スーパーメタルクウラ伝【本編完結】   作:走れ軟骨

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ザンギャ可愛いよザンギャ
※ザンギャの回想とか捏造100%です。俺のザンギャはこんなんじゃないやい!と思った方はごめんなさい。我慢してください。


クウラvsボージャック

クウラの目の前にかつて人型であった生物の残骸が散らばっている。

もはや挽肉をぶち撒けたような状態になっているゴクアだった肉片。

いっそここまでくるとグロテスクさは無い。

生きたまま磨り潰され、分解、吸収されたゴクアは、

その過程でビッグゲテスターに細胞を徹底的に解析もされていて、

ヘラー人が変身と超能力を得意とする種であることをクウラに見抜かれてしまった。

しかも、

 

「戦闘力が200億以上も上昇した…! くっくっくっ……素晴らしい!

 星や雑魚を喰うよりも余程効率がいいではないか」

 

彼の生命エネルギーを食ったことでクウラの戦闘力は一気に増大し、

基本307億+ゴクアの生命エネルギー203億……510億にまで成長した。

ビッグゲテスターの細胞解析によると、ゴクアが変身をした場合…

僅かだがクウラの基本値を上回る戦闘力に到達しただろうとのことで、

レーダーに未だ4つの反応がある現状では変身前にゴクアを始末できたのは重畳だった。

 

(仮に他のヘラー人が、こいつと同じかそれ以上の戦闘力の場合……

 超能力まで使われると今の俺の戦闘力では不安がある。 対策をしておくか)

 

クウラが己の拳を強く握り、紫紺の血を滲ませる。

血はすぐに変色し輝く銀色になると不定形のスライム状となって怪しく蠢きだしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らが重たい瞼を開いて目覚めたのはつい今しがた。

ブージン、ビドー、ザンギャの三人は気怠い感覚の中、再会の挨拶を軽く交わすが、

その時に寝起きの怠さを吹き飛ばすおぞましい出来事が起きた。

耳を覆いたくなる様な空気を裂く叫び声、

命の終わりを感じさせる断末魔が長々と聞こえてきたのだった。

勿論、ヘラー一族は散々に星々を侵略していて

無抵抗の人々のそんな声は日常的に聞いていた。

しかし今の聞こえた声は、

 

「……この声はゴクアか?」

 

ターバンを巻いた小柄な戦士、ブージンが甲高い声で他の二人に同意を求めた。

大柄モヒカンのビドー、クルクルとした癖っ毛の長髪美少女ザンギャは頷く。

何者かに襲われ、しかも一思いに殺されず拷問でもうけているのだろうか。

ゴクアの尋常じゃない叫び声はいつまでも続き、やがてか細くなって聞こえなくなる。

 

「ゴクアを襲ったのは、どうもマズイ敵らしいな。

 ボージャック様が目覚めるまでは身を隠したほうが良いだろう」

 

ブージンが提案する。

ビドーとザンギャに否はない。

ゴクアにあのような悲鳴をあげさせる敵だ。 戦うのは得策ではないだろう。

幸いにしてヘラー一族は気の操作に長けている。

気を消して潜伏すれば容易にやり過ごせる…………そう思えた。

だが、

 

「ボージャック…それが貴様らの飼い主か。

 そいつが現れるまで………貴様らは前菜、というわけだ」

 

白と紫を基調としたボディ、逞しい尻尾を持つ異星人が、自分達を空から見下ろしていた。

 

「「「っ!?」」」

 

咄嗟に身構える三人。

 

「何者だ。 何故我々を襲う」

 

代表でブージンがそう問うが、

問答無用とばかりにその異星人は突如、瞳から破壊光線を放ってきた。

大爆発によって三人は吹き飛ばされるが、同時に吹き上がる砂塵が三人を包み隠す。

彼らは合図もなしに示し合わせたように同時に動き出し

得意の連携を襲撃者に叩き込もうとするも、

 

「ぐわあああああああ!!」

 

砂塵で視界がきかぬ中、ビドーの悲鳴が辺りに響く。

 

「…! そこか!」

 

ブージンが声の方へエネルギー弾をぶん投げると何かに命中したそれは爆発を起こし、

もうもうとしていた砂塵が吹き飛んで視界がクリアになると、

 

「ああっ!」

 

ブージンが思わず声をあげ驚く。

彼の放ったエネルギー弾は、異星人に首根っこを掴まれたビドーに命中していたのだ。

ブンッ、と勢い良く投げられたビドーを、ブージンは反射的に受け取ってしまい、その瞬間。

 

Pipipipipi――

 

異星人……クウラの体内のナノマシンが電子音を奏でると、

クウラの凝縮されたエネルギー弾が軌道も見せずに突然ブージンの眼前に現れ、

 

「なッ!!? うわああああああああああああ!!!」

 

破壊光線の爆発を遥かに上回る大爆発が巻き起こる。

ビッグゲテスターと融合したことでクウラが習得したロックオンバスター。

圧縮エネルギー弾を空間転移で対象の眼前、或いは体内に送り込む恐るべき技である。

もっとも、複雑な演算処理が必要なため戦闘中に体内に送り込むのは難しく、

もっぱら大凡の近場で爆破させる。

今回は体内に転移させる余裕があったが、餌相手にそれをするつもりはないようだが、

それでも大ダメージは免れない。

 

ザンギャは恐怖した。

 

(い、いつの間にビドーをやった!? どうやってブージンにエネルギー弾を当てた!!)

 

目の前の異星人の動きが一切見えなかった。

ザンギャは戦闘力封じの結界糸を駆使し格上の相手とも戦ったことがある。

格上の敵は確かに速い。

時に目で追うのがやっとの強敵もいた。

だが、それでもまったくモーションが見えなかったことはない。

ビドーが悲鳴をあげる直前まで、確かに奴の気は動かずに留まっていた。

空気を震えさせることもなく、瞬間的に移動したのだ。 あの異星人は。

ブージンをやったあのエネルギー弾もそうだ。 気付いたらブージンに命中していた。

ぐったりとしたブージンとビドーを両手に抱えた異星人が、ゆっくりとこちらを見る。

 

目が合った。

 

その瞬間、ザンギャは逃げ出していた。

 

ヘラー一族の美しい少女が、青い肌に幾筋もの冷や汗と脂汗を浮かべながら、

長い癖っ毛の、ガーベラの花のような色が美しい髪を振り乱して必死に飛ぶ。

凄まじい速度で、廃墟だらけの惑星を蛇行しながら。

どこか目的があるわけではない。

ただただ助かりたかった。

 

遠くで、仲間二人の断末魔が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怒気を漲らせた、逞しい青肌の男がクウラを射殺さんばかりに睨んでいた。

彼の名はボージャック。

封印から目覚めるのが僅かに遅れ、仲間を各個撃破の形で失ってしまった一党の首領だ。

 

「……それは俺の部下か?」

 

見慣れぬ異星人の周囲に部下が身につけていた装飾品やターバンが転がり、

そして更に付近に肉片やら血痕やらが乱雑に散らばっているのを見て、

ボージャックは確信しながら問う。

 

「部下だったモノ…とでも言おうか。 貴様がボージャックか。

 その戦闘力……もう少し早く来れば、いい勝負が出来たかもしれんな」

 

答えながらクウラは勝利を確信していた。

先刻までならボージャックが強かった。

だが、ブージンとビドーを喰ったことでクウラの現戦闘力は900億。

ビッグゲテスターが示すボージャックの戦闘力を200億近く上回る。

 

「貴様の部下は素晴らしかったぞ。

 実に効率がいい………ヘラー人がここまで数を減らしているのが残念でならん。

 ……………………所で」

 

貴様も美味そうだな。

その一言が始まりの合図。

片側の口角を釣り上げて笑うクウラが、猛然とボージャックに殴り掛かると、

ボージャックは巧みにクウラの拳を捌く。

 

(速い…! 俺が受けるので精一杯だと!?)

 

グングンと速度が上がってくるクウラの突きのラッシュに、とうとうボージャックは、

 

「ごはっ!!?」

 

鍛え抜かれた隆々たる腹筋に、クウラの拳を深々と受けてしまった。

 

「ぬ、うぅぅ…!! くらえ!!」

 

めり込む拳を掴み逃すまいとし、ボージャックは空いている方の掌に気を収束させるが、

それを撃つ直前にクウラの尻尾に腕を掴まれ、

エネルギー弾はあらぬ方向にコントロールを失って飛んでいく。

反撃が空振ると、直後。

鋭い膝蹴りがボージャックの顎に突き刺さっていた。

ボージャックの脳が激しく揺れ、瞬きよりも短い間、彼の意識が暗転する。

そして続けざまにクウラの全力右ストレートがまたもや顎目掛けて繰り出され、

踏ん張れる状態に無い彼は、

バウンドしながら幾つもの岩や瓦礫を突き破って

錐揉み回転で崩れかけのビルらしき建造物に突っ込んだ。

ゴウゴウと音を立てながら崩れるビルを見ながらクウラが、

 

「……む? 奴の戦闘力が上がっていく。

 800億、820億、840、870、900…………まだ上がるのか!」

 

チッ、と小さく舌を打つが、

変身し力を増したボージャックとの闘いを望んでいた自分も確かに心のどこかにいる。

と、その時。

崩れたビルから超高速で抜け出たボージャックが

雄叫びを上げながらクウラへと矢のように突っ込んでくる。

彼の筋骨隆々な肉体は一回り肥大し、肌の色も深い蒼から鈍い黄緑へと、

なびかせる髪も猛々しい赤へと変化していて見るからに凶暴さを増していた。

 

「戦闘力1080億…! ぐっ!?」

 

ボージャックの豪腕がクウラの頬へとめり込む。

 

「大した戦闘力だが、変身した俺は銀河に敵無しだ!

 俺が目覚めるまで持ちもしない使えん部下だったが、あれでも一応は同族でね。

 殺してくれたお礼だ……嬲り殺しにしてやろう!」

 

そのままクウラを抱きかかえるようにして組み付くと、

満身の力を込めて締め上げる。

 

「ぐ、うおおおおお…! ふ、ふふ…クックックッ…」

 

想像以上の怪力にクウラの口から苦悶の声が漏れるが、

すぐに苦しげな表情は消え失せて薄く笑う。

 

「何が可笑しい」

 

それを見て、逆に不機嫌な表情となるのは勿論ボージャックである。

万力のように締め付けるパワーを更に強め、クウラの余裕を崩そうとするが、

 

「グッ……フ、ハハハハハ……この程度のパワーで俺を倒せると思っている貴様が滑稽でな」

 

「なにィ!? 強がりを――ぐわァッッ!!!」

 

ボージャックの眼に突然焼けるような痛みが走り、思わずクウラを手放して己の眼を押さえる。

 

「ぐ、ぐ…ぐあああああ…! き、貴様…何をした…!!」

 

「俺は眼から破壊光線が放てる………至近距離で貴様と眼が合ったのでね。

 あまりに無防備だったのでついつい撃ってしまった。

 ……まだ見えるか? その焼けただれた瞳で」

 

クウラの笑みは酷く冷たい。

 

「貴様になら変身を見せてやっても良いと思ったが……どうやらその価値は無さそうだな」

 

「ひ、卑怯者めがぁぁぁぁ!!!」

 

戦闘力900億と1080億。

その差は決して小さくはない。 このまま戦えばボージャックは有利な筈だった。

だが眼球を焼かれたのは致命的といえる。

 

「だが……ま、まだだ!! 気を探れば貴様なぞ……!!!」

 

「馬鹿め。 気の操作が貴様らの専売特許だとでも思ったか?

 ハッハッハッハッ……これで貴様はお終いだ!」

 

ぷっつりとクウラの気が消えて、

しかもクウラは口を噤んで音も消してしまうのだった。

口惜しそうな、怨念めいたボージャックの叫びが荒野をただ虚しく震わせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンギャは廃墟の片隅で、瓦礫に自ら身を埋めて、その陰でカタカタと震えている。

気を消して、息を殺して、精一杯身を縮こませて膝を抱えて蹲っていた。

 

ゴクアは殺された。

ビドーも、ブージンも多分殺された。

自分達は銀河戦士だ。 殺すことも殺されることも覚悟の上の略奪行為を山程してきた。

だが、仲間達が最期にあげたあの叫び声はなんだ。

尋常じゃない。

 

ザンギャの耳にこびり付いて離れない、あの甲高い、喉を引き裂くような断末魔。

一体どんな殺され方をしたらあんな声が出るのだろう。

4人の中で一番戦闘力が低い自分では、もはや勝てない。

一党のリーダーであったボージャックに賭けるしかない。

ボージャックが目覚め、奴を倒してくれるまで、ひたすらザンギャは怯え隠れる。

心が折れてしまった彼女には、もうそれしか出来なかった。

 

どれくらい時が経ったか分からない。

 

もうボージャックの封印は完全に解けただろうか。

 

あの異星人を倒しただろうか。

 

ボージャックは仲間意識も希薄で、唯我独尊…自分勝手な男だが、

強さだけは確かだったし働いた者には相応の旨味を与えてくれた。

かつては言い寄られ手篭めにされかけたこともあるが、

隙を突いて手刀で一閃。

彼の皮膚を傷つけた後直ぐ様手刀を己の首筋に当て、

 

「私に手を出せば、私は自分の喉を掻き切る」

 

などと啖呵を切ったこともあった。

思い出してみれば中々勇ましいことだ、と怯えている今の自分と比べてしまって、

思わず乾いた自嘲が漏れ出てしまう。

 

この星の夜は酷く寒い。

はぁーっと吐く彼女の息は薄っすらと白く、手を磨り合わせて泣けなしの暖をとる。

火は炊けない。

こんな死に絶えた荒野で火など使ったら目立って仕方ない。

あの恐ろしい異星人に一発で見つかってしまうだろう。

 

(大丈夫だ……ボージャックは、強い。

 強さだけは信頼できる………きっとアイツを倒してしまうさ。

 でも、ボージャックが迎えに来てくれてもなぁ……。

 そんな貸しをアイツに作ったら、女になれって言われたら断れないね…)

 

まぁ死ぬよりはマシか。

ボージャックの女になるか死ぬかの二者択一とは、なんとも惨めな自分の境遇に涙がでそうだ。

こんなことを考えられるようになったってことは、

どうやら少しは落ち着いてきたか。

そう思い、溜息をついたその時……、

 

 

惑星中に響くかと思うほどのボージャックの野太い断末魔が、

暗い夜空にいつまでも木霊した。

 

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