾がぶち当たられば、それだけでブラックは終わる。
なにせ、サイヤ人の肉体になった代償として、彼は宇宙空間での活動ができない。
「うっ、おおおおおおおお!!!?き、貴様!!こ、このままでは、この惑星もただではすまんぞ!!せっかく助けたあの地球人も、トランクスも…!死ぬぞ!!?」
「知ったことではない。それでトランクスが死ぬならば…それが奴の寿命だ。そして、貴様の寿命でもある。芯人の肉体のままの方が良かったのではないか?猿モドキになって、貴様はくだらぬ存在に成り果てたのだ…ザマス」
一発一発を受ける度、ブラックの腕が痺れる。もはや防御も限界だった。
そう思った時、ブラックの
「させん!」
メタルクウラの腕に、界王ザマスが絡みつき、羽交い締める。
「……貴様、首をへし折ってやったはずだが」
それた指の先から、虚空へ向けて連射されるフィンガーブリッツが、暗い空に星空のように瞬いて吸い込まれていく。
「クククク…あいにく、私は不死身なのだよ」
「……なるほど、そういう事か。ドラゴンボールによって、不死身を叶えたようだな」
「……つくづく不愉快な奴だ、貴様は。神である私の行動が、こうまで筒抜けとはな」
メタルクウラの腕の人工筋肉がググッと膨張する。
筋肉の蠕動。それだけで、ザマスの拘束は弾き飛ばされそうになってしまう。
「っ!く…!な、なんというパワー!」
「貴様が非力なのさ」
腕だけでなく、足もメタルクウラの腰に絡めて全力で羽交い締めるザマス。
何とか抑えたが、それも時間の問題なのは明白だった。
「ザ、ザマスよ!!!私ごとやれぇぇぇ!!!!!」
振り払われる。そう確信したザマスが、もう一人のザマスへと叫ぶ。
「…気は高まった…よくやったぞ、ザマスよ!」
――Pipipipi…
メタルクウラのサーチが警告を告げた。
強力な気を手刀にまとわせ、お得意の気刃を作り出したブラックが、刃を左手で掴み伸ばす。
まるで飴細工のように形を変えていく紫紺の気刃は、禍々しき気の大鎌となって、ニヤリと笑ったブラックが大きく振りかぶるのがメタルクウラには視えた。
「これぞ神の御業!!神の怒りが如何程のものなのか…っ!その身に刻めっ!!!」
「…くっ」
今まで余裕一辺倒だったメタルクウラの顔が、ここに来てようやく少し歪んだ。
機械の特性を活かし左腕の関節を逆転装着し、背に絡むザマスの胸に拳を叩き込めば、「ごはッ!?」とザマスは血反吐を吐いたが、しかし不敵に笑うのみ。
「クククク…はははははははっ!!無駄だ!私は不死身!この身には痛みさえ届きはしないッッ!!決して離さんぞぉぉ!!」
「ならば消滅するとどうなる?興味があるな」
メタルクウラの赤い目が一瞬、機械的に光った次の瞬間、突然ザマス膨れ上がる。
「っう、うぉぉお!!?ぐあああ~~~~~~~っ!!!!?」
パァンっ、とでも聞こえてきそうな程に、ザマスは内部から熱膨張し、そして弾けた。
ターゲット体内に送り込まれたエネルギーが、対象を内部から破壊するロックオンバスター。
その技が、ザマスを跡形もなく消し去るが、驚くべき事に、消滅した次の瞬間にはザマスの再構築は始まる。
血肉と共に消え去った衣服も、ザマスの神としての神通力によって即、修復…或いは召喚されて、全くの元通りのザマスが同じ場所に出現。
変わらずにメタルクウラを羽交い締めた。
「―――は、ははははっ!!み、見たか!!これがっ、神の力!真なる不死!!我は不滅!!!」
「っっ!」
さすがのメタルクウラの鉄面皮も驚きに染まる。
黒と紫に光り輝く気の大鎌が、二人の眼前へと迫っていた。
勝ち誇る二柱。だが、まだ二人の神はこの時は気付いていない。
今の一撃で、ザマスが跡形もなく一度消されたという事は、神の耳飾り・ポタラまでが消滅したのだ。ザマスの神通力では、神々の神器であるポタラまで創造する事は出来ない。
これが後にブラックとザマスを絶望に追い込むなど、この時の二人はまだ知らない。
「再生も出来ぬよう、粉微塵にしてやるぞ!!!」
猛るブラックが、全身からこそぎ集めた気を両手に漲らせ、気鎌はビュゥゥゥゥと風を切り、そして2つのヒューマノイドを切り裂いた。
メタルクウラの装甲を切り裂き、フレームを断ち切り、上半身と下半身が切り裂かれる。
一極集中させ、そして研ぎ澄ませた気の刃は、とうとうメタルクウラの鉄壁を切り裂いた。
「どうだ!我が前にひれ伏すが良い、機械人形!!」
消耗しながらも勝利に酔いしれ、転がる残骸を見下ろすブラック。
しかし。
「む…!?」
一切の表情の動きが消え、まさに人形という風情で転がるメタルの残骸が、破損部位から猛烈な勢いで触手を吐き出す。
その有様はマシーンというよりは化け物だ。
高度に発達した機械群の動きは、極めて有機的で、見るものに生理的嫌悪すら与える。
未だ立っているメタルクウラの下半身と、地面に転がる上半身とが、互いに触手を伸ばし絡ませ合うと、そのまま両者は接合を開始。
即座に強化修復が始まったのだ。
「こ、こいつ…!させるか!ザマス、お前も合わせろ!!」」
ブラックが叫ぶと、胴切りなど無かったかのようにスクリと立ち上がったザマスが、ブラックの横に並び立ち、手を構える。
「ああ!修復が間に合わなくなるまで、徹底的に破壊する!」
そしてブラックを回復させながら、己も気功波の波長をブラックに合わせて合体エネルギー弾を放ちまくるのは流石の器用さだ。
ザマス自身の本来のパワーは、界王としてはかなり優れていたが、全宇宙の戦士レベルで言えばそこまでではない。
そんな事は当たり前で、もともと界王や界王神は破壊や攻撃が本分ではなく、世界の安定と創造・修復を自らの役割とする神々で、その性質から考えれば界王ザマスの力と武の才がいかに天才的かが解る。
界王としての技の緻密、武の才、そして元々同一人物であるブラックとの抜群の相性という好条件。ブラックとエネルギーの波長を合わせれば、その威力はただザマスのエネルギーが乗るだけでなく、何倍にも強化される化学反応が起きるのだ。
「…っ、ぐっ!?」
メタルクウラの顔が苦悶に歪む。
エネルギー流が、修復中のボディにダメージを与え、そして損傷箇所から全身に、そのダメージが伝搬する。
それこそが自己進化と自己修復を繰り返すメタルクウラの、唯一にして最大の弱点。
「お、おお…!?ぅ、ぐ!……っ!」
――Pipipipipi!!!
全身のセンサーがアラートを繰り返す。
ダメージ値・急上昇。修復プロトコル・伝達不能・実行不能。修復不可・修復不可。
損傷拡大。エラー・エラー・エラー。ダメージ危険値到達。
「撃てぇぇぇ!まだ!まだまだまだまだ!!もっと撃つのだ!!」
「消え去れェェェェ!!愚かな人間の大罪!悪しき科学の忌み子よ!!!」
嵐のようなエネルギー波が、メタルクウラの脆くなったボディを徐々に破壊していき、
「ぐ、あああああっ!!!?」
とうとうメタルクウラの耐久は限界値を超えて、体中の四方からオーバーフローしたエネルギーが漏れ出し、スパークした。
眩い光が、剥げ落ちた装甲の亀裂から溢れていくその最中、メタルクウラを味方と頼むサイヤ人がようやく戦場へと舞い戻ったが、時既に遅しとはこの事だった。
トランクスが叫ぶ。
「っ!あ、ああ!!?クウラさん!!!そんな!!!!」
絶望的な状況の中で、ようやく巡り会えた力強き仲間が、またもトランクスの目の前で死に絶えようとしている。
トランクスには為す術はなく、鮮烈な光が辺りを覆い、直後に大きな爆発。
「クウラさぁぁぁぁん!!!」
トランクスは唖然となって、思わず力無く項垂れ、膝をつき、それとは真逆にブラックとザマスは心底愉快そうに嘲り笑う。
メタルクウラは、もはや一欠片のパーツもブラックのエネルギー波に抹消された。
「クッ…クククククッ!残念だったなトランクス。ようやく貴様に巡ってきたチャンスだったが……つくづく貴様は仲間というものに縁がない」
「愚かな人間ではあるが、その中でも貴様の運の無さと愚かさは群を抜いている。孫悟空を病で失い、突如現れた人造人間に地球の戦士達は次々に葬られ…そして、孫悟空の息子・孫悟飯は、人造人間相手に
ブラックが冷ややかにトランクスを見下し、ザマスは心底の侮蔑を寄越す。
トランクスの歯が、ギシリと鳴った。
「母を助ける代わりに、あのロボットを生贄に捧げたのだ。貴様は…。ククク…まぁ、たかが機械だ。壊れても、母を見捨てようとした貴様にとっては痛くも痒くもないか?ん?フッ、はははははははっ!!」
「…!き、貴様…!」
確かに、出会ったばかりで、まだ名を知っただけの間柄だ。
だが、トランクスにとって、メタルクウラは間違いなく母の命の恩人であり、久々に出会った背を預けても良いと思える人だった。
涙こそ出ないが、それでも恩人の死はトランクスの心を大いに傷つけ、怒りは大きい。
「思わぬ邪魔者が入ったが………ちょうど貴様も戻ってきた。ここで、お前との因縁も終わらせるとしようか、トランクス」
「…っ」
ブラックと、そしてその横に立つ界王神らしき衣装を纏った男がトランクスに向けて殺意を飛ばし、トランクスが剣を抜き放った。
互いの殺気が交差し、高まっていく。
不気味な静かさが辺りに漂い、廃墟に吹く虚しい風が、崩れたビル郡の隙間を通り抜けていく。
ニヤニヤと笑うブラックと、界王神の装束に身を包むもう一人。
ブラックから放たれる気は、メタルクウラと出会う前よりも数段上と感じられるのは、やはり戦闘ダメージを負っての強化が繰り返されてしまったのだろう。
(…どうする…さらに強くなったブラック相手では…オレでは勝てない!逃げ切れるかどうかすら…!)
トランクスの頬を、冷や汗と脂汗が混ざったものが垂れ落ちる。
剣の柄を握る手に、ギュッと力が込められ、ブラックとトランクス双方が動き出そうとした、その時―――
「一体で充分と思ったが…成長速度はさすがサイヤ人の肉体と言ったところか」
葬った筈の機械人形の声が響いた。
「っ!?な、なに!?」
「………し、死んでいなかった…のか!?」
「クウラさん!!?」
三者三様の驚き。
だが、前者二人は明らかに嫌悪の表情であり、そして後者は喜びの驚きだ。
――ガシャ…ガシャ…ガシャ…
重厚な金属が、ゆっくりと歩み寄る音が荒廃したシティの空気を震わせる。
「死んでいなかった…?ク、ククク…ザマスよ、随分と間抜けな表現だな。俺が機械だと…ロボットだととっくにご存知なんだろう?」
メタルクウラのその言葉に、ブラックは「まさか…」と呟く。
目の前から悠然と歩いてくるメタルクウラが、ほくそ笑む。
「俺は複数存在する量産型の一つに過ぎん」
――ガシャンッ!
「な…!?」
その音は
メタルクウラの足音と、極めて酷似した、何者かが着地した、その音が背後から聞こえるのだ。
メタルクウラは目の前にいるというのに。
「に、二体目!?」
ザマスが、背後のビルに降り立ったメタルクウラを見て、眉を大きく歪め口を大きく開く。
――ガシャンッ、ガシャッ、ガシャッ、ガシャンッ!
四方の廃墟ビルの屋上からも、同じ音が聞こえた。
ブラックが唖然と見渡すと、そこにはやはり全く同じ銀色の戦士が4体。
それぞれが思い思いのポーズと表情で、二柱の神を見下ろす。
「バカな…こ、これ程の力を持った機械が…まだ5体いたというのか!?」
「…こ、これは…計算外だが…わ、我々ならば5対1でも勝てる!私は不死身で、そしてお前は無限に成長するサイヤ人の肉体を持っているのだ!」
「そ、その通りだ…!こいつらを倒した時…私の力は、さらに成長する!進化する!く、くくくく!感謝するぞ、機械ども!私の糧になってくれてな!」
ひくつきながらも笑みを作り、ジトリと伝う嫌な汗にも気付かずにブラックとザマスは笑ってみせた。
だが、トランクスは違う。
「な、何を言っているんだ…!気付いていないのか…?5体だなんて…
ついついトランクスは、怨敵であるブラック達をまるで憐れむような、そんな言葉を投げ掛けてしまう。それ程の光景に、トランクスはいち早く気付いていたのだ。
「なに…?」
そしてブラックも、長らく戦ってきた因縁あるトランクスの指差す方向を素直に見てしまう。
それぐらいトランクスの言葉には、明らかに異常な、震える声色があった。
地平線の彼方。
荒れ果てた残骸と荒野が延々と続く地平線が、キラキラと輝く。
まるで空の星々が地上に降りてきたかのように、ゆらゆらと霞む地平の彼方は銀色に輝いていた。
「―――――っ!!!!?…っ、あ、ああ………あ、あ、あ………っ」
自己陶酔を極めたかのようなナルシストのブラックが、思わず無様に戦慄いてしまう程の衝撃的な光景。
「な、なんだ…アレは…………あんなの…あ、あり得るものか……」
ザマスにいたっては、あまりの衝撃に虚脱に陥りそうになってしまったが、だがグッと堪え、脳裏に閃いた名案を、まるで己を叱咤激励するかのように相棒へと叫んだ。
「………………こ、こうなっては…あの手を使うのだ、ザマスよ!!!」
「あの手…そ、そうか!使うのだな?ザマスよ」
「そうだ………!私達が一つになれば…敵はない!!最強と不死とが、一つになる!!」
左耳に輝くポタラを、ザマスはおもむろに右耳に付け替えようとして、そして血の気が引く。
「どうした?早くしろ!ポタラを右耳に!!」
「――――――――――――――――…な、ない」
「…………なに?」
ブラックが、信じられぬという顔でザマスを見ていた。
今言われた事が、どうにも咀嚼して脳に入ってこない。そんな顔であった。
「あ、あの時だ……………………………あの時だ!!ポ、ポタラは……破壊されて…!あ、あぁ…!私が不死でも、身につけた物までは…!!!」
「っ!ば、馬鹿めッッ!!!」
自分の不死を誇る余り防御や回避が疎かになり、切り札であった神器を守ることに失敗するなど、お粗末もいいところだ。
ブラックは、今にももう一人の自分に襲いかかりそうな程に激昂し呆れ果てたが、もはやどうしようもない事だった。
ブラックとザマスの二人で現状を乗り切られねばならない。
そしてそれはあまりにも絶望的な選択肢だった。
「…何かまだ俺を楽しませる手札があるのかと思えば…まさかポタラ頼みとはな。くだらん。界王神以外は一時間しか合体できぬという制限がある時点で、俺達の波状攻撃で貴様らは終わる」
ビルから見下ろすメタルクウラがそう言ってやると、ブラックとザマスの顔はより深く険しく、心底の怒り・憎悪・絶望をハッキリと表出させた。
そんな二柱を見つめるメタルクウラの目。目。目。目。
今も、空から空間を震わす音を響かせて、時間跳躍空間を形成しながら次々にメタルクウラが現れていて、そして空のずっと上には、薄暗い月とは別に、月よりも大きな
「月が…8つに、ふ、増えた!!?クウラさん…!あ、あなたは、一体どれほどの力をっ!!」
今のはトランクスによる驚きだ。
「…あれこそがビッグゲテスター。地球上空に、あれを7つ程呼び寄せた。今もビッグゲテスターでは、俺と同タイプのメタルクウラが生産され、そしてここへ送り込まれる」
ブラックとザマスはもはや口を開かない。きっと開けないのだろう。
だが、その瞳は正直だった。そこには〝畏れ〟の色が浮かんでいた。
神が科学に恐怖していた。
「……………
空に浮かぶメタルクウラの一体がそう言った瞬間、地上の魔星共が一斉に動き出した。
もうもうと砂煙を上げて、キラキラと光るそいつらは一斉に駆け寄ってくる。
ガシャリ、ガシャリと重々しい鋼鉄の足音を響かせながら。
そして、空に浮かぶ数百のメタルクウラはゆっくりと腕を構え、掌にエネルギーを収束し始めるのだ。
エネルギー充填のつんざくような音が、四方八方、そこら中から聞こえた。
地平線から走り迫る1000体のメタルクウラ。
天から降り注ぐ光の雨。
それが二柱の狂神が見た最後の光景だった。